G.o.D 神魔戦役篇

風見星治

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第7章 世界崩壊の日

84話 後悔なんか一番最後 死ぬ前でいい

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 頭がふらつく。全身が猛烈に痛む。だが、一番困るのは未だに鈍ったままの思考。何が起こったんだろう?と、先程までを思い出してみるが、まるで夢でも見ていたかの様に現実感がない。

 殴った。殴られた。だが、その時は痛みを一切感じなかった。何より、かつての友人を殴り飛ばすことにさえ何らの心も痛まなかった。抵抗も躊躇ちゅうちょも感じないその有様は、まるで人ではなくなったかの様に残虐で、もっと言えば人ではない何かが自分の背中を押している様な感覚もあった。

 何が何だか今でも分からないが、とにかく無事に終わった。今は終わった事よりもその次を――そこまで考えたところで視界が意識とは無関係に動き始めた。次に、背中が堅い何かにぶつかる感触、最後に外の景色の代わって目に飛び込んで来た天井。

 どうやら、倒れたらしい。自分の事なのにまるで他人事のように感じる現実感のなさに支配されている辺り、まだ思考が鈍ったままのようだ。

 しばらく動けそうにない、とそのまま床に大の字で寝そべっていれば幾つもの音が耳に入ってくる。酷く荒い呼吸音。破れそうな程に鼓動する心音。キーンと言う酷い耳鳴り。そして――

 ピピ

 携帯端末の電子音が微かに聞こえた。

 メールか?こんな時に誰から?と考えたが、この状況で、それ以前に俺にメールを送ろうなんて人物はルミナ以外に思いつかなかった。起き上がり、ズボンのポケットから携帯を取り出した。随分とボロボロになっていたが、それでもまだ辛うじて動いている。起動し、内容を確認した。浮かび上がったディスプレイは明滅しながら、簡素な一文を表示した。

 オマモリの中を見ろ ルミナ

 本当に簡潔で簡素な一言は実に彼女らしいと思う。壁に寄り掛かりながら立ちあがり、エレベーターへと向かう。立ち上がれない位に疲弊していた身体は何時の間にか動く様になり、気付けば痛みも引いていた。

 違和感も、未だに夢の中を歩いている様な現実感皆無な精神状態も、それ以上に人を殺した罪悪感も、今は全部どうでもいい。後でいい。何もかも、全部助けた後でいい。後悔なんか一番最後、死ぬ前でいい。今、自分の中にあって自分を突き動かす感情以外の全部がどうでもいい。

 だけど不思議な事に、そう思えば思うほどに身体の内側から力が湧いてくるよう。そんな気がした。身体が動く。と、同時に思考が取っ散らかる頭が、一つの言葉だけを呟き始めた。自分の声とは確実に違う何かが、頭の遥か奥から呟く。

 見せろ――

 と、それだけを呟いている。
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