悪役令息・オブ・ジ・エンド

田原摩耶

文字の大きさ
5 / 55
一巡目

04※首絞め

しおりを挟む
「っ、う、むぐ……っ」

 声を出そうにも、この袋のせいで声がどうしてもくぐもってしまう。
 どうしたらいい、考えろ。落ち着け。そう必死に自分を落ち着かせようとしたときだった。
 どこからか伸びてきた手が腰れ、びくりと体が震えた。

「ふっ……」

 嫌な予感が過ぎったのも次の瞬間、即的中する。
 そのまま腰を撫でていた手は下半身に伸びるのだ。逃げようとするが、片方の手で太腿を掴まれて強引に引きずり戻され、さらに乱暴に下を脱がされそうになって息を飲んだ。
 やめろ、と声をあげても遮断される。もごもごと袋の下でもごつく俺を無視して、暴漢は躊躇なく下着ごと剥ぎ取るのだ。

「……ッ!」

 背筋に冷たいものが走る。
 下着の奥、乱暴に掴まれる下腹部に萎縮しそうになった。

 ――だめだ、そこは。
 アンフェールのために取ってるんだ。
 そう声を上げたいのに、上げられない。

「っ、ふ、ぅ……ッ、く……ッ」

 男相手に好意を持たれることも、執拗に迫られることもあった。
 それでも、こんなに乱暴な真似をしてくるようなやつはいなかった。

 生暖かい吐息が下半身に吹きかかり、まさか、と背筋が凍りつく。
 慌てて足を閉じようとしたそこになにかが挟まってて、阻害される。そして、

「――……ッ!」

 大きく腰を持ち上げられたかと思えば、そのままにゅるりとした濡れた肉のようなものが固く閉じたそこに押し付けられるのだ。
 瞬間、声にならない悲鳴が漏れてしまいそうになった。
 冗談だろ?正気か?
 青ざめ、戸惑う俺のことを無視して、肉厚な舌先はそのままぐりぐりと強引に閉じたそこを突いてくるのだ。

「……っ、ぅく、ひ……ッ」

 最悪だ、と血の気が引く。
 嫌に丹念に肛門を唾液で濡らされ、ぐぷ、ぐぽ、と開かされていくのだ。奥へと流れ込んでくる唾液が気持ち悪い。ぐりぐりと押し付けられる鼻頭の感触も、終始何も言わない癖に荒くなっていく吐息も、なにもかも気持ち悪い。

「ふー……っ、ぅ゛、……っ、く、ひ……ッ」

 濡らされた肛門を指で更に左右に広げられたと思えば、更に奥まで入ってくる舌先。嘘だろ、と青ざめる暇もなく、暴漢は俺の下半身を捉えたまま舌を根本まで強引にねじ込み、ほじくり返してくる。
 絶対に声を出してやるかと思うのに、あまりにも別の生き物のように動くそれが気持ち悪くて喉から声が漏れそうになった。汗が止まらない。気持ち悪いのに、逃げられなくて――まだいっそのこと夢だったら、と何度も考えた。

 ずちゅ、ずりゅ、と汚い音を立てて男の唾液を丹念に塗り込まれた内部から暴漢の舌が引き抜かれる。
 もう終わったのか、とほんの一瞬安堵したのもつかの間、舌で嬲られ、些か柔らかくなった程度のそこに先程とは比にならないほどの質量と熱をもったなにかが押し付けられた。

「――ッ」

 流石にそれがなんなのか嫌でも理解できた。
 そして、嘘だろ、と絶句する俺を前に容赦なくそれはねじ込まれるのだ。

「――ッ、ふ、ぅ゛」

 一瞬、全身が裏返るような錯覚に襲われる。
 痛みを痛みと認識するよりも先に、異物は閉じた口の限界を力づくで突破してくるのだ。

「ぅ゛、ぐ……ッ! う、む゛……ッ!」

 死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。
 なんだこれ、なんで、なんで俺。

 逃げることもできない。体を抱き締められ、更に括約筋を押し広げて入ってくるその熱を帯びたそれは容赦ない。
 
「ん、う゛」

 逃げようとすればするほど麻袋の紐を手綱のように締め上げられ、器官が締まり、頭の奥がぼんやりと熱くなっていく。声をあげることもできない、体重をかけるように更に沈められる性器を受け入れることしかできない。

「ッ、ぅ゛……ッ、ぐ……ひ……ッ!」

 ――殺される。
 防衛本能が警笛を鳴らす。それでも覆いかぶさってくる麻袋の向こうの男はさらに俺の首を締め上げたまま腰を沈めてくるのだ。
 粘膜が傷つき、裂傷を起こしているのだろう。出血のせいでぬめりを帯びた男性器は更にそのまま沈んでいくのだ。

「っ、う゛、……ッ、ぅ、……ぁ゛……ッ」

 細い紐が首を締める度に脳の酸素は薄くなり、痛みは次第に和らいでいく。ぐち、ぬち、と嫌な音を立てながらそのまま俺の中へと入ってくる性器。最早下半身の感覚などなかった。入ってるという異物感だけが確かにあって、次第にそれすらも薄れていく。

「……ッ、ぁ、……ッ」

 ――アンフェール。

 助けてくれ、と声をあげることはとうとう叶わなかった。麻袋で塗り潰された視界の中、どくどくと脈打つその性器が熱を放つのを感じながらそのまま俺の生命はそこで活動停止した。




 そして、ばちんとなにかが弾ける音ともに次に意識を取り戻したとき、俺は中庭にいた。

「……ッ!」

 青空の下、俺は飛び上がり、そして自分の首を押さえた。

「……っ、」

 そこには痛みもなにもない、首輪がハメられているだけだ。いつもと変わらないはずなのに、首を締めるその感触に汗が流れ落ちる。

「リシェス様?」と通りかかった生徒が声をかけてくる。伸びてきた男子特有の骨張った手に“先程”までの行為が蘇り、咄嗟に俺は「触るな!」とそれを振り払った。
 そして驚いたような顔の生徒を残し、俺は寮舎へと走って向かったのだ。

 アンフェールの元へ向かうという用事も忘れ、とにかく誰もいないところへ行きたかった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

処理中です...