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第一話:霊 瑞香
家族の本当の顔1
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八
「この時をどんなに待ったか」
瑞香は一人納得するように頷きながら言葉を土に向けて垂らした。その着地点には己の頭が埋まっている。
操り人形を動かすようにのんびりと顔を上げたその両目の内にはしっかりと司を捉えている。
「私がどれだけの恐怖を感じたか。苦しかったか。あなたはちっともわかっていない。それは死んでからも変わらない。小屋にいた子はどうしたのか、今あなたの口から聞けてよくわかった。同じように殺して埋めたのね」
瑞香の顔にはなんの感情も浮かんでいない。ただ、血の気はなく青白くなっているだけだった。
「そうだよ。殺してバラバラにして埋めた。人間を養分にして育てた野菜ってもんを見たかったんだよ。俺の家族にも食わせたから、お前もあの女もその前のもみんなの体の中で生きられている。よかったな」
司の顔には気持ちの悪い笑みが張り付いている。よもや人のものではない。化け物のような、そんな雰囲気だった。
「掘り返してみたらいい。そこに君がいる。腐り果てたゴミのようになって転がっている。虚しいもんだな」
「おっとこれはダメだな」
今の一言は聞き捨てならないとばかりに侍が瑞香の横に、闇を切って現れる月のように姿を表した。
「そうよね、今のはさすがにダメだわ」
昭子の顔に笑みが溢れている。
「俺はもう少し観ていたかったけどな」
太郎も闇が捌けるように突如としてその姿をのぞかせた。
無のところから突然湧いて出た三人が誰なんだか考えるが、司にはこのさんにんに覚えがない。記憶にない。しかし不思議と恐怖は感じない。首を傾げ、瑞香を探ってみる。
「こいつが死ぬのを待ってここに来たはいいけど、なんだこいつは死んでからも楽しむばかりでなんら変わってないねえ。そうだろ、太郎」
「ええ。そうですね昭子さん。残された家族が可哀想だ。何も知らないでこんなのと結婚して」
「子供が可哀想よね、その血が半分入ってるって思ったらさ。ああ、待って。それはないか」
と、太郎と昭子は口々に言い合っているがその顔はにんまりと笑っている。
木の葉の擦れる音が大きく辺りに響く。冷たい風が畑の間を抜ける。
家の玄関が開いた。司は無意識に顔を向ける。家の中から司の家族がぞろぞろと出てくるところだった。
「おいおい、お前たち、なんで出てきちゃった? 俺を家に置いて出てくるなんてひどいやつらだな。寂しいじゃないか」
司は自分の家族が揃って家から出てくるのを見て鼻で笑った。しかし、その笑いもすぐに消えることになる。
家族の背には山登りにでも行くのかと思うほどの大きなリュックが背負われていたのだ。
それも一つじゃない。二つを肩にかけていたり、妻に至っては長期旅行用のスーツケースを二つ引いている。
様子がおかしい。家族の方に向けて歩き出した司は徐々に不安に満ちていく。
娘がボストンバッグを三つ、四つと車に積み、小走りに家の中に戻る。
息子も同じように、段ボール箱を立て続けに車に積み込んだ。妻も同じく段ボールや紙袋などの荷物をどんどん車に積むと家の中に走って戻った。
更に驚いたのは、家族の顔には笑みが溢れていることだった。息子に至っては口笛を吹いていた。
わずかな時間の間に家族の手によって、ボストンバッグ、スーツケース、段ボールなどが家の中から運びだされていく。
「何をしてるんだ」
状況を読めない司は急いで家の中に入る。家の中の状態を見て息を飲んだ。
家の中は泥棒に入られたかのように荒れていた。
家族が総出で家中を引っ掻き回し、大事な物、貴重品などを持ち出し、いらないものはなんと自分の入っている柩の中に無造作に投げ入れられていた。
「どういうことだ。これはどうなってる。なあ、おい」
両手で頭を抱えながら、忙しなく動き回る家族に話しかけてももちろん返事はない。
家族は時折笑い合いながら必要な荷物をまとめ、さも以前から決められていたかのように滑らかに事は運ばれていく。自分一人が蚊帳の外だった。
「お母さん、私の荷物はこれで全部だよ。取り残したものはないと思う」
「わかった。お兄ちゃんも荷物は全部持った?」
「持った。いらないものはあの人の箱の中に捨てた」
「そう。じゃ、最後に本当に忘れ物がないかそれぞれ自分の部屋を確認してちょうだい。あとで気づいてももう二度と取りに帰れないからね」
「そうだね、わかった。確認してくる」
兄妹は自分の部屋に戻り、ベッドの下や机の中、クローゼットの中を隈なく確認し、その間に妻も家中の部屋という部屋を確認し、忘れ物がないかどうか念入りに細かく見ていった。
「この時をどんなに待ったか」
瑞香は一人納得するように頷きながら言葉を土に向けて垂らした。その着地点には己の頭が埋まっている。
操り人形を動かすようにのんびりと顔を上げたその両目の内にはしっかりと司を捉えている。
「私がどれだけの恐怖を感じたか。苦しかったか。あなたはちっともわかっていない。それは死んでからも変わらない。小屋にいた子はどうしたのか、今あなたの口から聞けてよくわかった。同じように殺して埋めたのね」
瑞香の顔にはなんの感情も浮かんでいない。ただ、血の気はなく青白くなっているだけだった。
「そうだよ。殺してバラバラにして埋めた。人間を養分にして育てた野菜ってもんを見たかったんだよ。俺の家族にも食わせたから、お前もあの女もその前のもみんなの体の中で生きられている。よかったな」
司の顔には気持ちの悪い笑みが張り付いている。よもや人のものではない。化け物のような、そんな雰囲気だった。
「掘り返してみたらいい。そこに君がいる。腐り果てたゴミのようになって転がっている。虚しいもんだな」
「おっとこれはダメだな」
今の一言は聞き捨てならないとばかりに侍が瑞香の横に、闇を切って現れる月のように姿を表した。
「そうよね、今のはさすがにダメだわ」
昭子の顔に笑みが溢れている。
「俺はもう少し観ていたかったけどな」
太郎も闇が捌けるように突如としてその姿をのぞかせた。
無のところから突然湧いて出た三人が誰なんだか考えるが、司にはこのさんにんに覚えがない。記憶にない。しかし不思議と恐怖は感じない。首を傾げ、瑞香を探ってみる。
「こいつが死ぬのを待ってここに来たはいいけど、なんだこいつは死んでからも楽しむばかりでなんら変わってないねえ。そうだろ、太郎」
「ええ。そうですね昭子さん。残された家族が可哀想だ。何も知らないでこんなのと結婚して」
「子供が可哀想よね、その血が半分入ってるって思ったらさ。ああ、待って。それはないか」
と、太郎と昭子は口々に言い合っているがその顔はにんまりと笑っている。
木の葉の擦れる音が大きく辺りに響く。冷たい風が畑の間を抜ける。
家の玄関が開いた。司は無意識に顔を向ける。家の中から司の家族がぞろぞろと出てくるところだった。
「おいおい、お前たち、なんで出てきちゃった? 俺を家に置いて出てくるなんてひどいやつらだな。寂しいじゃないか」
司は自分の家族が揃って家から出てくるのを見て鼻で笑った。しかし、その笑いもすぐに消えることになる。
家族の背には山登りにでも行くのかと思うほどの大きなリュックが背負われていたのだ。
それも一つじゃない。二つを肩にかけていたり、妻に至っては長期旅行用のスーツケースを二つ引いている。
様子がおかしい。家族の方に向けて歩き出した司は徐々に不安に満ちていく。
娘がボストンバッグを三つ、四つと車に積み、小走りに家の中に戻る。
息子も同じように、段ボール箱を立て続けに車に積み込んだ。妻も同じく段ボールや紙袋などの荷物をどんどん車に積むと家の中に走って戻った。
更に驚いたのは、家族の顔には笑みが溢れていることだった。息子に至っては口笛を吹いていた。
わずかな時間の間に家族の手によって、ボストンバッグ、スーツケース、段ボールなどが家の中から運びだされていく。
「何をしてるんだ」
状況を読めない司は急いで家の中に入る。家の中の状態を見て息を飲んだ。
家の中は泥棒に入られたかのように荒れていた。
家族が総出で家中を引っ掻き回し、大事な物、貴重品などを持ち出し、いらないものはなんと自分の入っている柩の中に無造作に投げ入れられていた。
「どういうことだ。これはどうなってる。なあ、おい」
両手で頭を抱えながら、忙しなく動き回る家族に話しかけてももちろん返事はない。
家族は時折笑い合いながら必要な荷物をまとめ、さも以前から決められていたかのように滑らかに事は運ばれていく。自分一人が蚊帳の外だった。
「お母さん、私の荷物はこれで全部だよ。取り残したものはないと思う」
「わかった。お兄ちゃんも荷物は全部持った?」
「持った。いらないものはあの人の箱の中に捨てた」
「そう。じゃ、最後に本当に忘れ物がないかそれぞれ自分の部屋を確認してちょうだい。あとで気づいてももう二度と取りに帰れないからね」
「そうだね、わかった。確認してくる」
兄妹は自分の部屋に戻り、ベッドの下や机の中、クローゼットの中を隈なく確認し、その間に妻も家中の部屋という部屋を確認し、忘れ物がないかどうか念入りに細かく見ていった。
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