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馬鹿ばっか
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何度か状況説明をすることになったお陰で大分慣れてきた。多少冷静になってはいるが、改めて口にする度に『なんで俺がこんなことに巻き込まれてんだよ』という感情しかない。
「……というわけで、お前らに協力してほしいっつーか……知恵を借りたいんだ」
「本当はこんなこと、巻き込みたくないけどな」これは、本音だ。自ら恥を晒してるようで耐え切れないが、肉を断って骨を守ることも大事だと学ばされた。嫌ってほど。
神妙な顔をして聞いていた岡部は口を押さえたまま言葉を失っていた。生徒会と揉めていたところから多少事情は察してくれていた馬喰はただただ深い溜息を吐いていた。
「ほんっと、暇なのか? アイツらはよ」
「白髪。珍しく意見が合うな」
「白髪じゃねえシルバーアッシュだクソ眼鏡!」
「眼鏡じゃない、野辺鴻志だ!!」
「ふ、二人とも落ち着いて下さい、夜中ですよ!」
「「……ッ!」」
岡部の声にハッと黙り込む二人。いい子か。
こいつら水と油そうな性格だが根は真面目……いや野辺は真面目でもいい子でもないだろ。冷静になれ、俺。
「けど、そんな大事になってたんですね……尾張君、休まなくて大丈夫ですか?」
「そこは大丈夫だ。体力には自信があるからな」
「体力の問題ではないですよ」
「…………」
「尾張……」
「眠たいなら寝て来い、子守唄が必要なら歌ってやるが?」
「要らねえよ馬鹿風紀が、空気読めねえのかテメェはよ!」
「心配はいらない。……そん時はちゃんと言うから」
視界の片隅で再び「空気読みの野辺鴻志を知らんのか?!」「その発言がもう読めてねえんだよ!」とポカスカ殴り合ってる野辺と馬喰はさておき。岡部に向き直れば、岡部は「……それならいいんですけど」と控えめに微笑む。
「けど、そこまで大事になってるのなら警察に行った方がいいんじゃないですか?」
「……」
「……」
「……」
あまりにも正論である岡部の言葉にその場にいた全員が全員無言で目配せし合った。
そしてやけに生温い風が部屋の中を通り抜けた時、まず一番に口を開いたのは野辺だ。
「なに腑抜けたこと言ってる、そこの平凡! 貴様はなんも知らんのか?!」
「え、え、僕変なこと言いましたか……?!」
「おい宮藤先生、教えてやれ」
「……って、そこで俺にパスが来んのかよ」
「えーと、そうだな。まあ簡単に言えば警察に言ったところで書類だけ書かされてそのまま帰されるのがオチ……ってところだな」教師に言わせんなよ、という顔のまま宮藤はばつが悪そうに数本目のタバコを咥える。
「早い話昔からうちの学園は警察とはズブズブで、そんで現生徒会には能義もいる。アイツんちはまあ、地元に縁深~~いご家庭だから全部揉み消すだろうよ。逆にあいつの家に目付けられたくねえなら学校内で完結させた方が賢いな」
「そういうことだ、分かったか? 国家権力の犬に媚び諂い尻尾を振るよりも自分の手で罰し落とし前をつけさせる! 私刑こそ正義と言うわけだ!!」
「そ、そうでしたか……」
確かに今回は岩片も関わってるとなると、警察頼りにしたところで無駄なのは一目瞭然である。なんなら俺もその目でアイツの悪行諸々が帳消しにされ本人がのうのうと暮らしてるのを見てきた。なんなら俺ものうのうとさせてもらっていた立場でもある。
能義の性格からして前回のようにプライドを叩き壊してやって家にも泣きつけないくらい追い込んだ方が効果的だろう。野辺の偏りすぎた意見には賛同はしたくないが。
学校の外のことを考え出したらキリがない。切り抜けるためには今だけやり過ごせばいいが、だからと言って今後ヤツらから逃げ切ることができるのか?逆に敵に回したことによって更に面倒なことにならないか?
俺たちは黙り込み、そして全員黙り込む。
「……生徒会の皆さんを頼るのは危険。会長と書記ならもしかしたら、ですけど……」
ちら、と岡部がこちらを見た。
「尾張君は……頼りたくないんですよね?」
「危険な橋には変わりないからな、安全が保証されてない今近付きたくねえな」
「ですよね」
「でもそれって尾張が捕まんなきゃいいんだよな? アイツら一人ずつボコしてとっ捕まえていきゃ確実じゃね?」
「お前は……簡単に言うな」
「説得して『はい分かりました』って連中じゃねえだろ、あいつら」
まあ確かに。それはそうだが。
確かに俺も考えなかったわけではないが、馬喰が味方だったら可能性は少し高くなるのか。
「ま、待ってください。暴力で解決することの方が禍根が残るんじゃないんですか? ここは一回話し合ってみるのもありじゃないですか?」
「貴様先ほどから口を開けば生温いことばかり言いやがって!! 空気を読め空気を!!」
「ひいっ!! お、尾張君……っ!」
「落ち着けって野辺。……けど岡部。俺も考えたけど、今回ばかりは俺も野辺と同意見だ。あいつらに日本語が通じるとは思えないんだよ。そりゃ、多少の恨み辛みを被る覚悟ぐらいはできてるよ、俺」
「……尾張君」
「大丈夫だ、俺はそこまでメンタル弱くねえよ」
「ハッ! よく言う、さっきまで泣きじゃくってたくせに」
「泣いてはねえよ」
お前に同意したのになんで野辺のヘイト買ってんだよ俺。いやもうこいつはこういう生き物ということで放っておこう。
けど、岡部はというとまだ何か考えてるようだ。顎に手を当てたまま何かぶつぶつ言ってる。ああ、なんだろうか。今まで脳筋か下半身と脳味噌一体型のやつとしか対話してこなかったから人と話してる気がして安心する。
……マサミちゃんは別か。
「……というわけで、お前らに協力してほしいっつーか……知恵を借りたいんだ」
「本当はこんなこと、巻き込みたくないけどな」これは、本音だ。自ら恥を晒してるようで耐え切れないが、肉を断って骨を守ることも大事だと学ばされた。嫌ってほど。
神妙な顔をして聞いていた岡部は口を押さえたまま言葉を失っていた。生徒会と揉めていたところから多少事情は察してくれていた馬喰はただただ深い溜息を吐いていた。
「ほんっと、暇なのか? アイツらはよ」
「白髪。珍しく意見が合うな」
「白髪じゃねえシルバーアッシュだクソ眼鏡!」
「眼鏡じゃない、野辺鴻志だ!!」
「ふ、二人とも落ち着いて下さい、夜中ですよ!」
「「……ッ!」」
岡部の声にハッと黙り込む二人。いい子か。
こいつら水と油そうな性格だが根は真面目……いや野辺は真面目でもいい子でもないだろ。冷静になれ、俺。
「けど、そんな大事になってたんですね……尾張君、休まなくて大丈夫ですか?」
「そこは大丈夫だ。体力には自信があるからな」
「体力の問題ではないですよ」
「…………」
「尾張……」
「眠たいなら寝て来い、子守唄が必要なら歌ってやるが?」
「要らねえよ馬鹿風紀が、空気読めねえのかテメェはよ!」
「心配はいらない。……そん時はちゃんと言うから」
視界の片隅で再び「空気読みの野辺鴻志を知らんのか?!」「その発言がもう読めてねえんだよ!」とポカスカ殴り合ってる野辺と馬喰はさておき。岡部に向き直れば、岡部は「……それならいいんですけど」と控えめに微笑む。
「けど、そこまで大事になってるのなら警察に行った方がいいんじゃないですか?」
「……」
「……」
「……」
あまりにも正論である岡部の言葉にその場にいた全員が全員無言で目配せし合った。
そしてやけに生温い風が部屋の中を通り抜けた時、まず一番に口を開いたのは野辺だ。
「なに腑抜けたこと言ってる、そこの平凡! 貴様はなんも知らんのか?!」
「え、え、僕変なこと言いましたか……?!」
「おい宮藤先生、教えてやれ」
「……って、そこで俺にパスが来んのかよ」
「えーと、そうだな。まあ簡単に言えば警察に言ったところで書類だけ書かされてそのまま帰されるのがオチ……ってところだな」教師に言わせんなよ、という顔のまま宮藤はばつが悪そうに数本目のタバコを咥える。
「早い話昔からうちの学園は警察とはズブズブで、そんで現生徒会には能義もいる。アイツんちはまあ、地元に縁深~~いご家庭だから全部揉み消すだろうよ。逆にあいつの家に目付けられたくねえなら学校内で完結させた方が賢いな」
「そういうことだ、分かったか? 国家権力の犬に媚び諂い尻尾を振るよりも自分の手で罰し落とし前をつけさせる! 私刑こそ正義と言うわけだ!!」
「そ、そうでしたか……」
確かに今回は岩片も関わってるとなると、警察頼りにしたところで無駄なのは一目瞭然である。なんなら俺もその目でアイツの悪行諸々が帳消しにされ本人がのうのうと暮らしてるのを見てきた。なんなら俺ものうのうとさせてもらっていた立場でもある。
能義の性格からして前回のようにプライドを叩き壊してやって家にも泣きつけないくらい追い込んだ方が効果的だろう。野辺の偏りすぎた意見には賛同はしたくないが。
学校の外のことを考え出したらキリがない。切り抜けるためには今だけやり過ごせばいいが、だからと言って今後ヤツらから逃げ切ることができるのか?逆に敵に回したことによって更に面倒なことにならないか?
俺たちは黙り込み、そして全員黙り込む。
「……生徒会の皆さんを頼るのは危険。会長と書記ならもしかしたら、ですけど……」
ちら、と岡部がこちらを見た。
「尾張君は……頼りたくないんですよね?」
「危険な橋には変わりないからな、安全が保証されてない今近付きたくねえな」
「ですよね」
「でもそれって尾張が捕まんなきゃいいんだよな? アイツら一人ずつボコしてとっ捕まえていきゃ確実じゃね?」
「お前は……簡単に言うな」
「説得して『はい分かりました』って連中じゃねえだろ、あいつら」
まあ確かに。それはそうだが。
確かに俺も考えなかったわけではないが、馬喰が味方だったら可能性は少し高くなるのか。
「ま、待ってください。暴力で解決することの方が禍根が残るんじゃないんですか? ここは一回話し合ってみるのもありじゃないですか?」
「貴様先ほどから口を開けば生温いことばかり言いやがって!! 空気を読め空気を!!」
「ひいっ!! お、尾張君……っ!」
「落ち着けって野辺。……けど岡部。俺も考えたけど、今回ばかりは俺も野辺と同意見だ。あいつらに日本語が通じるとは思えないんだよ。そりゃ、多少の恨み辛みを被る覚悟ぐらいはできてるよ、俺」
「……尾張君」
「大丈夫だ、俺はそこまでメンタル弱くねえよ」
「ハッ! よく言う、さっきまで泣きじゃくってたくせに」
「泣いてはねえよ」
お前に同意したのになんで野辺のヘイト買ってんだよ俺。いやもうこいつはこういう生き物ということで放っておこう。
けど、岡部はというとまだ何か考えてるようだ。顎に手を当てたまま何かぶつぶつ言ってる。ああ、なんだろうか。今まで脳筋か下半身と脳味噌一体型のやつとしか対話してこなかったから人と話してる気がして安心する。
……マサミちゃんは別か。
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