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√β:ep. 3『王座取りゲーム』
02※
誰にでも過去はあるのだと理解していたつもりだが、やはり、自分がこの学園にとって部外者であると突き付けられたような、そんな漠然とした感覚に陥っていた。
「齋藤、さっきの話じゃないが……その、あまり、気にするなよ。俺が言っても説得力ないかもしれないけど、全部昔の話だ。芳川だって、今と昔では立場も違う。だから、あんま、気にしないでくれ」
もしかしたら俺に話してしまったことを後悔してるのだろうか、念を押すように続ける仁科に俺は「わかりました」とだけ答えた。
時間が経つのは早いもので、仁科と一緒に食器を洗っていたりしてるとあっという間に時間が過ぎた。
縁の帰りを待っていたときだ、不意に、玄関の方で微かな音が聞こえてきた。ガチャガチャと鉄が擦れるようなそれは恐らく鍵穴に鍵が差し込まれたものだろう。
縁が帰ってきたのだろう。そう思い、扉に駆け寄った時、勢い良く扉が開いた。
「おかえりなさ……」
言い掛けて、その先の言葉は出なかった。
そこに立っていたのは、縁ではない。高い等身、けれど、縁よりもがっしりとした影は、確かにこちらを見た。そして、笑う。
「ただいま、ユウキ君」
血のような真っ赤な髪に、だらしなく緩んだ口元。
阿賀松伊織は指先で大量の鍵がぶら下がるその束をくるくると弄び、嫌らしく笑った。
ちょうどグラスを棚に戻そうとしていた仁科は、それを落としていた。幸いステンレス製だったようで割れることはなかった。
何故阿賀松がここにいるのか、なんて、考える余裕すらいない。恐らく、阿賀松のことだ。どんな手を使ってでも逃げ出そうと思えば逃げ出せるはずだ。
確かに阿賀松が扉の前に立っていたのは驚いたが、それよりもだ。俺はゆっくりと視線を下ろし、息を飲む。
阿賀松の足元に何かを引き摺ってるのが見えたからだ。え、ともう一度阿賀松を見上げた時、阿賀松は俺を乱暴に退かし、そしてそのままドカドカと部屋に上がり込んできた。そして、阿賀松は手に持っていたそれを思いっきり床の上に放り投げた。
「ッ、ぐ、ゲボッ」
「っ、い、伊織さん!こいつ……」
「手当はしなくていいぞ、仁科。ちょっとは血抜いた方が大人しくなるかもしれねえからな」
「……ッ!!」
血の気が引く。床の上、口元を抑え、咽るその男には見覚えがあったからだ。白い肌。黒い髪。その口元は真っ赤に濡れていた。血だ。乱れた髪の隙間から、二つの目がこちらを向いた。
「と、かち君……ッ」
充血した目には、確かな殺気を感じ取ることが出来た。けれど、目が合って、十勝は俺だと気付いたのだろう。十勝が何かを言おうと、血の気の引いたその唇を動かしたときだった。阿賀松の革靴、その尖った爪先が十勝の顔面を容赦なく蹴りつける。
鈍い音ともに、阿賀松の爪先が赤く汚れる。顔を抑え、悶える十勝。俺は、見てられず、顔を逸した。
「ここに来る途中拾ったんだ。邪魔くせーから連れてきた。……で?方人はいねえのかよ」
「今、少し出ていかれて戻ってきてないです……」
「タイミングわりいな、せっかく俺が帰ってきたっつーのによ、なぁ、ユウキ君。会いたかっただろ、俺に」
「……っ」
十勝のことをまるで、なんとも思っていないかのように無視して、足蹴する阿賀松に、俺は、何も返すことが出来なかった。
早く、手当をしないと。吐血にばかりに目がいっていたが、見ると全身傷だらけで、シャツの下にまで浮かんだ打撲痕からしてその痛みは計り知れない。
助けないと。と、思うのに、阿賀松の手前、俺も、仁科もその場から動くことが出来なかった。
「会いたかっただろ、って聞いてんだけど。使えねえ口なら縫い付けるか?」
冷ややかな瞳が細められる。笑ってるはずなのに、笑っていない。その目に睨まれ、俺は、逆らうことが出来なかった。
会いたかったです、と、辛うじて声を振り絞る。すると、ニッと笑った阿賀松は俺の頭をぐしゃりと撫でる。
そして、
「おせーんだよ、返事」
思いっきり後頭部を殴られ、俺は、大きく前のめりになる。転倒しそうになって、腰を抱き留められた。
いきなり殴られたショックと受け止め切れていない現状に頭がこんがらがる。目を白黒させていると、阿賀松にそのまま引き摺られた。
「奎吾、そこのゴミ、縛っとけよ。あと血で汚れたら面倒だから、顔、塞いどけ」
「……わかり、ました……」
十勝と、目が合う。口の中を怪我してるのか、開いた口からはぼたぼたと血が溢れる。十勝が何かを言おうとしていたが、それも、濁った咳により掻き消される。
何をされたのか、知りたくもなかった。赤く染まった舌が十勝の口の中から覗き、俺は、ぎゅっと目を瞑る。
阿賀松は靴を脱ぎ捨て、俺をベッドに突き飛ばした。ズキズキと痛む後頭部を避けながらも仰向けになったベッドの上、阿賀松は、着ていたシャツを脱ぐ。
阿賀松に連れてこられた時点で嫌な予感はしていたが、あまりにも性急で、それ以上にこの部屋には仁科も十勝もいる。
「っ、先輩……」
「あ?何やってんだよ、早くお前も脱げ。脱がすの面倒なんだよ」
「っここ、縁先輩のベッドじゃ……」
「あいつだって俺のベッド使うんだからお互い様だろ」
ベッドがとかそんな段ではないと分かっているが、それでも、はいそうですかと開き直ることも出来なかった。
胴体に伸びてきた阿賀松の手に乱暴にシャツを剥かれる。驚いて、阿賀松の腕を掴むものの、腕力で敵うはずもなく、阿賀松は俺を無視して大きくシャツをたくし上げ、体を抱き締めてくる。
噛み付くというよりもじゃれつくように胸元に顔を埋めてくる阿賀松はがじがじと尖った歯を至るところに立て、体に痕を残していく。
「っ、痛……っ、あ、あの……本当、駄目ですって……ッ」
音を立て、胸を舐められる。外気に晒されて尖り始めていたそこを甘く噛まれ、息を飲んだ。そのまま乳輪ごと口の中に咥えられれば、思いっきり噛み付かれる。
食い込む犬歯に、背筋が伸びる。痛みのあまり、視界が白く点滅する。
「……うるせえな、こっちは溜まってんだよ」
一瞬、機嫌がいいのかと思ったがなんのことはない。
欲求不満と掛け離れた位置にいて、いつでも好きなときに好きなことをしてきたこの人は当たり前だが自制する気もないらしい。
重なった下腹部、そこに当たる嫌に硬い感触に、全身の血液が一気に沸騰する、そんな錯覚すら覚えた。
「ん、ふ……ッ」
沈むベッド。覆いかぶさってくる阿賀松に、頭を抑えつけるように唇を重ねられる。
掛かる体重にベッドのスプリングが軋む。服の下、這い回る骨っぽい指先に腹部をいやらしく撫でられ、体が震えた。
「っ、ぅっ、ん、ぅ」
舌で唇を抉じ開けられ、喉奥まで入ってくる太い舌に、上顎を擦れる球体ピアスの感触に、喉の奥から唾液がじわりと滲む。端ない音を立て、口の中を舌でたっぷりと舐られ、奥で窄まっていた舌も引き摺り出された。
「う゛、ん……ッんん……ッ」
息苦しさと羞恥のあまり、体が熱くなる。
腹部を這っていた掌はそのまま下腹部に降りていき、ベルトを掴まれた瞬間、腰が揺れる。
「待っ、せんぱッ、あッ、待って……下さ……ッんん、ぅ……」
黙れと言わんばかりに唇を塞がれ、舌を絡められる。開きっぱなしになった口からはくぐもった自分の声と、唾液が溢れる。
それでも「先輩」と、容赦なくベルトを緩める阿賀松の手を止めようとするが、虚しきかな。スラックスを脱がす手間も惜しいのか、下着の中に手を突っ込んできた阿賀松にぎょっとした。
「っ、ふ、ぅ……ッ!」
萎えきった性器を避け、そのままその最奥、肛門に指を這わせた阿賀松はそのままぐっと周辺を抑える。
ぐにぐにと入り口付近を触り、軽く広げては指を挿入し、中の感触を確かめる阿賀松に、挿れられた俺はただでさえ息苦しいこの状況下、藻掻くようにシーツを掴み、耐える。
「……お前、俺がいない間、随分と遊んでたみたいだな」
至近距離。低い声で囁かれれば、背筋にゾクゾクと震えが走った。濡れた唇に吐息が掛かる。
内心、冷や汗が止まらなかった。隠し通せるとは思ってなかったが、まさかこんなに早くにバレるとは思わなかった。
「方人か」
「……ッ」
「……面白くねえな」
舌打ちに体が反応する。阿賀松が怒ってる。
なんで怒ってるのか、俺が勝手なことしたのが面白くないからか。想像つくが、実際怒った阿賀松を前にすると、体が石になったみたいに動けなかった。
ぐっと下着ごとずり降ろされ、驚いて声を漏らした。何事かと振り返ろうとしたとき、うつ伏せにベッドに押し付けられた。
「腰を上げろ」
絶対零度の声は、俺に逆らう意志を持たせようともしない。
顔を見なくとも怒ってるのがひしひしと伝わってくる。俺が、言う通り腰を持ち上げる。下着を穿いてない今、他から見た自分がどんな滑稽なことになってるのか、考えたくもない。
恥ずかしい、死にたくて堪らない。なのに、初めての相手というのは良くも悪くも俺を縛る。植え付けられた痛みと恐怖と叩き込まれた快感には逆らうことが出来ない。
せめて、顔が見えないように、シーツに顔を埋める。
「ちげえよ、ケツの穴も自分で拡げるんだよ」
「っ、ぇ……ッ、んぅ゛ッ!」
「……早くしろ」
逆らう暇すら与えない。
思いっきり尻を叩かれ、針で刺されたみたいな鋭い痛みに涙がじんわりと滲む。
これだから、嫌なんだ。機嫌の悪い阿賀松の相手をするのは。
呼吸を繰り返し、バクバクと高鳴る鼓動を必死に落ち着かせた。
手汗が滲んだ掌で、俺は、自分の背後に手を回し、それから、恐る恐る臀部を掴んだ。広げ方なんて、分からない。後ろがどうなってるのかも、考えたくない。
俺は、半ばヤケクソになりながらもそのまま、震えを堪え、臀部を横に押し広げる。
顔が焼けるように熱くなる。阿賀松が背後で動く気配がして、バクバクと心臓が脈打った。
その時、ジッパーが降ろされる音が聞こえてきて、全身が反応する。
「……遅えよ」
そう、耳元で囁かれるのと拡げられたそこに性器を押し当てられるのは同時だった。
乾いた下腹部に体重を掛け、力任せに入り込んでくるそれに息が、思考が、心臓が、確かに止まった。
腹が、焼け落ちそうだった。熱された鉛でもねじ込まれたような痛みと熱に全身から脂汗が滲む。体重の掛かりやすいこの体勢、阿賀松から逃れることはできなかった。
「あ゛ッ、ぁ……ッあぁ……ッ!」
「……はぁ……ッ、キツ……」
吐き出された吐息、その声の振動すら俺には凶器に等しかった。
連日の縁との行為もあったが、それでも、阿賀松相手になるとやはり慣れとかそんな問題ではない。それに、縁との行為はとにかく優しかった。腫れ物にでも触れるかのように丹念に愛撫し、慣らし、挿入する。
少なからず縁は俺の体を気遣ってくれていた。
けれど、阿賀松にそれはない。まるで俺を痛め付けるのが目的なのだとでも言うかのように、問答無用で乾いた内壁を押し破るように腰を動かしてきて、その度に喉の奥から自分のものとは思えない絶叫が漏れる。
痛みに悶絶する俺を見下ろして、阿賀松は喉を鳴らした。
「……ッ相変わらず、処女みてーな締まりだな」
「っ、あ、ぁッ、ぐぅ……うぅ……ッ」
ぶちぶちと皮膚が悲鳴を上げるのが聞こえるようだった。
阿賀松が腰を進める度に全身の筋肉は痛みに身構えて硬直し、そして阿賀松は気持ち良さそうに息を吐く。
裂傷が出来、血が滲んでるのだろう。ぬるぬると次第に滑りがよくなる性器。阿賀松がゆるく出し入れを繰り返す度に周囲に漂う血の匂いが濃厚になっていく。
「っ、ぁ、ひッ、く、ぅう……ッ」
気持ちよさの欠片もない。ただ強制的に与えられる痛みに、汗が流れ落ちる。シーツにしがみつき、その痛みを堪えることしかできなかった。
「いっ、伊織さん……あの……」
そんな中、恐る恐る仁科が声を掛けてくる。
挿入の痛みで一瞬でも仁科がいることを忘れていた俺は、その声に現実に引き戻される。
仁科だけではない、十勝もいる。こんな場所で、こんな真似。耐えられず、逃げようとベッドのフチに手を伸ばそうとすれば、頭を押さえつけられ、より奥へと腰を進められる。
瞬間、目の前が真っ白になる。
「ぎ、ひ……ッ!」
「……あ?何?今取り込んでんだけど?」
「あの……こいつ、縛りましたけどどこに……」
「知らねえよ、そこらへんに転がして……ああ、そうだ」
言い掛けて、阿賀松は何か思い付いたように声を上げた。
そして。
「仁科、お前そいつ抱けよ」
「ッ、は……?」
阿賀松の言葉に、俺と仁科の言葉は見事シンクロした。
一瞬この男が本当に血が流れてる人に思えなくて、それからその意味を改めて理解したときは、恐ろしさのあまり全身の痛みも熱も一気に引いていくようだった。
「生徒会だろ、犯して全裸で校門前にでも縛り上げとくか」
「だ、だめ、です……ッ!!」
聞く事も耐えられなかった。十勝の反応を伺うこともできなかった。けれど、自分と同じような目に遭わせることだけは耐えられなかった。
予想以上に大きな声が出てしまう。それでもいい、寧ろ、聞こえないフリされるよりかは、全然。
次の瞬間、伸びてきた手に前髪を思いっきり掴まれ、無理矢理上半身を起こされた。
「なんだぁ?ユウキ君、お前がそいつの代わりにでもなんのかよ?」
「違ッ、あ゛っぅ、ぐぅ……ッ」
「そうだなぁ……けど、お前、マゾだからなぁ……つまんねーんだよ」
同時に、腰を抱かれ、根本奥深くまで一気に体重を掛けられる。腹部内臓を突き上げられ、その衝撃にまるで口から何かが出そうな、そんな錯覚を覚えた。けれど、実際俺の口から出たのは声にならない絶叫と唾液だった。
それから、無理矢理押し拡げられたそこを更に拡張するかのように挿入を繰り返される。思考がぶつぶつと切れては、痛みに、叩き起こされる。そんな行為の繰り返しに、負荷に耐えられずガクガクと痙攣を起こす下腹部は最早自分の意志で動くことすらも出来なかった。阿賀松に固定された下腹部の感覚が薄れ、自分のものとは思えなくなった。
「ひ……ッ、い゛、ぁ……ッ」
久し振りの阿賀松の行為のせいか、それとも中枢神経が狂ったのか、はたまた阿賀松の言う通り俺はマゾヒストなのか。それすらも判断付かないが、阿賀松の押し潰されての獣染みたセックスに、下腹部が焼けるように熱くなる。それは内壁の痛みとは似て非なるものだった。
「……ッ、ぁあ……イキそ」
胸を掴まれ、背中に阿賀松の胸板が密着する。根本まで挿入された上半身でしっかりホールドした阿賀松は、そのまま息を吐き、難なく人の腹の中に射精した。
「っ、ぅ、あ……あぁ……」
腹の中、あまりの熱に内臓すら焼け爛れるのではないか、そんな恐怖すら覚えそうになっていた。
受け止めきれなかった精液が結合部から溢れ、腿を伝いシーツへと落ちる。白濁に赤が混ざってるのを見て、俺は酷く居たたまれなくなった。
「仁科、方人はどこに行ったっつったか?」
「き……ッ、聞いてません、け……けど、そんなに遠くには言ってないと思います」
「チッ……使えねえな、ちゃんと聞いとけよ、あいつ、首輪付けとかねーとフラフラフラフラほっつき歩くんだからよ、分かってんだろが!」
「す、すみません……ッ!」
「っ、う、ぐ、ぅ、ふッ」
苛ついたような阿賀松の声と同時に伝わってくる振動に全身の筋肉がぎゅっと強張る。
声を抑えるのが精一杯で、自分の口を抑え、必死に痛みを堪えようとするが阿賀松が動く度に内側から内蔵ごと押し上げるような衝撃と痛みに意識が飛びそうになり、唾液が垂れた。
「せっかくいい気分だってのに、どうしてくれんだよ、なぁ、ユウキ君」
「っ、も、抜い……ッ」
「あ?……聞こえねぇな」
「っ、ん゛んぅ!」
瞬間、ずるりと中のものを引き抜かれそうになったかと思えば一気に奥を抉られ、目の前が白くなる。
チカチカと弾ける頭の中、焼けるように犯される腹部にはぐちゅぐちゅと濡れた音が響いた。体を支えることもできなかった。
シーツにしがみつき、ひたすらピストンに耐えようとする。が、息がままならず、塞いでいた口もいつの間にか開いていた。
「ぁっ、あ!ぅ、ひッ、ぃ、ぎッ!」
奥歯に力が篭もる。這いずるようにうつ伏せに枕にしがみつけば、それを鼻で笑って阿賀松は更に執拗に奥を抉ってきた。
熱い。お腹の中だけではない、触れられた箇所も、繋がった場所も。
仁科がいることも忘れて、獣染みた声を上げる。唾液を止める術も俺にはなかった。
「可哀想に、んなに痛ぇのか?……縮んでんじゃねえの……ッ」
弄られる下腹部、感覚が麻痺したそこは萎えきってるようで、そこに触れる太い指先に血の気が引く。
「ぁ、やッ、め、やめ……ッ」
「仕方ねえな、イカせてやるよ」
耳朶を噛まれ、身が竦む。
唾液を絡めた指先で握り締められ、息が止まりそうになる。それも束の間のことだった。ピストンに合わせて緩ゆると上下させれる度に先程までとはまた違う刺激が頭のてっぺんから爪先へと駆け巡る。
「っ、や、ぁ゛、いや、嫌、…っん゛んッ!」
顎を掴まれ、唇を塞がれる。問答無用で舌を絡められ、口の中いっぱいに入ってくる阿賀松の舌先を執拗に舐め回された。
「ん゛ん、ッふ、ぅぐッ!ぅ、んんッ!」
頭と体が切り離されたみたいだった。
体が自分のものではないみたいな、そんな感覚に陥る。
阿賀松の手の動きに合わせて下腹部が無意識に揺れた。痛いし苦しいし、もうやめてほしいのに、舌根からねっとりと裏スジを舐められると頭の奥がじんと熱くなって、何も考えられなくなる。
次第に早まる手の動きに合わせて、ピストンの間隔が短くなる。何度も下から突き上げられ、喉奥を嬲られ、性器を扱かれる。
自分がなんなのか、何故こんなことになってるのかすら分からなくて、ただ阿賀松の手の中、生理反応で腹にくっつきそうなまで反り返った自分のものから大量の分泌物が溢れるのを見て、何も考えられなかった。
「ッむ、ぅ゛ッ、んうぅうッ!!」
一度目の射精は、阿賀松の手の中で達した。舌を噛みそうになったが、その力すら入らなかったらしい。
ボタボタとベッドのシーツの上に落ちるそれに、阿賀松は笑って、俺の唇に噛み付いた。
「っ、ふ……ッ、く、ぅ…………」
酸素もろくに回らない頭の中、俺は、貪るようなそのキスに今度こそ飛びそうになる。それでもすぐに現実に引き戻されたのは、下腹部、阿賀松の性器が先程よりも確実に大きくなってるからだ。
「ぁひ、ぎ、や、もっ、抜……ッんん……ッ」
疲労感でろくに呂律も回らなかった。
ひたすら吸って吐くだけの呼吸を浅く繰り返す、開っぱなしになった口から溢れる唾液を拭うことすら儘ならず、流れるそれを阿賀松は舐め取り、そして笑う。
「まだイケるだろ?」
無理だ。無理。これ以上、阿賀松以外の誰かの前で醜態を晒してしまえば、俺は今度こそ後戻り出来なくなる。
今更なのかもしれないが、それでも、まだ理性はあった。
「や、嫌……ッ無理です……も、無理……ッ!」
「ぶってんじゃねえよ。好きだろお前」
即答。両腕を掴まれ、上半身ごと体を引き寄せられる。瞬間、根本まで入り込んできたそれに背筋に電流が走った。声を上げることも出来なかった。
多量に溢れ出す脂汗。阿賀松は、逃げ腰の俺を掴まれ、そのままゆっくりと腰を引き、それからまた、根本まで一気に奥深く抉られる。
「っ、ひ、ぃぐッ!……い、ぁ、や、嘘ッ、うそ、……ッ」
「ぁあ゛あッ!」視界がチカチカと点滅する。濡れた体内、阿賀松のものを拒もうとしても押し拡げられ、先程の射精による残留物の助けもあり、何度も何度も中を摩擦される。熱い。阿賀松の鼓動が、伝わってくるようだった。
次第に早まるそれに、俺は、いつの間にか自分のそれと重なって聞こえた。
胸の奥、迫り上がってくる得体の知れない何かに脳味噌が蕩けそうだった。目が、目頭が、熱い。ああ、もう、だめだ。そう思ったと同時に、阿賀松は、俺の体の奥、直腸に流し込むように最奥で二度目の射精をする。
流れ込んでくるそれは溶岩のようにすら思えた。
「ひ、っ、は……」
「……ッ」
仁科と目が合った、気がした。
朦朧とした頭の中、自分が何を垂れ流してるのかもわからないままベッドへと落ちる。
阿賀松は浅く息を吐き、そのまま俺から引き抜いた。瞬間、妙な喪失感とともに違和感が残る下腹部から、生暖かい液体が流れる。腰が、体が痛い。
「齋藤、さっきの話じゃないが……その、あまり、気にするなよ。俺が言っても説得力ないかもしれないけど、全部昔の話だ。芳川だって、今と昔では立場も違う。だから、あんま、気にしないでくれ」
もしかしたら俺に話してしまったことを後悔してるのだろうか、念を押すように続ける仁科に俺は「わかりました」とだけ答えた。
時間が経つのは早いもので、仁科と一緒に食器を洗っていたりしてるとあっという間に時間が過ぎた。
縁の帰りを待っていたときだ、不意に、玄関の方で微かな音が聞こえてきた。ガチャガチャと鉄が擦れるようなそれは恐らく鍵穴に鍵が差し込まれたものだろう。
縁が帰ってきたのだろう。そう思い、扉に駆け寄った時、勢い良く扉が開いた。
「おかえりなさ……」
言い掛けて、その先の言葉は出なかった。
そこに立っていたのは、縁ではない。高い等身、けれど、縁よりもがっしりとした影は、確かにこちらを見た。そして、笑う。
「ただいま、ユウキ君」
血のような真っ赤な髪に、だらしなく緩んだ口元。
阿賀松伊織は指先で大量の鍵がぶら下がるその束をくるくると弄び、嫌らしく笑った。
ちょうどグラスを棚に戻そうとしていた仁科は、それを落としていた。幸いステンレス製だったようで割れることはなかった。
何故阿賀松がここにいるのか、なんて、考える余裕すらいない。恐らく、阿賀松のことだ。どんな手を使ってでも逃げ出そうと思えば逃げ出せるはずだ。
確かに阿賀松が扉の前に立っていたのは驚いたが、それよりもだ。俺はゆっくりと視線を下ろし、息を飲む。
阿賀松の足元に何かを引き摺ってるのが見えたからだ。え、ともう一度阿賀松を見上げた時、阿賀松は俺を乱暴に退かし、そしてそのままドカドカと部屋に上がり込んできた。そして、阿賀松は手に持っていたそれを思いっきり床の上に放り投げた。
「ッ、ぐ、ゲボッ」
「っ、い、伊織さん!こいつ……」
「手当はしなくていいぞ、仁科。ちょっとは血抜いた方が大人しくなるかもしれねえからな」
「……ッ!!」
血の気が引く。床の上、口元を抑え、咽るその男には見覚えがあったからだ。白い肌。黒い髪。その口元は真っ赤に濡れていた。血だ。乱れた髪の隙間から、二つの目がこちらを向いた。
「と、かち君……ッ」
充血した目には、確かな殺気を感じ取ることが出来た。けれど、目が合って、十勝は俺だと気付いたのだろう。十勝が何かを言おうと、血の気の引いたその唇を動かしたときだった。阿賀松の革靴、その尖った爪先が十勝の顔面を容赦なく蹴りつける。
鈍い音ともに、阿賀松の爪先が赤く汚れる。顔を抑え、悶える十勝。俺は、見てられず、顔を逸した。
「ここに来る途中拾ったんだ。邪魔くせーから連れてきた。……で?方人はいねえのかよ」
「今、少し出ていかれて戻ってきてないです……」
「タイミングわりいな、せっかく俺が帰ってきたっつーのによ、なぁ、ユウキ君。会いたかっただろ、俺に」
「……っ」
十勝のことをまるで、なんとも思っていないかのように無視して、足蹴する阿賀松に、俺は、何も返すことが出来なかった。
早く、手当をしないと。吐血にばかりに目がいっていたが、見ると全身傷だらけで、シャツの下にまで浮かんだ打撲痕からしてその痛みは計り知れない。
助けないと。と、思うのに、阿賀松の手前、俺も、仁科もその場から動くことが出来なかった。
「会いたかっただろ、って聞いてんだけど。使えねえ口なら縫い付けるか?」
冷ややかな瞳が細められる。笑ってるはずなのに、笑っていない。その目に睨まれ、俺は、逆らうことが出来なかった。
会いたかったです、と、辛うじて声を振り絞る。すると、ニッと笑った阿賀松は俺の頭をぐしゃりと撫でる。
そして、
「おせーんだよ、返事」
思いっきり後頭部を殴られ、俺は、大きく前のめりになる。転倒しそうになって、腰を抱き留められた。
いきなり殴られたショックと受け止め切れていない現状に頭がこんがらがる。目を白黒させていると、阿賀松にそのまま引き摺られた。
「奎吾、そこのゴミ、縛っとけよ。あと血で汚れたら面倒だから、顔、塞いどけ」
「……わかり、ました……」
十勝と、目が合う。口の中を怪我してるのか、開いた口からはぼたぼたと血が溢れる。十勝が何かを言おうとしていたが、それも、濁った咳により掻き消される。
何をされたのか、知りたくもなかった。赤く染まった舌が十勝の口の中から覗き、俺は、ぎゅっと目を瞑る。
阿賀松は靴を脱ぎ捨て、俺をベッドに突き飛ばした。ズキズキと痛む後頭部を避けながらも仰向けになったベッドの上、阿賀松は、着ていたシャツを脱ぐ。
阿賀松に連れてこられた時点で嫌な予感はしていたが、あまりにも性急で、それ以上にこの部屋には仁科も十勝もいる。
「っ、先輩……」
「あ?何やってんだよ、早くお前も脱げ。脱がすの面倒なんだよ」
「っここ、縁先輩のベッドじゃ……」
「あいつだって俺のベッド使うんだからお互い様だろ」
ベッドがとかそんな段ではないと分かっているが、それでも、はいそうですかと開き直ることも出来なかった。
胴体に伸びてきた阿賀松の手に乱暴にシャツを剥かれる。驚いて、阿賀松の腕を掴むものの、腕力で敵うはずもなく、阿賀松は俺を無視して大きくシャツをたくし上げ、体を抱き締めてくる。
噛み付くというよりもじゃれつくように胸元に顔を埋めてくる阿賀松はがじがじと尖った歯を至るところに立て、体に痕を残していく。
「っ、痛……っ、あ、あの……本当、駄目ですって……ッ」
音を立て、胸を舐められる。外気に晒されて尖り始めていたそこを甘く噛まれ、息を飲んだ。そのまま乳輪ごと口の中に咥えられれば、思いっきり噛み付かれる。
食い込む犬歯に、背筋が伸びる。痛みのあまり、視界が白く点滅する。
「……うるせえな、こっちは溜まってんだよ」
一瞬、機嫌がいいのかと思ったがなんのことはない。
欲求不満と掛け離れた位置にいて、いつでも好きなときに好きなことをしてきたこの人は当たり前だが自制する気もないらしい。
重なった下腹部、そこに当たる嫌に硬い感触に、全身の血液が一気に沸騰する、そんな錯覚すら覚えた。
「ん、ふ……ッ」
沈むベッド。覆いかぶさってくる阿賀松に、頭を抑えつけるように唇を重ねられる。
掛かる体重にベッドのスプリングが軋む。服の下、這い回る骨っぽい指先に腹部をいやらしく撫でられ、体が震えた。
「っ、ぅっ、ん、ぅ」
舌で唇を抉じ開けられ、喉奥まで入ってくる太い舌に、上顎を擦れる球体ピアスの感触に、喉の奥から唾液がじわりと滲む。端ない音を立て、口の中を舌でたっぷりと舐られ、奥で窄まっていた舌も引き摺り出された。
「う゛、ん……ッんん……ッ」
息苦しさと羞恥のあまり、体が熱くなる。
腹部を這っていた掌はそのまま下腹部に降りていき、ベルトを掴まれた瞬間、腰が揺れる。
「待っ、せんぱッ、あッ、待って……下さ……ッんん、ぅ……」
黙れと言わんばかりに唇を塞がれ、舌を絡められる。開きっぱなしになった口からはくぐもった自分の声と、唾液が溢れる。
それでも「先輩」と、容赦なくベルトを緩める阿賀松の手を止めようとするが、虚しきかな。スラックスを脱がす手間も惜しいのか、下着の中に手を突っ込んできた阿賀松にぎょっとした。
「っ、ふ、ぅ……ッ!」
萎えきった性器を避け、そのままその最奥、肛門に指を這わせた阿賀松はそのままぐっと周辺を抑える。
ぐにぐにと入り口付近を触り、軽く広げては指を挿入し、中の感触を確かめる阿賀松に、挿れられた俺はただでさえ息苦しいこの状況下、藻掻くようにシーツを掴み、耐える。
「……お前、俺がいない間、随分と遊んでたみたいだな」
至近距離。低い声で囁かれれば、背筋にゾクゾクと震えが走った。濡れた唇に吐息が掛かる。
内心、冷や汗が止まらなかった。隠し通せるとは思ってなかったが、まさかこんなに早くにバレるとは思わなかった。
「方人か」
「……ッ」
「……面白くねえな」
舌打ちに体が反応する。阿賀松が怒ってる。
なんで怒ってるのか、俺が勝手なことしたのが面白くないからか。想像つくが、実際怒った阿賀松を前にすると、体が石になったみたいに動けなかった。
ぐっと下着ごとずり降ろされ、驚いて声を漏らした。何事かと振り返ろうとしたとき、うつ伏せにベッドに押し付けられた。
「腰を上げろ」
絶対零度の声は、俺に逆らう意志を持たせようともしない。
顔を見なくとも怒ってるのがひしひしと伝わってくる。俺が、言う通り腰を持ち上げる。下着を穿いてない今、他から見た自分がどんな滑稽なことになってるのか、考えたくもない。
恥ずかしい、死にたくて堪らない。なのに、初めての相手というのは良くも悪くも俺を縛る。植え付けられた痛みと恐怖と叩き込まれた快感には逆らうことが出来ない。
せめて、顔が見えないように、シーツに顔を埋める。
「ちげえよ、ケツの穴も自分で拡げるんだよ」
「っ、ぇ……ッ、んぅ゛ッ!」
「……早くしろ」
逆らう暇すら与えない。
思いっきり尻を叩かれ、針で刺されたみたいな鋭い痛みに涙がじんわりと滲む。
これだから、嫌なんだ。機嫌の悪い阿賀松の相手をするのは。
呼吸を繰り返し、バクバクと高鳴る鼓動を必死に落ち着かせた。
手汗が滲んだ掌で、俺は、自分の背後に手を回し、それから、恐る恐る臀部を掴んだ。広げ方なんて、分からない。後ろがどうなってるのかも、考えたくない。
俺は、半ばヤケクソになりながらもそのまま、震えを堪え、臀部を横に押し広げる。
顔が焼けるように熱くなる。阿賀松が背後で動く気配がして、バクバクと心臓が脈打った。
その時、ジッパーが降ろされる音が聞こえてきて、全身が反応する。
「……遅えよ」
そう、耳元で囁かれるのと拡げられたそこに性器を押し当てられるのは同時だった。
乾いた下腹部に体重を掛け、力任せに入り込んでくるそれに息が、思考が、心臓が、確かに止まった。
腹が、焼け落ちそうだった。熱された鉛でもねじ込まれたような痛みと熱に全身から脂汗が滲む。体重の掛かりやすいこの体勢、阿賀松から逃れることはできなかった。
「あ゛ッ、ぁ……ッあぁ……ッ!」
「……はぁ……ッ、キツ……」
吐き出された吐息、その声の振動すら俺には凶器に等しかった。
連日の縁との行為もあったが、それでも、阿賀松相手になるとやはり慣れとかそんな問題ではない。それに、縁との行為はとにかく優しかった。腫れ物にでも触れるかのように丹念に愛撫し、慣らし、挿入する。
少なからず縁は俺の体を気遣ってくれていた。
けれど、阿賀松にそれはない。まるで俺を痛め付けるのが目的なのだとでも言うかのように、問答無用で乾いた内壁を押し破るように腰を動かしてきて、その度に喉の奥から自分のものとは思えない絶叫が漏れる。
痛みに悶絶する俺を見下ろして、阿賀松は喉を鳴らした。
「……ッ相変わらず、処女みてーな締まりだな」
「っ、あ、ぁッ、ぐぅ……うぅ……ッ」
ぶちぶちと皮膚が悲鳴を上げるのが聞こえるようだった。
阿賀松が腰を進める度に全身の筋肉は痛みに身構えて硬直し、そして阿賀松は気持ち良さそうに息を吐く。
裂傷が出来、血が滲んでるのだろう。ぬるぬると次第に滑りがよくなる性器。阿賀松がゆるく出し入れを繰り返す度に周囲に漂う血の匂いが濃厚になっていく。
「っ、ぁ、ひッ、く、ぅう……ッ」
気持ちよさの欠片もない。ただ強制的に与えられる痛みに、汗が流れ落ちる。シーツにしがみつき、その痛みを堪えることしかできなかった。
「いっ、伊織さん……あの……」
そんな中、恐る恐る仁科が声を掛けてくる。
挿入の痛みで一瞬でも仁科がいることを忘れていた俺は、その声に現実に引き戻される。
仁科だけではない、十勝もいる。こんな場所で、こんな真似。耐えられず、逃げようとベッドのフチに手を伸ばそうとすれば、頭を押さえつけられ、より奥へと腰を進められる。
瞬間、目の前が真っ白になる。
「ぎ、ひ……ッ!」
「……あ?何?今取り込んでんだけど?」
「あの……こいつ、縛りましたけどどこに……」
「知らねえよ、そこらへんに転がして……ああ、そうだ」
言い掛けて、阿賀松は何か思い付いたように声を上げた。
そして。
「仁科、お前そいつ抱けよ」
「ッ、は……?」
阿賀松の言葉に、俺と仁科の言葉は見事シンクロした。
一瞬この男が本当に血が流れてる人に思えなくて、それからその意味を改めて理解したときは、恐ろしさのあまり全身の痛みも熱も一気に引いていくようだった。
「生徒会だろ、犯して全裸で校門前にでも縛り上げとくか」
「だ、だめ、です……ッ!!」
聞く事も耐えられなかった。十勝の反応を伺うこともできなかった。けれど、自分と同じような目に遭わせることだけは耐えられなかった。
予想以上に大きな声が出てしまう。それでもいい、寧ろ、聞こえないフリされるよりかは、全然。
次の瞬間、伸びてきた手に前髪を思いっきり掴まれ、無理矢理上半身を起こされた。
「なんだぁ?ユウキ君、お前がそいつの代わりにでもなんのかよ?」
「違ッ、あ゛っぅ、ぐぅ……ッ」
「そうだなぁ……けど、お前、マゾだからなぁ……つまんねーんだよ」
同時に、腰を抱かれ、根本奥深くまで一気に体重を掛けられる。腹部内臓を突き上げられ、その衝撃にまるで口から何かが出そうな、そんな錯覚を覚えた。けれど、実際俺の口から出たのは声にならない絶叫と唾液だった。
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「ひ……ッ、い゛、ぁ……ッ」
久し振りの阿賀松の行為のせいか、それとも中枢神経が狂ったのか、はたまた阿賀松の言う通り俺はマゾヒストなのか。それすらも判断付かないが、阿賀松の押し潰されての獣染みたセックスに、下腹部が焼けるように熱くなる。それは内壁の痛みとは似て非なるものだった。
「……ッ、ぁあ……イキそ」
胸を掴まれ、背中に阿賀松の胸板が密着する。根本まで挿入された上半身でしっかりホールドした阿賀松は、そのまま息を吐き、難なく人の腹の中に射精した。
「っ、ぅ、あ……あぁ……」
腹の中、あまりの熱に内臓すら焼け爛れるのではないか、そんな恐怖すら覚えそうになっていた。
受け止めきれなかった精液が結合部から溢れ、腿を伝いシーツへと落ちる。白濁に赤が混ざってるのを見て、俺は酷く居たたまれなくなった。
「仁科、方人はどこに行ったっつったか?」
「き……ッ、聞いてません、け……けど、そんなに遠くには言ってないと思います」
「チッ……使えねえな、ちゃんと聞いとけよ、あいつ、首輪付けとかねーとフラフラフラフラほっつき歩くんだからよ、分かってんだろが!」
「す、すみません……ッ!」
「っ、う、ぐ、ぅ、ふッ」
苛ついたような阿賀松の声と同時に伝わってくる振動に全身の筋肉がぎゅっと強張る。
声を抑えるのが精一杯で、自分の口を抑え、必死に痛みを堪えようとするが阿賀松が動く度に内側から内蔵ごと押し上げるような衝撃と痛みに意識が飛びそうになり、唾液が垂れた。
「せっかくいい気分だってのに、どうしてくれんだよ、なぁ、ユウキ君」
「っ、も、抜い……ッ」
「あ?……聞こえねぇな」
「っ、ん゛んぅ!」
瞬間、ずるりと中のものを引き抜かれそうになったかと思えば一気に奥を抉られ、目の前が白くなる。
チカチカと弾ける頭の中、焼けるように犯される腹部にはぐちゅぐちゅと濡れた音が響いた。体を支えることもできなかった。
シーツにしがみつき、ひたすらピストンに耐えようとする。が、息がままならず、塞いでいた口もいつの間にか開いていた。
「ぁっ、あ!ぅ、ひッ、ぃ、ぎッ!」
奥歯に力が篭もる。這いずるようにうつ伏せに枕にしがみつけば、それを鼻で笑って阿賀松は更に執拗に奥を抉ってきた。
熱い。お腹の中だけではない、触れられた箇所も、繋がった場所も。
仁科がいることも忘れて、獣染みた声を上げる。唾液を止める術も俺にはなかった。
「可哀想に、んなに痛ぇのか?……縮んでんじゃねえの……ッ」
弄られる下腹部、感覚が麻痺したそこは萎えきってるようで、そこに触れる太い指先に血の気が引く。
「ぁ、やッ、め、やめ……ッ」
「仕方ねえな、イカせてやるよ」
耳朶を噛まれ、身が竦む。
唾液を絡めた指先で握り締められ、息が止まりそうになる。それも束の間のことだった。ピストンに合わせて緩ゆると上下させれる度に先程までとはまた違う刺激が頭のてっぺんから爪先へと駆け巡る。
「っ、や、ぁ゛、いや、嫌、…っん゛んッ!」
顎を掴まれ、唇を塞がれる。問答無用で舌を絡められ、口の中いっぱいに入ってくる阿賀松の舌先を執拗に舐め回された。
「ん゛ん、ッふ、ぅぐッ!ぅ、んんッ!」
頭と体が切り離されたみたいだった。
体が自分のものではないみたいな、そんな感覚に陥る。
阿賀松の手の動きに合わせて下腹部が無意識に揺れた。痛いし苦しいし、もうやめてほしいのに、舌根からねっとりと裏スジを舐められると頭の奥がじんと熱くなって、何も考えられなくなる。
次第に早まる手の動きに合わせて、ピストンの間隔が短くなる。何度も下から突き上げられ、喉奥を嬲られ、性器を扱かれる。
自分がなんなのか、何故こんなことになってるのかすら分からなくて、ただ阿賀松の手の中、生理反応で腹にくっつきそうなまで反り返った自分のものから大量の分泌物が溢れるのを見て、何も考えられなかった。
「ッむ、ぅ゛ッ、んうぅうッ!!」
一度目の射精は、阿賀松の手の中で達した。舌を噛みそうになったが、その力すら入らなかったらしい。
ボタボタとベッドのシーツの上に落ちるそれに、阿賀松は笑って、俺の唇に噛み付いた。
「っ、ふ……ッ、く、ぅ…………」
酸素もろくに回らない頭の中、俺は、貪るようなそのキスに今度こそ飛びそうになる。それでもすぐに現実に引き戻されたのは、下腹部、阿賀松の性器が先程よりも確実に大きくなってるからだ。
「ぁひ、ぎ、や、もっ、抜……ッんん……ッ」
疲労感でろくに呂律も回らなかった。
ひたすら吸って吐くだけの呼吸を浅く繰り返す、開っぱなしになった口から溢れる唾液を拭うことすら儘ならず、流れるそれを阿賀松は舐め取り、そして笑う。
「まだイケるだろ?」
無理だ。無理。これ以上、阿賀松以外の誰かの前で醜態を晒してしまえば、俺は今度こそ後戻り出来なくなる。
今更なのかもしれないが、それでも、まだ理性はあった。
「や、嫌……ッ無理です……も、無理……ッ!」
「ぶってんじゃねえよ。好きだろお前」
即答。両腕を掴まれ、上半身ごと体を引き寄せられる。瞬間、根本まで入り込んできたそれに背筋に電流が走った。声を上げることも出来なかった。
多量に溢れ出す脂汗。阿賀松は、逃げ腰の俺を掴まれ、そのままゆっくりと腰を引き、それからまた、根本まで一気に奥深く抉られる。
「っ、ひ、ぃぐッ!……い、ぁ、や、嘘ッ、うそ、……ッ」
「ぁあ゛あッ!」視界がチカチカと点滅する。濡れた体内、阿賀松のものを拒もうとしても押し拡げられ、先程の射精による残留物の助けもあり、何度も何度も中を摩擦される。熱い。阿賀松の鼓動が、伝わってくるようだった。
次第に早まるそれに、俺は、いつの間にか自分のそれと重なって聞こえた。
胸の奥、迫り上がってくる得体の知れない何かに脳味噌が蕩けそうだった。目が、目頭が、熱い。ああ、もう、だめだ。そう思ったと同時に、阿賀松は、俺の体の奥、直腸に流し込むように最奥で二度目の射精をする。
流れ込んでくるそれは溶岩のようにすら思えた。
「ひ、っ、は……」
「……ッ」
仁科と目が合った、気がした。
朦朧とした頭の中、自分が何を垂れ流してるのかもわからないままベッドへと落ちる。
阿賀松は浅く息を吐き、そのまま俺から引き抜いた。瞬間、妙な喪失感とともに違和感が残る下腹部から、生暖かい液体が流れる。腰が、体が痛い。
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