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CASE.10『ヘッドハントヒーロー』
56
それから、何度か抜いた後もなんだか不完全燃焼のまま俺は真咲さんのこと、そして四葉さんのことを考えていた。
四葉さんの調子が悪そうなのって、もしかしたら俺のせいでもあるのだろうか。
幻覚で覚えてないと真咲さんは言っていたが、一体どんな幻覚を見てたらあんなことになるのか。
とか、そんなことを考えてはベッドの上で二転三転し、そのまま床へと落ちそうになる。
「……はあ」
皆気さくないい人たちだし、確かに仲良くなれている感じはあったのに――明確な壁を感じる。
そりゃ俺は部外者であり客人のような扱いなのだからそれも当然なのだが、真咲さんのことといい改めて彼らのことを何も知らないのだと思い知らされるようだった。
真咲さんのことは一先ず置いておこう。考えたら脳が茹だりそうだし。
……取り敢えず、サディークさんからの連絡を待とうか。
そう連絡用端末を手にしたとき。丁度サディークさんからメッセージが届いた。
『今から会えるか?話したいことが色々ある』
そんな簡素な一文に、俺は慌てて『はい』と返事をしようとして、そこで今は部屋で大人しくしろと言われていることを思い出した。
『すみません、部屋から出るなと言われてて』
『一人?通話はいける?』
『それなら大丈夫です』
サディークさんの様子からなんとなく切羽詰まったものを感じつつ、俺は返事を送った。
それからすぐサディークさんから通話がかかってきた。
一応スピーカーではなく俺にだけ聞こえるように設定する。
「サディークさん、おはようございます」
『ああ、はよ……部屋から出られないってのは?』
「えと、昨夜色々ありまして……今は護衛の方々が手一杯らしく、一人の時は部屋を出るなと言われているんです」
『そういうこと。……面倒臭えな』
サディークさんの舌打ちが聞こえきた。
どうやら焦っているらしい。
「あの、どうでしたか?」
『どっから説明したものか……良平、お前昨日の夜は?』
「その件についてですが、サディークさんと連絡を撮った後眠らされてしまって……実は何が起きたのかも知らなくて……」
『なんで眠らされていたのかについては聞かない方が良さそうだな』
「へ、へへ……」
『……取り敢えずお前の言ってた例の職員とは接触した。……あいつ、やばいよ』
「え、そ、そうなんですか……?!」
『そう。良平が狙った通りだ。掘れば掘るほどゴロゴロ出てきたし強迫の材料は困らないだろうけど……いくつか気になることもあってな』
「気になること……ですか?」
『……ところで良平、アンタのところの部屋ってヒーローの連中が勝手に出入りできるんだっけ?』
「あ……は、はい。数名鍵を持ってる方はいて……」
『念の為扉塞いで、こっから先はまじで人に聞かれると面倒な内容になるからな』
「わ、分かりました……!」
確かに少し毛色が違う人だと思ったが、そんなにまずい人だったのか。
慌てて立ち上がった俺は「ちょっと待っててください」とサディークさんに声をかけ、一旦デバイスを置いて慌てて扉の施錠にかかる。
――とはいえ、鍵を持ってる彼らに対抗するには物理的な方法しか思いつかない。取り敢えずベッドを動かして扉を塞いだあと、俺はサディークさんと繋がったままのデバイスを手に取った。
「ふう……すみませんお待たせしました」
『なんかすげー地割れみたいな音してたけど……』
「大丈夫です、少しは時間稼ぎはできると思います……!」
『そ、それならいいけど……それじゃ、取り敢えず俺があの男と接触したときの話するからな』
「はい! よろしくお願いします……っ!」
椅子代わりのベッドがなくなってしまったため、慌てて床の上に正座する。
サディークさんの説明はあくまでも淡々としていた。
道に迷ったフリして苦林に接触し、お礼の代わりに握手をする。
その数秒の接触だけで情報を引き抜くことは通常できるらしい。
そして実際、苦林の記憶を掘り返した。
途中色々なノイズのような記憶があったらしいが、その一時の接触だけでも分かったことは多かった。
『苦林騙――あいつは元々俺ら側の人間だった』
「そ、それって……」
『この協会は捕縛したヴィランを施設で強制的に更生させ、職員として働かせているんだって』
「え……!」
『勿論全員が全員じゃないが、あいつのように別人としてここで暮らしている元ヴィランも多いらしい』
『もっと調べようと思ったけど、あいつの記憶領域には明らかにロックかかった場所があった。……多分それ、この施設の人間がやったんだろうな。そこに多分、この男がヴィラン時代のときの記憶やこの協会の秘密が隠されてるんだろうけど……』サディーク曰く、その施錠は鍵をかけた本人しか開くことができないらしい。
そして苦林自身もヴィラン時代の記憶は思い出せない状態にあるというのがサディークの意見だった。
「そ、それは……じゃあ、苦林さんは過去を忘れて何も知らずにここにいるってことですか?」
『いや、どちらかというと弱味握られて脅されている状態に近いかな。本人はこの協会に不満はあるが、逆らうことは諦めて連中の言いなりになっているみたいだ。……肝心な部分はやっぱり記憶を弄られてるみたいだけど』
「そんな……」
と、そこまで考えて初めて苦林と会った時を思い出す。あれは協会の人間への当てつけのつもりだったのだろうか。それともストレス発散か。
どちらにせよ、安生さんの見立ては当たっているようだ。
すっかりここにも慣れてきて絆されかけていたところ、冷や水をかけられたような気分になる。
けれど、苦林さんが元ヴィランの方と聞いて不思議としっくりきた。だってあの人笑い方が悪かったし。
四葉さんの調子が悪そうなのって、もしかしたら俺のせいでもあるのだろうか。
幻覚で覚えてないと真咲さんは言っていたが、一体どんな幻覚を見てたらあんなことになるのか。
とか、そんなことを考えてはベッドの上で二転三転し、そのまま床へと落ちそうになる。
「……はあ」
皆気さくないい人たちだし、確かに仲良くなれている感じはあったのに――明確な壁を感じる。
そりゃ俺は部外者であり客人のような扱いなのだからそれも当然なのだが、真咲さんのことといい改めて彼らのことを何も知らないのだと思い知らされるようだった。
真咲さんのことは一先ず置いておこう。考えたら脳が茹だりそうだし。
……取り敢えず、サディークさんからの連絡を待とうか。
そう連絡用端末を手にしたとき。丁度サディークさんからメッセージが届いた。
『今から会えるか?話したいことが色々ある』
そんな簡素な一文に、俺は慌てて『はい』と返事をしようとして、そこで今は部屋で大人しくしろと言われていることを思い出した。
『すみません、部屋から出るなと言われてて』
『一人?通話はいける?』
『それなら大丈夫です』
サディークさんの様子からなんとなく切羽詰まったものを感じつつ、俺は返事を送った。
それからすぐサディークさんから通話がかかってきた。
一応スピーカーではなく俺にだけ聞こえるように設定する。
「サディークさん、おはようございます」
『ああ、はよ……部屋から出られないってのは?』
「えと、昨夜色々ありまして……今は護衛の方々が手一杯らしく、一人の時は部屋を出るなと言われているんです」
『そういうこと。……面倒臭えな』
サディークさんの舌打ちが聞こえきた。
どうやら焦っているらしい。
「あの、どうでしたか?」
『どっから説明したものか……良平、お前昨日の夜は?』
「その件についてですが、サディークさんと連絡を撮った後眠らされてしまって……実は何が起きたのかも知らなくて……」
『なんで眠らされていたのかについては聞かない方が良さそうだな』
「へ、へへ……」
『……取り敢えずお前の言ってた例の職員とは接触した。……あいつ、やばいよ』
「え、そ、そうなんですか……?!」
『そう。良平が狙った通りだ。掘れば掘るほどゴロゴロ出てきたし強迫の材料は困らないだろうけど……いくつか気になることもあってな』
「気になること……ですか?」
『……ところで良平、アンタのところの部屋ってヒーローの連中が勝手に出入りできるんだっけ?』
「あ……は、はい。数名鍵を持ってる方はいて……」
『念の為扉塞いで、こっから先はまじで人に聞かれると面倒な内容になるからな』
「わ、分かりました……!」
確かに少し毛色が違う人だと思ったが、そんなにまずい人だったのか。
慌てて立ち上がった俺は「ちょっと待っててください」とサディークさんに声をかけ、一旦デバイスを置いて慌てて扉の施錠にかかる。
――とはいえ、鍵を持ってる彼らに対抗するには物理的な方法しか思いつかない。取り敢えずベッドを動かして扉を塞いだあと、俺はサディークさんと繋がったままのデバイスを手に取った。
「ふう……すみませんお待たせしました」
『なんかすげー地割れみたいな音してたけど……』
「大丈夫です、少しは時間稼ぎはできると思います……!」
『そ、それならいいけど……それじゃ、取り敢えず俺があの男と接触したときの話するからな』
「はい! よろしくお願いします……っ!」
椅子代わりのベッドがなくなってしまったため、慌てて床の上に正座する。
サディークさんの説明はあくまでも淡々としていた。
道に迷ったフリして苦林に接触し、お礼の代わりに握手をする。
その数秒の接触だけで情報を引き抜くことは通常できるらしい。
そして実際、苦林の記憶を掘り返した。
途中色々なノイズのような記憶があったらしいが、その一時の接触だけでも分かったことは多かった。
『苦林騙――あいつは元々俺ら側の人間だった』
「そ、それって……」
『この協会は捕縛したヴィランを施設で強制的に更生させ、職員として働かせているんだって』
「え……!」
『勿論全員が全員じゃないが、あいつのように別人としてここで暮らしている元ヴィランも多いらしい』
『もっと調べようと思ったけど、あいつの記憶領域には明らかにロックかかった場所があった。……多分それ、この施設の人間がやったんだろうな。そこに多分、この男がヴィラン時代のときの記憶やこの協会の秘密が隠されてるんだろうけど……』サディーク曰く、その施錠は鍵をかけた本人しか開くことができないらしい。
そして苦林自身もヴィラン時代の記憶は思い出せない状態にあるというのがサディークの意見だった。
「そ、それは……じゃあ、苦林さんは過去を忘れて何も知らずにここにいるってことですか?」
『いや、どちらかというと弱味握られて脅されている状態に近いかな。本人はこの協会に不満はあるが、逆らうことは諦めて連中の言いなりになっているみたいだ。……肝心な部分はやっぱり記憶を弄られてるみたいだけど』
「そんな……」
と、そこまで考えて初めて苦林と会った時を思い出す。あれは協会の人間への当てつけのつもりだったのだろうか。それともストレス発散か。
どちらにせよ、安生さんの見立ては当たっているようだ。
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