【完結】G.o.D 完結篇 ~ノロイの星に カミは集う~

風見星治

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第5章 聞こえるほど近く、触れないほど遠い

130話 守護者 其の1

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 ……情報を外部に漏らした誰かがいる。伊佐凪竜一とフォルトゥナ姫の現在地を正確に知る手段は不可能に近いというだけで出来ないという訳ではない。

 主星の転移管理部門に神道内に発生した揺らぎから転移時間を割り出してもらい、当該時刻以後の連合加入惑星全域から不審人物情報を洗い出す。目星を付けたらツクヨミが発信する信号を捉えれば良い。が、ハードルが極めて高い上に見つかる可能性も低い。

 しかも守護者が管轄する転移管理部門とコチラが管轄するツクヨミの情報の両方が揃わなければ追跡は不可能で、更に伊佐凪竜一と行動を共にするツクヨミに関する全情報はトップシークレット扱いで極一部しか知りえない。そして旗艦から転移管理部門にアクセスした形跡がない事実を加味すれば、敵は守護者という結論になる。

 羽田宇宙空港での一件で露見した通りスサノヲも一枚岩とは言い難いが、だからと言って強引に追跡してまで狙う意味も必要性も無い。だがそれは守護者側も同じなのだ。ただ、守護者が何かを企んでいるとして、何方を狙っているのか、そもそも何故狙うのか、真相を特定する重要な情報は何一つない。

 ただ……再び戦いが起こる、それだけは間違いない。何も分からないまま、ただその可能性だけが色濃くなる。

「だからコイツが流出たって可能性は無いって事だよなぁ」

 暫しの沈黙の後、タガミは手首に装備した腕輪を眺めながらそう呟いた。

「可能性はあるだろうが現状は考えなくて良さそうだ。流出に関する新しい情報が出なイ限り内部から情報が洩れてイると考えるのが自然だ」

「ならば内部調査に関しては俺とワダツミで行おうと思います。伊佐凪竜一がスサノヲに上がる時に一悶着起きた事を踏まえれば、スサノヲまで範囲を広げた方が良いでしょうが、とは言っても如何せん誰が怪しいか予測すらつきません。出来ればヒルメにも協力して頂きたいのですが、コレ位ならば問題ありませんよね?」

「あぁ、旗艦の運営に直接関わらない関わろうともしないが、それ以外は大丈夫だ。後でイヅナに協力するよう頼んでおく。では……済まないが君達には少しの間だけ黄泉に行ってもらう。守護者の手前、どうしても甘い判断を下せない」

「承知した」

「それまではコチラで何とか持たせるつもりだ」

「構いませんよ、では宜しくお願いします」

「お手柔らかにな」

「「お前には加減せんがな!!」」

「オイオイオイ、仲良くしようぜ」

 タガミはそう言うといつも通りニヤリと笑みを浮かべ、それに釣られる様にタケルも笑みを浮かべる。伊佐凪竜一達の状況は定かではないが、旗艦の有様から見れば決して喜べる状態ではない。

 最初は少しずつだった。遅々として進まない復興に対する不安と不満解消の為に主星に助力を求める決議が採択され、そして守護者達が流入した。市民の不安感は解消された、何せ主星の神が介入すると決めたのだ。だが少しずつ、復興支援と言う名目で守護者は旗艦を堂々と闊歩する様になってから少しずつ何かが狂い始めた。

 最初は誰も気付かなかった違和感は、ある日突然に確かな形として現れた。最も顕著だったのは旗艦法の改定、復興を円滑に行うと言う尤もらしい名目で守護者達の権利が拡大されると、それ以降スサノヲや高天原で働く職員に対し露骨なまでに横柄で高圧的な態度で接し始めた。

 しかしそれは事の始まりでしかなかった。やがて彼等は本性を少しだけ露にする。"復興を手伝ってやっている"という名目で旗艦の各部門に介入を始めた。

 艦橋に止まらず観測部門や果ては特兵研等々、あらゆる場所への介入は非常識な程に強引で、横柄で、故に多くの軋轢を生んだが、その一方で進まぬ復旧を手伝ってもらう負い目から何処も強硬な態度に出る事ができず、なし崩しで許した。

 民意は徐々に守護者側、ひいては主星を治める姫へと傾き始め、瞬く間に守護者達の影響力はスサノヲ達を抜き去った。事実、幾つも発生していた復興を阻む事故事件は守護者達が介入するや否や不気味な程に、不自然な程に呆気なく治まった。復興は問題なく進み始めた。誰も疑問に思わない、思う筈もない。

 当然だ。この状況は誰がどう見ても"不甲斐ないのは身勝手にその座を退いたアマテラスオオカミとその神が管理していたスサノヲと各部門"が原因にしか見えず、内部から怪しいと声を上げたところで無能のやっかみと斬り捨てられるだけ。だから怪しかろうが動く事が出来なかった。

 が、ある異変が起きた事で一変した。連合の頂点たるフォルトゥナ=デウス・マキナが何故か地球に降り立ったという不測の事態が露見するや、守護者達はいきなり不審極まりない行動を取った。

 それまでの慇懃無礼いんぎんぶれいな態度が一点、伊佐凪竜一を誘拐犯と決めつけ確保を命じるという露骨なまでに挑発的な態度へと変わった。誰がどう考えても無茶苦茶な指示だと抗拒止むなしの流れとなるのは致し方ない流れではあるが、今ココで守護者に反旗を翻すのは得策ではないと方々を説得したルミナは同時に二つの計画を立てた。

 一つ、フォルトゥナ=デウス・マキナ誘拐犯が伊佐凪竜一であると姫が自白した場合は彼を速やかに確保した後に逃がす。

 二つ、フォルトゥナ=デウス・マキナ誘拐犯が伊佐凪竜一であると姫が告白しなかった場合は彼と姫を確保する振りをして逃がす。

 無謀な計画は彼女も承知。ともすれば艦長の座を失脚する可能性があると理解しながら、それでもなお行動に移した。この後を考えれば彼女を含めたスサノヲ達は間違いなく黄泉行きであるが、守護者達の影響力を考慮すればそれがいつ終わるかは不明。下手をすれば一生出られない可能性すら頭を過っている筈なのに、それでもその目には強い光が宿っている。

 信じている。必死の思いで逃した伊佐凪竜一が何時かきっと……今度は自分達を助けに来ると信じているのだ。だから彼女は躊躇いなく前に進み、そんな彼女に惹かれる様にスサノヲ達もその後に続く。何もかもが不明瞭な中、それでも微かな情報を頼りに前へと進む。が……

「誰と誰が仲良くするんですかね?」

 出鼻を挫く声がドーム全体に響いた。全員が驚きと共にドーム状の空間の入り口に視線を向けると、総勢20名を超える守護者の一団がスサノヲを待ち構えており、その中央に立つ男が大声でタガミに声を掛けながらルミナ達の元へと歩み寄る光景。

 その表情は酷く冷めており熱を感じない。男はそのままツカツカと歩きルミナの元へと辿り着くと、背後にいた守護者達も無言で雪崩れ込み、程なくスサノヲ達を取り囲んだ。

「分かっていますか?」

 男は冷淡で端整な表情を変える事なく一言呟いた。何を言われるか、何を言うか、皮肉にもお互いが理解し合っているが故に事は淡々と進む。

「承知しています。姫を無事に連れ戻せなかった件については弁明のしようもありません」

「分かっているなら結構、しかし随分と手綱が緩んでいるようだ。スサノヲとは鎖が無ければ駄犬の如く好き勝手に動く様ですね?」

「これでも優秀だと……」

「仲間内で争い合うなんて無様を晒した貴様等の言える台詞かッ!!」

 その男、守護者総代補佐オレステスは先程までの熱を感じさせない表情を一変させ激怒した。端整な顔は周囲に陣取る無表情な守護者とは違い怒りに歪んでいる。

「いいかッよく聞け駄犬共!!姫の御身は貴様ら全員の命より重いのだぞッ!!それに俺はこう命じた筈だ、"命に代えても連れ戻せ"とッ!!」

「事情は有ります」

「ほぉ、名も知らぬ田舎の星と旗艦を救った英雄様は随分と言い訳がお好きなようだ。いいだろう、後で話を聞いてやる。だが命令を無視した罪は決して軽くないぞ。その時に処分も言い渡すから覚悟しておけ!!」

「承知しました」

「では命令に違反した者、黄泉にぶち込んでやるからさっさと前に出ろ!!」

 この男が苛立ちを隠さない理由を誰もが知る故、また何をどうしようが自分達に非があると理解するが故、望んで違反した者は速やかに無言で前に出た。15名を伴って惑星ファイヤーウッドに降り立ったスサノヲの内、タガミ、タケル、ワダツミを含む7名は両手を拘束具でガッチリと拘束され、更に首元に犯罪者専用の拘束具まで装着された。僅かでも違反を犯す素振りでも見せればすぐさま首から上を吹き飛ばすつもりなのだろう。

「オイオイオイ、俺達ぁ命令違反はしたけどこれじゃ犯罪し……」

 厳重な拘束に不服を示したタガミは何時もの調子で減らず口を叩いたが、しかしその口は最後まで台詞を言う前に強引に閉ざされた。

 ドスッ――

 何かを殴った鈍い音がドームに木霊した。直後、"グッ"っという呻き声が続く。タガミの軽口に苛立った守護者の1人が腹部目掛け拳を突き立てた。だがタガミはこの程度で止まらず、反骨心を剥き出しに守護者を睨み返したが……

「俺は何も見ていない。では引き上げるぞ」

 その行動は守護者達の神経を逆なでした。守護者総代補佐たるオレステスがその言葉と共にタガミに背を向ける様に部屋の外へと向かうと、それを合図と判断した守護者達の数人が一斉にタガミを暴行し始めた。

 一方的な暴力は、彼等がひた隠しにしてきた本性が表出したかの様に見えた。
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