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シンデレラのミサンガ

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もしシンデレラが、ミサンガを落としたとしたら…。
それは、願いが叶って切れたのだろうか?

深夜0時の鐘。
馬車に乗り込む瞬間、切れたミサンガ。
王子はミサンガを手がかりに、シンデレラを探す事が出来るのか?
探し出せるわけが無い。

「このミサンガは、あなたの物ですか?」

悪い娘は「そうです。」と嘘をつく…。
王子は、一番最初に嘘をついた、悪い娘と結婚するのだろうか…?


もしシンデレラの願いが、舞踏会へ行くことだとしたら…。
願いの叶ったシンデレラは、この先ずっと継母と姉達に虐められ続けるのだろうか?
そんなわけが無い。
なぜならミサンガは、赤とピンクの糸で編まれていたから…。
右の手首に…、利き腕にしていたから…。

恋愛成就を願ったミサンガ。
だったら願いは叶っていない…。



舞踏会から数日後…。

王子は部下を連れ、家々を巡っていました。
訪れた家の娘と簡単な挨拶を交わしては、次の家へ向う。
街の人達は、妃候補を捜しているのだと噂していました。

ある家で、2人の娘に挨拶を終えた王子が、次の家へ向おうとした時、物置に女性の影が見えました。

「あの娘は、この家の者ではないのか?」

母親と2人の娘は、

「とても王子様の前に出せるような娘ではございません。」

と言いましたが、王子は娘を呼び寄せます。
埃まみれ、継ぎはぎだらけの服を着た娘、シンデレラ…。


「王子様。
お目にかかれて光栄です。」

シンデレラは、スカートを軽く持ち上げ頭を垂れます。
と、王子の右手から何かが落ちました。
シンデレラは、拾い上げます。

それは、赤とピンクの糸で編まれたミサンガ。
でもシンデレラが落としたミサンガではありません。
最近作られた新品でした。
王子はニコリと微笑みます。

「私は願いました。
舞踏会の日、私の心を奪った美しい人に、もう一度会いたいと…。」

シンデレラの瞳から涙が溢れます。

「私は思いました。
もし運命が2人を導くならば、その人に出会った時、必ずミサンガが切れる筈だと…。」

王子は、懐からハンカチを取り出すと広げます。
ハンカチの中から切れたミサンガが出てきました。
王子は、ミサンガをシンデレラに手渡します。

「これは、あなたのミサンガですね?」

シンデレラは、頷きます。

「ミサンガは、処分するまでが願い事だと聞きました。
私の願いは、あなたと結婚することです。
私のミサンガを処分してくれますか?」

シンデレラは、泣きながら何度も何度も頷くのでした……。



数日後、王子とシンデレラは結婚しました。
今日は2人で御墓参りです。

シンデレラは、花を供えると両親へ報告します。

「お父様、お母様…、私、結婚しました。
今、幸せでいっぱいです。
どうか安心してください…。」

シンデレラは、切れたミサンガをお墓に返します。
その肩に王子がそっと手を乗せました……。


シンデレラのミサンガは、亡き母が編んでくれたもの。
亡き父が結んでくれたもの。
夢が叶いますようにと、2人が願いを込めてくれたもの。

2人の願い…。
(優しい男の人と結婚して、幸せな家庭を持てますように…。)
両親の願いは、今、叶ったのでした……。
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