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7 王族と朝食を…

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5分程侍女たちと談笑しながら待っていると、ノックの音がした。

アイリスが扉へと向かい何か小声で話したあと、扉を開くと、レオが部屋へと入ってきた。

レオ「おはようございます。聖女さま。今日も本当にお美しい。その瞳の色と同じ装飾品もとてもよくお似合いですよ。顔色も昨夜よりよさそうですね。よく眠れましたか?」ニコッ

相変わらず爽やかな笑顔でさらっと百合香を褒めながら、尋ねられた。日本ではなかったプレイボーイのような文句にたじたじになりながらも、なんとかドクドクとうるさい心を押さえつけ…

『ありがとうございます。朝まで気持ちよく休ませて頂きました。彼女たちも本当によくしてくださって困るようなこともなく快適に過ごさせていただいています。お心遣いありがとうございました。』

レオ「いぇいぇ。それはよかった。これから、父や母とそして兄と妹も揃って朝食になります。そこで、兄と妹をご紹介させてください。」

国王夫妻と、そしてまだ会ったことのないレオ様のご兄妹ときいて、緊張から、ピキッと身体が固まった。レオは百合香をなだめながら、緊張をとこうと食事をする広間へ移動する間、家族の話をしてくれた。レオが家族を大切に思っている事がよく分かる程、家族の話をするレオは嬉々としていて年相応に見えた。

昨日の大広間のようにまた広い扉が現れた。レオはその前でとまり、百合香をみて微笑んだ。百合香が頷くと扉を開き百合香を中へとエスコートしてくれた。

長いテーブルの最奥に国王陛下が一人で座り、テーブルの左側には王妃様と可愛らしい少女が座っている。テーブルの右側にはレオにどことなく似た男性が座っていた。

レオに促され、左側の男性の方に歩いていくと着席していた皆が立ち上がりこちらをみつめている。近くまでよるとレオが立ち止まったため、百合香も立ち止まった。

レオ「おはようございます。父上、母上。そして、兄上とミーもおはよう」ニコッ

国王夫妻「「おはよう、レオ」」
兄「あぁ。」
妹「おはようございます!お兄様!!」

レオ「兄上、ミー、話は聞いていると思うけど…こちらが聖女さまです。あ……そういえば、お名前を聞いていませんでした…。」

『あ…。すみません。ご挨拶が遅れました。神崎百合香と申します。よろしくお願いします』

レオ「名前はカンザキ…?」

『あっいえ、カンザキはファミリーネームです。名前はユリカですよ。私の国ではファミリーネームを先に言うんです。』

王妃「そうなの…。素敵ね…。フフッ
では、ユリカさんとお呼びしたらいいのかしら…?」

『はい!ユリカでお願いします。』ニコッ

レオ「兄上も自己紹介をお願いします。」

兄「第一皇子のアレン・ミハルド・アールジーン・ヴィアンだ。よろしく頼む。」

無表情で自己紹介をするアレンによろしくお願いしますと百合香も頭をさげる。金髪に整った顔立ちも本当にレオ様とそっくりだ。違うのは瞳の色ぐらいかぁー茶色の瞳は王妃様譲りなのね……。

王妃「ミーシアあなたも挨拶なさい。」

口を開こうとしない少女に王妃は叱咤した。その少女へと百合香が視線を向けると少女はプイッと顔をそらした。

王妃「ミーシア!!いい加減になさい!」

妹「………ミーシア・ミハルド・アールジーン・ヴィアンです。」

キッッと百合香を睨み付け目をそらされた。それには国王もレオも苦笑している。

レオ「すみません。悪い子ではないのだけれど……」

アレン「おまえが甘やかすからだろう………。」

国王「すまない。ミーシアはレオが大好きでね…一緒に誰かといるのが気に入らないようなんだ。」

『フフッそうなんですね。兄妹仲がいいのは良いことだと思いますよ』ニコッ

そういうと…ミーシアがちらっとこっちをみてくれたがまたプイッと横をむいてしまった。そんな仕草もかわいくて百合香は微笑ましくみつめていた。

国王「それでは、そろそろ食事にしようか。」

レオに促され、アレン、レオ、百合香の順で席に着いた。国王陛下の声とともに食事がメイドたちによって運ばれてきた。そのどれもが盛り付けまで美しく食欲を誘う香りがした。昨夜から何も食べていなかった百合香は空腹が限界で、無言でただ食事に集中していた。

国王「………さて、みな食事はすんだようだな。それでは話にうつろうか。聖女さま、昨夜お話した通りこの国は危機的状況に陥っております。ですが、聖女さまがどのような術を使うかというのはどの文献にも記されていないのです。そこで…聖女さまは本日、教会本部へと赴いて頂きたい。教会とは本来秘密主義のため、ほとんど情報がないが……女神様を信仰しているため何かしらの情報が掴めるやもしれません。護衛にレオと騎士たちもつけましょう。行って頂けますか………?」

『はい!何か分かる可能性があるのなら、是非行ってみたいです!レオ様よろしくお願いします』ペコリ

レオ「はい!この身にかえましても必ずお守り致しますから、ご安心ください」ニコッ

ミーシア「わ……わたくしも行きますッッ」

王妃「なにを言っているのですか…。ハァ
これはお遊びではありません。あなたはもうすぐ家庭教師の先生がいらっしゃるでしょう。部屋に戻って準備なさい。」

ミーシア「そんなぁ………。お兄様!お兄様はミーシアがいた方が嬉しいですよね!!?」

レオ「ごめんね?ミー。またあとで遊んであげるから、お勉強頑張っておいで。」

ミーシア「お兄様………。」

ミーシアはがっくりと肩をおとし、トボトボと扉の方へ歩いていたかと思うとキッと百合香は睨んでから部屋をあとにした。

国王夫妻もレオもため息をはいていた。アレンは相変わらず無表情だが………。

国王「本当にすまないね。ところでここからが本題なんだ。教会は国王の私ですら不可侵の領域なんだ。危険がないとはいいきれない。レオも付いているが十分に注意されてください。ただでさえ、いい噂は聞かないからなぁ………。」

王妃「あなた、あまり不安を煽ってどうするのです。百合香さん、レオが守ってくれるはずですから大丈夫ですよ」

『はい………。ありがとうございます。』

レオを見ると微笑みながら頷いてくれた。

そのまま、レオと百合香は騎士30名に護衛されながら、馬車で教会本部へと向かった。
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