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エロ

笹山と付き合ってるけど寝取られてみる※【笹山×原田前提紀平×原田/NTR】

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 人は恋をするとしょうもないことでも幸福感を得られるようになるらしい。
 笹山と付き合うことになってまだ二週間も経たないが、恐らく俺は一生分の幸せを使い果たしてるんじゃないのだろうかと疑いたくなるくらい幸せな毎日を送っていた。



「原田さん、重いですよ」
「んー…笹山暖かい」
「冷たかったらそれはそれで問題じゃないですか……ほら、寝るんでしたらベッド使ったらどうですか」

 笹山の部屋は酷く心地がいい。
 俺の部屋と違って小綺麗にしてあるしいい匂いもするし悲しくなるくらい似た場所はないけど、ここで笹山が生活をしていると思ったらなにもかもが恋しくて、だからだろう。落ち着いて、つい寛ぎすぎてしまうのだ。

 ソファー上。座って雑誌読んでる笹山に凭れ掛かり目を閉じていると優しく肩を叩かれた。
 慌てて頭を振り、「まだ眠くない」と反論してみるが声まで眠気を抜くことができず、ついむにゃむにゃと口籠ってしまう。
 そんな俺の顔を覗き込んだ笹山は呆れたように笑った。

「思いっきり半目じゃないですか。…ほら、俺ももう寝るんで原田さんも……」
「やだ、笹山ともっと話すぅうう……」

 めりめりめりめりと笹山の上半身に抱き着ければ、嫌がる素振りを見せずにただ困ったように笑いながら笹山は「はいはい」と俺を抱きとめる。
 そのまま優しく頭を撫でられれば、胸の奥のほうがぽかぽかしてきて、なんかすごい満たされる。

「んー…笹山の手、きもちい……」

 言いながら、微睡んだ意識の中手探りで笹山の掌に自分の手を重ねれば、髪をといてくれていた指が動きをとめた。

「…笹山?」

 なんでやめるのかと瞼を持ち上げ、そのまま頭上の笹山を見上げる。
 すると、浮かべた笑みを強ばらせた笹山と目があった。

「あんまり、そういう可愛いこと言わないでください。…これでも、我慢してるんですから」

 そう、苦々しそうに呟きながら視線を逸らす笹山の顔は赤い。
 いつも余裕のある笑みを浮かべた笹山の照れ顔に、つい、俺は頬を緩ませた。

「なんで笑うんですか」

「だって、お前…我慢とかさ、我慢なんてしなくてもいいから、別に。ほら、その……付き合ってんだろ?…俺達」
「…原田さん……っ」

 改めて口にするとなんかこう気恥ずかしいな、なんて思いながら照れ隠しに笑い返したとき、がばっと伸びてきた手に思いっきり抱き締められた。

「うわっ、ちょ、重いって、笹山っ」

 驚いて、上半身に回される手を握るが笹山の腕は離れるどころか強くなって。
 見た目によらず力強い腕も、包み込まれるような体温も、甘えるように無言で抱きしめてくる笹山の全てが愛しくて、全て受け止めたいと思う。
 これが俗にいうバカップルだとしても、笹山と一緒ならそれも悪くない。


 * * *


 笹山と付き合いはじめ、やつの部屋に入り浸るようになって、バイトんとき以外でも一緒にいることが多くなった。
 寧ろ、バイトのときが一番一緒にいる時間が少ないかもしれない。
 店の連中には笹山と付き合っていることは言っていない。
 笹山は今すぐにでも公言したい様子だったが、「今はまだ待ってくれ」と頼み込めば「原田さんがそういうなら」と承諾してくれた。
 というわけで、変に悟られないようバイト中はあくまでも今まで通り笹山と接するようにしている。

「じゃあ、また後でな」
「はい」

 店内、スタッフルーム。
 更衣室でエプロンに着替え、その場で別れた俺達はそれぞれの持ち場につく。
 といっても俺はいつも通り便所掃除だけどな!
 笹山と同じシフトだと思うと、無駄にイカくせぇ便器も笑顔で消臭できる。
 モップを掴む手にも力が入り、鼻歌交じりに床のタイルをごしごしと擦っていると、便所の扉が開いた。

「かなたーん、なに、機嫌いいね。今日」

 紀平さんだ。

「えへ、わかりますか?」
「うん、すごいアホみたいな顔してるよ」
「アホ…」

 あまりにも直球すぎる紀平さんの言葉がぐしりと胸に刺さる。
 そんな俺に楽しそうに目を細めた紀平さんは、「冗談。可愛い顔」と茶化すように俺の頭にぽんと手をおいた。
 その手をやんわりと退かしながら、むっとした俺はそのまま紀平さんを見上げる。

「そういうの、やめて下さいよ。俺、カッコいい系目指してるんで」
「かなたんが?無理でしょ」

 即答。
 紀平さんが辛口なのは今に始まったことではないので気にしないようにするがやはり冗談だとわかっていても凹む。
 そんな俺の反応を楽しむように笑う紀平さんをじとりと睨んだ時、

「原田さん?」
「あ、笹山っ」

 開きっぱなしになっていた便所の扉からひょっこりと笹山が顔を出す。
 そして、俺の隣にいた紀平さんに目を向けた笹山は少しだけ驚いたように目を丸くした。

「あ、紀平さん、こんなところいたんですか。店長が探してましたよ」
「そーお?…面倒だなぁ」
「そんな事言わずに、早く行ってあげて下さい」
「はいはいっと」

 乗り気ではないのを隠す気はないようで、つまらなさそうに唇を尖らせた紀平さんは「じゃ、またねーかなたん」とすれ違いざまに俺の頭をぽんと叩き、便所を後にした。

 二人きりになった客用男子便所内。
 紀平さんがいなくなり、先ほどまで浮かべていた笑みがなくなる笹山。

「……笹山?…って、おわっ」

 なんとなく気になって、こそっと覗き込もうとした矢先。抱き着かれる。
 まさかこんなところで抱きしめられるとは思わず、一応入口のところに清掃中ってプレートは出してるけども、誰が来るかもわからないというのに大胆な行動に出る笹山に俺は素直に驚いた。

「ちょっ、どうしたんだよ、いきなり」
「…原田さん補給です」
「なんだよそれ」

 そのままぎゅうっと抱き締めてくる笹山に苦笑しながら頭をなでなでと撫でくりまわしてみれば、どことなくバツが悪そうに顔を赤くした笹山は「すみません」と呟き、俺から腕を離した。
 別に、離さなくてもいいのに。と名残惜しく思ったのだが、店ではあまりベタベタしないようにしようと言い出したのが自分だったことを思い出す。

「…やっぱり、原田さんが俺以外の人と仲良くしてるところを見るのはキツいですね」

 ふと、そっぽ向いた笹山は自嘲的な笑みを浮かべる。
 どうやら、先ほどの紀平さんとのやり取りのせいで笹山は拗ねていたらしい。
 笹山の言葉に、俺は目を丸くした。

「お前、妬いてんのか?」
「駄目ですか?」
「駄目じゃないけど、なんだ。俺だけかと思ってた」

 それにしても、今のやり取りだけで妬くなんてと笹山が可愛く見える反面、つい先日女客に逆ナンされて腸が煮えくり返るような嫉妬していた自分を思い出しなんだか可笑しくて笑ってしまう。

「笑い事じゃないです」
「悪い、…結構嬉しいな」
「原田さん」

 誂われているのがわかったのだろう。
 むうっと唇を尖らせる笹山に俺は「気を付けるって」と笑いながら手を振った。
 こんな笹山の顔を見たのは初めてだからかもしれない。すごく新鮮で嬉しくなる。
 けど、嫉妬の辛さを知っているだけにこれ以上からかうのも酷だろう。

「それより、お前も戻ったほうが良いんじゃないのか」
「…そうですね」

 なんとか気を取り直したようだ。
 先ほどに比べ幾分表情は柔らかくなったが、やはりどこか浮かばなくて。

「笹山、笑顔笑顔」

 そういって頬を軽く引っ張ってみれば、擽ったそうに笹山は笑った。

「本当に、人の気も知らないで…」

 伸びてきた手に前髪を掻き分けられ、自然な動作で額に唇を寄せられた。
 あまりにもナチュラルすぎて一瞬何されたかわからなくて。

「それじゃ、俺も戻るので」
「う、うん」

 かあっと赤くなる顔を俯かせながら、俺は「頑張れよ」と手を振り返した。
 どうしてあいつはこうも当たり前のように涼しい顔してこんなこと出来るのだろうか。
 こっちの身にもなってほしい。
 笹山がいなくなって、再度一人きりになった便所内。
 洗面台の鏡に目を向ければ、真っ赤になった自分の顔がでれでれとだらしないことになっていることに気付いた俺は慌てて口元を引き締めた。
 それですぐに頬は緩む。
 幸せ過ぎで怖い、なんて、柄でもないことを考えてみたり。
 どうやってもにやけてしまうので俺は開き直ってでれでれしながら清掃を再開させた。






 店内通路。

「~♪~♪」

 トイレ掃除を終え、ついでに店内の整理もして、そろそろ腹が減ってきたので笹山を誘って昼食取ろうかなーなんて考えていたとき。
 不意にぽんと肩を叩かれる。
 もしかして、と目を輝かせながら「笹山?」と背後を振り返った時。

「残念、俺俺」
「き…紀平さん、どうしたんですか?」

 少し驚いて、俺は背後に立っていた紀平さんを見上げた。
 人よさそうな笑みを浮かべる紀平さんだけど、さっきの笹山とのことがあるからだろうか。あわてて距離を置こうとするが、背に壁が当たる。
 なんか、追い詰められてるんですが。

「かなたん、今から休憩?」
「え、まあ、はい……そーですけど」
「丁度いいや。じゃ、せっかくだしどっか食べに行こうよ」

 いきなりの誘いに、俺は「え」と目を丸くする。
 紀平さんに誘われるのは、初めてだ。
 普通なら喜ぶべきなのだろうか、どうしても笹山の顔が浮かんでしまう。

「すみません、俺、やめときます」
「なんで?」
「なんでって、別に、あのなんか今日はこう、家庭的な味が食べたいなーって」
「なら、かなたんが好きなところでいいよ。家庭的な味語ってる店ならいくらでもあるっしょ」
「そ……そーですねー」

 なんでだ、なんか、こう、ジリジリと迫ってくる紀平さんに俺は押し潰されそうになってんだ。
 目が笑ってないし、なんか、いつもと雰囲気が違う紀平さんが怖い。

「すみません、俺そろそろ…」
「……俺の相手をするなって」

 口を開いた紀平さんに、「え?」と目を丸くしたとき。
 伸びてきた手に思いっきり腕を掴まれ、そのまま乱暴に壁に押し付けられる。
 音を立て背中が壁にぶつかり、鈍い痛みが走った。

「俺の相手をするなって、透から言われてんの?」

 細められた目が俺を見据える。
 なんでここで笹山の名前が出てくるのかわからなくて、理解したくなくて、「何言ってるんですか」と動揺を悟られないよう必死に笑みを作りながら紀平さんの腕を退かそうとするが、腕を掴む紀平さんの手には力が増すばかりで、集中した痛みに顔面の筋肉は歪む。

「かなたんってばホント演技下手だよねー?可愛い。ホント可愛い。憎たらしいくらい」

 微笑む紀平さんの手が、腰に回される。
 抱き寄せるようにエプロンの紐を解かれそうになり、慌てて俺は紀平さんの胸を強く押した。

「っ、紀平さん…ッ」
「どーしたの?」
「やめてください、ホント」

 服の裾を持ち上げられ、直に背筋を撫で上げられればぞくりと背筋が震える。
「なんで?」と、鼻先を寄せてきた紀平さん。
 キスしそうなくらい近い距離に耐え切れず、俺は顔を逸らした。

「なんでって、だって、こんな」
「いつもヤッてたじゃん」

 セックス、と唇を動かした紀平さんに全身から血の気が引いていく。
 笹山と付き合うことになって、ずっと蓋を閉めるように見ないようにしてきた触れられたくないそこに直接踏み込んできた紀平さんの言葉は胸に深く突き刺さった。
 確かに、笹山と付き合う前まではずるずると流されるように何度も紀平さんに抱き潰されたことがあった。それはどうしようも無い事実だし、今更どうこうすればいいという問題でもない。
 だけど、笹山と一緒になってから、俺は、流されないように断ってきた。
 だから、今回もそうすればいいはずだとわかっているのだけれど、

「最近ヤッてなかったからさ、たまにはいいじゃん。ね?」
「やっ、やめてください……っ」
「どうして?そろそろかなたんもヤリたくて疼き出した頃でしょ?」
「違いますっ」

 ハッキリと、拒絶する。そうすれば、わかってくれる。そう思っていた俺だが、どうならそれは紀平さんには通用しないようで。

 細められた瞳には光がない。
 それどころか、どこか薄暗く澱んでいる紀平さんの目に、俺は、凍り付いた。

「毎日透としてるから?」

 形だけの笑みを浮かべた紀平さんの唇が動く。
 下品で、遠慮ない言葉だが、図星を突かれた俺は取り繕う暇もなく、多分、相当酷い顔になっていたのだろう。
 押し黙っていると、紀平さんは楽しそうに喉を鳴らして笑う。

「あれ、やっぱり二人が付き合ってんのってマジだったんだ。酷いな~、教えてくれたらよかったのにさあ?
 そしたら、透の目の前で犯してやるのに」

 腕を掴む手が離れたと思った瞬間、エプロンの裾ごとTシャツをたくし上げられる。
 誰が来るかもわからない通路で、明かりの下、無理矢理上半身を曝された俺は慌てて紀平さんの手を振り払おうとするけど、力の差は大きくて。
 首筋に顔を埋めてくる紀平さんに首筋を舐められ、凍り付いた。
 肌寒い胸元に伸ばされた手に平らな胸を揉み下され、笹山以外の手の感触に一瞬パニックに陥りそうになった。

「や、やだ、紀平さん…っ」
「それは俺の台詞だよ、かなたん。一人のものになるなんて狡いじゃん」

 ぎゅっと乳首を摘まれ、そのまま力いっぱい引っ張られれば鋭い痛みともに胸の奥がざわつき始める。
 身動ぎ、必死になって首筋に埋められた紀平さんの頭を剥がそうとするが、筋をなぞるように舐められれば力が抜けそうになって。

「っぁ、や…ッ」
「かなたんはさ、皆のものだろ?」
「違いますっ、俺…ッ、俺、もう、笹山以外とこういうことはしませんから…っ!だから…っ、んんぅっ!」

 言い終わる前に引っ張られ、赤く充血した乳首に爪を立てられ、その痛みに頭が真っ白になる。
 腰がずぐずぐと熱を持ち始め、今まで散散嬲られてきた胸の突起は紀平さんの指に反応するみたいにツンと硬くなってくる。

「……ふーん、なるほどなぁ。流石透、よく躾けてんなぁ」
「っや、ぁ…っ、やだ、紀平さん…っ」

 主張するそこを指でコリコリと転がされ、意思とは反して蕩けそうな心地よさに腰が抜けそうになる体。
 嫌なのに、こんなことしちゃいけないって決めてたのに、忘れかけていた沸騰するほどの熱に理性が微睡む。
 噛み合わない体と心のジレンマにぐちゃぐちゃになって泣きそうになったとき、優しく前髪を撫で付けられた。
 陰る視界の中、一瞬いつも撫でてくれる笹山の手と錯覚しかけたが目の前にいる人は笹山ではない。

「もう二度と、そんなこと俺に言えないようにしてあげなくちゃ」

 額に寄せられる唇。
 優しいキスは笹山のものではないと嫌でもわかっているはずなのに、なんでだろうか。
 なんで、俺は笑ってるんだ。


 END
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