ヒーロー志望でしたが、手違いで三食宿付きヴィラン派遣会社に永久就職(?)することになりました。

田原摩耶

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CASE.10『ヘッドハントヒーロー』

20※

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「は、ん、……っ、ふ……」

 少しだけのつもりだったのに、一度触れ合ったサディークの唇は離れるどころかさらに深くなっていく。
 探るような、擽ったい舌先の動きは次第に大胆になっていき、もっと、と強請るように舌の表面を擦り合わせるように蠢く舌先にただひたすら翻弄される。

 深い。というか、ねちっこい。
 滲む唾液が溢れようがサディークは気にもせず、それどころかより興奮したように舌先を吸われ、より一層濡れた音は大きく響いた。
 会話がなくなった代わりに静まり返ったそこには二人分の吐息と水音だけになる。

 確かにキスだけとは言ったが、こんなにいやらしいキスをされるとは思わなかった。
 呼吸が浅くなり、限界に達した俺は咄嗟にサディークの肩を掴んだ。
 そこでようやくサディークは舌を離した。垂れる唾液ごと舌先で舐め取られ、「どうした?」と不安そうな興奮混じりの目で見つめてくるサディーク。

「……も、いいですか?」
「まだ。……もうちょい」

 そう言うなり再び唇を舐めてくるサディーク。
 今度はそのまま唇を甘く吸われ、思わず目を瞑った。

「ん、……っ、んむ……」

 俺が呼吸しやすいように今度は手加減してくれているようだ。優しく触れるようなキスだが、それでも性的なものを孕んでいることにはかわりない。
 長いキスに段々頭の中もふわふわしてきた。
 痺れる思考の中、全身の熱はしっかりと下腹部へと集まっていく。

「は、……っん、も……ん、っ、これ、いじょ……は……」

 自分でも勃起していることが分かるくらい下着の中が熱くなっている。
 この後真咲さんのところに戻らなければならないのに。
 そう止めようとしたが、腰に回されたサディークの手に腰を抱き寄せられる。瞬間、ごり、と腹部に当たる硬い感触にぎょっとする。

 ――サディークさんも、勃起してる。

 ドクドクと流れる鼓動が大きくなる。布越し、屹立したそこが擦れるだけで甘い感覚が腰に広がる。思わず声が漏れそうになるのを咄嗟に飲み込んだが、遅い。

 ただ当たってるだけだと思ったが、わざとだと気づいた。伸びた前髪の下、興奮したように瞳孔が開いたサディークの顔を見て息を呑む。
 熱い吐息。「良平」と掠れた声で呼ばれると思考がどろりと溶かされる。

 よくない、これは。絶対に。
 ここはサディークを止めなければ。今後の任務のためにも。

「……っ、ぁ、あの、これ以上は……流石に、戻れなくなりますので……ん……っ!」

 言い終わるよりも先に、腰から胸へと伸びてきた手はそのまま手袋越し、浮かび上がっていた突起を優しく撫でる。
 すり、と優しく撫でるだけの刺激なのに久しぶりのせいか、キスのお陰で昂った神経は甘く疼き始めるのだ。

「だ、だめです……も……」
「……もうちょい、嫌?」
「い、嫌とかではなくて……ま、真咲さんに怪しまれてしまうかもしれませんし……っ、ん、あ、あの……っ」

「……でも、良平も硬くなってるじゃん」

 膝の頭で膨らんだ股間を柔らかく押し上げられ、咄嗟に逃げようと腰を動かしたところを更に追い討ちをかけられる。隠そうにもこじ開けられた腿では閉じることも許されない。それどころか、そのまま軽く潰されそうになって腰が揺れた。

 先走りがぬめり出し、濡れたそこが性器に張り付くのを感じて慌てて俺はサディークの腕を掴む。

「も、これ以上は駄目です……! こ、こんなところで……」
「……なんで?」
「子供達が使う場所ですし、それに、外に真咲さんを待たせてますし……っ、ん……っ! は、だ、だめです……っ」
「良平は……したくない? ……俺と」

 ここまで強く拒絶されるとは思っていなかったらしい。
 叱られた犬のようにしゅん、と項垂れるサディーク。
 こんなの、ずるいではないか。
 みるみるうちに萎れていくサディークを見ていると何故か俺の方が罪悪感を覚えた。
 俺だってサディークさんには会いたかったし、サディークさんの好意はありがたいと思っている。けども、今は……。

「こ、ここでない場所でなら……」

 そう恐る恐る口にしたとき、サディークさんはぱっと顔を上げる。普段から死んだようなその目に、確かにその時だけは生気が満ちていた。
 それから、僅かに頬を赤くしたサディークさんは「分かった」と渋々俺から離れた。

 ――これは、やってしまったかもしれない。
 そもそもここではない場所ってどこなのだ。敵陣営ではあるというのに、一応。
 しかしこれもサディークさんに頑張ってもらうためだ。
 そう自分に言い聞かせつつ、不完全燃焼のまま必死にムラつきを抑えたあと俺たちは外で待つ真咲の元へ戻ることになった。

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