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第3章 邂逅
94話 過去 ~ 夕日の沈まぬ世界へ 其の2
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――惑星ファイヤーウッド 南部都市 ワイルダネス
「アンタ達何処から来たんだい?」
「えーと。ちょっと遠くから、かな?」
「ふーん。見たところこの辺のヤツ等じゃないな。あぁ、もしかして観光客か?」
「まぁそんなところです。ところでこの辺で電子マネー使える店ってありますか?」
「でんしまねー?何だいそれ?」
極寒の地を踏破した一行の視界に映る漆黒の世界に漸く恒星の光が差し始めたのは今から1時間ほど前、連合標準時刻14時30分頃の話だ。
南部都市"ワイルダネス"。極地にほど近いこの街における主な仕事は、その極地から氷を運ぶ事。生存圏が極端に小さいこの惑星に於いて水は死活問題に直結するが故に氷を運ぶというシンプルな商売がココでは成り立っており、命の危険のある上に重労働だが実入りが良いという理由で意外と多くの人間が住んでいる。
「いや良いです。ソレよりも飛び込みでできる仕事ってあります?」
「無理無理。アンタ知らないだろうけど、上の締め付けが厳しいせいで何処も人を雇う余裕なんて無いよ。金が要るならその辺の質屋で手持ちのモン売りなよ?」
人が居れば情報が手に入る。伊佐凪竜一は精力的に聞き込みを行ったが、その成果は予想通りに芳しくなかったようだ。ツクヨミが管理していた電子マネーは全く使えず、質屋の存在を教えられたは良いが運の悪い事に金目の物を何一つ持ち合わせていない。より正確には換金できない様な代物ばかりという有様。
特に防壁を発生させる旗艦アマテラス固有技術"ヤサカニノマガタマ"は、どの文明も喉から手が出る程に欲しがる連合最高峰の技術であり、然るべき場所に売りつければ使い切れない程の金が手に入る。但し、その時点で連合、特にスサノヲ擁する旗艦アマテラスから死に物狂いで追われる事になるので実質売れないのだが……
しかし途方に暮れてばかりはいられない。伊佐凪竜一は再び仕事を求めアチコチを歩き回ったが、見知らぬ者に仕事を与えるほどこの星に余裕は無い現状を嫌と言うほどに思い知らされた。ない袖は振れぬとばかりに冷淡にあしらわれ続けた彼は最後の手段である野宿を決断、川沿いの橋へとやって来た。
「駄目でしたか?」
「済まない、どうやら余り景気が良くないようだ。知ってたかい?」
「いいえ、その様な話は……あの、何をなさっているのです?」
「夕陽じゃ温まらないし、ジャケット貸したけど寒そうにしてるから火を熾してるのさ」
「は、はぁ。私、そう言った事には詳しくありませんので……」
姫がおずおずと見つめる先、そこにはジャケットを脱ぎ捨て白いシャツを捲った伊佐凪竜一が、実に原始的な方法で火を点けようとしている光景だった。
「まさか宇宙を旅した後にこんな原始的な方法で火熾しする羽目になるとは思いもしなかったよ。それについさっきまでいたところでは魔法で火が出せるんだっけ?」
同感だ、正しく私も彼と同じ気持ちだった。とは言え碌に準備もできないままに放り出されたのだから仕方のない話だ。
もしこの様な事態を想定していたならば簡単に火を点ける道具程度は持ち合わせていただろうし、そうでなくても例えば彼が煙草を嗜んでいたならばライター位は懐に収めていただろうが、今の彼が持つのは防壁に旗艦製の武器が幾つかしかない状態。ソレ等は火を熾すライターと比較すれば桁違いに高性能なのだが、残念ながら火を熾す一点でライターに負けている。
彼は一呼吸つくと、プレートから一本のナイフを実体化させ木製の板に窪みを作り、次に反った木と強化繊維製の靴紐(※有事の際の道具として使用する事を目的としており、靴を締めるという目的以上に頑丈)を組み合わせて弓を作り、弦に当たる靴紐に木の棒を巻き付けあっと言う間に弓錐式の発火装置を作り上げた。
弓を前後に動かし始めると板と棒が擦れてキコキコと子気味良い音が鳴り、暫くもすれば接点が黒ずみ始める。現代ではまず見られない光景を姫は物珍し気に眺めている、その様子は原始的な火熾しの方法を初めて知ったと思える位に純粋で輝いており、ほんの数時間前の戦闘による恐怖や防壁無しでは即死する極寒の地を踏破した疲労など何処へやら。
そんな風に姫がじっと見つめ続ける中、僅か10秒ほどで板から小さな煙が上がり始めた。伊佐凪竜一が割と簡単に火種を作ると今度は枯れ草を丸めた火口に火種を移して息を吹きかけ火を起こした。
私は映像越しに、姫は直にその様子を見て感嘆の声を上げた。随分と器用なものだ。正しい知識が無ければああも上手く火を点けるどころか道具を見繕い組み上げる事すら困難だろうに、彼はそれを苦も無くやって見せた。姫は赤い炎を不思議そうに眺めている。
「凄いですね」
「昔覚えたんだ。まさかこんな形で使う事になるとは思わなかったけどな」
「昔、ですか?」
「あぁ、一人で生きるって決めた時に色々出来た方が良いと思ってね。今やった火の起こし方とか濁った水のろ過方法とか、とにかく色々覚えた」
「凄いですね。知識は実践出来て初めて意味があると教わりましたが、ナギ様はとても器用なのですね」
姫は火に温まりながら伊佐凪竜一に率直な感想を伝えた。確かに知識を実践しようとしても案外思うようにいかないものだ。
だが姫が知らない。有事に難なく実践できるまでに積み重ねた知識を覚えるに至った動機は、彼が以前所属していた清雅という巨大企業の内部情報を暴露、成功した後に監視の手が及ばない辺境に逃げ延び生活する事を想定したサバイバル技術だという事を。
結局反乱する度胸が無かったために傍目にはタダの趣味としか映っていないが、罪を犯してまで清雅に打撃を与えたかったという伊佐凪竜一の後ろ暗い感情と過去の結実なのだと……A-24の寄越した報告書にはそう記述されていた。
しかし、その知識は今確かに役立っている。どんな経緯であれ知識は知識、正しく使えば人を助ける事が出来る。とは言え、だ。火は手に入ったがそれ以外にも寝床と食糧という大きな問題を抱えている。金が無い以上、何をどうしてもこの2つを手に入れる事は難しい。
と、その時2人が河を背に火で暖を取っている後ろからバシャリと水から何かが飛び上がる音が聞こえた。音源は伊佐凪竜一の背後に転がって来たツクヨミが丸い球体の側面から水面に潜らせていたマニピュレーターを勢いよく引き戻した時に発生した音だった。
その彼女が操作するマニピュレーターは魚を捉えていたが、力無くビチビチと跳ねるソレは2人の腹を満たすには余りにも小さい。
「そもそもあまり魚が居ないようです」
残念そうに呟くツクヨミを伊佐凪竜一は慰め、そして捉えた魚に止めを刺すと木の棒を刺して焼き始めた。
「仕方ないさ」
「はい。あ、あの、あの……」
「あぁ、焼けたら食べていいよ」
「い、いえ。あの、その……」
姫は何か口ごもっている、何かを言い辛そうにしながらも言い出せない、言いたくないといった雰囲気を感じ取った伊佐凪竜一は自発的に言葉を発するのを待っている。
「あの、私……」
火にくべられた枝がパチパチと心地よく奏でる音に重ねる様に姫が口を開いた直後……
「気になさっているのですね?」
ツクヨミがブルブルッっと震えて身体から滴る水滴を振り落としながら更に言葉を重ねた。唐突な言葉に伊佐凪竜一は驚き"何を?"とツクヨミを見下ろせば、彼女の丸っこい身体の中央に付いたカメラアイが姫を真っすぐに見上げている。
「アナタは非常に博識です。だから旗艦アマテラスを経由しない超長距離転移を行う際に行われる必須検査を私達が行っていない事を気に病んでいるのではないでしょうか?」
「え?あー、えと、はい、そう……です」
「やはりそうですか」
「あの、俺にも教えて欲しいんだけど」
姫とツクヨミのやり取りは連合内を転移する際の常識なのだが、残念ながら伊佐凪竜一にその手の知識は無いようで全く話についていってない。とは言え不自然な話では無い。何せ彼の傍には超高性能なツクヨミが居るのだ。今の関係性を見れば、恐らく煩雑な作業や雑事一切を彼女が仕切っていたのは目に見えている。
「えーと、ですね。惑星って固有種とかありますよね。花とか、動物とか。惑星間転移の際にそう言った他星系の固有種が混ざり合ったりしない様に、要は色んな検査をしたり身体を綺麗にしたりする必要があるんです。惑星固有種を別の惑星に秘密裏に持ち込んだりといった計画的な行動は勿論ですが、例え偶発的であったとしてもそれは犯罪として罰せられるんです。だから、転移って旗艦アマテラスを中継地点として厳重に管理されていますし、きっと私達が旗艦アマテラスに戻れば相応の罰を受ける事になると思います。後、私達が立ち寄ったエクゼスレシアもですけど、転移管理部門の洗浄班によって全て綺麗に掃除された後に文明調査部門によって徹底調査されます、ハイ」
「凄いな、君。俺、そんな事全然知らなかったよ」
姫の説明を黙って聞いていた伊佐凪竜一は、一通りを聞き終えると感嘆の声を漏らした。が、そんな彼の態度にツクヨミは露骨なまでに気落ちした。どうやら自分が説明して、褒められたかったらしい。
「そ、そうですか?一応、連合の中等学科で習いますから」
素直に褒められた姫は満更でも無いと言った様子で少しだけはにかんで見せた。一方ツクヨミの機嫌はさらに悪化、その辺に転がっていた木片に八つ当たりするなど露骨なまでにいじけ始めた。何とも感情表現豊かで本音を隠そうともしない彼女は、しかし元は地球の神。
私は彼女の本来の役目を知っている。だからそんな性格では困ると頭では理解しているのだが、だがそれでも神と言う役目から解放された今の彼女を見て、人と同じく喜怒哀楽を表現する彼女を見て、コレで良いのではないかと思い始めている。
「完璧な回答です。ホントは私が説明したかったのですが……」
「そ、そうなんですか。あの、御免なさい」
「いや、気にしなくていいよ。ツクヨミもどうしてそう説明したがるのかなぁ」
「私はアナタを補佐する役目がありますから」
やや呆れがちな伊佐凪竜一に対しツクヨミはそう断言すると八つ当たりしていた木片を火の中にくべた。
「しかしこの程度ではやはり暖は取れ……」
「アンタ達こんな場所で何してんだい?」
それはツクヨミが周辺に転がる木片を粗方火の中に投げ入れ終えた直後。燃え上がった炎に身体を寄せる姫が身体を震わせた矢先の出来事だった。橋の上から掛けられた言葉に驚いた全員が見上げると、そこには橋の下で暖を取る統一性の無い服装の一行を怪訝そうに見下ろす老人の顔が見えた。
「アンタ達何処から来たんだい?」
「えーと。ちょっと遠くから、かな?」
「ふーん。見たところこの辺のヤツ等じゃないな。あぁ、もしかして観光客か?」
「まぁそんなところです。ところでこの辺で電子マネー使える店ってありますか?」
「でんしまねー?何だいそれ?」
極寒の地を踏破した一行の視界に映る漆黒の世界に漸く恒星の光が差し始めたのは今から1時間ほど前、連合標準時刻14時30分頃の話だ。
南部都市"ワイルダネス"。極地にほど近いこの街における主な仕事は、その極地から氷を運ぶ事。生存圏が極端に小さいこの惑星に於いて水は死活問題に直結するが故に氷を運ぶというシンプルな商売がココでは成り立っており、命の危険のある上に重労働だが実入りが良いという理由で意外と多くの人間が住んでいる。
「いや良いです。ソレよりも飛び込みでできる仕事ってあります?」
「無理無理。アンタ知らないだろうけど、上の締め付けが厳しいせいで何処も人を雇う余裕なんて無いよ。金が要るならその辺の質屋で手持ちのモン売りなよ?」
人が居れば情報が手に入る。伊佐凪竜一は精力的に聞き込みを行ったが、その成果は予想通りに芳しくなかったようだ。ツクヨミが管理していた電子マネーは全く使えず、質屋の存在を教えられたは良いが運の悪い事に金目の物を何一つ持ち合わせていない。より正確には換金できない様な代物ばかりという有様。
特に防壁を発生させる旗艦アマテラス固有技術"ヤサカニノマガタマ"は、どの文明も喉から手が出る程に欲しがる連合最高峰の技術であり、然るべき場所に売りつければ使い切れない程の金が手に入る。但し、その時点で連合、特にスサノヲ擁する旗艦アマテラスから死に物狂いで追われる事になるので実質売れないのだが……
しかし途方に暮れてばかりはいられない。伊佐凪竜一は再び仕事を求めアチコチを歩き回ったが、見知らぬ者に仕事を与えるほどこの星に余裕は無い現状を嫌と言うほどに思い知らされた。ない袖は振れぬとばかりに冷淡にあしらわれ続けた彼は最後の手段である野宿を決断、川沿いの橋へとやって来た。
「駄目でしたか?」
「済まない、どうやら余り景気が良くないようだ。知ってたかい?」
「いいえ、その様な話は……あの、何をなさっているのです?」
「夕陽じゃ温まらないし、ジャケット貸したけど寒そうにしてるから火を熾してるのさ」
「は、はぁ。私、そう言った事には詳しくありませんので……」
姫がおずおずと見つめる先、そこにはジャケットを脱ぎ捨て白いシャツを捲った伊佐凪竜一が、実に原始的な方法で火を点けようとしている光景だった。
「まさか宇宙を旅した後にこんな原始的な方法で火熾しする羽目になるとは思いもしなかったよ。それについさっきまでいたところでは魔法で火が出せるんだっけ?」
同感だ、正しく私も彼と同じ気持ちだった。とは言え碌に準備もできないままに放り出されたのだから仕方のない話だ。
もしこの様な事態を想定していたならば簡単に火を点ける道具程度は持ち合わせていただろうし、そうでなくても例えば彼が煙草を嗜んでいたならばライター位は懐に収めていただろうが、今の彼が持つのは防壁に旗艦製の武器が幾つかしかない状態。ソレ等は火を熾すライターと比較すれば桁違いに高性能なのだが、残念ながら火を熾す一点でライターに負けている。
彼は一呼吸つくと、プレートから一本のナイフを実体化させ木製の板に窪みを作り、次に反った木と強化繊維製の靴紐(※有事の際の道具として使用する事を目的としており、靴を締めるという目的以上に頑丈)を組み合わせて弓を作り、弦に当たる靴紐に木の棒を巻き付けあっと言う間に弓錐式の発火装置を作り上げた。
弓を前後に動かし始めると板と棒が擦れてキコキコと子気味良い音が鳴り、暫くもすれば接点が黒ずみ始める。現代ではまず見られない光景を姫は物珍し気に眺めている、その様子は原始的な火熾しの方法を初めて知ったと思える位に純粋で輝いており、ほんの数時間前の戦闘による恐怖や防壁無しでは即死する極寒の地を踏破した疲労など何処へやら。
そんな風に姫がじっと見つめ続ける中、僅か10秒ほどで板から小さな煙が上がり始めた。伊佐凪竜一が割と簡単に火種を作ると今度は枯れ草を丸めた火口に火種を移して息を吹きかけ火を起こした。
私は映像越しに、姫は直にその様子を見て感嘆の声を上げた。随分と器用なものだ。正しい知識が無ければああも上手く火を点けるどころか道具を見繕い組み上げる事すら困難だろうに、彼はそれを苦も無くやって見せた。姫は赤い炎を不思議そうに眺めている。
「凄いですね」
「昔覚えたんだ。まさかこんな形で使う事になるとは思わなかったけどな」
「昔、ですか?」
「あぁ、一人で生きるって決めた時に色々出来た方が良いと思ってね。今やった火の起こし方とか濁った水のろ過方法とか、とにかく色々覚えた」
「凄いですね。知識は実践出来て初めて意味があると教わりましたが、ナギ様はとても器用なのですね」
姫は火に温まりながら伊佐凪竜一に率直な感想を伝えた。確かに知識を実践しようとしても案外思うようにいかないものだ。
だが姫が知らない。有事に難なく実践できるまでに積み重ねた知識を覚えるに至った動機は、彼が以前所属していた清雅という巨大企業の内部情報を暴露、成功した後に監視の手が及ばない辺境に逃げ延び生活する事を想定したサバイバル技術だという事を。
結局反乱する度胸が無かったために傍目にはタダの趣味としか映っていないが、罪を犯してまで清雅に打撃を与えたかったという伊佐凪竜一の後ろ暗い感情と過去の結実なのだと……A-24の寄越した報告書にはそう記述されていた。
しかし、その知識は今確かに役立っている。どんな経緯であれ知識は知識、正しく使えば人を助ける事が出来る。とは言え、だ。火は手に入ったがそれ以外にも寝床と食糧という大きな問題を抱えている。金が無い以上、何をどうしてもこの2つを手に入れる事は難しい。
と、その時2人が河を背に火で暖を取っている後ろからバシャリと水から何かが飛び上がる音が聞こえた。音源は伊佐凪竜一の背後に転がって来たツクヨミが丸い球体の側面から水面に潜らせていたマニピュレーターを勢いよく引き戻した時に発生した音だった。
その彼女が操作するマニピュレーターは魚を捉えていたが、力無くビチビチと跳ねるソレは2人の腹を満たすには余りにも小さい。
「そもそもあまり魚が居ないようです」
残念そうに呟くツクヨミを伊佐凪竜一は慰め、そして捉えた魚に止めを刺すと木の棒を刺して焼き始めた。
「仕方ないさ」
「はい。あ、あの、あの……」
「あぁ、焼けたら食べていいよ」
「い、いえ。あの、その……」
姫は何か口ごもっている、何かを言い辛そうにしながらも言い出せない、言いたくないといった雰囲気を感じ取った伊佐凪竜一は自発的に言葉を発するのを待っている。
「あの、私……」
火にくべられた枝がパチパチと心地よく奏でる音に重ねる様に姫が口を開いた直後……
「気になさっているのですね?」
ツクヨミがブルブルッっと震えて身体から滴る水滴を振り落としながら更に言葉を重ねた。唐突な言葉に伊佐凪竜一は驚き"何を?"とツクヨミを見下ろせば、彼女の丸っこい身体の中央に付いたカメラアイが姫を真っすぐに見上げている。
「アナタは非常に博識です。だから旗艦アマテラスを経由しない超長距離転移を行う際に行われる必須検査を私達が行っていない事を気に病んでいるのではないでしょうか?」
「え?あー、えと、はい、そう……です」
「やはりそうですか」
「あの、俺にも教えて欲しいんだけど」
姫とツクヨミのやり取りは連合内を転移する際の常識なのだが、残念ながら伊佐凪竜一にその手の知識は無いようで全く話についていってない。とは言え不自然な話では無い。何せ彼の傍には超高性能なツクヨミが居るのだ。今の関係性を見れば、恐らく煩雑な作業や雑事一切を彼女が仕切っていたのは目に見えている。
「えーと、ですね。惑星って固有種とかありますよね。花とか、動物とか。惑星間転移の際にそう言った他星系の固有種が混ざり合ったりしない様に、要は色んな検査をしたり身体を綺麗にしたりする必要があるんです。惑星固有種を別の惑星に秘密裏に持ち込んだりといった計画的な行動は勿論ですが、例え偶発的であったとしてもそれは犯罪として罰せられるんです。だから、転移って旗艦アマテラスを中継地点として厳重に管理されていますし、きっと私達が旗艦アマテラスに戻れば相応の罰を受ける事になると思います。後、私達が立ち寄ったエクゼスレシアもですけど、転移管理部門の洗浄班によって全て綺麗に掃除された後に文明調査部門によって徹底調査されます、ハイ」
「凄いな、君。俺、そんな事全然知らなかったよ」
姫の説明を黙って聞いていた伊佐凪竜一は、一通りを聞き終えると感嘆の声を漏らした。が、そんな彼の態度にツクヨミは露骨なまでに気落ちした。どうやら自分が説明して、褒められたかったらしい。
「そ、そうですか?一応、連合の中等学科で習いますから」
素直に褒められた姫は満更でも無いと言った様子で少しだけはにかんで見せた。一方ツクヨミの機嫌はさらに悪化、その辺に転がっていた木片に八つ当たりするなど露骨なまでにいじけ始めた。何とも感情表現豊かで本音を隠そうともしない彼女は、しかし元は地球の神。
私は彼女の本来の役目を知っている。だからそんな性格では困ると頭では理解しているのだが、だがそれでも神と言う役目から解放された今の彼女を見て、人と同じく喜怒哀楽を表現する彼女を見て、コレで良いのではないかと思い始めている。
「完璧な回答です。ホントは私が説明したかったのですが……」
「そ、そうなんですか。あの、御免なさい」
「いや、気にしなくていいよ。ツクヨミもどうしてそう説明したがるのかなぁ」
「私はアナタを補佐する役目がありますから」
やや呆れがちな伊佐凪竜一に対しツクヨミはそう断言すると八つ当たりしていた木片を火の中にくべた。
「しかしこの程度ではやはり暖は取れ……」
「アンタ達こんな場所で何してんだい?」
それはツクヨミが周辺に転がる木片を粗方火の中に投げ入れ終えた直後。燃え上がった炎に身体を寄せる姫が身体を震わせた矢先の出来事だった。橋の上から掛けられた言葉に驚いた全員が見上げると、そこには橋の下で暖を取る統一性の無い服装の一行を怪訝そうに見下ろす老人の顔が見えた。
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