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第2章 相思
1 ギャザクシル侯爵家
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ギャザクシル侯爵家…それは侯爵中で、最も序列が下に位置する家である。
歴史もそれほど古くなく、せいぜい150年ほど。
ただ…当時、伯爵だった祖先が、事業によって国家に多大な恩恵をもたらした事によって、
侯爵位を得たのだ。
しかし…現在では、その後の当主が凡庸だったため、その事業自体もあまり芳しくない。
どちらかと言うと、細々と食いつないでいる…という感じなのだ。
もっとも、一度得た虚栄というのは、簡単にはぬぐえない。
先祖の威光を大切にするのは良いが、それに固執し、自分の力を過大評価するのは、かなり
だめだめ。
だからこそ…現在のギャラクシル侯爵家は、あまりよい評価を受けていない。
「マーガレット」
そう呼ばれて、振り向くマギー。
その視線の先には…、40前後の女性と、マギーと同年代の女性がいた。
「お義母様…」
40代ぐらいの女性をそう呼ぶマギーは、どこかぎこちない。
「どこへ行くのですか?」
「あ…、仕事が終わりましたので、図書館へ…」
「そう…行ってらっしゃい」
かなりそっけない。
「あの…お義母様…、チェィル…私がこの前言ったことは…」
「またそれ~、いい加減にしてよ!!」
同年代の女性は、随分ときつく、マギーに突っかかっていく。
「だって…、私だって…いつどうなるか、わからないし…」
「何よ!!この家を出ていく予定でもあるワケ?ないよね。
お姉様、少し前に破談になってから、誰からもお声がかからないんだから!!」
「およしなさい!!チェィル。
アナタも余計な事を言っていないで、さっさと行きなさい」
「は、はい…」
足早に去っていくマギー。
「何あれ?生意気!!」
「あなたもそんなことで突っかかるんじゃ、ありません。
あの子は私たちにとって、役に立つんです!!
生かさず殺さずでいくよう、言っておいたでしょ!!」
「そーだけどぉ~」
チェィルはこれ見よがしに、ふくれっ面をする。
「とにかく…今とても順調なんです。
アナタの婚姻も決まりましたし…今何か問題を起こすわけにはいきません!!
わかりましたね」
「は~い」
そうして2人もまた、どこかの部屋へと消えていった。
---------------------------------------------------------------------------------------
「ギャラクシル侯爵家は、現当主と前妻(マギーが一歳の時に死亡)の間の子、マギー…。
そして後妻とその娘のチェィルの4人家族なんですが…。
この後妻とその娘がかなりの曲者なんですよ」
私は資料を見せながら、つらつらと話す。
「まず結構前からなんですが…、めんどくさい仕事や、難しい事をすべてマギーに押し付けて、
自分たちがやったように振舞ってきたんです。
父親も周りも…今の所それを疑っていないようなので、本人たちがうまいのか、周りが愚鈍なのかは
わかりませんが…」
わたしゃすぐ、おかしいって気づいたからね。
「巷に流れる悪評は…この義母と妹が流したものです。
万が一、マギーが外に出たいと思った時、居場所がなくなるように…」
ああ、ちなみに悪評ってのはね。
簡単に書くけど…。
すっごい男漁りが好きで、家の仕事をすべて義母と妹に押し付けて、遊びまわっている。
家の金を自分の贅沢品に惜しみなく注いて、借金まである。
性格が悪くて、機嫌によってヒステリーを起こしては、暴力をふるう。
全て事実無根じゃ。
「マギーは…おかしいとは思っているようでしたが、さりとて自分の立場上、性格上、強くも言えな
かったようで…。
結局…言いなりになっていたようですね…」
そーなんだよね。
貴族のご令嬢ってさ…例え成人してたって、一人で生きていくの難しいんだよ。
働くって概念が…身についてない人意外と多い。
よっぽど商魂たくましかったり、気が強くて自分の権利を主張できる人ならいいんだけどさ…。
世の中って結局…言った者勝ちの所があるからね。
因みにマギーが外出を許されている場所だって、何かしら家として必要にならない限りは、図書館だけ。
ウチの施設には、図書館の中で着替えてきているの。
私が全面的に協力してね。
ここまで聞いたローカス卿は、資料を叩きつけるように、机に置き、
「こいつ等全員…今すぐぶちのめしたい…」
静かな怒りをたたえていた。
「私だってそうしたかったんですけどね…、しかし現時点で、マギーの引き取り先がない以上、
迂闊なことは出来なかった。
高い身分というのは、役に立つときが多いですが、欠点だってちゃんとある」
身分が下手に高いと、民間で働くとき…かなり揶揄されたり、そもそも関わること自体を
嫌がられ、職が見つからないことだってある。
ここも、家を出て働くことの難しさだ。
「だからまあ…私がファルメニウス公爵夫人になった時点で…私の助手…という立場を
確立させられればと思い…あえて危ない場にも連れて行ったのです…。
これはマギーの選択でもあります…。
今…マギーの家自体が、あまり彼女にとって、安全ではありませんので」
「どういうことです?」
「実は…さっきの妹・チェィルの婚姻が、最近決まったのですが…」
「相手の男というのが…、侯爵家の三男坊なのですが…、かなり女に節操がないのですよ」
「はあ?」
「私は…早めにマギーの地位を確立してあげたかったのですが…、さりとて狩猟大会が大変危険なのは、
わかっていた…。
だから…連れて行こうかどうか、最終的にマギーの意見を尊重したのです。
その時に、マギーから言われたのは…」
一息おく。
「どうも私がその話を出した数日前…チェィルの結婚相手が、ねちっこくマギーに付きまとった
らしいのです。
幸い上手く逃げられたようですが…」
「はぁああぁ!!」
「だから…マギーは危険でも行くと言いました…。
仕事を押し付けられるのはまだしも…」
「あなた以外に体を触られるのは…、絶対嫌だと言っていましたよ」
一瞬呆けた後…ローカス卿は随分と照れ臭そうにしている。
「まあ、そんなわけでですね。
私は…出来るだけ早く、マギーをあの家から…私の助手という形で引き抜きます。
これは…ギリアムも了承してくれたし、場合によっては自分が出ると言ってくれました」
「そうか…」
「マギーの父は、長いものに巻かれる主義ですので…、ギリアムが出れば一発だと思います」
「ひとまずそれなら…安心ですね」
「ええ…、それでそのまま、ゼッツェリゼ施設に入れて、然るべき手続きをする予定です」
するとにわかに、ローカス卿の顔色が変わった…。
「なぜですか?
アナタの助手として引き取るのでは?」
「……それは一時的な措置です。
永続的にやる気はありません」
……なんだか、ショック受けてるなぁ…。
まあ、無理もないかぁ…。
ゼッツェリゼ施設って…簡単に言うと、縁切寺ってとこだ。
ただ、夫婦間も受け付けるが、家族間も受け付ける…。
これは貴族だけの話じゃないが、家庭内暴力ってやっぱどこにでもある。
だから…貴族の身分を捨ててでも、自由になりたい人もいる。
そう言う人が、この施設に来て手続するのさ。
実家に引き取られる場合は、貴族身分を持ったままに出来る場合もあるが、マギーはそもそも
実家との縁を切りたいのだから、身分を捨てたら、平民になる。
「色々考えたんですよ…本当に…。
でも…私はそれが最良と判断いたしました。
マギーも…それでいいと言っているので、早めに手続きいたします」
ローカス卿は下を向き、黙ったままだったが、
「あ、あのさ…オルフィリア公爵夫人…」
唐突に話し始めた。
「しばらくアナタの助手にして…そのうち然るべき家に、嫁がせるのもありじゃないか?」
「……マギーがどこか、行きたい家があって、先方が受け付ける…と言うならそれも考えましたが…。
現状は無いのでね」
「だったら…助手のままでも…」
「いいえ、臨時雇いが限界です」
「なぜです?」
「まず…私のいる場所…ファルメニウス公爵家および、フィリアム商会総括部は…バリバリの
実力本位主義…マギーは確かに2人分の仕事を一人でやっているので、事務能力は高いですが…
でも、私の周りにはそんな人はゴロゴロいます。
そんな中で、マギーだけを特別扱いは出来ません。
そして…末端の仕事に付けば、悪評のせいであらぬ誤解や、誹謗中傷を受けるでしょう。
マギーは…芯は強いですが、それに対抗する力が、果たしてあるかどうか…」
これ…本当にそうなんだよね。
マギーはルナに対する態度のように、芯は強くて優しいんだけど…だからって悪評と一人で
相対しなけらばならないとなると…ね。
人をいじめるヤツは、大抵徒党を組むから。
「だったら、普通に客人なり保護をすれば…」
「そうするためには、ファルメニウス公爵夫人の地位が、逆に邪魔です。
マギー1人にそういった事をした場合、同じような境遇の人や…タカリのような人がうじゃうじゃ
湧いてきてしまいます」
私は一呼吸入れて、
「つまり…身分を捨て、別人になるのが一番話が早いんですよ。
別人になってしまえば、悪評の的になることは無い」
ローカス卿は何とも言えない顔をしている。
「私は…ローカス卿には感謝しているんです」
「へ?」
唐突に言われ、呆けるローカス卿。
「マギーは…ローカス卿に思いを寄せていると、私はすぐにわかりました。
だから…私がローカス卿に施設に行ってくれ…と言ったのは、同じ空間に居れば、遠目からでも
姿を見ることが出来ると思って…」
私は少し笑い、
「でもまさか…こんなことになるなんて…。
世の中本当にわからないなぁ…と、思いました」
歴史もそれほど古くなく、せいぜい150年ほど。
ただ…当時、伯爵だった祖先が、事業によって国家に多大な恩恵をもたらした事によって、
侯爵位を得たのだ。
しかし…現在では、その後の当主が凡庸だったため、その事業自体もあまり芳しくない。
どちらかと言うと、細々と食いつないでいる…という感じなのだ。
もっとも、一度得た虚栄というのは、簡単にはぬぐえない。
先祖の威光を大切にするのは良いが、それに固執し、自分の力を過大評価するのは、かなり
だめだめ。
だからこそ…現在のギャラクシル侯爵家は、あまりよい評価を受けていない。
「マーガレット」
そう呼ばれて、振り向くマギー。
その視線の先には…、40前後の女性と、マギーと同年代の女性がいた。
「お義母様…」
40代ぐらいの女性をそう呼ぶマギーは、どこかぎこちない。
「どこへ行くのですか?」
「あ…、仕事が終わりましたので、図書館へ…」
「そう…行ってらっしゃい」
かなりそっけない。
「あの…お義母様…、チェィル…私がこの前言ったことは…」
「またそれ~、いい加減にしてよ!!」
同年代の女性は、随分ときつく、マギーに突っかかっていく。
「だって…、私だって…いつどうなるか、わからないし…」
「何よ!!この家を出ていく予定でもあるワケ?ないよね。
お姉様、少し前に破談になってから、誰からもお声がかからないんだから!!」
「およしなさい!!チェィル。
アナタも余計な事を言っていないで、さっさと行きなさい」
「は、はい…」
足早に去っていくマギー。
「何あれ?生意気!!」
「あなたもそんなことで突っかかるんじゃ、ありません。
あの子は私たちにとって、役に立つんです!!
生かさず殺さずでいくよう、言っておいたでしょ!!」
「そーだけどぉ~」
チェィルはこれ見よがしに、ふくれっ面をする。
「とにかく…今とても順調なんです。
アナタの婚姻も決まりましたし…今何か問題を起こすわけにはいきません!!
わかりましたね」
「は~い」
そうして2人もまた、どこかの部屋へと消えていった。
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「ギャラクシル侯爵家は、現当主と前妻(マギーが一歳の時に死亡)の間の子、マギー…。
そして後妻とその娘のチェィルの4人家族なんですが…。
この後妻とその娘がかなりの曲者なんですよ」
私は資料を見せながら、つらつらと話す。
「まず結構前からなんですが…、めんどくさい仕事や、難しい事をすべてマギーに押し付けて、
自分たちがやったように振舞ってきたんです。
父親も周りも…今の所それを疑っていないようなので、本人たちがうまいのか、周りが愚鈍なのかは
わかりませんが…」
わたしゃすぐ、おかしいって気づいたからね。
「巷に流れる悪評は…この義母と妹が流したものです。
万が一、マギーが外に出たいと思った時、居場所がなくなるように…」
ああ、ちなみに悪評ってのはね。
簡単に書くけど…。
すっごい男漁りが好きで、家の仕事をすべて義母と妹に押し付けて、遊びまわっている。
家の金を自分の贅沢品に惜しみなく注いて、借金まである。
性格が悪くて、機嫌によってヒステリーを起こしては、暴力をふるう。
全て事実無根じゃ。
「マギーは…おかしいとは思っているようでしたが、さりとて自分の立場上、性格上、強くも言えな
かったようで…。
結局…言いなりになっていたようですね…」
そーなんだよね。
貴族のご令嬢ってさ…例え成人してたって、一人で生きていくの難しいんだよ。
働くって概念が…身についてない人意外と多い。
よっぽど商魂たくましかったり、気が強くて自分の権利を主張できる人ならいいんだけどさ…。
世の中って結局…言った者勝ちの所があるからね。
因みにマギーが外出を許されている場所だって、何かしら家として必要にならない限りは、図書館だけ。
ウチの施設には、図書館の中で着替えてきているの。
私が全面的に協力してね。
ここまで聞いたローカス卿は、資料を叩きつけるように、机に置き、
「こいつ等全員…今すぐぶちのめしたい…」
静かな怒りをたたえていた。
「私だってそうしたかったんですけどね…、しかし現時点で、マギーの引き取り先がない以上、
迂闊なことは出来なかった。
高い身分というのは、役に立つときが多いですが、欠点だってちゃんとある」
身分が下手に高いと、民間で働くとき…かなり揶揄されたり、そもそも関わること自体を
嫌がられ、職が見つからないことだってある。
ここも、家を出て働くことの難しさだ。
「だからまあ…私がファルメニウス公爵夫人になった時点で…私の助手…という立場を
確立させられればと思い…あえて危ない場にも連れて行ったのです…。
これはマギーの選択でもあります…。
今…マギーの家自体が、あまり彼女にとって、安全ではありませんので」
「どういうことです?」
「実は…さっきの妹・チェィルの婚姻が、最近決まったのですが…」
「相手の男というのが…、侯爵家の三男坊なのですが…、かなり女に節操がないのですよ」
「はあ?」
「私は…早めにマギーの地位を確立してあげたかったのですが…、さりとて狩猟大会が大変危険なのは、
わかっていた…。
だから…連れて行こうかどうか、最終的にマギーの意見を尊重したのです。
その時に、マギーから言われたのは…」
一息おく。
「どうも私がその話を出した数日前…チェィルの結婚相手が、ねちっこくマギーに付きまとった
らしいのです。
幸い上手く逃げられたようですが…」
「はぁああぁ!!」
「だから…マギーは危険でも行くと言いました…。
仕事を押し付けられるのはまだしも…」
「あなた以外に体を触られるのは…、絶対嫌だと言っていましたよ」
一瞬呆けた後…ローカス卿は随分と照れ臭そうにしている。
「まあ、そんなわけでですね。
私は…出来るだけ早く、マギーをあの家から…私の助手という形で引き抜きます。
これは…ギリアムも了承してくれたし、場合によっては自分が出ると言ってくれました」
「そうか…」
「マギーの父は、長いものに巻かれる主義ですので…、ギリアムが出れば一発だと思います」
「ひとまずそれなら…安心ですね」
「ええ…、それでそのまま、ゼッツェリゼ施設に入れて、然るべき手続きをする予定です」
するとにわかに、ローカス卿の顔色が変わった…。
「なぜですか?
アナタの助手として引き取るのでは?」
「……それは一時的な措置です。
永続的にやる気はありません」
……なんだか、ショック受けてるなぁ…。
まあ、無理もないかぁ…。
ゼッツェリゼ施設って…簡単に言うと、縁切寺ってとこだ。
ただ、夫婦間も受け付けるが、家族間も受け付ける…。
これは貴族だけの話じゃないが、家庭内暴力ってやっぱどこにでもある。
だから…貴族の身分を捨ててでも、自由になりたい人もいる。
そう言う人が、この施設に来て手続するのさ。
実家に引き取られる場合は、貴族身分を持ったままに出来る場合もあるが、マギーはそもそも
実家との縁を切りたいのだから、身分を捨てたら、平民になる。
「色々考えたんですよ…本当に…。
でも…私はそれが最良と判断いたしました。
マギーも…それでいいと言っているので、早めに手続きいたします」
ローカス卿は下を向き、黙ったままだったが、
「あ、あのさ…オルフィリア公爵夫人…」
唐突に話し始めた。
「しばらくアナタの助手にして…そのうち然るべき家に、嫁がせるのもありじゃないか?」
「……マギーがどこか、行きたい家があって、先方が受け付ける…と言うならそれも考えましたが…。
現状は無いのでね」
「だったら…助手のままでも…」
「いいえ、臨時雇いが限界です」
「なぜです?」
「まず…私のいる場所…ファルメニウス公爵家および、フィリアム商会総括部は…バリバリの
実力本位主義…マギーは確かに2人分の仕事を一人でやっているので、事務能力は高いですが…
でも、私の周りにはそんな人はゴロゴロいます。
そんな中で、マギーだけを特別扱いは出来ません。
そして…末端の仕事に付けば、悪評のせいであらぬ誤解や、誹謗中傷を受けるでしょう。
マギーは…芯は強いですが、それに対抗する力が、果たしてあるかどうか…」
これ…本当にそうなんだよね。
マギーはルナに対する態度のように、芯は強くて優しいんだけど…だからって悪評と一人で
相対しなけらばならないとなると…ね。
人をいじめるヤツは、大抵徒党を組むから。
「だったら、普通に客人なり保護をすれば…」
「そうするためには、ファルメニウス公爵夫人の地位が、逆に邪魔です。
マギー1人にそういった事をした場合、同じような境遇の人や…タカリのような人がうじゃうじゃ
湧いてきてしまいます」
私は一呼吸入れて、
「つまり…身分を捨て、別人になるのが一番話が早いんですよ。
別人になってしまえば、悪評の的になることは無い」
ローカス卿は何とも言えない顔をしている。
「私は…ローカス卿には感謝しているんです」
「へ?」
唐突に言われ、呆けるローカス卿。
「マギーは…ローカス卿に思いを寄せていると、私はすぐにわかりました。
だから…私がローカス卿に施設に行ってくれ…と言ったのは、同じ空間に居れば、遠目からでも
姿を見ることが出来ると思って…」
私は少し笑い、
「でもまさか…こんなことになるなんて…。
世の中本当にわからないなぁ…と、思いました」
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