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第2章 遥か遠い 故郷
幕間2-1 嘆けども 敗北は覆らず 其の1
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20XX/12/15 2108
続々とアマテラスへと帰還するスサノヲ達。その顔には疲労以上に苦悩が滲む。誰もが、僅か数分前に起こった出来事を整理出来ない。混乱する者、犠牲となった仲間に無言の追悼を捧げる者など様々だが、誰もが一様に無言を貫く中、静寂を破り一人の男が怒号を発した。
「上に伝えといてくれ、準備ができたら俺だけでも地上へ戻る!!」
声を荒げるのはイヅナ、スサノヲを統括する現総代。良く鍛えられた起伏のあるガッチリとした体格、精粋な顔立ちをした男は他の誰よりも目立つ。そんな男は、他の面々と同じく顔に疲労を滲ませるが、そんなものは行動しない理由にはならないとばかりに猛っている。
データによれば現在30歳。スサノヲの第2部隊隊長だが暫定で第1部隊隊長を兼任、更に合計12の部隊を統括する総代まで兼任しているという。かつて第1部隊隊長兼総代に就いていたスクナが幽閉されたことによる急な人事異動だそうだが、不測の事態を差し引いたとしても齢30にして代理を任される程の逸材、相当な修羅場を潜っている筈――なのに、今の彼は殊更に冷静さを欠いている。
「無茶はやめてよ!!あの娘が何故あんな行動をとったのか……分からないけど、でもあなたの責任じゃあない。今、戻っても……とにかく落ち着いて!!」
仲間を一人置いてきた。そうせざるを得なかった事に対する憤りだろうか。それ以外に理由があるかは不明だが、ともかく仲間の一人が彼の無謀を止めに入ると、後に続けとばかりに数人の仲間が彼の傍に集まり、なんとか落ち着かせようと言葉を掛け始めた。
正気を失っていると思われる程に憤り、そのまま強引に地球へ向かいかねない雰囲気を出していたイヅナだったが、仲間達の説得を聞き入れ、少しだけ冷静さを取り戻した。
が、今度はスマンと項垂れ、椅子に座ると動かなくなってしまった。そんな彼の様子が余りにも弱々しかったからか、今度は他の仲間達が呆然と床を眺める彼を慰め始めた。少なくとも彼を囲む多くの仲間達は新たな隊長としての責務を十分に果たした彼の功績を認めているようだ。
誰からも非難の声は上がらなかった事がそれを証明している。人望も申し分ない様子が窺える。
「誰も彼も異常な事態に対応するだけで精いっぱいだった、何よりお前は俺達の為に特に彼方此方手を回してくれた」
「犠牲を出した事は間違いない。だが誰もお前を責められない。地球が特殊な状況ならばそれを教える筈だって思い込みがあった。事前に教えられた状況が全てだと……」
「神が健在の時とは違う。頭ではわかっていた。だが対応出来なかったのはお前も俺達も同じだった。もし責めるならこの状況を知ってて教えなかった上の連中だ!!」
「あぁ、だが……クソッなんで俺は……」
後悔と慰めが飛び交うが、何もかもがもう遅い。戦いの火蓋は切って落とされ、初戦は惨敗という悲惨な結果に終わった。幾多の死線を潜り抜けた仲間を数名失い、そして一人を見捨てた事実を覆す事はもうできない。零れた水を元に戻す事は、誰にも出来ないのだから。
多くの仲間達に慰められたイヅナは徐々に落ち着きを取り戻すと、今度は後悔と入れ替わる様に混乱と不信に支配されていった。状況を冷静に判断できるようになった他の仲間達も同じく、先ほどまでの戦闘を思い返す。
「それも重要だが、アレは一体なんなんだ!!なんで俺達と全く同じ性能の防壁を持っているんだ!!クソッ、せめて武器……それだけでも真面だったら……」
「それもだが、濃度もだ。一体どうなってるんだ?転移直後の濃度は確かに通常よりも低かったが問題ない範囲だった。それなのに、どうしてか突然下がりやがったんだ!!安定供給する恒星が近くにあるのに……どうしてあんな事が起きるんだよッ」
「認めよう、迂闊だったと。だけど、知っていたところでヤツ等の使うあの兵器に対抗できたかは疑問だ。それに濃度……!!まさかアイツら……そうか!!間違いない、濃度だ!!地球の何かが原因でカグツチの濃度が低くなると知っていたんだ!!だからこの後で確実に出張るクズリュウが勝つ為に俺達を使って情報を集めたかったんだ、だから市内のど真ん中に転移させたんだアイツ等はッ!!」
誰もが口々に非難するのは上、つまりスサノヲ達を管理する新部隊と、ソレを組織したアラハバキなる政治組織。現状への憤りと自らの上に立つ者への不信感で溢れる。そんな中、イヅナだけは無言で取得したデータを見直していた。
「宇宙人ってのはどいつもこいつも野蛮で人の話聞かねーのかァ?」
地球で彼らと敵対した勢力、その一人の言葉を何度も何度も聞き直した彼は、やがて何かに気付いた。今も混乱が支配しているであろうボロボロの精神状態でよく気付いたものだと感心する。やはり、スサノヲは侮る事が出来ない。
「クソッ、やはり上の奴ら、何かを隠してる……頼む、ルミナ、無事でいてくれ」
彼等には同情するし、同時に此処まで冷遇されながらも最善を尽くす姿勢には敬意を払いたい。だが、彼等は敵だ。そして、地球は彼等の事情を知ろうが知るまいが手心を加える事は出来ない。賽は投げられた。それは地球も同じなのだから。もう、止まる事は出来ない。
「俺は今から奴等に直談判してくるッ、止めるなよ?」
息巻くイヅナ。映像を見れば、イヅナが何処かへと向かおうとする光景と、そんな行動を無謀だとばかりに引き止め制止する周囲の仲間達という構図になっていた。イヅナはそれでも仲間達を振り切り勇み足で部屋から出ようとするが、そんな男を足止めするかの様なタイミングで室内全域に警報が鳴り響いた。
続々とアマテラスへと帰還するスサノヲ達。その顔には疲労以上に苦悩が滲む。誰もが、僅か数分前に起こった出来事を整理出来ない。混乱する者、犠牲となった仲間に無言の追悼を捧げる者など様々だが、誰もが一様に無言を貫く中、静寂を破り一人の男が怒号を発した。
「上に伝えといてくれ、準備ができたら俺だけでも地上へ戻る!!」
声を荒げるのはイヅナ、スサノヲを統括する現総代。良く鍛えられた起伏のあるガッチリとした体格、精粋な顔立ちをした男は他の誰よりも目立つ。そんな男は、他の面々と同じく顔に疲労を滲ませるが、そんなものは行動しない理由にはならないとばかりに猛っている。
データによれば現在30歳。スサノヲの第2部隊隊長だが暫定で第1部隊隊長を兼任、更に合計12の部隊を統括する総代まで兼任しているという。かつて第1部隊隊長兼総代に就いていたスクナが幽閉されたことによる急な人事異動だそうだが、不測の事態を差し引いたとしても齢30にして代理を任される程の逸材、相当な修羅場を潜っている筈――なのに、今の彼は殊更に冷静さを欠いている。
「無茶はやめてよ!!あの娘が何故あんな行動をとったのか……分からないけど、でもあなたの責任じゃあない。今、戻っても……とにかく落ち着いて!!」
仲間を一人置いてきた。そうせざるを得なかった事に対する憤りだろうか。それ以外に理由があるかは不明だが、ともかく仲間の一人が彼の無謀を止めに入ると、後に続けとばかりに数人の仲間が彼の傍に集まり、なんとか落ち着かせようと言葉を掛け始めた。
正気を失っていると思われる程に憤り、そのまま強引に地球へ向かいかねない雰囲気を出していたイヅナだったが、仲間達の説得を聞き入れ、少しだけ冷静さを取り戻した。
が、今度はスマンと項垂れ、椅子に座ると動かなくなってしまった。そんな彼の様子が余りにも弱々しかったからか、今度は他の仲間達が呆然と床を眺める彼を慰め始めた。少なくとも彼を囲む多くの仲間達は新たな隊長としての責務を十分に果たした彼の功績を認めているようだ。
誰からも非難の声は上がらなかった事がそれを証明している。人望も申し分ない様子が窺える。
「誰も彼も異常な事態に対応するだけで精いっぱいだった、何よりお前は俺達の為に特に彼方此方手を回してくれた」
「犠牲を出した事は間違いない。だが誰もお前を責められない。地球が特殊な状況ならばそれを教える筈だって思い込みがあった。事前に教えられた状況が全てだと……」
「神が健在の時とは違う。頭ではわかっていた。だが対応出来なかったのはお前も俺達も同じだった。もし責めるならこの状況を知ってて教えなかった上の連中だ!!」
「あぁ、だが……クソッなんで俺は……」
後悔と慰めが飛び交うが、何もかもがもう遅い。戦いの火蓋は切って落とされ、初戦は惨敗という悲惨な結果に終わった。幾多の死線を潜り抜けた仲間を数名失い、そして一人を見捨てた事実を覆す事はもうできない。零れた水を元に戻す事は、誰にも出来ないのだから。
多くの仲間達に慰められたイヅナは徐々に落ち着きを取り戻すと、今度は後悔と入れ替わる様に混乱と不信に支配されていった。状況を冷静に判断できるようになった他の仲間達も同じく、先ほどまでの戦闘を思い返す。
「それも重要だが、アレは一体なんなんだ!!なんで俺達と全く同じ性能の防壁を持っているんだ!!クソッ、せめて武器……それだけでも真面だったら……」
「それもだが、濃度もだ。一体どうなってるんだ?転移直後の濃度は確かに通常よりも低かったが問題ない範囲だった。それなのに、どうしてか突然下がりやがったんだ!!安定供給する恒星が近くにあるのに……どうしてあんな事が起きるんだよッ」
「認めよう、迂闊だったと。だけど、知っていたところでヤツ等の使うあの兵器に対抗できたかは疑問だ。それに濃度……!!まさかアイツら……そうか!!間違いない、濃度だ!!地球の何かが原因でカグツチの濃度が低くなると知っていたんだ!!だからこの後で確実に出張るクズリュウが勝つ為に俺達を使って情報を集めたかったんだ、だから市内のど真ん中に転移させたんだアイツ等はッ!!」
誰もが口々に非難するのは上、つまりスサノヲ達を管理する新部隊と、ソレを組織したアラハバキなる政治組織。現状への憤りと自らの上に立つ者への不信感で溢れる。そんな中、イヅナだけは無言で取得したデータを見直していた。
「宇宙人ってのはどいつもこいつも野蛮で人の話聞かねーのかァ?」
地球で彼らと敵対した勢力、その一人の言葉を何度も何度も聞き直した彼は、やがて何かに気付いた。今も混乱が支配しているであろうボロボロの精神状態でよく気付いたものだと感心する。やはり、スサノヲは侮る事が出来ない。
「クソッ、やはり上の奴ら、何かを隠してる……頼む、ルミナ、無事でいてくれ」
彼等には同情するし、同時に此処まで冷遇されながらも最善を尽くす姿勢には敬意を払いたい。だが、彼等は敵だ。そして、地球は彼等の事情を知ろうが知るまいが手心を加える事は出来ない。賽は投げられた。それは地球も同じなのだから。もう、止まる事は出来ない。
「俺は今から奴等に直談判してくるッ、止めるなよ?」
息巻くイヅナ。映像を見れば、イヅナが何処かへと向かおうとする光景と、そんな行動を無謀だとばかりに引き止め制止する周囲の仲間達という構図になっていた。イヅナはそれでも仲間達を振り切り勇み足で部屋から出ようとするが、そんな男を足止めするかの様なタイミングで室内全域に警報が鳴り響いた。
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