アダルトな大人

田原摩耶

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よいこの御主人様倶楽部

諸行無常マシュマロ

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 翔太の手により三人を追い出してもらった後。

「しょ、翔太~~……っ!」
「はいはい怖かったねカナちゃん。……今度からは冷蔵庫の酒ストック全部封印しとかないとな」

 リビングルームにて。
 俺を抱き止めた翔太はぼそ、となにやら不穏なことを呟いたが今はそんなことよりだ。

「翔太、お前俺置いてどっか行くなよ……っ!」
「っ! か、カナちゃんがそんな可愛いこと言うなんて……」
「う、うぅ……お前って実は俺に優しかったんだな」
「そうだよ、日頃の僕の厳しさはカナちゃんへの愛の鞭だからね。ようやく僕の気持ちが分かってくれたんだね、カナちゃん!」

 そうニコニコしながら俺を抱きしめた翔太。
 普段から大分気持ち悪いやつだな、そろそろ友達をやめるべきかと思ってて悪かった。そう俺が鼻を啜りながら心を入れ替えかけたときだった。

 ガシャン、と手首に何か硬いものがかけられる。金属特有のひんやりとした感触。

「ん?」と片腕を持ち上げようとすれば、そこには銀の輪っかが手首に嵌められていた。――手錠だ。
 なんということか。そのもう片方の輪はしっかりと翔太の手に握られているではないか。

「じゃあ、今からあいつらに触られた体を綺麗にしてあげるから」
「あ、あの……翔太さん……?」
「あー本当さっきから鼻がひん曲がりそうで仕方ないんだよね。僕とカナちゃんの愛の巣が侵食されてんの、普通に気分悪いからこの後清掃入れるよ。ついでにカナちゃんの部屋も掃除して着ているものもベッドのシーツも全部クリーニング出すから」
「は、へぁ……?」
「着る服なくなる? 大丈夫だよ、カナちゃん。僕の部屋のクローゼットにはこの時のために何着もカナちゃんのための衣しょ――服があるから。寒いなら僕の部屋のベッドで眠ればいいよ。ほらね、なんの問題もないよね? 最初からこうすりゃよかったよ、本当に」

 ――デジャヴ。
 いつの日かの地獄の一日を思い出し、思わず俺は身震いをした。

「う、ウェイトレスはやめろ……! やめてくれ……!」

 リビングルームに響き渡るのは俺の悲痛な叫び声。そして、「それ以外はいいんだ」という翔太のツッコミだった。
 それは内容物による。





 ――翌日。
 翔太の手厚い保護により魘されつつも完全復活することになった。
 寧ろなんで自分が元気なのかすら分からない。絶対体内の水分の50%くらい持っていかれたと思っていたのに。
 貞操帯を着けろと言う翔太と朝から揉めつつ、最終兵器兄を出すことによりなんとか出勤することは許可された。

 あの後笹山からは謝罪とあの後の翔太とのことを心配のメッセージが来た。
 全然大丈夫ではなかったし朝方まで喧嘩してちょっと泣いたりもしたが、部屋に清掃呼んだ隙を狙ってなんとか軟禁から逃れることはできたのだ。
 因みに司からは「これ、原田さんの可愛い写真」というメッセージとともに人が気絶している間のハメ撮り送られてきて即消した。あいつに人の心はないのか。
 因みに四川は完全に無視だ。ぜってーに許さねえ。

 今日出勤するのに至った理由もあの三人(というか二人)に謝らせてやるという気持ちだったが、今日は三人とも休みだった。
 逃げたか。それとも翔太が手を回したのかは知らないが、休憩室には一人紀平さんがソファーにもたれ掛かってアイスを食べていた。

「あれ。かなたん、きたんだ。体調は大丈夫?」
「き、紀平さん……」
「透から聞いたよ。大変だったね」

 一体どれについてのことだ……?!
 心当たりがありすぎて一瞬焦ったが、文脈からして普通に体調のことを言われているのだろう。
 言葉に詰まれば、「やっぱまだ調子悪い?」と紀平さんは顔を上げる。隣においでよ、と言うかのように横にずれる紀平さんに甘えて恐る恐るその隣に腰を下ろすことにした。

「い、いえ……お陰様で元気になりましたので」
「そ。よかった。かなたんは元気が一番だからねえ」
「……紀平さん」
「え? なに? 泣いてる?」
「い、いえ……なんか今人の優しさに過敏になってるらしくて……」
「あー、風邪で人恋しくなるとか言うよね。てか君、中谷君と同棲中じゃなかったっけ」
「居候です」
「シェアですらないんだ」

「かなたんも食べる?」と紀平さんはコンビニの袋から取り出したマシュマロを袋ごと俺に手渡してきた。
「いいんですか」あの甘党で甘いものを見ると目の色を変える紀平さんが、と驚く俺に、「今俺片手塞がってるからついでに開けて欲しいなーって」と紀平さんは微笑んだ。
 まあそんな気はしていた。
 けれどそんないつもと変わりない紀平さんになんだかほっとしつつ、俺は紀平さんと一緒にマシュマロをいただくことにした。
 因みに俺が一粒食ってる横で紀平さんは袋ごと食い、マシュマロたちは一瞬で消えて行った。諸行無常である。

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