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CASE.10『ヘッドハントヒーロー』
53※
流石に何かがおかしい。
妬いたって、だってそれは前提として真咲さんが俺のことを。
「……っふ、ぅ……っ」
軽い触れ合いだったキスは段々と深くなっていく。
舌に唇をくすぐられ、割り込んできた薄い舌先に咥内を舐られればあっという間に溺れそうになる。
神経が集まってるところ、弱いところがバレてるみたいに執拗に舌先でくすぐられるだけであっという間に腰から力が抜けそうになって、蹌踉めいたところを抱き込むように真咲さんに支えられた。
「ま、さきさ……ん、む……!」
奥で縮まっていた舌を引き摺り出すように絡め取られたと思えば、今度は先っぽを軽く吸い上げられる。リップ音とともに離れる唇。真咲さんは濡れた唇を舐め取り、じっと俺を覗き込む。
ただ俺はそんな彼の顔を見つめ返すことしかできなかった。口を閉じるのを忘れ、舌をしまうことも忘れてただじっと。
「なんれ、なんれ俺……真咲さんとキス……してるんれふか……?」
「さあなんでですかね。聞いてみますか? 善家さんの体に」
囁かれる度に鼓膜が擽ったい。
真咲の指先が胸の中心からゆっくりと降りていく。その指の感触を全神経、視線までも追いかけそうになってしまった。
そこでハッとする。
四葉さんがもしあの時俺のことを襲った犯人だとして、覚えてないというのも引っかかった。
「あ、の……俺が眠ってる間、何があったんですか……? 四葉さんが覚えてないというのも……」
それも気になります、と真咲さんの胸にしがみついたとき、真咲さんは目を開く。それは驚いたような、そんな表情だった。
「俺よりも、あいつのことが気になるって?」
「あ、ええと……その、四葉さんの調子が悪そうなのももしかして関係してるのかと……」
「……」
「真咲さん?」
「んー……はは、なるほどね?」
真咲さんは口元を押さえ、小さく笑う。なんとなくその時見せた笑顔が見たことのないもので引っかかったが、それも束の間。腰を撫でていた真咲さんの掌が尻へ触れる。パンツの上から尻の割れ目を撫でるように食い込む指先に思わず「うひゃ」と声をあげれば、真咲さんはそのまま逃げそうになる俺の体を抱きしめた。
包み込まれるような体温、そして鼻腔を擽るのは甘く優しい香り。花の香りだろうか。
「ぁ、あの、真咲さん……っ」
「ダメですよ、善家さん。……こういう時はその気がなくても調子いいこと言わないと」
「え、あ、あの……っん、……っ」
「じゃないと、……本気でヤバい相手なら何するか分かんないでしょ」
真咲の言葉はまるで他人事のような響きすらある。
それでいて、真咲の指は腿の間から尻の割れ目、睾丸の下を這うようにしてどんどんと潜り込んできては俺の下半身を撫でる。
この触れ方には覚えがあった。違う。これ、何かがおかしい気がする。なんだろう。
「ん、……っは、ま、真咲さん……っ」
「善家さん、こっち見てください」
「ぁ、や……っ」
「なんでやなの?」
「こ、怖いです……真咲さん……っ、ど、どうしてこんな……っ」
「こんなって、何がですか?」
震え、逃げようとする腰を更に抱き寄せられれば下半身同士がくっついた。今のキスだけで反応しかけていたそこの存在は真咲にもバレてしまっているだろう。腰を引こうにも、真咲さんは寧ろ自分に擦り付けさせるように俺の下半身を捉えた。
「ぁ、あっ、あの……っ」
「……善家さん、こっち見て」
「っう、ぅう……っ」
嫌な予感がして顎を引こうとしたのと束の間、片方の手で顎を持ち上げられる。鮮やかな真咲の目は俺のことをじっと見下ろしていた。その目には見覚えがあった。
縁取られた睫毛の奥、ゆっくりとその瞳孔が広がっていく。瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。
まるで見えない手に胸の奥まで弄られ、心臓ごと鷲掴みにされるような衝撃。それに射抜かれ、大きくのけ反ったまま俺は真咲の目に釘付けになる。
「ぁ、ま、さきさ」
「……俺も、あいつみたいに愛してくださいよ。善家さん」
撫でるように唇同士が触れ合う。
「大丈夫ですよ。……あいつは気付いてませんので、善家さんとのことも」
重なり合った唇へと直接言葉を吹き込むように囁かれる。
「俺にも秘密をください、善家さん」
視界全てがピンク色の光で溢れる。まるで幸福を具現化したような煌びやかな泡に包まれ、口を開こうとした口の中から体の中に入り込んでは炭酸のように弾けて肉体に内側から浸透していく。
苦しさはない。寧ろ恐ろしいほどの心地よさと快感の中、頭の中が真咲で大きく塗り替えられそうになる。
――この感覚には、覚えがあった。
初めて恋を自覚した時のあの恥ずかしさと心地よさ、幸福と罪悪、何もかもが混ざったようなあの感覚。
俺があの人に感じたものだった。
これが、真咲の力なのだろうか。
頭の中、思考までも甘い幸福でひたひたに浸され尽くすほんの寸前、俺は暫く会えてない仮面の黒い青年のことを思い出していた。
瞬間、忘れかけていた熱が込み上げてくる。
ナハトさん、俺……俺、たまにはナハトさんに褒めてもらえるような男になりたいです……!
「い、いけません! 真咲さん……!」
唇と唇が触れ合いそうになる寸前、あれほど鈍かった手足を無理やり動かして俺は咄嗟に真咲の顔を抑えた。
真咲は俺の声に驚いたように目を丸くした。それから、「へえ」とおかしそうに笑う。
「……なんだ、善家さんってマーキング済みだったんですね」
おどけたような、いつもと変わりのない軽薄な口調。それでも残念そうに肩を竦めた真咲は俺の手首をそっと取り、そしてそのまま俺の掌に唇を寄せた。
「わ、ぁ……っ!」
「……四葉、じゃないな。……ここの人間? ……ああもしかして地下にいたんですか? 恋人。元々囚われてたんですよね」
「え……っ!」
「それとも片思い?」
「ど、どうして……」
分かるんですか、と言いかけて慌てて口を閉じる。
真咲は俺の頭の丸みを確かめるように後ろ髪を撫で付け、そのままぐっと抱き寄せた。耳朶に柔らかい唇が触れる。
「俺のこっちの力が使えないから」
絶句した。
なぜ俺にそんなことをするのかが分からなったし、もしかかってたらどうなっていたのかと考えると恐ろしくもなる。というか、こっちということは他にもあるのか。
もしかしてそれは既に発動しているのか。
全身から血の気が引いていく。
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