馬鹿ばっか

田原摩耶

文字の大きさ
90 / 135
馬鹿ばっか

11

しおりを挟む
 何度か状況説明をすることになったお陰で大分慣れてきた。多少冷静になってはいるが、改めて口にする度に『なんで俺がこんなことに巻き込まれてんだよ』という感情しかない。

「……というわけで、お前らに協力してほしいっつーか……知恵を借りたいんだ」

「本当はこんなこと、巻き込みたくないけどな」これは、本音だ。自ら恥を晒してるようで耐え切れないが、肉を断って骨を守ることも大事だと学ばされた。嫌ってほど。

 神妙な顔をして聞いていた岡部は口を押さえたまま言葉を失っていた。生徒会と揉めていたところから多少事情は察してくれていた馬喰はただただ深い溜息を吐いていた。

「ほんっと、暇なのか? アイツらはよ」
「白髪。珍しく意見が合うな」
「白髪じゃねえシルバーアッシュだクソ眼鏡!」
「眼鏡じゃない、野辺鴻志だ!!」

「ふ、二人とも落ち着いて下さい、夜中ですよ!」

「「……ッ!」」

 岡部の声にハッと黙り込む二人。いい子か。
 こいつら水と油そうな性格だが根は真面目……いや野辺は真面目でもいい子でもないだろ。冷静になれ、俺。

「けど、そんな大事になってたんですね……尾張君、休まなくて大丈夫ですか?」
「そこは大丈夫だ。体力には自信があるからな」
「体力の問題ではないですよ」
「…………」
「尾張……」
「眠たいなら寝て来い、子守唄が必要なら歌ってやるが?」
「要らねえよ馬鹿風紀が、空気読めねえのかテメェはよ!」

「心配はいらない。……そん時はちゃんと言うから」

 視界の片隅で再び「空気読みの野辺鴻志を知らんのか?!」「その発言がもう読めてねえんだよ!」とポカスカ殴り合ってる野辺と馬喰はさておき。岡部に向き直れば、岡部は「……それならいいんですけど」と控えめに微笑む。

「けど、そこまで大事になってるのなら警察に行った方がいいんじゃないですか?」
「……」
「……」
「……」

 あまりにも正論である岡部の言葉にその場にいた全員が全員無言で目配せし合った。
 そしてやけに生温い風が部屋の中を通り抜けた時、まず一番に口を開いたのは野辺だ。

「なに腑抜けたこと言ってる、そこの平凡! 貴様はなんも知らんのか?!」
「え、え、僕変なこと言いましたか……?!」
「おい宮藤先生、教えてやれ」
「……って、そこで俺にパスが来んのかよ」

「えーと、そうだな。まあ簡単に言えば警察に言ったところで書類だけ書かされてそのまま帰されるのがオチ……ってところだな」教師に言わせんなよ、という顔のまま宮藤はばつが悪そうに数本目のタバコを咥える。

「早い話昔からうちの学園は警察とはズブズブで、そんで現生徒会には能義もいる。アイツんちはまあ、地元に縁深~~いご家庭だから全部揉み消すだろうよ。逆にあいつの家に目付けられたくねえなら学校内で完結させた方が賢いな」
「そういうことだ、分かったか? 国家権力の犬に媚び諂い尻尾を振るよりも自分の手で罰し落とし前をつけさせる! 私刑こそ正義と言うわけだ!!」
「そ、そうでしたか……」

 確かに今回は岩片も関わってるとなると、警察頼りにしたところで無駄なのは一目瞭然である。なんなら俺もその目でアイツの悪行諸々が帳消しにされ本人がのうのうと暮らしてるのを見てきた。なんなら俺ものうのうとさせてもらっていた立場でもある。

 能義の性格からして前回のようにプライドを叩き壊してやって家にも泣きつけないくらい追い込んだ方が効果的だろう。野辺の偏りすぎた意見には賛同はしたくないが。

 学校の外のことを考え出したらキリがない。切り抜けるためには今だけやり過ごせばいいが、だからと言って今後ヤツらから逃げ切ることができるのか?逆に敵に回したことによって更に面倒なことにならないか?

 俺たちは黙り込み、そして全員黙り込む。

「……生徒会の皆さんを頼るのは危険。会長と書記ならもしかしたら、ですけど……」

 ちら、と岡部がこちらを見た。

「尾張君は……頼りたくないんですよね?」
「危険な橋には変わりないからな、安全が保証されてない今近付きたくねえな」
「ですよね」
「でもそれって尾張が捕まんなきゃいいんだよな? アイツら一人ずつボコしてとっ捕まえていきゃ確実じゃね?」
「お前は……簡単に言うな」
「説得して『はい分かりました』って連中じゃねえだろ、あいつら」

 まあ確かに。それはそうだが。
 確かに俺も考えなかったわけではないが、馬喰が味方だったら可能性は少し高くなるのか。

「ま、待ってください。暴力で解決することの方が禍根が残るんじゃないんですか? ここは一回話し合ってみるのもありじゃないですか?」
「貴様先ほどから口を開けば生温いことばかり言いやがって!! 空気を読め空気を!!」
「ひいっ!! お、尾張君……っ!」
「落ち着けって野辺。……けど岡部。俺も考えたけど、今回ばかりは俺も野辺と同意見だ。あいつらに日本語が通じるとは思えないんだよ。そりゃ、多少の恨み辛みを被る覚悟ぐらいはできてるよ、俺」
「……尾張君」
「大丈夫だ、俺はそこまでメンタル弱くねえよ」
「ハッ! よく言う、さっきまで泣きじゃくってたくせに」
「泣いてはねえよ」

 お前に同意したのになんで野辺のヘイト買ってんだよ俺。いやもうこいつはこういう生き物ということで放っておこう。

 けど、岡部はというとまだ何か考えてるようだ。顎に手を当てたまま何かぶつぶつ言ってる。ああ、なんだろうか。今まで脳筋か下半身と脳味噌一体型のやつとしか対話してこなかったから人と話してる気がして安心する。
 ……マサミちゃんは別か。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

その告白は勘違いです

雨宮里玖
BL
高校三年生の七沢は成績が悪く卒業の危機に直面している。そのため、成績トップの有馬に勉強を教えてもらおうと試みる。 友人の助けで有馬とふたりきりで話す機会を得たのはいいが、勉強を教えてもらうために有馬に話しかけたのに、なぜか有馬のことが好きだから近づいてきたように有馬に勘違いされてしまう。 最初、冷たかったはずの有馬は、ふたりで過ごすうちに態度が変わっていく。 そして、七沢に 「俺も、お前のこと好きになったかもしれない」 と、とんでもないことを言い出して——。 勘違いから始まる、じれきゅん青春BLラブストーリー! 七沢莉紬(17) 受け。 明るく元気、馴れ馴れしいタイプ。いろいろとふざけがち。成績が悪く卒業が危ぶまれている。 有馬真(17) 攻め。 優等生、学級委員長。クールで落ち着いている。

処理中です...