G.o.D 神魔戦役篇

風見星治

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第7章 世界崩壊の日

幕間16-7 世界崩壊の日 ~ 開戦 其の7

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 旗艦へと侵入する白川水希達を見送った残りの現人偽神アラヒトガミ達はツクヨミを死守する為、本社の守りを固める。各々が携帯を操作すると同時、本社周辺から青白い光の柱が立ち、各々の周囲に集まると既知の動物、空想上の幻獣、既に絶滅した恐竜などなど様々な形状へと姿を変え、本社の周囲に陣取った。

 彼等の使命は時間稼ぎ。旗艦に侵入した精鋭が各所を占拠する間、地上に降下したクズリュウを迎え撃つ役割を担う。与えられた役目を全うする為、それぞれが本社の周囲に散開する。

 しかし、戦力はこれだけではない。もう暫くもすればこの戦いの切り札、ホムラへの適性が地球で最も高い――言い換えるならば地球最強の男、清雅源蔵が戦場に降り立つ。彼と彼が操るマジンを倒すのはスサノヲとて容易ではない。問題ない。これまでを見れば、全ては順調に進む。その筈だ。

 ※※※

 戦線の維持に最も重要な要素は補給線。だが、地球における補給線と旗艦側の補給線、兵站へいたんは全く違う。転移による空間跳躍が可能な旗艦アマテラスにおいて、補給線などを含めた兵站へいたんとはその転移用の門一つのみを指す。その死守こそが戦線の維持と拡大に繋がる。

 戦闘に必要な物資の輸送は技術の発展で解決された。特に武器は設計図ともいうべき小型のプレートのみとなり、起動させる事で現地で武器を組み上げるか、もしくはその場に転送する。

 行軍に際し所持する物は小さなプレートを収めた小型のバックパックと防御兵装ヤサカニノマガタマのみ。武器以外の全ては転移により距離を無視する事が可能。つまり、人員もそれ以外の必要物資全ての輸送手段も施設諸々も全て戦闘地域付近へ直接転移すれば解決する。よって、わざわざ運搬する必要など全くなく、何かあれば転移で中継地点まで戻れば良い。

 帰還も同じく、敵陣に深く切り込もうが転移により一瞬で撤退が可能。全てを逐一戦場に運ぶ必要が生じる地球とは比較しようがない程に圧倒的な身軽さは驚異的な速度による侵略を可能とした。とは言え、明確な侵略目的で力を振る事は今回が初めてだろうが。

 一方で、転移は兵站へいたんだけではなく戦術にも組み込まれた。交戦の必要が生じた場合、スサノヲの部隊は三分割され、初陣の第一攻撃部隊が先陣を切り、消耗したら第二部隊が撤退を援護しつつ、今度は第二部隊が戦闘を継続する。更に万が一追撃された時を想定し、撤退した部隊の転移先には第三部隊がおり、補佐に当たる。最も転移先には真空領域が含まれているので防壁なしでは助からず、艦橋が転移先を監視制御しているので侵入に成功したとて先ず旗艦に辿り着けない。

 こうして先陣を切った部隊が無事合流出来たら第一部隊は補佐部隊となり、後方支援部隊からの補給を受けながら次の出撃の時を待つ。3000年の歴史において戦いに介入することは何度もあったが、交戦したどの惑星も終ぞこの連携を崩すには至らなかったとの記録が残されている。

 弱点らしい弱点はなく、必要ならば神さえもが援護に入る単純でありながら鉄壁の布陣は、必要に応じ四重、五重と部隊数を増やす事で絶え間ない大火力で攻め立てることも可能。長距離転移とスサノヲという人外の戦闘部隊が揃う事で可能となる、必勝の布陣。

 が、肝心の主役が不在。転移機能とスサノヲが両方揃って初めて機能するという事は、裏を返せばどちらか不在なら使用できない。それほどに転移機能は戦闘において有用に機能し、だからこそ同時に厳しい制限と管理の下に運用される。

 例えば短距離用の門、ハイドリを一時的に生成する使い捨て式の道具は、その重要性故に正式なスサノヲとなる事で初めて支給を許可される。使用すれば何時でも何処でも超長距離通信を通じで帰還用のハイドリを生成する。そうであるが故に、旗艦側は何よりもこのハイドリの防衛を重視する。当然の如く、個の命や権利にすら優先される。

 しかし、性質を考えれば当然。ハイドリを奪われたらその先に有る物資を奪われ、今回に限ればその更に先に有るアメノトリフネ、更に旗艦アマテラスへの侵入をも許す事になる。

 だが、選りすぐりの精鋭ならばともかく、クズリュウは中途半端で未熟な兵士が大半を占めるという燦々さんさんたる有様。未知の兵器への対策も補給線に関する知識も付け焼き刃程度にしか持ち合わせていない素人達は、灰色に輝く門の重要性を微塵も理解していない。

 だからクズリュウを誘導した。おごり、油断させる為だけに真っ先に地球の混成軍と戦って貰った。結果が今の有様。

 訓練中のクズリュウの様子は何度も確認した。相応に努力をしていたようだった。だから、だ。嬉しかったろう、喜ばしかったろう。我らのお膳立てした相手を苦も無く退けた彼等は、あろう事か己の努力が正しく実を結んだと勘違いした。偽りの成果などとは思いもしない。

 愚かな彼等の高揚させる要素はまだある。神の支配からの独立と言う夢物語。抑圧からの解放。そういった要素もクズリュウ暴走を後押しした。だから、彼等は愚かな程に前へと突き進む。だから、これからも突き進むだろう。

 旗艦から生成されたハイドリから現れたクズリュウの一団は既に数キロほど戦線を伸ばしていた。地球から数億キロ離れた旗艦と比較すれば無きに等しい程に短い。だから彼等は迷いなく進み続けた。我らを相手に不用意に戦線を伸ばし続けた。

 彼等に直ぐに理解する。確実な勝利を見込んで戦いを仕掛けたようだが、そもそもこの世に絶対確実など存在しえない。夢は終わり、無情な現実を思い知ってもらう。君達の先に待つのは、破滅だ。
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