ヒーロー志望でしたが、手違いで三食宿付きヴィラン派遣会社に永久就職(?)することになりました。

田原摩耶

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CASE.10『ヘッドハントヒーロー』

08



 某飲み屋の四階、個室が並ぶその内の一つの扉にて。

「おー、善家さんだー」
「善家、こっちこっち」

「真咲さん、千金君……今日は招待していただきありがとうございます」

「はは、真面目だな~。そんな硬くならなくても俺たちはただ善家さんと仲良くなりたかっただけなんで、ほら、座ってください」

「ここ、ここ」と自分と千金君の間の座席をぽんぽんと叩く真咲さん。既に二人とも大分呑まれているらしい。俺に続いて個室に顔を出した四葉さんは部屋の中の酒の匂いに「酒臭」とぼそりと吐き出す。
 ……それには概ね同意ではある。

「ちょっと……二人とも、飲み過ぎなんじゃ……」
「四葉、チェイサーくれ~」
「あのね、僕は君たちのママでもなんでもないんだからね」
「あ、俺、水注ぎますよ」
「いーのいーの、主役は君なんだから。ね、善家さん」
「ま、真咲さん……」

 既に四葉さんのフラストレーションが溜まっているのを肌で感じつつ、とにかく二人を大人しくさせた方が四葉さんのためになるだろうと判断する。

 それにしても見るからに酒が入って変色してる千金君はともかく、真咲さんは全く顔に出てない。

「善家さんは甘口? 辛口?」
「あ……俺はあまり強くないので軽いやつで……」
「りょーかい、飯は先食ってきたんだっけ?」
「そうだよ」
「二人で?」
「……当たり前でしょ」
「「へ~~~」」
「…………この酔っ払いどもが……」
「し、四葉さん……! ぐ、グラスが……!」

 ニヤニヤと笑う二人に青筋を浮かべる四葉。その手の中でみし、と亀裂が走るグラスに慌てて止めれば、四葉は「大丈夫、大丈夫だよ」と微笑む。
 ちっともグラスの方は大丈夫ではないが。

「でも分かるわー、なんか。真赤の好きそうなタイプだしなー、善家さんって」
「え? な、なんの話ですか?」
「こいつから聞きましたよ。真赤と会ったって。あいつ、前々から手グセ悪いって有名だったけど大体男も女も善家さんタイプなんですよね。ほんと、趣味分かりやすすぎってか」
「俺みたいなタイプ……ですか?」
「そうそう、逆に美人にはグイグイこられても興味ないってか……あ、待った。今俺失礼なこと言った?」
「……真咲君、牛乳」
「ああ、サンキュ。……いや、善家さんはどっちかっていうと真面目そうな感じじゃないですか? 優等生風の」

 なんのフォローをされているのか。
「まーさーき、お前もうアウト。交代しろ交代」と千金君にヤジられ、酔いが多少冷めてきたらしい。「すみません、善家さん」と項垂れる真咲さんの肩をそっと撫でる。

「あの、気にしないでください。俺も自分でも不思議だったので。真赤さんのあの感じ……多分、お世辞だと思いますけど」
「ぜ、善家さん……やさし」
「いいって善家。桃瀬に優しくしなくても」
「んだよ、それ。てかお前こそ名前で呼ばせんのおかしいだろ、公私混同やめろ」
「してねーよ。俺は誰にでもこのスタンスなの」

 真咲さんが元気になったと思ったら今度は人を挟んで言い合う真咲さんと千金君。
 ……仲良いんだな、この二人。
 どうしたものかと向かい側の席に腰を下ろす四葉さんに助けを求めれば、諦めたような顔をして首を横に振る。

『相手にしなくていいよ、いつものことだから』

 そう言いたげな顔をする四葉さんに、なるほど、と苦笑した。

 それから暫くぐだぐだする二人に両脇から質問責めに合う。
 その度にグラスに注がれたお酒を飲まされ、つい賑やかな二人に釣られてどんどんと酒が進んでしまいそうになり――なんとか四葉がくれるチェイサー代わりの牛乳で理性を取り戻した。

 危ない危ない。
 ここ最近酒の場での失敗を思い出し、なんとか自制しつつ三人の話や他のヒーローたちの話を聞きながらもその場をやり過ごしていたとき。

 再び個室の扉が開いた。

 そして、

「……お前ら、通路まで声が聞こえていたが」

 現れた黒髪の男の人――もとい万年青は俺を挟んでぐったりとしてる二人をゴミを見る目で見下ろしていた。

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