ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第3章 因縁

3 ローエン・クリデラ・ケイシロン

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ギリアムが話してくれた。
ローエン・クリデラ・ケイシロン前公爵…。
20歳の若さで近衛騎士団団長となってから、近衛騎士団一筋でやって来た人。
非常に義理人情に厚い人で、曲がったことが大嫌い。
しょーもない事ばかりしていたギリアムの父を…いつも牽制していたのはこの人だった。
ギリアム父に理路整然と異論を述べ、筋の通らない事には従わない。
大変な人格者だと…。

だから…私は素で話してみたくなったのさ…。

「では…」

眼光が…鋭くなったね。

「お言葉に甘えさせていただく!!」

いいねいいね。

わたしゃ前世で、睨めっこプレイとかやったからよ。
睨まれたくらい、へでもねぇぞ。

「まず!!いつからケイシロンが、ファルメニウスの下僕になったかから、お聞かせ願おう!!」

はは…敬語っぽいけど、威嚇がビシビシ伝わってくる。
その証拠に…一気に声が大きくなった。
さっきは本当に…抑えていたんだな。

フォルトは私を心配そうに見ているけれど…。
大丈夫だから、出てこないでよ。

「一体どういう事でしょうか…?
そもそもファルメニウス公爵家から分岐したと言うだけで…、ケイシロンとファルメニウスは
もうすでに別の家と解釈しております」

シレっと答えてやった…。
私の表情は…落ち着いている。

「逆に…」

二十数年も娼婦生活してりゃーよぉ、マジでヤバ目のも相手にしてきているんだよ。
怒鳴られる程度で、怖気づいてたら、やってらんなかったよ。
私はローエンじい様の目を、真っすぐ見据え、

「ローエン閣下がなぜ…そのようにお思いになったか…が、知りたく存じます」

あくまで…平常心…な。
こういう時は…舞子さんの骨を蒔いた海を…思い浮かべるのさ。
凄く…心が静まるからさ。

「我が孫・ローカスの結婚の件…ファルメニウス公爵夫人が一枚かんでいる…とお聞きした」

ローエンじい様…睨みが凄いな…。
普通の貴婦人じゃ、怯えて何も言えなかろう。
しかし…。
私は…ほんの少しだけ思考した…。
確かに、完全に無関係かって聞かれたら、絶対違う。

「確かに…マーガレット夫人は私の友人で…ファルメニウス公爵家が管理する施設で、2人は
知り合いました…。
ですが、私が2人に結婚を薦めたりはしておりません」

逆に…あんまりいい顔しなかったの…ローカス卿はちゃんと見ている。

「ですが…先ほどの下僕うんぬんから想像するに…もしかしたらローエン閣下は、私が2人の
結婚を推し進めたとでも、お思いなのではありませんか?
なぜそのような誤解が生じたのか…大変気になりますので、情報源をお聞かせ願います」

場合によっちゃ、名誉棄損事項だぞ、これ…。

「ローカスが手紙をよこした…。
結婚したことと…詳細はギリアム坊主とアナタに尋ねるように…とな」

本当に…丸投げしよったわ、あの若造…。
さすがにこれは、ギリアムに〆てもらわんといかんな…。
でもまずは…。

「わたくしは!!情報源を明かしてくださいと申し上げました!!」

強めの口調だよ。
だって、二度手間嫌いだもん。

「なに…?」

「ギリアムに聞いたローエン閣下の性格では…、ローカス卿からそのような内容のお手紙が
届いたら…まず私達より先に、ローカス卿を問い詰めると思われます。
ですが…先ほどの態度を見て…ギリアムがローカス卿に、圧力をかけた…とお思いになっている
ようでしたので…。
別の…それも信頼できる情報源が無ければ、そうは思われないかと…。
私が知りたいのはそこです」

私は静かに…でも、鋭い目をしていただろうな…。
ローエンじい様の空気が…少しばかり変わった。

「ローカスが聞けと言ったから、聞きに来たまでだが?」

あくまで知ら切るつもりかい?
なら…。

「もし本当にそうならば…我が夫ギリアムは、ローエン閣下を見る目に関してだけ、随分と眼が
節穴になったようですわね」

まあこれだけでもいいんだけど…。

「それとも…」

私の悪い癖はここからさ。

「ローエン閣下がお仕事をされなくなって、耄碌されたのでしょうか?」

にーっこりと…ね。
これには…ルリーラ夫人とジィリアの顔が強張った…。
だって…明らかに、纏う空気に怒りが満ちたからね。

「若いうちの身の程知らずは…身を亡ぼしますぞ…」

かなり…目がきつく…鋭くなったな…。
射殺すって…まさにこんな感じだろうなぁ…。

でも…私の心は落ち着いてるぜ。

「ローエン閣下!!おやめく」

「下がりなさい!!フォルト!!」

私の声は…ひときわ大きい。

「私が!!無礼講と!!言ったのです!!
私の沽券を損なわすようなことを、しないでちょうだい!!」

フォルトは…渋い顔をしつつも、

「申し訳ございません…奥様…」

「そう思うなら、もう少し下がりなさい…前に出すぎです」

わかっているよ…。
ローエンじい様が、私に何かするとは思っていないだろうけれど…。
それでも間にいつでも入れる用意、してくれようとしているの…。
だから…。

「わかりました」

後でものすごく…お礼言わなきゃな…。
耐えて…くれたこと…。

「失礼いたしました…お話を続けましょう…ローエン閣下…」

私は…ほんの少しの不敵な笑みをたたえ…また真っすぐに見据える。

もうダメだなぁ…。
病気だよ、ほんとに。

娼婦として…ずっと生きて…男をかなりの数食い散らかす様になったころ…。

簡単に引っかかるような男じゃあ…満足できなくなったんだ…。
簡単には落ちない男を…落としてみたくてしょうがなくなった…。

やってみたら…クセになっちまった。
そしてそのまま…1度目の人生を終えた…。

子供からスタートして、少しは落ち着いたかと思ってたんだけどなぁ…。
ダメだ、こりゃ。

「ギリアム坊主は…随分と失礼な女を娶ったモノだ…」

ギリアムを坊主扱いとはね…。
それに無礼講とは言え、この言い草…。

…………………。
いよいよ最高だよ、このじい様…。

このヘドネのコレクションに…入れたくなる。

「このわしに、耄碌ジジイ呼ばわりとは…」

「あら?そう思ったら、そう言ったほうが、話が早いのではございませんか?
私は…公爵夫人以外に、様々な顔を持っておりますので、時間は有限に使いたいのです。
本当に耄碌してらっしゃるなら、早々にお引き取りいただきたいので」

怒気を孕んだオーラを出し続けるローエンじい様に、いけしゃあしゃあと言ってのける。
何だか…私より、フォルトやルリーラ夫人、ジィリアの方が、かなり嫌な汗をかいているようだ。

「なぜわしが…耄碌していると思う?小娘よ…」

あっはっは。
ついに序列上位の人間に小娘かよ…。
いいねいいね。
いよいよ周りの顔色が悪くなってきた。
フォルトにだけは、後で謝らんとね。

「私がギリアムより聞きましたローエン閣下の性格が、間違っていないのでしたら…。
そしてローカス卿の手紙だけを見たならば…。
ローエン閣下は間違いなく…私にどうこう言うより、ローカス卿を責め立てます。
そして、ローカス卿を伴った上で、必要があれば私とギリアムの所に来ます」

「ほう…」

「ですが…そうなさらなかったのなら、耄碌したとしか思えません。
でも…仮に、耄碌していないと言うのなら…」

私はすこーし唇の端を持ち上げ、

「ローエン閣下が大変信用している情報筋から…、最初におっしゃったような情報を提供された…
としか、思えないのです。
だから情報元を明かしてください…と、申し上げました。
その方の情報がどこから来ているのか…是非お話したくなりました」

まあ、予想はついているが、知らないふりをしておいた方がいい…今はね。
私は…お茶に手を付け、一口飲むと、

「ギリアムは…ローエン閣下の事を、大変褒めていらっしゃいました…。
勇将にして、智将…とね。
ですから耄碌してらっしゃるなら、妻としてその事をギリアムに言いませんと…。
しょーもない言葉を鵜吞みにしては、指揮系統を預かる身としてよくございませんので」

優雅にティーカップを置く。

「テオルドじゃ…」

「!!」

内心ちょっとびっくりしたよ、さすがにね。

「わしの情報源…テオルドじゃよ」

鋭い目で睨んだまま…言葉を紡ぐローエンじい様…。
私は…流石に思考するしかなかった。

何がどうして…そうなったか…。
そのつながりが…何なのか…。

真顔で固まったままの私の横から、

「奥様…今すぐ確認を…」

フォルトが…やっぱり信じられないと言いたげに、出てきたので、

「少しだけ!!待ちなさいな!!」

言葉を切って、しっかりと言う。
テオルド卿は…そんな性格じゃないし…ね。

私は脳内のスパークを…めっちゃ力を入れて最大限にする。
やがて…静かに弾けたパーツを…再度拾い集め、また弾く…。
しばし繰り返すと…見えて来るのさ…。

ああ…。
多分これは…。
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