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55※
菖蒲さんが俺には言わなかったこと。
それは俺が知る必要がないか、菖蒲さんが知られたくない部分だ。そんなものを、この男の口から聞く?
そんなの。
そう考えただけで居ても立っても居られず、咄嗟に俺は真夜の口を塞いでいた。
「や、めろ」
「……」
「言うな、……聞きたくない」
ずるりと落ちる手。真夜は俺の手を掴んだままじっとこちらを見つめる。僅かに伏せられたその目は陰る。
「嫌いになりたくないから?」
「……っ、ちがう」
「違う?」
「会長が言いたくないなら、聞かない。興味、ない。お前が何言ったって、俺は信じない」
真夜と菖蒲さんの間で何があったかって、気にならないわけではない。けど、俺には“関係ない”。
菖蒲さんの口から聞きたい。それが叶わなくとも、仕方ないと思ってる。
そう告げれば、真夜の口元から笑みが消える。そして。
「なーんで、あの人なんだろうねえ?」
どさり、と視界が傾く。階段の段差に座らされたまま、上に乗り上げてくる真夜によって膝を掴まれる。
「ま、よる?」
「一途で健気。……本当、可哀想になるくらい」
「なに、待て、真夜……っん、ぅ」
胸を撫でるようにネクタイを引っ張られ、そのまま顔を寄せられる。睫毛がぶつかりそうな至近距離、唇を柔らかく塞がれ、舐められる。
まずい、と真夜の胸を押し、やつを退けようと試みるが、足を開こうとしてくる真夜の手に気を取られて上手く力が入らない。
「ん、ふ、……ッ」
なんでこんなこと。また誰かに見られたら。
嫌な予感がして真夜の腕の中から抜け出そうとするが、真夜のキスはしつこかった。
逃げようとする度に追いかけて、顎を捉えて深く奥まで舌を入れてくる。天井の部分を舌の先で柔らかく撫でられ、下半身が熱くなる。
『Domのキスは愛だよ、愛ちゃん』
いつの日か譫言のように囁かれ脳に刷り込まれた真夜の声が過ぎる。違う、と思いたいのに、反応してしまいそうになる。舌を受け入れることしかできず、舌伝いにとろりと流し込まれる唾液を受け入れざる得ない。
嫌なのに、頸を撫でられると体が反応する。脳を溶かすほどの熱に満たされていく。
「は、……ぁっ、……」
長く執拗なキスの後、俺が抵抗しなくなったのを見てようやく真夜は俺から舌を抜いた。閉じることも忘れ、唇の端からとろりと垂れる涎を真夜は舐め取り、そして微笑む。
「俺のこと、信じないんだっけ? ……ちょっときちゃったわ、それ。かなしーよ、俺」
「愛ちゃんの為なのになあ」何が、俺の為だ。
本当にそうなのか、いや、違う。信じるな。この男の本質は。
「退け」と真夜の下から抜け出そうとするが、真夜は許さない。そのまま膝を掴まれ大きく開脚させられる。それを隠そうとするよりも先に真夜の長い指は俺の股間をそっと撫でる。キスで熱の溜まっていたそこを。
「やめろ、真夜……っ、こんな、ところで……っ」
「あー……はいはい、じゃ《抵抗するな》……ってね」
「……っ」
言葉に反応し、全身に麻痺毒でも流れたみたいに筋力が低下する。ずるりと落ちる指先、足を閉じることもできなくなった俺を前に「ちゃんと大人しくしないから」と真夜はくすくすと笑いながら俺のベルトを緩めていく。
「ま、よる……っ、お前……」
「な、今度はプレイじゃなくて普通のえっちしねえ? 愛ちゃん」
「な、に、言って」
「ほら、怖くなーい。怖くなーい」
「……っざけるな、まよる、やめろ、こんなこと……っ、う……っぁ」
ずる、とスラックスを脱がされそうになり、なけなしの力で履き直そうとするが、指がもつれてる動かない。あっさりと引き抜かれ、下パンツ一枚という間抜けな格好にされた俺は恥ずかしさ以上にこの状況に恐怖を覚えた。
どういうつもりなのか。お前。
少なくとも俺の気持ちくらい分かるやつだと思っていた。だから、あの時何もしなかったのだと。
けれど、結局これか。真夜。
「《俺を見ろ》」
「はー……っ、ぁ、まよる、……頼む……っ、こんな、まね」
「えっち嫌い? 違うだろ?」
大きく開いた下着越し、張り付いた布越しに膨らんだ性器から睾丸、そして肛門までを辿るようになぞられる。その指の動きすらも全神経で追いかけてしまい、息が詰まった。
「――《好き》だろ、ここずぽずぽハメられんの。なあ、愛ちゃん」
くにくにと柔らかく肛門を撫でられる。違う、と言いたいのに、そのままもう片方の手で性器の山を撫でられ頭の奥がじわりと痺れ始めた。
「っ、は、ぁ、」
「腰くねくねしてる。もっと触ってって。……えっろ」
「まよ、……っ、ぅ、やめろ、まよ……っ、んむ」
「《お口はチャック》……なんて、ガキなお前にはピッタリだろ? 愛ちゃん」
「……っ、……っ」
声が、出ない。
そのまま先っぽと竿の境目の凹凸部分をカリカリと指先で優しくくすぐられる。逃げたいのに、逃げ出せない。荒く呼吸を繰り返すことしかできず、必死に快感を逃そうと大きくのけ反った体を真夜に押さえ込まれたまま更に睾丸と肛門の間の部分を柔らかく押され、全身がびくんと跳ねた。
「……っ! ……ッ! ぅ、……ッ」
「大丈夫、この辺りって先生も来ねえから。丁度いいヤリスポにお前がいてびっくりした。……本当淫乱」
「……っ、……っ!」
違う、たまたま来ただけだ。そんなこと、知らない。
頭を何度も横に振り否定するけど、真夜はそれを見てただ薄く笑った。それから、俺の首筋に顔を埋める。ぢう、と首筋を甘く吸い上げながら、真夜は俺の腿、その付け根を撫でる。そして肛門を開くように更に大きく開かせ、下着の下で広がる肛門を指で探るのだ。
「今度レイプされたときサブドロしないよう、今のうちに鍛えとくか。ここ」
「っ、…………――っ!!」
下着越し、ぐり、と僅かに頭を埋めてくる真夜に全身が硬直する。せっかく忘れようとしていた感覚が蘇る。
口を何度も開閉し、『やめろ』と声を絞り出そうとする俺を見て真夜は唇を舐めた。垂れる前髪の下、近づいてくる舌先に滲む汗、唾液を舐め取られていく。
「誰にハメられてもご褒美だって思えるようにな。……それ名案じゃね?」
名案もクソもない。そんなの、ショック療法とかいうレベルではない。
ふざけんな。やめろ。やめてくれ、頼むから。
何度も声を上げるが、言葉になって俺の喉から出ていくことはなかった。ただ真夜を睨むのが精一杯で。
そんな俺の視線を真っ直ぐに受け止めたまま、真夜は子供でも宥めるような優しい手つきで俺の頬を撫でた。そして。
「じゃ、俺のものになる?」
俺には、この男の言葉が理解できなかった。いや、意味はわかった。以前にも言われていたからだ。
けれど、噛み合わない。この男が何故俺にここまで拘るのか。破綻している。
「俺のこと、避けんなよ。会長なんかより俺の方がよっぽどお前のこと可愛がってんだろ?」
「っ、……ふ、ぅ……」
「……愛ちゃん、《こっち見ろ》」
目を逸らすことも許されず、返事も許されない挙句口を塞がれる。
何が目的で、なんでこんなことをするのか。これが本当に俺の為なのか。傷口を広げられ、更に塗り込まれていく甘い毒は俺が思考することすらも許さない。
正常な判断を奪うかのように舌を咥えられ、吸われる。長い舌は蛇のように絡みついては俺の咥内を荒らし回る。
「っ、……ッ、……ぅ……」
ぢゅぷ、ぢゅる、ぐちゅ、と凡そキスとは思えないような水分多量な音を立てながら何度も口の中を蹂躙され続ける。止めなければならないのに、のしかかってくるこいつに潰されながら身動きすら取ることはできなかった。
「は……っん、なあ、会長なんかやめろよ、愛ちゃん。お前がこれ以上無駄に傷ついて凹んでんの、見てて可哀想になってくる。……本当だからな? これ」
「……っ、……」
「……《俺のこと、拒否んな》」
「ま、よる……っ、ぅ、んん……っ」
舌を抜いた真夜は互いの唾液でどろどろになった俺の口内を覗き込み、笑う。そして伸ばした舌の先、垂らされる唾液の塊を見て無意識に俺は口を開き、舌を突き出した。垂れるそれを零さないように、真夜の唾液を受け止める俺を見て真夜は「《いい子》」と笑った。その瞬間、ぞわ、と全身の毛がよだった。不快感にも似た甘いそれは下腹部に集まっていく。
今、俺は何をした。吐き出したいのに、できない。溜まった唾液の塊をそのまま喉奥に流し込み、ただ青ざめる。俺は。違う。こんなの。俺じゃない。
「愛ちゃん、《足》」
「……っ」
短いコマンド。最早なんなのかすら分からないはずなのに、真夜の視線、太腿を撫でる指先に合わせて全身の筋肉が勝手に動き出した。
階段の上、一段高いところに足を引っ掛けたまま下着をずらして自分で肛門を晒す。こんなの、違う。やめろ。止めたいのに、ふーっ、ふーっ、と荒い呼吸を繰り返すことしかできない。じっと真夜を見上げたまま、その言葉を待ってしまう。
そんな俺を見下ろしたまま、真夜はにっこりと笑った。
「よく出来ました」
その声に、言葉に、背骨から脳天まで駆け上がっていく甘い電流に堪らず性器の先からカウパーが滲む。違う。こんなの、違うのに。頭を撫でられるよりもずっと気持ちよくて、怖くなる。なんで、俺は。何をしてるんだ。こんなこと。
「愛ちゃん、お前は間違ってないよ。これがSubの本懐だ」
「ま、よる」
「Domに求められるのがSubの幸福だって教えたろ? なあ、愛ちゃん」
「お前はやっぱり根っからのSubだな」えっちじゃなくてこれじゃプレイだけど、と笑う真夜の声は最早俺には届いていなかった。
それは俺が知る必要がないか、菖蒲さんが知られたくない部分だ。そんなものを、この男の口から聞く?
そんなの。
そう考えただけで居ても立っても居られず、咄嗟に俺は真夜の口を塞いでいた。
「や、めろ」
「……」
「言うな、……聞きたくない」
ずるりと落ちる手。真夜は俺の手を掴んだままじっとこちらを見つめる。僅かに伏せられたその目は陰る。
「嫌いになりたくないから?」
「……っ、ちがう」
「違う?」
「会長が言いたくないなら、聞かない。興味、ない。お前が何言ったって、俺は信じない」
真夜と菖蒲さんの間で何があったかって、気にならないわけではない。けど、俺には“関係ない”。
菖蒲さんの口から聞きたい。それが叶わなくとも、仕方ないと思ってる。
そう告げれば、真夜の口元から笑みが消える。そして。
「なーんで、あの人なんだろうねえ?」
どさり、と視界が傾く。階段の段差に座らされたまま、上に乗り上げてくる真夜によって膝を掴まれる。
「ま、よる?」
「一途で健気。……本当、可哀想になるくらい」
「なに、待て、真夜……っん、ぅ」
胸を撫でるようにネクタイを引っ張られ、そのまま顔を寄せられる。睫毛がぶつかりそうな至近距離、唇を柔らかく塞がれ、舐められる。
まずい、と真夜の胸を押し、やつを退けようと試みるが、足を開こうとしてくる真夜の手に気を取られて上手く力が入らない。
「ん、ふ、……ッ」
なんでこんなこと。また誰かに見られたら。
嫌な予感がして真夜の腕の中から抜け出そうとするが、真夜のキスはしつこかった。
逃げようとする度に追いかけて、顎を捉えて深く奥まで舌を入れてくる。天井の部分を舌の先で柔らかく撫でられ、下半身が熱くなる。
『Domのキスは愛だよ、愛ちゃん』
いつの日か譫言のように囁かれ脳に刷り込まれた真夜の声が過ぎる。違う、と思いたいのに、反応してしまいそうになる。舌を受け入れることしかできず、舌伝いにとろりと流し込まれる唾液を受け入れざる得ない。
嫌なのに、頸を撫でられると体が反応する。脳を溶かすほどの熱に満たされていく。
「は、……ぁっ、……」
長く執拗なキスの後、俺が抵抗しなくなったのを見てようやく真夜は俺から舌を抜いた。閉じることも忘れ、唇の端からとろりと垂れる涎を真夜は舐め取り、そして微笑む。
「俺のこと、信じないんだっけ? ……ちょっときちゃったわ、それ。かなしーよ、俺」
「愛ちゃんの為なのになあ」何が、俺の為だ。
本当にそうなのか、いや、違う。信じるな。この男の本質は。
「退け」と真夜の下から抜け出そうとするが、真夜は許さない。そのまま膝を掴まれ大きく開脚させられる。それを隠そうとするよりも先に真夜の長い指は俺の股間をそっと撫でる。キスで熱の溜まっていたそこを。
「やめろ、真夜……っ、こんな、ところで……っ」
「あー……はいはい、じゃ《抵抗するな》……ってね」
「……っ」
言葉に反応し、全身に麻痺毒でも流れたみたいに筋力が低下する。ずるりと落ちる指先、足を閉じることもできなくなった俺を前に「ちゃんと大人しくしないから」と真夜はくすくすと笑いながら俺のベルトを緩めていく。
「ま、よる……っ、お前……」
「な、今度はプレイじゃなくて普通のえっちしねえ? 愛ちゃん」
「な、に、言って」
「ほら、怖くなーい。怖くなーい」
「……っざけるな、まよる、やめろ、こんなこと……っ、う……っぁ」
ずる、とスラックスを脱がされそうになり、なけなしの力で履き直そうとするが、指がもつれてる動かない。あっさりと引き抜かれ、下パンツ一枚という間抜けな格好にされた俺は恥ずかしさ以上にこの状況に恐怖を覚えた。
どういうつもりなのか。お前。
少なくとも俺の気持ちくらい分かるやつだと思っていた。だから、あの時何もしなかったのだと。
けれど、結局これか。真夜。
「《俺を見ろ》」
「はー……っ、ぁ、まよる、……頼む……っ、こんな、まね」
「えっち嫌い? 違うだろ?」
大きく開いた下着越し、張り付いた布越しに膨らんだ性器から睾丸、そして肛門までを辿るようになぞられる。その指の動きすらも全神経で追いかけてしまい、息が詰まった。
「――《好き》だろ、ここずぽずぽハメられんの。なあ、愛ちゃん」
くにくにと柔らかく肛門を撫でられる。違う、と言いたいのに、そのままもう片方の手で性器の山を撫でられ頭の奥がじわりと痺れ始めた。
「っ、は、ぁ、」
「腰くねくねしてる。もっと触ってって。……えっろ」
「まよ、……っ、ぅ、やめろ、まよ……っ、んむ」
「《お口はチャック》……なんて、ガキなお前にはピッタリだろ? 愛ちゃん」
「……っ、……っ」
声が、出ない。
そのまま先っぽと竿の境目の凹凸部分をカリカリと指先で優しくくすぐられる。逃げたいのに、逃げ出せない。荒く呼吸を繰り返すことしかできず、必死に快感を逃そうと大きくのけ反った体を真夜に押さえ込まれたまま更に睾丸と肛門の間の部分を柔らかく押され、全身がびくんと跳ねた。
「……っ! ……ッ! ぅ、……ッ」
「大丈夫、この辺りって先生も来ねえから。丁度いいヤリスポにお前がいてびっくりした。……本当淫乱」
「……っ、……っ!」
違う、たまたま来ただけだ。そんなこと、知らない。
頭を何度も横に振り否定するけど、真夜はそれを見てただ薄く笑った。それから、俺の首筋に顔を埋める。ぢう、と首筋を甘く吸い上げながら、真夜は俺の腿、その付け根を撫でる。そして肛門を開くように更に大きく開かせ、下着の下で広がる肛門を指で探るのだ。
「今度レイプされたときサブドロしないよう、今のうちに鍛えとくか。ここ」
「っ、…………――っ!!」
下着越し、ぐり、と僅かに頭を埋めてくる真夜に全身が硬直する。せっかく忘れようとしていた感覚が蘇る。
口を何度も開閉し、『やめろ』と声を絞り出そうとする俺を見て真夜は唇を舐めた。垂れる前髪の下、近づいてくる舌先に滲む汗、唾液を舐め取られていく。
「誰にハメられてもご褒美だって思えるようにな。……それ名案じゃね?」
名案もクソもない。そんなの、ショック療法とかいうレベルではない。
ふざけんな。やめろ。やめてくれ、頼むから。
何度も声を上げるが、言葉になって俺の喉から出ていくことはなかった。ただ真夜を睨むのが精一杯で。
そんな俺の視線を真っ直ぐに受け止めたまま、真夜は子供でも宥めるような優しい手つきで俺の頬を撫でた。そして。
「じゃ、俺のものになる?」
俺には、この男の言葉が理解できなかった。いや、意味はわかった。以前にも言われていたからだ。
けれど、噛み合わない。この男が何故俺にここまで拘るのか。破綻している。
「俺のこと、避けんなよ。会長なんかより俺の方がよっぽどお前のこと可愛がってんだろ?」
「っ、……ふ、ぅ……」
「……愛ちゃん、《こっち見ろ》」
目を逸らすことも許されず、返事も許されない挙句口を塞がれる。
何が目的で、なんでこんなことをするのか。これが本当に俺の為なのか。傷口を広げられ、更に塗り込まれていく甘い毒は俺が思考することすらも許さない。
正常な判断を奪うかのように舌を咥えられ、吸われる。長い舌は蛇のように絡みついては俺の咥内を荒らし回る。
「っ、……ッ、……ぅ……」
ぢゅぷ、ぢゅる、ぐちゅ、と凡そキスとは思えないような水分多量な音を立てながら何度も口の中を蹂躙され続ける。止めなければならないのに、のしかかってくるこいつに潰されながら身動きすら取ることはできなかった。
「は……っん、なあ、会長なんかやめろよ、愛ちゃん。お前がこれ以上無駄に傷ついて凹んでんの、見てて可哀想になってくる。……本当だからな? これ」
「……っ、……」
「……《俺のこと、拒否んな》」
「ま、よる……っ、ぅ、んん……っ」
舌を抜いた真夜は互いの唾液でどろどろになった俺の口内を覗き込み、笑う。そして伸ばした舌の先、垂らされる唾液の塊を見て無意識に俺は口を開き、舌を突き出した。垂れるそれを零さないように、真夜の唾液を受け止める俺を見て真夜は「《いい子》」と笑った。その瞬間、ぞわ、と全身の毛がよだった。不快感にも似た甘いそれは下腹部に集まっていく。
今、俺は何をした。吐き出したいのに、できない。溜まった唾液の塊をそのまま喉奥に流し込み、ただ青ざめる。俺は。違う。こんなの。俺じゃない。
「愛ちゃん、《足》」
「……っ」
短いコマンド。最早なんなのかすら分からないはずなのに、真夜の視線、太腿を撫でる指先に合わせて全身の筋肉が勝手に動き出した。
階段の上、一段高いところに足を引っ掛けたまま下着をずらして自分で肛門を晒す。こんなの、違う。やめろ。止めたいのに、ふーっ、ふーっ、と荒い呼吸を繰り返すことしかできない。じっと真夜を見上げたまま、その言葉を待ってしまう。
そんな俺を見下ろしたまま、真夜はにっこりと笑った。
「よく出来ました」
その声に、言葉に、背骨から脳天まで駆け上がっていく甘い電流に堪らず性器の先からカウパーが滲む。違う。こんなの、違うのに。頭を撫でられるよりもずっと気持ちよくて、怖くなる。なんで、俺は。何をしてるんだ。こんなこと。
「愛ちゃん、お前は間違ってないよ。これがSubの本懐だ」
「ま、よる」
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