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3.???
02※【side:純白】
朝日が昇る頃には饗宴も落ち着き、残った人間も疎になっていた。
そして閉じ込めた俺の部屋の奥、部屋の片隅で固まっていた影があった。
『あーらら、可哀想に。藤が虐めるから』
『虐めてない。寧ろ助けてやっただけ』
膝を抱えて、でかい図体を丸めて蹲る。自慰すらしてなかったようだ。予想は外れた。
『天翔』
優しい声をかけ、目線を合わせるように天翔慈門の前に座り込んだ利千鹿はその腕を掴む。
筋肉質な腕。そこは何重もの引っ掻き傷で皮膚が破れ、出血していた。
『我慢、するなって言ったよな』
『……』
『お前、このままじゃそのうち早死にするよ』
『もっと上手くガス抜きしねえとさ』利千鹿は他人事のように笑い、そして天翔の肩をぽんぽんと叩く。
なるほどな、とも思った。利千鹿がやたら目をかけるその理由。もう片方の腕にもびっしりと傷が残っていた。
珍しくもない。昂った感情を発露の仕方が分からず、痛みで相殺させるやつは。
――見てられないくらい、不器用なやつ。
『藤』
こちらを見上げ、利千鹿はちょいちょいと手招きをした。まるで飼い犬を呼ぶかのような仕草は腹が立つが、今に始まったことではない。
『なに』
『抜いてやれよ』
『……』
そしてこれも、今に始まったことではない。
『い、やだ』
俺が反応するよりも先に天翔は叫んだ。
『やめろ』と威嚇するように利千鹿を殴ろうとするやつに、利千鹿は『大丈夫だ』と肩を抱き寄せ、囁きかける。
『お前の大好きな“オリちゃん”だと思えば良い』
『折はこんな汚い性悪じゃない』
『俺だってやだよ、こんなやつ』
『おい、藤』
『嫌だ。断る。絶対やだ』
利千鹿が思いつきで行動することは多々あったし、それに振り回されることもあった。
それでも毎回受け入れられたのは、ちゃんと俺のことを見てくれたからだ。
けれど、これは。
『……俺は、誰かの代わりになるのは嫌だ』
『藤、お前反抗期か?』
『お前の召使じゃない、利千鹿。俺は……っ』
立ち上がった利千鹿がこちらにやってくる。
癇癪起こす子供を宥めるように抱きしめられ、眩暈がした。他の女の香水が混ざった甘ったるい匂い。暖かい、体温。
『藤』
『……っ、……ふざ、け』
るな、と続けるよりも先に顎を掴まれて、唇を塞がれる。見つめられたままキスをされ、舌でも噛んでやりたかったのにあいつは優しく俺の頭を撫でるのだ。
『お前にしか頼めないんだ』
『お前は、自分勝手だ……っ、俺はお前の道具じゃない、利千鹿』
『でもお前は俺のことが好きだろ?』
自惚れるな、とひっ叩いてやりたかった。きっと利千鹿は避けないし受け入れるけど、それを実行に移すことができなかったのは利千鹿に腕を掴まれたからだ。
初めてだった。こんなに利千鹿が恐ろしく見えたのは。
目の前の男が初めて自分に害を為す脅威に見えた。
『お前は俺のこと、好きだもんな? 藤』
『……好き、じゃない。嫌いだ……』
『俺は好きだぞ、藤』
天翔の目の前で先ほど着替えたばかりの服を脱がされる。そんなつもりがなくても、この男は散々俺の好きなところを知っていた。
今までだってずっとこいつの気まぐれに付き合わされていた。
なんだってできた。できると思っていた。
それなのに何故ここまで抵抗してしまうのか自分でも分からなかったからこそ、余計戸惑った。
それもすぐに気づいた。
暴れないようにと腕を縛られ、声も出ないようにと口を塞がれる。
『バックからだと顔見えねーし、お前のオリちゃんっぽいだろ? ほら、天翔。こいつならお前のそのでけーやつ、簡単に入るぞ』
『利千鹿……本気で言ってんのか、お前……』
『やれよ、天翔』
『……っ、……』
テーブルの上にうつ伏せに転がされ、乱暴に腰を持ち上げられる。ただでさえだるい体をあいつの腰の高さまで持ち上げられ、腹の中に残っていたローション諸々で濡れたそこに宛てがわれる亀頭に目眩を覚えた。
どんな巨根だろうが絶倫だろうが、乱暴に抱かれるのだって別に平気だった。
気持ちよけりゃラッキーだった。
けれどそれは相手がお前じゃないとダメだと、俺がいいと選んでくれている前提があったからだ。俺のことをちゃんと見てくれているから、なんだって耐えられた。
それだけで耐えられたのに。こいつは。
硬くて熱い、今にも暴発しそうなほど膨張した性器が腹を割って入ってくる。
口の中の猿轡が邪魔で声を上げることもできなかった。それでも、力加減を知らずに一気に奥まで入ってくるその性器に目を見開く。
本当に、俺でよかったのかもしれない。
腹立つが、利千鹿の言葉は理解できた。下手すりゃ殺される。頭を机に押さえつけられたまま感情をぶつけるように何度も腰を叩きつけられ、何度も腹の中を貫かれる。文字通り使われる。
技巧も快感もクソもない。へたくそが、と叫んでやりたかったがそれは叶わなかった。
瞼裏まで裏返りそうになる視界の向こう、壁にもたれかかってこちらを見ていた利千鹿と目が合った。
助けて、利千鹿。
そう塞がれた喉で叫ぶ。
止めてくれ、利千鹿。
許して、お願いだから。
こちらへと歩いてきた利千鹿はそのまま俺の顔を覗き込み、それから頭を撫でる。涙で濡れる頬に唇を押し当て、あいつは笑った。
泣いている俺と無我夢中になっている天翔を見て。
腹を空かせた犬がようやく餌にありつき、肉にかぶりつく様子を見守るかのような目で――あいつは笑っていた。
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