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第3章 邂逅
66話 交錯
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「久しぶりだなクソ親父ィ!!」
背後に聞こえた撃鉄音、銃を構え伊佐凪竜一を援護しようとするアックスの後頭部に銃口を向けるアデスに向けアックスはそう吐き捨てた。
そう、彼とアデス=ノーストは実の親子。アックス=G・ファーザーは偽名であり、本名はアックス=G・ノースト。しかし道を違えた両者の仲は極めて険悪であり、実に十年以上振りという会話であるのに殺意と敵意を隠そうともしない。
「何処までワシの邪魔をすれば気が済むのだ貴様は!!」
「アンタが弟の件で心から詫びを入れるその日までだッ!!」
「まだ気にしておったのか。アレ以上に使えん奴だとは思いもせんかった!!しかもこうしてワシの邪魔ばかりする、密造酒の件もそうだ!!」
「そりゃ悪かったな、今度飲ませてやろうか?」
「貴様というヤツはッ!!」
険悪な両者の会話は決して交わらない。親子でありながら互いを、その生き様を絶対に認められない双方が生む亀裂は埋まるどころか決定的なまでに広がった。出来の悪い息子に愛想が尽きた父親は、血を分けた息子の後頭部に銃口を押し付けた。
もうあと数秒もあれば彼の脳みそは吹ッ飛ばされ、夕陽で真っ赤に染まる大地にばら撒かれるだろう。そして、現状を鑑みればアックスがその運命から逃れる事は出来そうにない。
アデスは引き金に指を掛けた。その性格は私もよく知るところであるから躊躇いなく引くだろう。ココまでか、次の瞬間に訪れるであろう凄惨な未来に絶望しかけた次の瞬間……
「アメノトリフネで転移したのは迂闊でしたね。転移制御システムへの割り込み終了、戦闘用体躯強制転送!!」
最後の標的でありこの状況を前に未だ何らの行動もとらなかったツクヨミが突如行動を開始した。今まで監視を行って来た中で、私は一行の性格をある程度把握したつもりだった。それは球形の体躯を与えられたツクヨミと呼ばれる式守であっても同じであり、彼女はこの様な大声を上げる様な性格では無かった筈だ。
私の予測を外れる大きな声と同時に広がる灰色の輝きに誰もが一瞬驚き、必然的にその方向を振り向いた。それはスサノヲ達であっても、久方ぶりの再会で殺し合いを始めようとするノースト親子も、そしてかつての英雄達も同じであった。
直後、灰色の光の中に彼女の体躯が諸共に飲み込まれ、間を置かず光から一人の女性が姿を現した。それは正しく瞬く間だった。球形の体型を持つツクヨミは人型の体躯へと本体を移した。人間と遜色無い機械の肉体、且つて地球の神として辣腕を振るい、神魔戦役の終了と共に自壊した超高性能な体躯がそこに現れた。
アックスを含むこの星の面々は唐突に出現した女に驚かされた。その出現方法もそうだが、それ以上に人目を惹く圧倒的な美貌にも、だ。とは言え、機械の肉体に美醜を問うのは少し不可思議ではあるのだが。
青い髪に青い瞳、白地のシャツに黒のタイトスカート、7分丈のジャケットを纏った地球の神は次に灰色の光の中から武器を引き抜いた。棒状の先端に三色の宝石が付いた形状の杖は一見すればタダの棒きれにしか見えないが、アレは魔導(あるいは魔法、魔術とも)という特殊な力を行使する際に補助として使用する武装。
魔導とはカグツチを特定の属性に変換する技術を指す。変換効率の悪いその技術は当然ながら旗艦アマテラスでは採用されておらず、技術の一部を兵器に転用するに止まっている。
だが旗艦で使われていない=弱いと言う図式は成立しない。何故ならば魔導とはカグツチ濃度を高めずにカグツチ以上を火力を出す事を目的に研鑽された技術であるからだ。変換効率も悪く、大火力を出す為に詠唱を含む幾つかの儀式を要するなど決して取り回しの良い代物では無いのだが、"マガツヒに探知されない"という旗艦アマテラスが所有する全兵器が持ちえない特性を持つ。
戦闘用の体躯に換装したツクヨミは取り出した杖に力を込めると、タイトスカートやシャツ、ジャケットに織り込まれた幾何学模様がパーソナルカラーの青色に染まり、程なく白い輝きが杖の周りに集まると螺旋を描きながらソレに吸い込まれ、そして三色の宝石の最上段に位置する赤い宝石が激しく発光、その周囲に炎が渦を巻き始めた。
「カグツチの魔力変換、問題無し。魔法陣及び略式詠唱インストール、及び圧縮完了……ルミナ、済みません。私はナギと共に生きます。」
ツクヨミが杖を軽く振り回せば周囲を赤い炎が舞う。踊り狂う業炎は周囲を無作為に飛び回り、スサノヲは元よりアデスの護衛達も怯み、一歩かあるいはそれ以上を後ずさる。彼女が操る力は科学により解析再現された魔導と呼ばれる技能。ソコに元来の圧倒的な演算能力を含めれば、その戦闘能力はスサノヲを凌駕すると判断して良いだろう。
「オイオイオイ、予定……いやこれでいいか。」
「しかし随分と強引な真似をしてくれる。」
「流石だな、開発中の義体を強奪してくれるとは。」
「ルミナ。謝って済む問題ではありませんが、ですが私にもそうするに足る理由があります。君達……いやその背後にいる何者かに捕まることは出来ません。」
「なら力づくで逃げ切って見せる事だ。では全員、状況は想定通りだ。姫の御身を最優先に行動しろ!!」
「「「承知!!」」」
その言葉にスサノヲ達は淀みなく応えると一歩前へ踏み出した。特に浅黒い肌をした老兵の反応は見惚れる程に素早く、ルミナの言葉を聞くや即座にツクヨミ目掛け飛びかかった。多勢に無勢、如何に神と言えど歴戦のスサノヲを相手に無事では済むまい。だが、次の瞬間に起きた出来事は私の予測から大きく外れていた。いや、こんな事態など予測できるはずもない。
「悪ぃがルミナ、俺はナギに付くぜェ!!」
驚くべき光景の先陣を切ったのは老兵の後ろにくっついていたスキンヘッドの男。彼はあろうことか仲間である筈の老兵を背後から一切の躊躇いなく強襲した。突然の行動に老兵は驚き防御する間もなく吹っ飛ばされたが、ソコに更に別の男が追撃を掛けた。
「ならば俺も付き合おう、君一人では少々心許なイ。」
そう言うや、スキンヘッドの横に控えていた長髪の式守が老兵の元へと一瞬で詰め寄り、不意打ちで崩れた体勢を瞬く間に整えつつスキンヘッドを強く睨みつける老兵を大きく蹴り飛ばした。
「チィッ、少しくらい加減せんかバカモンが!!」
「済まなイが丁重に断らせて貰う。」
何が起こったのかと言えば、突然スサノヲ同士が同士討ちを始めた。しかも2名だけに止まらず、その波は徐々に周囲へと波及、やがて綺麗に二分された。
「オイオイオイ、流石俺の心の友だぜ。話が分かるなぁ、でお前等は?」
「俺がルミナから離れるか馬鹿野郎!!」
「そうか……俺はタガミに付き合おう。」
「オイ、ワダツミ!!どう言うつもりだ、お前もこッ……いやともかく!!」
「どういう理由かは聞かん。処罰は覚悟の上という事で良いな?軽くはないぞ?」
スクナと呼ばれた老兵が規律に違反したスサノヲ達を睨み付けると周囲の空気が一変し誰もが険しい顔色へと変わる。やはりこの中で一番の手練れはあの人物らしい。が、私はその老兵に少しだけ違和感を覚えた。
遠目でしか見えないがスキンヘッドの男が伊佐凪竜一に付くといった瞬間、ほんの少しだけ笑みを浮かべたような気がしたのだ。それもいやらしい、何か腹に一物隠すような嫌味な笑いでは無い。何と言うか、信頼や頼りがいを感じているような、そんな笑みだった。どうしてそう思ってしまったのか分からないが……しかし老兵の気迫や台詞に反し敵意を全く感じる事が出来なかった。
「承知の上ですよ。では参りましょうか、出来れば加減をお願いします。」
「ヤレヤレ、そう言う事は堂々と言うモンじゃなかろうて……ム?」
「アッチも立て込んでるようだな。」
状況は大きく揺れ動く。一発、立て続けもう一発、大きな銃声が特区中に響き渡った。スサノヲ同士の同士討ちという波は、この場に現れたもう一つの勢力にも波及した。
全てを無視して戦いを続ける伊佐凪竜一とルミナ=AZ1以外が銃声へと視線を向けると、身体を捻りながらアデスを蹴り飛ばしたアックスが不自然な体勢のまま銃を撃つ光景。2発の弾丸は僅かに白みを帯びながらアデスとその背後にいた護衛の右手へとまるで吸い寄せられるように向かい、そして黒光りする銃を見るも無残に破壊した。
「ット。まぁざっとこんなモンよ。」
父親を向き直ったアックスはそう呟くと帽子を被り直した。その下の表情こそ睨み付けてはいるが、怒りと言うよりはスサノヲ用に調整された銃を無理矢理使用する痛みに耐えていると言った方が近いかも知れない。
「何をしておる!!早く撃たんか!!」
力の籠った強い視線と表情はアデスの神経を大いに逆なでした。男は地べたにへたり込んだまま怒号を上げるが、雇われた用心棒達は何処か尻込みしている。
「しかし……いいんですね?死んでから喚いても遅いですぜ?」
「もうあれは息子などでは無いわッ!!」
決定的な決別。一般的にはココまで細くはないであろうと思われる親子の絆、縁は儚く断ち切れた。
「そりゃいいがよ、アンタの子供じゃなくなっても早撃ちの精度は落ちねぇぞ。撃てば撃ち返すからちゃんと避けろよ、スサノヲ用に改造された代物だから跡形も残らねぇぞォ!!」
しかし残酷なやり取りなど想定内と言わんばかりにアックスは怯まず、銃口を一団に向けたまま盛大に啖呵を切った。実際にはそんな力を彼が出せる訳が無い、用心棒達はそう高を括った。彼等とてその程度の知識はある。が、言葉の説得力は誰が言ったかにより容易く増減する。
この星に限定するならば並び立つ者はいないと謳われる銃の名手がそう言えば、必要以上の説得力と共に護衛の心を揺さぶる。故に一団は怖気づいた。
互いに銃口を相手に向けたまま睨み合いが続くアックス一同。何が理由か対立をするに至ったスサノヲ達、スクナと対決するツクヨミと美形の式守。そして英雄として祀り上げられた伊佐凪竜一とルミナ=AZ1。
特区の一角は激しい戦いが始まった事により避難警報と同時に封鎖措置が取られた。が、誰もが避難指示を無視してその様子を見つめている。旅行客、護衛、職員、気が付けば数多の視線が戦いが行われる場所に注がれていた……のだが、私は一際奇異な視線が注がれている事に気付いてしまった。アレは……
背後に聞こえた撃鉄音、銃を構え伊佐凪竜一を援護しようとするアックスの後頭部に銃口を向けるアデスに向けアックスはそう吐き捨てた。
そう、彼とアデス=ノーストは実の親子。アックス=G・ファーザーは偽名であり、本名はアックス=G・ノースト。しかし道を違えた両者の仲は極めて険悪であり、実に十年以上振りという会話であるのに殺意と敵意を隠そうともしない。
「何処までワシの邪魔をすれば気が済むのだ貴様は!!」
「アンタが弟の件で心から詫びを入れるその日までだッ!!」
「まだ気にしておったのか。アレ以上に使えん奴だとは思いもせんかった!!しかもこうしてワシの邪魔ばかりする、密造酒の件もそうだ!!」
「そりゃ悪かったな、今度飲ませてやろうか?」
「貴様というヤツはッ!!」
険悪な両者の会話は決して交わらない。親子でありながら互いを、その生き様を絶対に認められない双方が生む亀裂は埋まるどころか決定的なまでに広がった。出来の悪い息子に愛想が尽きた父親は、血を分けた息子の後頭部に銃口を押し付けた。
もうあと数秒もあれば彼の脳みそは吹ッ飛ばされ、夕陽で真っ赤に染まる大地にばら撒かれるだろう。そして、現状を鑑みればアックスがその運命から逃れる事は出来そうにない。
アデスは引き金に指を掛けた。その性格は私もよく知るところであるから躊躇いなく引くだろう。ココまでか、次の瞬間に訪れるであろう凄惨な未来に絶望しかけた次の瞬間……
「アメノトリフネで転移したのは迂闊でしたね。転移制御システムへの割り込み終了、戦闘用体躯強制転送!!」
最後の標的でありこの状況を前に未だ何らの行動もとらなかったツクヨミが突如行動を開始した。今まで監視を行って来た中で、私は一行の性格をある程度把握したつもりだった。それは球形の体躯を与えられたツクヨミと呼ばれる式守であっても同じであり、彼女はこの様な大声を上げる様な性格では無かった筈だ。
私の予測を外れる大きな声と同時に広がる灰色の輝きに誰もが一瞬驚き、必然的にその方向を振り向いた。それはスサノヲ達であっても、久方ぶりの再会で殺し合いを始めようとするノースト親子も、そしてかつての英雄達も同じであった。
直後、灰色の光の中に彼女の体躯が諸共に飲み込まれ、間を置かず光から一人の女性が姿を現した。それは正しく瞬く間だった。球形の体型を持つツクヨミは人型の体躯へと本体を移した。人間と遜色無い機械の肉体、且つて地球の神として辣腕を振るい、神魔戦役の終了と共に自壊した超高性能な体躯がそこに現れた。
アックスを含むこの星の面々は唐突に出現した女に驚かされた。その出現方法もそうだが、それ以上に人目を惹く圧倒的な美貌にも、だ。とは言え、機械の肉体に美醜を問うのは少し不可思議ではあるのだが。
青い髪に青い瞳、白地のシャツに黒のタイトスカート、7分丈のジャケットを纏った地球の神は次に灰色の光の中から武器を引き抜いた。棒状の先端に三色の宝石が付いた形状の杖は一見すればタダの棒きれにしか見えないが、アレは魔導(あるいは魔法、魔術とも)という特殊な力を行使する際に補助として使用する武装。
魔導とはカグツチを特定の属性に変換する技術を指す。変換効率の悪いその技術は当然ながら旗艦アマテラスでは採用されておらず、技術の一部を兵器に転用するに止まっている。
だが旗艦で使われていない=弱いと言う図式は成立しない。何故ならば魔導とはカグツチ濃度を高めずにカグツチ以上を火力を出す事を目的に研鑽された技術であるからだ。変換効率も悪く、大火力を出す為に詠唱を含む幾つかの儀式を要するなど決して取り回しの良い代物では無いのだが、"マガツヒに探知されない"という旗艦アマテラスが所有する全兵器が持ちえない特性を持つ。
戦闘用の体躯に換装したツクヨミは取り出した杖に力を込めると、タイトスカートやシャツ、ジャケットに織り込まれた幾何学模様がパーソナルカラーの青色に染まり、程なく白い輝きが杖の周りに集まると螺旋を描きながらソレに吸い込まれ、そして三色の宝石の最上段に位置する赤い宝石が激しく発光、その周囲に炎が渦を巻き始めた。
「カグツチの魔力変換、問題無し。魔法陣及び略式詠唱インストール、及び圧縮完了……ルミナ、済みません。私はナギと共に生きます。」
ツクヨミが杖を軽く振り回せば周囲を赤い炎が舞う。踊り狂う業炎は周囲を無作為に飛び回り、スサノヲは元よりアデスの護衛達も怯み、一歩かあるいはそれ以上を後ずさる。彼女が操る力は科学により解析再現された魔導と呼ばれる技能。ソコに元来の圧倒的な演算能力を含めれば、その戦闘能力はスサノヲを凌駕すると判断して良いだろう。
「オイオイオイ、予定……いやこれでいいか。」
「しかし随分と強引な真似をしてくれる。」
「流石だな、開発中の義体を強奪してくれるとは。」
「ルミナ。謝って済む問題ではありませんが、ですが私にもそうするに足る理由があります。君達……いやその背後にいる何者かに捕まることは出来ません。」
「なら力づくで逃げ切って見せる事だ。では全員、状況は想定通りだ。姫の御身を最優先に行動しろ!!」
「「「承知!!」」」
その言葉にスサノヲ達は淀みなく応えると一歩前へ踏み出した。特に浅黒い肌をした老兵の反応は見惚れる程に素早く、ルミナの言葉を聞くや即座にツクヨミ目掛け飛びかかった。多勢に無勢、如何に神と言えど歴戦のスサノヲを相手に無事では済むまい。だが、次の瞬間に起きた出来事は私の予測から大きく外れていた。いや、こんな事態など予測できるはずもない。
「悪ぃがルミナ、俺はナギに付くぜェ!!」
驚くべき光景の先陣を切ったのは老兵の後ろにくっついていたスキンヘッドの男。彼はあろうことか仲間である筈の老兵を背後から一切の躊躇いなく強襲した。突然の行動に老兵は驚き防御する間もなく吹っ飛ばされたが、ソコに更に別の男が追撃を掛けた。
「ならば俺も付き合おう、君一人では少々心許なイ。」
そう言うや、スキンヘッドの横に控えていた長髪の式守が老兵の元へと一瞬で詰め寄り、不意打ちで崩れた体勢を瞬く間に整えつつスキンヘッドを強く睨みつける老兵を大きく蹴り飛ばした。
「チィッ、少しくらい加減せんかバカモンが!!」
「済まなイが丁重に断らせて貰う。」
何が起こったのかと言えば、突然スサノヲ同士が同士討ちを始めた。しかも2名だけに止まらず、その波は徐々に周囲へと波及、やがて綺麗に二分された。
「オイオイオイ、流石俺の心の友だぜ。話が分かるなぁ、でお前等は?」
「俺がルミナから離れるか馬鹿野郎!!」
「そうか……俺はタガミに付き合おう。」
「オイ、ワダツミ!!どう言うつもりだ、お前もこッ……いやともかく!!」
「どういう理由かは聞かん。処罰は覚悟の上という事で良いな?軽くはないぞ?」
スクナと呼ばれた老兵が規律に違反したスサノヲ達を睨み付けると周囲の空気が一変し誰もが険しい顔色へと変わる。やはりこの中で一番の手練れはあの人物らしい。が、私はその老兵に少しだけ違和感を覚えた。
遠目でしか見えないがスキンヘッドの男が伊佐凪竜一に付くといった瞬間、ほんの少しだけ笑みを浮かべたような気がしたのだ。それもいやらしい、何か腹に一物隠すような嫌味な笑いでは無い。何と言うか、信頼や頼りがいを感じているような、そんな笑みだった。どうしてそう思ってしまったのか分からないが……しかし老兵の気迫や台詞に反し敵意を全く感じる事が出来なかった。
「承知の上ですよ。では参りましょうか、出来れば加減をお願いします。」
「ヤレヤレ、そう言う事は堂々と言うモンじゃなかろうて……ム?」
「アッチも立て込んでるようだな。」
状況は大きく揺れ動く。一発、立て続けもう一発、大きな銃声が特区中に響き渡った。スサノヲ同士の同士討ちという波は、この場に現れたもう一つの勢力にも波及した。
全てを無視して戦いを続ける伊佐凪竜一とルミナ=AZ1以外が銃声へと視線を向けると、身体を捻りながらアデスを蹴り飛ばしたアックスが不自然な体勢のまま銃を撃つ光景。2発の弾丸は僅かに白みを帯びながらアデスとその背後にいた護衛の右手へとまるで吸い寄せられるように向かい、そして黒光りする銃を見るも無残に破壊した。
「ット。まぁざっとこんなモンよ。」
父親を向き直ったアックスはそう呟くと帽子を被り直した。その下の表情こそ睨み付けてはいるが、怒りと言うよりはスサノヲ用に調整された銃を無理矢理使用する痛みに耐えていると言った方が近いかも知れない。
「何をしておる!!早く撃たんか!!」
力の籠った強い視線と表情はアデスの神経を大いに逆なでした。男は地べたにへたり込んだまま怒号を上げるが、雇われた用心棒達は何処か尻込みしている。
「しかし……いいんですね?死んでから喚いても遅いですぜ?」
「もうあれは息子などでは無いわッ!!」
決定的な決別。一般的にはココまで細くはないであろうと思われる親子の絆、縁は儚く断ち切れた。
「そりゃいいがよ、アンタの子供じゃなくなっても早撃ちの精度は落ちねぇぞ。撃てば撃ち返すからちゃんと避けろよ、スサノヲ用に改造された代物だから跡形も残らねぇぞォ!!」
しかし残酷なやり取りなど想定内と言わんばかりにアックスは怯まず、銃口を一団に向けたまま盛大に啖呵を切った。実際にはそんな力を彼が出せる訳が無い、用心棒達はそう高を括った。彼等とてその程度の知識はある。が、言葉の説得力は誰が言ったかにより容易く増減する。
この星に限定するならば並び立つ者はいないと謳われる銃の名手がそう言えば、必要以上の説得力と共に護衛の心を揺さぶる。故に一団は怖気づいた。
互いに銃口を相手に向けたまま睨み合いが続くアックス一同。何が理由か対立をするに至ったスサノヲ達、スクナと対決するツクヨミと美形の式守。そして英雄として祀り上げられた伊佐凪竜一とルミナ=AZ1。
特区の一角は激しい戦いが始まった事により避難警報と同時に封鎖措置が取られた。が、誰もが避難指示を無視してその様子を見つめている。旅行客、護衛、職員、気が付けば数多の視線が戦いが行われる場所に注がれていた……のだが、私は一際奇異な視線が注がれている事に気付いてしまった。アレは……
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