悪役令息・オブ・ジ・エンド

田原摩耶

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一巡目

04※首絞め

「っ、う、むぐ……っ」

 声を出そうにも、この袋のせいで声がどうしてもくぐもってしまう。
 どうしたらいい、考えろ。落ち着け。そう必死に自分を落ち着かせようとしたときだった。
 どこからか伸びてきた手が腰れ、びくりと体が震えた。

「ふっ……」

 嫌な予感が過ぎったのも次の瞬間、即的中する。
 そのまま腰を撫でていた手は下半身に伸びるのだ。逃げようとするが、片方の手で太腿を掴まれて強引に引きずり戻され、さらに乱暴に下を脱がされそうになって息を飲んだ。
 やめろ、と声をあげても遮断される。もごもごと袋の下でもごつく俺を無視して、暴漢は躊躇なく下着ごと剥ぎ取るのだ。

「……ッ!」

 背筋に冷たいものが走る。
 下着の奥、乱暴に掴まれる下腹部に萎縮しそうになった。

 ――だめだ、そこは。
 アンフェールのために取ってるんだ。
 そう声を上げたいのに、上げられない。

「っ、ふ、ぅ……ッ、く……ッ」

 男相手に好意を持たれることも、執拗に迫られることもあった。
 それでも、こんなに乱暴な真似をしてくるようなやつはいなかった。

 生暖かい吐息が下半身に吹きかかり、まさか、と背筋が凍りつく。
 慌てて足を閉じようとしたそこになにかが挟まってて、阻害される。そして、

「――……ッ!」

 大きく腰を持ち上げられたかと思えば、そのままにゅるりとした濡れた肉のようなものが固く閉じたそこに押し付けられるのだ。
 瞬間、声にならない悲鳴が漏れてしまいそうになった。
 冗談だろ?正気か?
 青ざめ、戸惑う俺のことを無視して、肉厚な舌先はそのままぐりぐりと強引に閉じたそこを突いてくるのだ。

「……っ、ぅく、ひ……ッ」

 最悪だ、と血の気が引く。
 嫌に丹念に肛門を唾液で濡らされ、ぐぷ、ぐぽ、と開かされていくのだ。奥へと流れ込んでくる唾液が気持ち悪い。ぐりぐりと押し付けられる鼻頭の感触も、終始何も言わない癖に荒くなっていく吐息も、なにもかも気持ち悪い。

「ふー……っ、ぅ゛、……っ、く、ひ……ッ」

 濡らされた肛門を指で更に左右に広げられたと思えば、更に奥まで入ってくる舌先。嘘だろ、と青ざめる暇もなく、暴漢は俺の下半身を捉えたまま舌を根本まで強引にねじ込み、ほじくり返してくる。
 絶対に声を出してやるかと思うのに、あまりにも別の生き物のように動くそれが気持ち悪くて喉から声が漏れそうになった。汗が止まらない。気持ち悪いのに、逃げられなくて――まだいっそのこと夢だったら、と何度も考えた。

 ずちゅ、ずりゅ、と汚い音を立てて男の唾液を丹念に塗り込まれた内部から暴漢の舌が引き抜かれる。
 もう終わったのか、とほんの一瞬安堵したのもつかの間、舌で嬲られ、些か柔らかくなった程度のそこに先程とは比にならないほどの質量と熱をもったなにかが押し付けられた。

「――ッ」

 流石にそれがなんなのか嫌でも理解できた。
 そして、嘘だろ、と絶句する俺を前に容赦なくそれはねじ込まれるのだ。

「――ッ、ふ、ぅ゛」

 一瞬、全身が裏返るような錯覚に襲われる。
 痛みを痛みと認識するよりも先に、異物は閉じた口の限界を力づくで突破してくるのだ。

「ぅ゛、ぐ……ッ! う、む゛……ッ!」

 死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。
 なんだこれ、なんで、なんで俺。

 逃げることもできない。体を抱き締められ、更に括約筋を押し広げて入ってくるその熱を帯びたそれは容赦ない。
 
「ん、う゛」

 逃げようとすればするほど麻袋の紐を手綱のように締め上げられ、器官が締まり、頭の奥がぼんやりと熱くなっていく。声をあげることもできない、体重をかけるように更に沈められる性器を受け入れることしかできない。

「ッ、ぅ゛……ッ、ぐ……ひ……ッ!」

 ――殺される。
 防衛本能が警笛を鳴らす。それでも覆いかぶさってくる麻袋の向こうの男はさらに俺の首を締め上げたまま腰を沈めてくるのだ。
 粘膜が傷つき、裂傷を起こしているのだろう。出血のせいでぬめりを帯びた男性器は更にそのまま沈んでいくのだ。

「っ、う゛、……ッ、ぅ、……ぁ゛……ッ」

 細い紐が首を締める度に脳の酸素は薄くなり、痛みは次第に和らいでいく。ぐち、ぬち、と嫌な音を立てながらそのまま俺の中へと入ってくる性器。最早下半身の感覚などなかった。入ってるという異物感だけが確かにあって、次第にそれすらも薄れていく。

「……ッ、ぁ、……ッ」

 ――アンフェール。

 助けてくれ、と声をあげることはとうとう叶わなかった。麻袋で塗り潰された視界の中、どくどくと脈打つその性器が熱を放つのを感じながらそのまま俺の生命はそこで活動停止した。




 そして、ばちんとなにかが弾ける音ともに次に意識を取り戻したとき、俺は中庭にいた。

「……ッ!」

 青空の下、俺は飛び上がり、そして自分の首を押さえた。

「……っ、」

 そこには痛みもなにもない、首輪がハメられているだけだ。いつもと変わらないはずなのに、首を締めるその感触に汗が流れ落ちる。

「リシェス様?」と通りかかった生徒が声をかけてくる。伸びてきた男子特有の骨張った手に“先程”までの行為が蘇り、咄嗟に俺は「触るな!」とそれを振り払った。
 そして驚いたような顔の生徒を残し、俺は寮舎へと走って向かったのだ。

 アンフェールの元へ向かうという用事も忘れ、とにかく誰もいないところへ行きたかった。
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