あなたが悪魔の証明と言う前に

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あなたが悪魔の証明と言う前に

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「日本にツチノコがいないことを証明することになった。手伝ってくれ」
 研究室に入ってきた教授は、いきなり助手に頼み込んだ。
「ツチノコって、あの未確認動物の?」
「そうだ。よく胴が太いヘビのような絵が描かれているだろ? あれだ」
「いないことを証明するのは大変ですよ。ツチノコがいることを証明するなら1匹捕まえれば可能ですが、いないこととなると日本全土をくまなく探す必要があるのでは?」
「問題は、そこだ」
 教授は腕組みをすると、一人ぶつぶつ言いながら歩き回り始めた。
「日本全土を探して“いませんでした”と言えればいいが、それに必要な人員も費用も確保することは叶わない。仮に確保できたとしても、調査方法の不備が指摘されるだろう。やれ、あの探し方では漏れがある。やれ、あの調査員は適当だっただの、くまなく探せないことを証明するのは非常に簡単だ」
「それじゃ、どうするんですか?」
「だから、考えるんだ。君も一緒に」
 助手も腕組みをして歩き回り始める。二人でぐるぐる回っているうちに、助手の方が先にひらめいた。
「日本という国がなくなれば、日本にいないことを証明できるのではないでしょうか? だって、日本という国自体が無いんですよ。そうしたら、日本にいるわけないじゃないですか」
「君は日本の領土を吹っ飛ばすつもりかね?」
「日本という名称がなくなれば、それで解決しませんか?」
「国名を変えるというのは容易ではないし、仮に変更できたとしても、日本という言葉の前に“旧”と付けられ、補足として使われ続けられるだろう。ソ連のようにね」
 再び、二人は辺りを回り始める。何周かしたところで、助手が新たな案を思いつく。
「ツチノコは架空の生物名だと明記すれば、いないことになるのではないでしょうか? ドラゴンやペガサスのように」
「目撃情報があるものを、架空の存在にするわけにもいかんだろ……」
「そうなりますか。でも、目撃情報って言っても、何かと見間違えたとか、そういうのが大半なんじゃないですか? 捕まえてみたら、ニホンマムシの亜種だったとか、単なる太った蛇だったとか。そんなオチですよ、きっと」
「多いだろね、誤認というのは。そもそも、我々はツチノコというものについて知らな過ぎる。これがツチノコだ、と定義できるものがない」
「それじゃ、どうするんですか?」
「まずは捕まえてみてだね、生物学的に新種であることを認めてもらう必要があるだろう」
「はぁ……」
「ということだから、日本にツチノコがいないことを証明するための第一歩として、ツチノコを捕まえようと思うのだが、君も手伝ってくれないか?」
 それはツチノコがいることを証明することになるのでは、という指摘をするべきか助手は迷った。
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