ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第4章 交流

7 ゾフィーナの言

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「ルリーラ夫人…同じ公爵夫人として、少々口を出させていただきますが…」

前置きが上手いね、ゾフィーナよ…。

「公爵という身分を…ルリーラ夫人はそれほどまでに、下に見ていらっしゃるのですか?」

「え…?」

「公爵という身分は…王族の次に高いものです…。
ですから…急に結婚など、下々がやるような下賤な行為を、許してはいけないのです。
しっかりとした教育を施し、家の恥にならないと一門に認めさせ…初めてお披露目するものかと
存じます…。
そして…お披露目をした時に、不備が見つかれば、それに対処できるようになるまで…、
結婚を許すべきではありません」

……なるほど。こりゃぁ、力があるわ。
完全にケイシロンの事を言っているが…その実、私とギリアムの電撃婚約&結婚を暗に批判して
やがる…。

ギリアムの話を聞いた段階で思っていたが、これで確信した。
ゾフィーナは…レベッカと同タイプ…力があって性悪っつー、一番厄介なタイプだ。

「まあ…ゾフィーナ夫人の言う事も最もなのですけれど…、私も主人も、その時は引退した身の上
だったもので…あまり強くも言えませんでねぇ…。
私と主人が見た限り、特に問題も無いから…ひとまず教育して様子を見ようと思っております」

…随分と、控えめな言い方だなぁ…。
確かにケイシロン公爵家よりドラヴェルグ公爵家の方が、序列が上ではある…。
だが、家の中の事に…口を出すのは、原則失礼に当たるってのは、上位でも下位でも変わらない。

………となると。
過去に結構…ひどい目にあっているのかもな…。

ルリーラは力が全くないとは言わないが、社交界でブイブイ言わせたいタイプじゃない。
それに、もともとの身分が高ければ、逆らおうとする人間もあまりいないだろうし。
特にじい様の連れ合いじゃあ…じい様の方を恐れて、手を出さない人間もいただろう。
あとは…クァーリアの親友ってのも…デカいだろうなぁ。

本人の希望に関わらず、ずっと庇護されてきたら…、そりゃぁゾフィーナの敵じゃない。
ましてゾフィーナは序列が上で、王女の娘とあっちゃぁな。

「まあ…そこまでおっしゃるなら、私もこれ以上強く言う気は無いですが…。
しかし…ただでさえ、最近公爵家というものの気風を乱す動きが、活発化しているようですので…、
私といたしましても、家の中のこととはいえ、黙っていられなくなったのですよ。
ケイシロン公爵家として…どうお考えなのか…とね」

あくまで…涼し気に言ってやがる。
またさらっと、私とギリアムの批判しよったな…。

「そのようなつもりは、断じてございません!!
ウチの主人の気質はご存じでしょう」

「もちろん…ローエン閣下の事は、よく存じ上げております。
ウチの息子もお世話になったことですし…ね」

ここで笑顔になる。
へぇ…これは聞いていなかったな…。
後でギリアムに確認しよ。

「オルフィリア公爵夫人…」

来たか…あんだよ?

「オルフィリア公爵夫人は…名実ともに正式な夫人となられました…。
ですので…わたくしが先ほど申しましたこと…、全貴族夫人のトップとなられた方のご意見を…
是非とも頂戴いたしたく存じます…」

さすがに…礼儀はしっかり重んじるんだな。
私なんぞ、卑下して踏みつけにしたいだろうに…。

さて…このタイプは突き崩すの難しいから…今回は軽いジャブから行くか…。
この場で倒す必要は、今の所ないしな…。

「そうですねぇ…。
気風や家風…と言ってしまうと、一概には本当に言えなくなりますので、ハッキリこれがいい…
とは、申し上げられませんが…」

私は扇子で口元を隠したまま、

「嫁ぎ先で、しっかりとした実績を上げていくしか、ないと思いますよ…。
身分が高かろうと…嫁いだ家の名誉を著しく下げる方もいらっしゃいますし…」

さてと…わかるかなぁ、暗に誰の事を言っているか?
ポーカーフェイスがさすがだから…レベッカ以上に読めないなぁ…。
でも…力があるんだから、わかるよねぇ。

「もし具体的な例を…と、申されるなら…お名前を上げても、よろしいですよぉ」

ファルメニウス公爵家に嫁いできて、さんざ愛人作って遊びまくって、最後はその愛人との
痴情のもつれで刺殺された…なんつー醜聞さらした、テメェの姉貴だよ。

普通こういうのは、公にされないで、秘匿されるもんだが…。
まだ生きていたギリアム父が、次の嫁候補を一日も早く探すためと、ドラヴェルグ公爵家に
再婚のこと、何も言わせないために、大々的にばら撒いたからなぁ。

その影響をもろに喰らって痛手を受けたこと…再燃させたいなら好きにしていいぜ。

「いえ…、事は家の内情に関わること…、そこまでは望んでおりません」

まあ、そう言うだろうと思ったよ。

「まあ…そうなのですか?残念ですねぇ…いい題材だと思ったのですが…」

うけけけっ!悪いが私も…性悪にゃぁ自信があるぜ。
だから…もう少し突っ込ませてもらう!!
上手くいきゃぁ、失言的なものが…出るかも…だしなぁ。

「でも…せっかく公爵家の気風うんぬんが出ましたので…、この機会に…また膿がたまらぬよう、
その気風を著しく暴落された方の事は…お話しておいた方が、良いかと思いましたわぁ」

「ちなみにその方…アカデミーを大変優秀な成績で合格され、習い事もほぼ完ぺきにこなし、
礼儀作法は…言わずもがなだった、大変身分の高いご令嬢だったそうですよぉ」

「それなのになぜ…あのような、下々の下賤者でもやらないような…馬鹿な真似をなさったのか…
一回しっかりと考察してみるのも、悪くないと思いました…アナタの言をお聞きして…ね」

扇子で口元を隠しつつ、眼を細める私は…、まさに悪役!!の顔をしていたろうなぁ…。

「差し出がましいようですがそれは…おやめになることをお勧めいたします」

ポーカーフェイスは相変わらず崩れないが…口調が少し強くなったね。

「なぜでしょうか?」

「私の予想が正しければ…。
ファルメニウス公爵家の威厳を…著しく損なう行為かと思われますので…。
ギリアム公爵閣下のご不興を…買う行為かと…」

私は…心の中で、ガッツポーズした。
そうだよぉ…その言葉を…アンタの口から出したかったんだ!!

「まあ…ギリアムの不興ですか…。確かに…著しく気分を害してしまうなら…避けねばなりま
せんねぇ…。
私とギリアムは…、いませっかく、仲睦まじいのですから…」

私は…さりげなーく、仲睦まじいを強調した…。

……お。
少し空気が変わった…。
失言だったこと…気づいたみたいだね…でも…。

………………………いまさら、遅い!!

「あらぁ~、そんな事を言わずに、題材として言いなさいな、オルフィリア公爵夫人…。
アナタは仮にも全貴族夫人の代表なのだから、痛手を被るのなんて…へでもないでしょう!!」

バカ王女が…嬉々として出てきた。
まっあねぇ~。アンタに言われたく、無いけどぉ~。

「あら…王女殿下の御用命とあらば…聞かざるを得ませんねぇ…。
ただ…かなり衝撃的な話でございますが…、よろしいのでしょうか?」

「構わないわ、ただし!!」

バカ王女はたたんだ扇子で、私を指し、

「嘘偽りなく…話しなさいな!!!」

いいよ、いいよぉ~、私は…そう言ってくれた方が…すごーく助かる。

「もちろんでございますよ…。
王女殿下に嘘偽りなど…申せるはずがございませんもの…」

私は…扇子をたたむ。

「では…参らせていただきます!!」

ちょいと前世の話をしようかね…。
私は娼婦歴が長くなればなるほど…様々な…到底世間様に自慢できない異名を賜った。
つけたのは…主に娼婦仲間だった。
つまり…娼婦仲間から見たって、私は…相当だったってことなんだと、今はわかる。

その中の一つに…こんなのがある。
ズバリ、

歩く猥談放送局

だ。

あ?何が言いたいかって?

わたしゃ、自他ともに認める…卑猥・お下劣極まりない話をするのは…大得意って事さ!!
いや、大得意どころか、私の右に出る物は無し!!と、自負している。
このヘドネにとっちゃ、猥談なんて推し活と同じよ!!
心の底から、楽しい事でしかない。

というワケでですね。
私は今回…この前世の放送局にしっかりとチャンネルを合わせました。

ひとまず…お上品な方々が揃っているから…レベルは中級から。
話しのネタは…ギリアム母の醜聞…主に下ネタ関係。

放送開始ぃぃ~。

私の口から澱みなく出たのは…ギリアム母の愛人数人との猥らな性行為を…赤裸々という言葉が
生ぬるく聞こえるぐらいに…語りつくさせていただきましたですよ、はい…。
そりゃーもう、私の前世の経験値生かしまくり、手を変え品を変え…はいはい、とても…とても
有意義でしたよ、わたくしは。

で、終わって辺りを見回せば…。
皆様の…顎が外れて目が飛び出て…は、軽い方。
気絶する人しばしば…。
おお~い、中級でこれかよ。
状況を見て、応えないなら上級編にしゃれ込もうかと思ったが…やめておいた方がよさそうだ。

ターゲットの3人も…なんだか意識が飛んでるっぽいし。

「あの~、王女殿下?」

私のすっとぼけた声に、ハッとなったようで、

「ん、なな、何か知ら…」

さすがに…かなり慌てて返してきた。

「王女殿下が、嘘・偽りなく話せ…と、申されましたゆえ、何の偽りもなく!!
お話させていただきましたぁ~、よろしいでしょうか?」

すっごくいい笑顔だよぉ…だって、心底楽しかったも~ん。
私の声は…かなりはきはきとしていたので…これが周りにいた皆様の、気付け薬になったようだ。

「え…あのさ…聞いてはいたけど…ここまでひどいとは…」

「動物だって…もう少し節操あると思うが…」

「本当よね…動物通り越して、性器がそのまま生まれたんじゃない?」

「下品の一言で、とても言い表せない…吐きそう…」

「私も…気持ち悪~い」

「こんなのと血が繋がってたら…生きられないわ、私…」

「ギリアム公爵閣下の母上ってことは、ドラヴェルグ公爵家…よね…」

まあ、ひそひそと、こっちまで聞こえる声で、私の予想通りの陰口をあざーすっ!!

「オルフィリア公爵夫人…」

何とか…絞り出してる声…って感じだな、ゾフィーナおばはん…いや、クソばばあでいいか、
こいつは。

「アナタには…節操というものが、無いのですか…」

ありません!!…ってびしっと答えられないのが、辛いなぁ。
扇子を持つ手…って言うか、全身が震えてらぁ。
さすがに私の猥談は…上品なクソばばあには、きつかったみたい。

「そう申されましても…。
まさか王女殿下に、噓偽りを申し上げることも出来ず…でしたので」

てへぺろって感じで…表面はあくまでお上品に答えてやったぞ、はっは。
ちなみに元ネタは実話だが…ヘドネ流に脚色させていただいたことは、絶対口チャックじゃ、へっ!!
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