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2.シャーデンフロイデ
05
涙が涸れたのを確認し、タイミングを見計らって教室へと戻る。
いつも通りでいないと。
……今なら先生は教室にいないはずだ。
そう何度も頭の中で繰り返しつつ、何食わぬ顔で教室へと向かおうとした時。
「――折?」
教室の前、そこにいた慈門君を見て息を呑む。
僕の顔を見ると、すぐにこちらまでやってきた。
何事かと廊下を行き交う生徒たちがこちらを見るが、僕たちだと確認すると遠巻きに見てくる。
「じ、慈門……君……」
「お前、どこ行ってたの。他のやつらに聞いたら授業戻ってこねえとか言うし、鞄もそのままだし……保健室にもいねーしさ」
「……僕のこと、探してくれてたの?」
「そうだよ。スマホごと忘れてるだろ? 連絡つくわけねえもん」
「……」
「……てか、なに。どうしたんだよその顔」
不意に慈門君のトーンが下がる。
そんなに酷い顔になってたのだろうか。咄嗟に俯いたとき、伸びてきた手に顎先を掴まれ、強引に慈門君の方を向かされた。
「……っ、慈門く……」
「目、赤くなってる。……何かあったのか?」
「……」
何もない、と言うには色々あった。
未だ感情の整理が追いついてない中、慈門君に責められると揺さぶられてしまう。
慈門君の掌が頬を撫で、それから目尻へと伸びる。そっと指先で目の縁を撫でられるだけで、じっと慈門君に見つめられるだけで、胸の奥がじんわりと熱くなる。
緊張してる。怖い。先生のことバレたら怒られるだろう。けど、慈門君がこうやって心配してくれてるのが……嬉しい。
「……折?」
「心配かけてごめん。……ちょっと、具合悪くなったから早退しようと思ったんだ。……それだけ」
いつまでも撫でられるわけにはいかない。
そうやんわりと慈門君を押し返そうとすれば、僅かに慈門君の目が細められる。
そして、
「俺も付き合う」
僕の手首をしっかりと掴んだまま、慈門君は口にした。
「……だから、ちょっと待ってろ。鞄、とってきてやるから」
「そこで待ってろよ」と再三繰り返し、僕が頷くと慈門君はそのまま僕の教室へと戻っていく。
それからすぐ、慈門君は僕の元へとやってきた。
その場から一歩も動いていない僕を見て、「よし」と嬉しそうに笑い、それから僕の鞄を手にしたまま空いた手で僕の手を握った。
脳内で、それも他の生徒たちもいる中での慈門君の驚いた。近くの女子がざわめき立っている声も聞こえてきたし、僕も人前でこういうことをするのはあまり得意ではない。けれど、強い手に引っ張られ、確かに安堵を覚えた。
僕は慈門君を振り払えないまま学校を後にする。
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