運び屋ケイン2 ~懲りない王国~

つなざきえいじ

文字の大きさ
1 / 1

運び屋ケイン2 ~懲りない王国~

しおりを挟む
プルプルプルプル…。
ギャン!ギャン!ギャン!…。

「あーーっ! うるさーーい!!」

小型飛行艇リトルホープ号のエンジン音と貨物室から聞こえてくる動物の鳴き声が混ざり合いケインを苦しめていました。
ケインは、運び屋。
頼まれた荷物を指定された日時に、指定された場所まで運ぶ仕事。

今回、荷物の届け先は、サイホック王国。
国の真ん中に大きな湖が在る王国です。

1年前、王国の依頼で、キコと言う動物を数匹届けました。
王国は、ジーミと言う害獣による農作物の被害が甚大で、その対策として天敵であるキコを輸入したのです。
王国にキコは居なかったので…。
効果は、てき面。
ジーミは、駆逐され被害は殆ど無くなりました。
すると困った事が起こります。
キコは繁殖力が強く、増えすぎてしまったのです。
餌のジーミが足りなくなったキコが、ヒヨヒ鳥を襲い始めたのです。
ヒヨヒ鳥は、家畜として飼われており、このまま放置するわけにはいきません。
対策として、キコの天敵ピョポンの輸入を決めました。
今、そのピョポンが、ケインを苦しめているのです。

と、サイホック王国の湖が見えてきました。
ケインは安堵の声を上げると湖に着水します。


湖に設けられた桟橋の上で、王国の役人が4名待って居ました。
ケインは、飛行艇のロープを桟橋に向って投げます。
すると役人がロープを受け取り、杭に括り付けてくれました。
ケインは、飛行艇から降ります。

「サイホック王国の方々ですね。
荷物をお届けに参りました。」

そう言って機体横、貨物室のドアを開けます。

ギャン!ギャン!ギャン!…。

檻の中のピョポンが、今まで以上に大きな声で鳴き始めました。
檻は2つ。
1つの檻に4匹、計8匹のピョポンが入っています。
どうやらオスとメスで、檻を分けているようです。

と、桟橋近くに居たキコが、ピョポンの鳴き声で、一目散に逃げ出しました。
それを見た役人は笑顔を見せます。

「ケイン! ありがとう。
どうやらキコの天敵で、間違いないようだ。」

ケインは、ピョポンが入った檻を役人に渡します。

「ピョポンの飼育について、いくつか注意点があるのですが…。」

「近くにレストランがあります。
そこで食事をしながら、色々と教えて下さい。」

役人の言葉にケインは頷きました。


レストランは、桟橋から数分の場所にありました。
湖が見えるレストラン。
ケインは、役人2人とテーブルを囲みます。
2人は、飼育係に任命されたホネンとフトタ。
痩せている方が、ホネン。
太っている方が、フトタです。
残る2人は、檻をトラックに積んで王都へ向かいました。

テーブルに料理が運ばれてきます。

「食事をしながら話しましょう。」

フトタの言葉にケインは笑顔で頷きました。
ケインは、料理をパクつきながら注意点を話します。

・つがいにすると一週間で、子供を4~5匹産む非常に繁殖力が強い動物なので、必ずオスとメスを分けて飼育する。
・鳴き声が、うるさく、特に春、発情期を迎えると、一日中鳴く事もあるので、街中では飼わない方が良い。

ホネンが頷きながらメモを取ります。
フトタが質問してきました。

「以前、輸入したキコは、ジーミが居なくなるとヒヨヒ鳥を餌にしたが、ピョポンがキコを駆逐した後、同じような事にはならないのか?」

一番の心配事なのでしょう。
繁殖力が強い事に不安を覚えたようです。

「ピョポンの一番の好物は、キコですが、普段はヒヨヒ鳥と同じ餌を食べます。
その為、ヒヨヒ鳥と一緒に飼われることも多く、ヒヨヒ鳥には絶対手を出しません。」

ケインの言葉に役人2人は顔を見合わせ安堵の表情を浮かべます。
ケインは、言葉を続けます。

「仮にピョポンが増えすぎたとしても、ピョポンはヒヨヒ鳥と同じくらい美味いので、家畜として利用できるんですよ。」

役人2人は、大喜び。
フトタは、質問し忘れた事が無いか手帳を確認します。
ホネンは、メモの内容に間違いが無いか確認します。

その間に、ケインは料理を食べ終りました。
役人2人が、ケインの手を取り、礼を言います。

「ありがとう!
まさか家畜として利用できるとは思いもしなかった。」

「ヒヨヒ鳥より繁殖力が強いなんて、次に来られた時には、家畜が全てピョポンに変わっているかもしれませんよ。」

ケインは、食事の礼を言うとレストランを出ました。
役人2人もレストランを出ると車に乗り、王都へ向かいました。
ケインは、リトルホープ号に戻りエンジンをかけると、サイホック王国を飛び立ちます…。


プルプルプルプル…。

夢8型エンジンが、のん気な音を立てます。
行きの騒々しさが嘘のようです。

(あんなに感謝されると、心苦しいな…。)

ケインは、苦笑いを浮かべます。
実は、発情期を迎えたピョポンは、通常の10倍近い鳴き声を上げるのです。
その声は、10km先まで届くと言われ、近隣に住む人々は全員寝不足になります。
なにしろ一日中鳴くのですから…。

原産地では、この鳴き声が問題になり、飼育を禁じています。
ケインは、この一番の問題を話しませんでした。
届けたピョポンを受け取って貰えない事を恐れたのです。

春まで、あと3ヶ月…。

(うーん…、あまり繁殖させないよう、引き返して注意した方が良いのか…?
いや、知らなかったふりをして、来月あたり行って話した方が良いか…?)

ケインは、ポリポリと頭をかきます。
リトルホープ号は、ケインの悩み、そのままにフラフラと揺れながら飛ん行くのでした……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

緑色の友達

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

おなか痛い

味噌村 幸太郎
絵本
毎日、お腹を壊す光男。 学校でトイレを使うことをためらっていた。 なぜなら、クラスメイトから冷やかされるから。 そんな彼はある日、漏らしてしまう。 光男は泣いて学校のみんなが怖くなってしまう。 だが、彼を助けたのは普段離したことない女の子だった。 ※本作はクローン病をテーマにした作品となります。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

処理中です...