【番外編集】アダルトな大人

田原摩耶

文字の大きさ
15 / 28
短めの話

司がデートに誘うようです

しおりを挟む
「原田さん、花火好き?」
「え?あ、うん、まぁ…好き」
「ああ、そう……」

 って、それだけかよ。
 自分から聞いてなんでそんなに興味なさげに答えるんだ。

 無表情のやつに逆にこっちが突っ込みそうになったとき、司は「あのさ」と小さく唇を動かした。

「今夜、花火大会があるらしいんだけど」
「あぁ、なんかお客さんが言ってたな。司も見に行くのか?」
「…いや、俺は」
「だろうな、お前そういうの興味無さそうだし」

 そう、笑い返したとき。
「だからさ、」と伸びてきた手に、肩を掴まれた。
 真正面から顔を覗き込まれるような形になり、内心俺は驚く。

「…一緒に、見ない?」
「え?俺が?」
「…」
「……司と?」
「…」

 無言で頷く司はどこかいつもと様子が違う。
 いつもはどんなことがあっても涼しい顔してるのに、なんか……緊張しているみたいな。
 そこまで気付いて、俺は司の意図を感じ取った俺はつられるように硬直した。

「もっ、もしかして、デートか?」

 声に出して尋ねてみれば、僅かに司の顔がじわじわと赤くなっていく。
 なんだその反応は。はいかいいえかくらい答えろよ。あ、やっぱいい。司がなにか言っても、多分、まともに答えられる自信ない。
 つられて熱くなる顔を抑える。

「…デートに誘ってんだけど……いい?」
「えっ、よ…よくない…!」
「…ダメなのか?」

 こころなしか、司の周囲の空気が暗くなった。
 無表情の中にも表情はあるようで、落ち込む司にはっとした俺は慌てて首を横に振った。

「……よくないわけが、ない…って言いたかったんだ。……ごめん」

 キョドる自分が恥ずかしくて、目を合わせないように俯向けば、目の前の司が一瞬笑ったような気がした。
 慌てて顔を上げた時にはいつもの司がそこにいる。

「……よかった」

 そう安堵の息を吐く司は、本当に嬉しそうで。
 こっちまで嬉しくなると同時にむず痒くなって。

「じゃあ、今日バイト上がったらそのまま行くか」
「いや、一旦帰る。…準備もあるし」
「準備?準備ってなんの準備だ?」
「原田さんも準備、色々あるだろうし」
「……はっ!?お、お前セクハラかよ…!」
「…服のこと言ってんだけど。それは誘ってるってこと?」
「えっ、ふ…ッち、ちげーから!間違えたんだよ!お前が、いつも…っ」
「わかった、ちゃんと準備しとく」
「しなくていい!!」

 おしまい


 ***


 おまけ↓

 店長「いやー遅かったな!場所取りはしておいたぞ!」
 紀平「あ、かなたんそこでリンゴ飴売ってたよー。ほら、これかなたんの分の綿菓子ね。買っておいてあげたから。ちょっと欠けてるけど気にしないでいいから」
 四川「…ったく、人多すぎだっての。どうせならもっと静かなところにしろよ。…ま、俺は多少の人目は気にしねえけどな」
 笹山「さすが人が多いですねー。原田さん、逸れそうになったときはいつでも俺の服、引っ張ってくださいね」
 翔太「カナちゃんなんで僕が用意していたミニスカ浴衣着てないの?!これみよがしにロッカーに入れてたのに!そこは『ばっ、誰がこんなの…っ!』とかいいつつ袖を通して、思いの外体にフィットした衣装に頬を赤めつつも『この浴衣、丈短過ぎないか…?』ってぐいぐい裾引っ張りながら登場するところでしょう!!!」
 司「お前ら全員帰れ」
 原田「司がキレた…!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...