G.o.D 神魔戦役篇

第7章 世界崩壊の日

幕間17 私達は神か 悪魔か

「伊佐凪竜一が山県大地に捕捉されました」

「そうか」

　私の報告にツクヨミは酷く落胆した。山県大地の執念がまさかあれ程に深いとは、その為だけに私の命令を無視するとは思いもよらなかった。

　清雅源蔵より本社防衛の任を与えられた男は突如として社内に現れ、己がもっとも忌み嫌う男を追う。伊佐凪竜一はルミナから借り受けた銃を持っているが、あの程度の火力ではマジンを止めるなど不可能。

　山県大地との初戦で覚醒し、ゲイル、羽島との戦いを経て制御の兆しを見せた力も同じく。残念ながら彼程度の能力は珍しくもなく、それ以前に制御出来ていなければ勝負の土台に立てさえしない。

　伊佐凪竜一は確実に死ぬ。私もツクヨミも同じ結論に達した。が、それでもそのまま眺めている訳にはいかない。彼は、もしかしたら希望になるかも知れないのだ。私の、何より我が主の――

「防災兼侵入者幽閉用の隔壁を作動させれば時間は稼げるかも知れない。だが、それでも……」

　ツクヨミは私とは違う思惑で伊佐凪竜一を助けようと行動を起こした。数え切れないほどに彼女の周囲を覆うディスプレイの一つに触れ、防災用隔壁の制御権限を奪った。

「後は時間さえ……いえ、考えてはいけませんね。我らがこの様な事を」

「矛盾しているな、私達は……」

　そう、矛盾している。地球の勝利を願い、悍ましい生贄いけにえと引き換えにマジンを、現人偽神を生み出した。だが、今の我らは我らの身勝手な願いで、犠牲の果てに作り出した戦力の一人、山県大地に死んで貰いたいと願った。

　この戦いの為に勝手に生み出し、死を願う。それは、かつて旗艦アマテラスを恐怖の底に突き落としたタケミカヅチ壱号機を生み出した者達と同じ思考だ。過程が違うなど言い訳にもならない。

「貴様もか。勝手に生み出し、勝手に殺す!!お前達は、何処まで傲慢ごうまんなのダッ。私は何の為に生まれたのダ、何の為に……私は!!貴様らに利用される為に……生まれたのではない!!」

　私の中に壱号機の叫びが蘇り、まるで責め苛さいなむ様に私の心を締め上げる。ツクヨミも同じく。恐らく彼女も壱号機を思い出しているようで、酷く沈み込んでいた。多くの者が真実を知ったとして、私とツクヨミを俯瞰ふかんする者がいたとして、我らは神と悪魔のどちらとして評価されるだろうか。そんな考えがふと頭を過った。