G.o.D 神魔戦役篇

風見星治

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第8章 神の願い 望み ただ一つの答え

幕間19-4 戦い以外に 道はなかった

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 20XX/12/22 0945

 地球全土、旗艦アマテラス全域に流されたのは過去の映像。アラハバキが我らと接触し、散々に恫喝を行う映像。我らの切り札であり、彼等が絶対に知られたくない事実。この戦いの始まり、その戦端を開いたのは他ならないアラハバキという事実の暴露。

 ※※※

「フフッ、貴方達の言いたい事は理解できますよ。代わりが欲しいんですよね。それを手放してしまえば利益どころかこんなちっぽけな会社を維持する事すら出来なくなる」

「それについては同情する。我々も利益を追求せねばならない身。ツクヨミといったか、それを手放すというならば代わりとなる技術を提供する事も不可能ではない」

「しつこいな、貴様も。そうまで言うならば力づくで奪っても良いのだぞ?」

「まぁ落ち着きなさい、宇宙から来たと言われても辺境の猿程度では理解が追い付かないのじゃろう。今回の会談も随分と間をあけてくれた事が証明している。それに力づくだとどうしても彼方此方に根回しが必要となる、我々としても最終手段としておきたい。今回は一旦引き上げるとしよう、ただ……」

「君達が発明した大半は我々から見れば骨董品だ、だがこの部屋の前で見た青いアレ。アレは何かね?」

「ツクヨミと共同で開発した新たな製品です。外部から操作可能な極小ナノマシン群で、別の物質と混合する機能を持っています。失礼ながら今の皆様方ならばさして珍しい品ではない筈ですが?」

「ナノマシンか、今のこの星程度では製造なんぞ不可能な代物だな。そんな物まで作っておるとは、だがその機能は興味深いな」

「フフッ、私達もそれなりにしがらみがあるんですよ。何でも自由に作れるわけでは無い。民間でのナノマシン関連製品は連合法に基づき医療用に限定され戦闘用は特定機関でしか許されていません。私達の技術が元でありながら私達では作る事が出来ない発明。とても素敵ですね」

「おいおい、感激するだけかね?これだから若いモンは、当然そのデータ頂けるのだろうね?」

「勿論です、必要ならばサンプルもお持ち帰りください。その代わりどうか!!どうか便宜を図って頂きたい!!」

「己惚れるな、だが考えてみてもいいだろう。では今回の会談はここまでとしようか。次はいつにするかね?」

 ※※※

「つまり、どうしても渡せないと?」

「頂いた資料に目を通させて貰った、ツクヨミと比較すれば明らかに劣る。これでは地球の通信システムを維持出来ません!!」

「フフッ、分かっていなようですね。出来ないなんて都合聞いていないのですよ、それで対応しなさい、そうお願いしているのです。お分かりですか?それともその程度の能力すらないと?そんな事はありませんよね?」

「そういう事だ。君達の都合なぞ理解する必要は無い、寛大な慈悲でもって交渉に臨んだがやはり無駄だったな。言葉を話す程度の知能しか持たない者に何を説明しても無駄か」

「やはり未開の蛮族は頭が回らないようだ、残念だがこれも運命。君達はどうあっても血を流さねば気が済まないと。悲しいな」

「お待ち頂きたい、此方にも準備がある事は先も伝えた通り。ですがこれでは無理です、世界中が混乱に陥る。我が社だけの問題ではない、どうか……どうかもう一度交渉を……」

「フフッ、本当に残念ですわ」

「交渉は決裂した。此方にも準備があるのでね、直ぐに殺すという訳にはいかんのが残念だがな」

「これもまた慈悲。その日が来るまでに別れを済ませておくといい。勿論自害しても構わない。それも運命だ」

「どうせだ、最後に言っておいてやろう。最初からそのつもりだったよ。我々が、宇宙と星々を巡る我らカガセオが!!未だ星から旅立つ事すら出来ん田舎者共を相手にすると思ったのか?思い上がるな!!」

 ※※※

 長いようで短い映像はアラハバキが被る善人の仮面、その下に潜む醜い本性を全世界に暴露した。だが同時にもう一つの事実も明らかにした。我らと、我らがもたらした技術の出処。I県N市。県庁舎内にある対テロ掃討作戦会議室は混乱に包まれている。また世界中でも同じく。

 無理もない。彼等はようやくこの戦いに至る理由を知った。あの映像が流れる事により痛手を負うなど百も承知。地球とは比較にならない遥か先の文明が地球の一企業に手を貸しているといういびつな現実、そしてそれを行う神。

 程なく全人類は知るだろう。地球の歴史がある日を境に大きく歪んでしまった、と。しかし、それでも暴露せねばならなかった。そうしなければ地球の完全勝利とはならない。

「オイ、今何と言ったのだ?」

「う、宇宙って……どういう事なの?ちょっと関首相!?」

「当たり前だが私も初耳ですよ。しかしこれで長年の謎が解けた。清雅一族は地球の遥か先を行く宇宙の技術を何らかの理由で手に入れ、それを利用して携帯端末と通信網を作り上げたというところか」

「道理で……な、ならば即刻彼らと交渉を行うべきだ!!」

「君は何を言っているんだね!!あの映像を見たのか、奴等は地球われわれと交渉する気が微塵もないのだぞ!!」

「確かに、交渉とは互いの利益と本音を隠しながら妥協点を探るモノだ。だが、だがあそこまで敵意をむき出しにされてしまうと、な」

「いっそ清々しい。あれではダメだな」

「そうですな。彼等の流儀か文化なのかもしれんが、交渉など端から無理だ」

「ならば……オイ関首相!!何をしているのだ!!携帯なぞ見ている場合か!!」

「世論の様子を見てたんですよ。何処も彼処もさっきの映像を見てからコッチ、清雅を助けろってぇ流れになってるようでね」

「ならば!!」

「分かってますよ、既に指示は出しております。彼らも私も同じ気持ちの様だったのでね。取りあえず後は参謀長お任せします、やっぱり素人が指揮するのは無理筋だ。それよりも、まだ腑に落ちねぇ点が幾つもある。半年前のテロ、そして何故携帯端末ってぇ形にしたのか。それに、あのわけのわからん青い兵器を作れるなら、それ使って世界征服でもした方が手っ取り早い。何を考えている清雅源蔵。お前とお前が信じる神様は、一体この星をどうしたいってぇんだ」

 映像を見た誰もが唐突に突き付けられた真実に混乱しながら、一方で交渉が絶望的である事を理解した。そこは流石に政治家、当然の判断だ。しかし、その中でも抜きんでた能力を持つ関宗太郎只一人だけが別の疑問を持った。彼もまた流石としかいいようがない。その見事な手腕で日本とそれ以外のバランスを何とか保っただけの事はある。

 この星をどうしたい、か。

 その質問の回答は極めて単純だ。ただ、助けたかった。全ての始まりを辿ればそんな単純で純粋だった。なのに、何かが少しずつ狂っていって――その果てに今回の戦いが起きてしまった。必死で是正しようと試みた。あらゆる可能性を考慮した。だがそれでも尚、止められなかった。私も、神も、必死で思考し、結論した。戦い以外に、道はなかった。
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