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あなたのオッサン好きが止められない
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「兄ちゃん、また漫画のキャラに興奮してんの?」
リビングで萌え4コマを読んで鼻息を荒くしている兄に、弟が侮蔑の眼差しを送る。弟にとっては、兄の嗜好は理解しがたいものだった。
「いいだろ別に。お前だってアイドル見て、ハスハスしてんだろ?」
「ハスハスって何だよ? あの子を汚す意味だったら許さないからな」
「汚してないし。つーか、お前が、その欲望で汚すんじゃね?」
「全然、意味わかんねぇ……」
こんな漫画のどこがいいんだと、弟は兄が読んでいない巻を手に取って、パラパラとページをめくってみた。
「ちょ、お前……勝手に触るなよ」
漫画を取ろうとする兄の手をかわし、弟は読みながらリビングを歩いた。ページをめくった際、挟まっていたカードが落ちる。
「あっ」
と思う間に、弟は落としたカードを踏んでいた。そこには瞳の大きい少女が描かれている。
「俺の嫁がぁーっ!」
兄からタックルを食らい、弟は尻もちをついて尾てい骨を強打する。兄は痛がる弟に目もくれず、踏まれたカードを手に取って撫でた。
「痛ってぇ……。何も、ぶつかってくることないだろ」
「お前にはわからんのだよ、このカードの貴重さが。普段は露出度控えめなのに、限定特定のときだけに見せる肌色多めのサービスの良さが、お前にわかってたまるか!」
「何だよサービスって、絵なんだろ? 絵を見て興奮するってのが、そもそも俺にはサッパリだ」
弟は手にしたままの漫画を返そうと思ったが、さっき倒された衝撃で本に折れ目が付いているのを見てやめる。
幸いにも兄はカードに話しかけているので、そのことに気づかれていない。弟は折れ目をなくしてから返そうと、逆に折ってみたりしたが、誤魔化しきれるものではなかった。
困ったなと思ってページを眺めていると、作者の情報が書かれているのが目に留まる。
作者はオッサンだった――
「兄ちゃん、この作者ってオッサンだよ。兄ちゃんはオッサンが作ったものに興奮してんだね」
弟の言い方は兄を小馬鹿にしたものだったが、兄は意に介さない様子だった。それどころか、得意げに高笑いすると弟をビシッと指差した。
「笑止! 弟よ、この兄をオッサンが作ったもので興奮する輩と笑うなら、お前も同じ穴のムジナだと教えてやろう!」
「どういう意味だよ?」
「何を隠そう、お前が好きなアイドルの父親は、この作者なのだ!」
「父親が漫画家だって言ってたけど、この漫画だったのか……。でもさ、だからって、オッサンが作ったもので興奮することに何の関係が?」
「本当に馬鹿だな、お前は。この作者の娘ということは、彼女もまたオッサンが作った存在だということだ! 世に溢れる少女も少年も、その辺のオッサンがオバサンと生み出した存在だと知るがいい」
子供が年頃になる頃には、親もいい年になっている。ある意味、それは逃れられない現実だった。
「何だか、悔しいな……」
「何を悔しがるか、弟よ。世の男はオッサンが作ったものに興奮している。オッサンが生み出したものが好きな、略してオッサン好き同志なのだ。あぁ……。人類みな兄弟とは、よく言ったものだ」
「兄弟は一人いるだけでも嫌なのに、人類全部とか……もう勘弁」
弟は頭を抱えたまま、スッと本を兄の足元に置いた。本を兄に踏ませて、折り目は兄が付けたと言い張るつもりで。
リビングで萌え4コマを読んで鼻息を荒くしている兄に、弟が侮蔑の眼差しを送る。弟にとっては、兄の嗜好は理解しがたいものだった。
「いいだろ別に。お前だってアイドル見て、ハスハスしてんだろ?」
「ハスハスって何だよ? あの子を汚す意味だったら許さないからな」
「汚してないし。つーか、お前が、その欲望で汚すんじゃね?」
「全然、意味わかんねぇ……」
こんな漫画のどこがいいんだと、弟は兄が読んでいない巻を手に取って、パラパラとページをめくってみた。
「ちょ、お前……勝手に触るなよ」
漫画を取ろうとする兄の手をかわし、弟は読みながらリビングを歩いた。ページをめくった際、挟まっていたカードが落ちる。
「あっ」
と思う間に、弟は落としたカードを踏んでいた。そこには瞳の大きい少女が描かれている。
「俺の嫁がぁーっ!」
兄からタックルを食らい、弟は尻もちをついて尾てい骨を強打する。兄は痛がる弟に目もくれず、踏まれたカードを手に取って撫でた。
「痛ってぇ……。何も、ぶつかってくることないだろ」
「お前にはわからんのだよ、このカードの貴重さが。普段は露出度控えめなのに、限定特定のときだけに見せる肌色多めのサービスの良さが、お前にわかってたまるか!」
「何だよサービスって、絵なんだろ? 絵を見て興奮するってのが、そもそも俺にはサッパリだ」
弟は手にしたままの漫画を返そうと思ったが、さっき倒された衝撃で本に折れ目が付いているのを見てやめる。
幸いにも兄はカードに話しかけているので、そのことに気づかれていない。弟は折れ目をなくしてから返そうと、逆に折ってみたりしたが、誤魔化しきれるものではなかった。
困ったなと思ってページを眺めていると、作者の情報が書かれているのが目に留まる。
作者はオッサンだった――
「兄ちゃん、この作者ってオッサンだよ。兄ちゃんはオッサンが作ったものに興奮してんだね」
弟の言い方は兄を小馬鹿にしたものだったが、兄は意に介さない様子だった。それどころか、得意げに高笑いすると弟をビシッと指差した。
「笑止! 弟よ、この兄をオッサンが作ったもので興奮する輩と笑うなら、お前も同じ穴のムジナだと教えてやろう!」
「どういう意味だよ?」
「何を隠そう、お前が好きなアイドルの父親は、この作者なのだ!」
「父親が漫画家だって言ってたけど、この漫画だったのか……。でもさ、だからって、オッサンが作ったもので興奮することに何の関係が?」
「本当に馬鹿だな、お前は。この作者の娘ということは、彼女もまたオッサンが作った存在だということだ! 世に溢れる少女も少年も、その辺のオッサンがオバサンと生み出した存在だと知るがいい」
子供が年頃になる頃には、親もいい年になっている。ある意味、それは逃れられない現実だった。
「何だか、悔しいな……」
「何を悔しがるか、弟よ。世の男はオッサンが作ったものに興奮している。オッサンが生み出したものが好きな、略してオッサン好き同志なのだ。あぁ……。人類みな兄弟とは、よく言ったものだ」
「兄弟は一人いるだけでも嫌なのに、人類全部とか……もう勘弁」
弟は頭を抱えたまま、スッと本を兄の足元に置いた。本を兄に踏ませて、折り目は兄が付けたと言い張るつもりで。
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