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第一話:霊 瑞香
小林瑞香
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三
小林瑞香(こばやしみずか)はこたつについていた。
正面にいる金髪にデニムの着物を着ている男と目が合うと、びくりと身体を跳ねさせた。
見た目が怖いのだ。風体からしてどこかのちんぴらにしか見えない。
輪をかけて、瑞香のことをじいっと鋭い目つきで睨みつけてくるのだ。
「太郎ちゃん、女の子をそうやってじいっと見るのやめなさいよ。気持ち悪がられるわよ。それでなくても見た目が怖いんだから。ねえ」
自分の左から耳心地のよい声が聞こえた。そこには紅色の着物を着たお洒落な髪型をした色っぽい女がいた。言わずもがな、昭子のことだ。
グラスを片手に揺らしながら先程の金髪の男にちくりと言葉を刺した。
目が合うと、切れ長の目を細めて色っぽい笑みを向けられた。自分以外にも女性がいることに安心し思わず小さく頭を下げる。そして、
「あの、ここは一体……」
どこなんだろう。
家の一室のようにも見えるし、どこかの店のようにも見える。
見回した部屋の中は壁も天井も床も全てが木でできている。見える限りではこの部屋しかない。この大きなこたつ以外に何も置いていない。
明かりは落とされていて、目の前にある蝋燭の炎がチロチロと揺れている。目の前の二人の顔は蝋燭の火に照らされて揺れていた。
「今すぐにはなんでここに現れたのか思い出せなくても、すぐに思い出しますよ。何もかもね」
太郎が瑞香の顔を覗き込んでゆったりと唇を左右に引き延ばす。
その顔が化け物に見えた瑞香ははっと小さく息を飲み体を強張らせて後ろに引く。昭子にちらりと目を向けた。「理由があるはずなのよ。大丈夫よ怖がらなくても」と昭子が瑞香ににっこり笑って頷いてみせる。
ここへ来た理由か。
ええと、確か私はある男の後を毎日毎日寝ても覚めてもずっとつけていたんだよね。
でもなんでそうしたんだろう。ええと、確か……
ああ、そうだ。私はあの男に凄まじい殺意を持っていたんだ。殺したくても殺せなくて悔しくて悔しくて仕方なかった。
そうだ、私は殺されたんだ。あの男に殺された。でも、どうやって殺されたんだっけ。
ええと、殺されてからというものどうしていいかわからずにただひたすらずうっとあいつの背後に張り付いていた。
それがある時、なぜだか張り付くことができなくなって、なんでだっけ。ええと。
ああ、そうだ、あいつの体から眩い光が噴き出したんだ。その光に当てられて私は、
「そうか、私は彼に祓われたんだ」
独り言ちる。膝の上で手を組んだ。ぎゅっと力を入れこめて唇を噛んだ。瞬きが早くなる。
「やられたんだ」
組んだ手に力が入る。
「そうと決まっちゃあいないってもんですよ」
素早く太郎が言葉をはさむ。
「ここにこうやって現れたということは、まだあなたは「この世」にいるんですよ。安心してください、成仏なんざしちゃいません。ちゃんとまだ死んでますからね」
瑞香が思い出している間に太郎はいつも通りに台所へ行き、飲み物を用意した。
瑞香の前に静かにグラスを置く。
「契約の『時』が来ただけです」
にたついた太郎の笑みに瑞香はまだ落ち着くことができない。自分の前に出された飲み物も気になる。
「祓われていないならなんで私はここにいるんでしょうか。 契約の時ってなんですか? 私が誰かと契約をしたんですか?」
瑞香は疑わしい目を太郎に向け、隣の昭子にも目を向けた。
「あんたを殺した人の寿命が尽きるのが、今日なのさ」
小林瑞香(こばやしみずか)はこたつについていた。
正面にいる金髪にデニムの着物を着ている男と目が合うと、びくりと身体を跳ねさせた。
見た目が怖いのだ。風体からしてどこかのちんぴらにしか見えない。
輪をかけて、瑞香のことをじいっと鋭い目つきで睨みつけてくるのだ。
「太郎ちゃん、女の子をそうやってじいっと見るのやめなさいよ。気持ち悪がられるわよ。それでなくても見た目が怖いんだから。ねえ」
自分の左から耳心地のよい声が聞こえた。そこには紅色の着物を着たお洒落な髪型をした色っぽい女がいた。言わずもがな、昭子のことだ。
グラスを片手に揺らしながら先程の金髪の男にちくりと言葉を刺した。
目が合うと、切れ長の目を細めて色っぽい笑みを向けられた。自分以外にも女性がいることに安心し思わず小さく頭を下げる。そして、
「あの、ここは一体……」
どこなんだろう。
家の一室のようにも見えるし、どこかの店のようにも見える。
見回した部屋の中は壁も天井も床も全てが木でできている。見える限りではこの部屋しかない。この大きなこたつ以外に何も置いていない。
明かりは落とされていて、目の前にある蝋燭の炎がチロチロと揺れている。目の前の二人の顔は蝋燭の火に照らされて揺れていた。
「今すぐにはなんでここに現れたのか思い出せなくても、すぐに思い出しますよ。何もかもね」
太郎が瑞香の顔を覗き込んでゆったりと唇を左右に引き延ばす。
その顔が化け物に見えた瑞香ははっと小さく息を飲み体を強張らせて後ろに引く。昭子にちらりと目を向けた。「理由があるはずなのよ。大丈夫よ怖がらなくても」と昭子が瑞香ににっこり笑って頷いてみせる。
ここへ来た理由か。
ええと、確か私はある男の後を毎日毎日寝ても覚めてもずっとつけていたんだよね。
でもなんでそうしたんだろう。ええと、確か……
ああ、そうだ。私はあの男に凄まじい殺意を持っていたんだ。殺したくても殺せなくて悔しくて悔しくて仕方なかった。
そうだ、私は殺されたんだ。あの男に殺された。でも、どうやって殺されたんだっけ。
ええと、殺されてからというものどうしていいかわからずにただひたすらずうっとあいつの背後に張り付いていた。
それがある時、なぜだか張り付くことができなくなって、なんでだっけ。ええと。
ああ、そうだ、あいつの体から眩い光が噴き出したんだ。その光に当てられて私は、
「そうか、私は彼に祓われたんだ」
独り言ちる。膝の上で手を組んだ。ぎゅっと力を入れこめて唇を噛んだ。瞬きが早くなる。
「やられたんだ」
組んだ手に力が入る。
「そうと決まっちゃあいないってもんですよ」
素早く太郎が言葉をはさむ。
「ここにこうやって現れたということは、まだあなたは「この世」にいるんですよ。安心してください、成仏なんざしちゃいません。ちゃんとまだ死んでますからね」
瑞香が思い出している間に太郎はいつも通りに台所へ行き、飲み物を用意した。
瑞香の前に静かにグラスを置く。
「契約の『時』が来ただけです」
にたついた太郎の笑みに瑞香はまだ落ち着くことができない。自分の前に出された飲み物も気になる。
「祓われていないならなんで私はここにいるんでしょうか。 契約の時ってなんですか? 私が誰かと契約をしたんですか?」
瑞香は疑わしい目を太郎に向け、隣の昭子にも目を向けた。
「あんたを殺した人の寿命が尽きるのが、今日なのさ」
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