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真欺君は普通じゃない
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しおりを挟む俺には、何もなかった。
物心ついたときには周りには当たり前だったものもなかった。
家族も、記憶も、なにもなかった。
それでもそれが当たり前だと思ってたし、天涯孤独というわけでもない。
施設に引き取られていた俺を一人の男が引き取ってくれたのだ。
名前は、鮮花。
一見人形と見間違えそうなほど整った顔立ちをした男だ。
男と出会った時のことは、あまり覚えてない。
どういう経緯で鮮花さんが俺を引き取ることにしたのか気にならなかったわけではない。
引き取られて暫くした時、鮮花さんに思い切って聞いたことがあった。そのとき鮮花さんは「興味が沸いたから」と言っていた。
鮮花さんは変な人だった。
ふらっと出ていったと思えば、いつの間にかに俺の背後にいることも多々ある。
家の中はたくさんの花や植物に囲まれていて、それをよく手入れしてる。
その中でも一際可愛がってる花があった。小ぶりな花だ。その花弁は薄く、透き通ってすら見える。触れては砕けてしまいそうなガラス細工にも思えた。
「珍しい花ですね」
「ああ、今はな」
「今は?」
「この先どんな色になるかも分からない。でっぷりとした実をつけるかもしれないし、鮮やかな花になるかもしれん。……楽しみだと思わないか?」
こちらを見て笑う鮮花さん。
俺はそのとき鮮花さんの言葉が理解できなかった。
だって、咲いてしまった花はこれ以上変化するわけがないのに。
「後はもう枯れるだけですよ」
「相変わらず可愛げがないガキだな。こういうのは夢を持つべきだ」
「鮮花さんって、結構ロマンチストなんですね」
「……あながち間違いではないがな」
鮮花さんの家の中の花たちは枯れたり増えたり減ったり、季節と共に変化していく。
目まぐるしく、たおやかに。
それでもただ一輪、あの小ぶりの透明の花だけは置いていかれたようにそこに存在し続けていた。
それは俺が鮮花さんの家に養子として引き取られてから数年経った今でも変わらない。
まるで俺みたいだな。
なんて思いながら今日もだらしなく眠ってる家の主人のため、朝食を用意する。
俺もあの花も同じだ。
ここにしか居場所がない。
【真欺君は普通じゃない】
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