【完結】G.o.D 完結篇 ~ノロイの星に カミは集う~

風見星治

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第3章 邂逅

46話 夕日の沈まぬ世界で 其の2

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 ――旗艦アマテラスの同胞、E-12からの依頼により本惑星の監視者N-10が異邦者の監視を行う。

 ※※※

 連合標準時刻:火の節 82日目 午後 

 惑星ファイヤーウッド、南部首都サウスウエスト=ウッド。ココは大陸を縦断する列車が停泊する主要な駅の1つであるが、この都市はその中でも取り分け大きい場所である。この惑星において治安も街並みも桁外れて良いその理由はノースト鉄道と対を成すもう1つの鉄道公社、サウスト鉄道の本拠地がこの場所にあるからだ。身も蓋も無い言い方をすれば金であり、雇用主からの潤沢な資金援助を受けた多数の警察官が治安維持に尽力する。

 北部首都ノースイースト=ウッド、そして宇宙への玄関口が存在する経済特区と並んでファイヤーウッドで最も栄えた地域であるこの場所の熱気と活気は尋常では無く、整然とした立地のサウスト駅周辺は元よりそこから外れた郊外も同様である。最もそちらもある程度整然と整えられてはいるが、駅周辺程に監視も手入れも行き届いていない為に少しばかり荒れているのが実情だ。

 最も大きな要因は格差を原因とする犯罪の温床になっている為、次に都市外部には凶暴な原生生物が跋扈しているから。この星に生命が存在を許される場所はそれ程広くはなく、故に一定期間毎に治安維持を名目に獣狩りが行われるのだが、郊外に向かうほどに割合が高くなる貧困層の素行は悪く、雑然と建て増した粗末な家屋がさながら迷宮の様に道を阻むことから思うほどに進まなかった。
 
 しかしソレを責めるのは少々難しい。連合加入以後よりその恩恵を受けるのは極一部だけだからだ。道を行き交う人々の服装を見れば旗艦と同じ高価な衣服を身に纏うのは全くおらず、道行く誰もがこの星で産出されるデニム生地製のズボンやスカートを履き、寒色系等のシャツに袖を通す。
 
 大半が鉄道関係か第一次産業に従事する彼らの服装は、悪い言い方をすれば埃に塗れている。連合に加入してまだ200年程しか経過していないという時間の問題に、知識や技術を独占したい富裕層の思惑が加わった事で最先端の文化や技術は一般へ思うほどに浸透しておらず、大多数の一般層はコレに対し露骨に反発しているのがこの星の現状。よって、この星の一般市民の文化水準は連合の中でも抜きんでて低い。
 
 彼らの多くは権力に反発し、極一部は自らには関係ないと諦めるか旗艦アマテラスを始めとしたほか連合系へと移住したいと考えるが、しかしそれもまた非常に困難。他星系への移住には複数の条件を満たす必要があるからだ。

 その中には当然ながら金銭も含まれる。誰もが好きな様に移住するとなれば必然的に人気の惑星の人口が増加するし、それが原因で連合間の均衡も崩れてしまう。また、文化や文明の消失や汚染といった影響も在り得る。故に連合間の移住は極めてデリケートな問題として扱われる。連合の文明が浸透しない理由も実はこれが関係しており、極端にかけ離れた文明の流入はその星の文化を破壊する恐れがある為に少しずつ浸透させる決まりになっているからだ。

 この星は過去に起きた様々な出来事が理由で連合の他惑星よりも文化文明が遅れている為により慎重な処置がとられる事となったものの、誰もがそれに納得している筈も無く、口にこそ出しはしないが旗艦アマテラスを始めとした連合上層を恨み妬み憎み羨んでいるのだ。

 このサウスウエスト=ウッドは連合文化の流入地点の1つとしても機能しており、特に駅周辺だけに限れば旗艦アマテラスとほぼ遜色ない程度の光景を拝む事が出来る。特に空中に浮かぶ巨大ディスプレイはこの惑星に限らない様々な情報を市民に提供する役目を果たしている。
 
 この星は一般的にまだテレビが浸透しておらず、市民達は主に新聞を通し世相を知るのが通常だが、この巨大ディスプレイから流される情報の方が当然早い上に他星系の情報を映像付きで知る事が出来る……いわば刺激的な娯楽であり、だからごく自然と足が集まる。

 とは言え、元を辿ればこの巨大ディスプレイは観光客用に用意されたものであり、彼等はその恩恵に預かっているだけの状態。それでも尚この場に集まるのは、羨望と憎悪が渦巻いているとはいえ、それでも未知の技術が提供する数少ない娯楽で悲惨な現実を少しでも慰める為だ。

 今は丁度今日の仕事が終了した辺り。仕事を終えて帰宅するか何処か食事にでもといった考えの労働者で溢れかえっており、更にそうした層をターゲットにするべく幾つもの屋台や飲食店が一斉に店を開け始める。この場にもし人がいるならばその強烈な熱気と無数の屋台から立ち昇る匂いに圧倒されるだろう。今この駅周辺にはそれ位の大人達が詰めかけており、更に駅の発着も重なった事で実に多くの人が往来しているのだ。

 そんな熱気あふれるサウスウエスト駅に2人の男女が姿を見せた。いや、より正確には2人だけでは無い。先ず最初に現れたのはスーツ姿の青年。少々汚れが目立つものの、それでもこの星の一般的な身形と比較すれば抜きんでた清潔感に溢れており、誰もが異物の様に見つめた。その次にその後ろから白く丸い何かが男の足元へと転がってきた。それが形状そのままのボールでは無い事はその物体が自力で移動を行う事からも明らか。当然ながらこの星にあのような高性能な機械などある筈も無く、その存在もやはり異質に映った。

 そして最後。青年の背後から現れた人影が青年の隣に立った。その姿は……この星の光景と比較すれば明らかに異質と評した青年や機械よりも更に異質だった。特に際立った容姿は正しく美少女と言う評価が相応しく、隣に立つごく普通に身綺麗な青年でさえ霞ませる程に美しかった。次いで身形。この星では見慣れない上品で高級な繊細なレース刺繍のドレスには一切の汚れが無く、周辺の薄汚れた衣服と比較すれば誰が見ても一目瞭然な程に周辺から浮いている。

 明らかに場違い。深窓の令嬢を彷彿とさせる身形の少女とそれなりに身綺麗な青年とその足元を転がる奇妙な機械、個々を見てもこの星の風景とミスマッチしているのに全くチグハグで統一感がない3人が集まった事で周囲の風景から余計に浮いている。よって3人に好奇の視線が集まるのは当然。

 まるで、仕事が終わり喧騒と共に活気づき始めるこの街の風景と比較すれば余りにも対照的であり、誰もが遠目に2人の男女と、オマケ程度に足元に転がるボールを好奇の視線で見つめる。

「さて……どうする?」
 
「手分けして探すのが一番良いのでしょうが、現状はそうもいきませんからね」

 青年が足元に向けそう尋ねると、ボール状の何かは淡々且つ冷静に回答を寄越した。その光景に周囲は目が点になった。まさか会話するとは思っても見なかったのだろう。
 
「あ、あの……」

「どうした?」
 
「取りあえず何処かへ移動しませんか?前と同じで、あの……人目が気になりまして」

 青年と足元をコロコロと動く機械が何事かを相談する最中、少女はおどおどとした態度で青年にそう申し出た。その言葉に何か気付いた男が周囲を見渡すと、確かに大勢とはいかないまでもそれなりの大人達が凸凹コンビの男女とその足元に転がる機械を怪訝そうに見つめている。

「では少し移動しましょう。少々危険ですが郊外まで移れば早々人目にはつかない筈です」
 
「は、はい。ありがとうございます」
 
「いや、コッチこそすまない。それじゃあ行こうか」

 やがて2人が足早に姿を消し、その後をボール状の何かがコロコロと転がりながら後を付いて行く。だが2人と1機は気付いていない、駅西側に広がる歓楽街から郊外へと進む自分達の後を何者かが追いかけている事に気づかない。
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