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第3章 反撃
16 身分制度ってやつぁ本当に…
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ギリアムが帰ってから少しのち…グレリオは…庭でそのまま、処置を受けたのだが…。
「……巨大な岩にでも、潰されたのですか?
完全な粉砕骨折ですよ?暫く…歩くのは不可能と思ってください」
ケイシロンお抱えの医者の言葉だった。
グレンフォはため息をつき、
「だから言っただろうが…。あれほど怒りを露にしたギリアム公爵の進路を塞ぐなど…。
命があっただけ、儲けものだと思え」
「お、おじい様…いくら上位の貴族でも、これは傷害罪に…」
足をおさえつつ、うめきながら言うが、
「なるわけなかろう!!ギリアム公爵は、しっかりと警告した!!
それを無視して負った傷など…訴えた所で、誰も取り合わん!!」
「そんなぁ…」
情けないべそのかき方をしている。
「とにかくお前は先に帰れ!!」
グレリオは…使用人に抱えられながら、体を引きずり帰って行った。
「しかし…ギリアム公爵は相変わらずですね…」
グレンフォがため息交じりに言うと、
「そうでもないぞ。
今日は…心底怒らせた後だったことと、オルフィリア公爵夫人がいなかったのが、マズかった」
ローエンは…口をへの字にして、言う。
「オルフィリア公爵夫人がいれば、違ったと?」
「おそらく…全く違うと思うぞ、グレンフォよ」
その言葉に…心底驚いているようだった。
「ひとまず…この場はお開きにしよう…。マーガレットの事は…後日改めて、会を設ける」
ローエンの言葉を持って、皆が帰り支度を始める。
「ま、待ってください!!ギリアム公爵閣下は、ヒドイ思い違いをなさっています!!
どうかその事…言ってください!!」
マギーは…泣きながら、必死に縋ってくるが、これには…
「マーガレット夫人」
ツァリオが出た。
「アナタは…アカデミーを優秀な成績で卒業した故、分かると思うが…。
手紙というものは、非常に難しく、注意しなければならないものだ」
「相対して話す言葉と違って…紙の上に書かれた文字は、感情を読み取るのが難しい。
ゆえに…相手の取り方が、自分の思っているものと、180℃違ってしまう事も、往々にして
ある…」
「で、でも…弁解させてください!!そんなつもりは…」
マギーの目は涙で濡れ、化粧が剝げ落ちている。
「…私はギリアム公爵でも、オルフィリア公爵夫人でもないから…、これ以上の言及は控えるがね。
ただ一つ…確実な事があるから、言わせてもらう」
「確実な…事…」
「わしがオルフィリア公爵夫人の立場だったとして、あのような手紙が送られた来たら…」
ここでツァリオの目が鋭くなる。
「わしもマーガレット夫人からの手紙は…、2度と受け取らない」
マギーの顔が…戦慄する。
「あとは…自分で考える事だ」
それだけ言い残し…、ツァリオは帰って行った。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ギリアムがケイシロンに来た、数日後…。
この日はクァーリアが招かれていた。
「結局…手紙のどこがダメだったか、わかないのですね」
クァーリアの声は…抑揚こそないが、酷く冷たい。
「いえ!!わかりました!!
私の悪評の処理を…お願いするような書き方をしてしまったのが、いけなかったのです」
「それだけですか?」
「え…」
本当にわからない…と、言う顔のマギーを見て、クァーリアは…こめかみを抑えている。
「悪評の処理も勿論ですが、アナタの手紙には…あと3つダメな部分があります」
「そ、そんなに…」
「それを踏まえて…良くお考え下さい」
すると…。
「クァーリア夫人…確かにその通りなんだけど…、近衛騎士団への説明会も迫っている
から、ひとまず…どこが悪かったのか、教えてもらえないかしら…。
ギリアム様がみんなの前で発表しているから…、問い詰められるかもしれないし…」
するとクァーリアは…少し考えつつ、
「まあ…致し方ありませんね。でも…今回だけですよ」
「は、はい!!」
「まず1つ目、愛称を使うのは、ダメと言ったでしょう?」
「で、でも…今まで手紙では…」
「それは仲が良好だった時…。ですが、それでも正式なファルメニウス公爵夫人となったら、
避けねばならなかった。
相手の好意だと、認識できていないのが、まずダメです」
「2つ目…ギリアム様もおっしゃいましたが、アナタの為に、ウェリナ嬢を助けた訳ではない。
もっと言えば…まるであの手紙の書き方では、アナタがオルフィリア公爵夫人に頼んで、ウェリナ嬢を
助けてもらったように見える。
実際は…ウェリナ嬢の事に対し、何のアクションも起こしていない…。
取りようによっては、自分の被害を最小限にするための、酷く利己的な嘘をついたことになります」
「スマン…それに対しては、わしが収穫祭が終わった後、国王陛下に直談判すると、言ってあった
のだ…」
ローエンが横から出てきた。
するとクァーリアは、さらに難しい顔をして、
「まあ…それについては、後でお話しいたしますが…最後3つ目」
「あれほど…越権行為はダメだと言われていたにもかかわらず、また…追い出せと言いましたね」
「て、提案しただけで…」
「…アナタの文面を見た限りで、私も命令としか受け取れませんでした。
相手がそうとれば…越権行為です」
それを言われた時の、マギーの顔を見て、
「ほらまた!!あれほど注意したでしょう!!被害者面をするな…と」
「え…」
「悲しそうにする=不当な目に遭っている…と、思っている証拠と取られます。
相手に…愛想をつかされるか、さらに攻撃のネタになるだけ…と、言いましたよね?」
「は…はい…」
なんとか返事はするが…やはり表情は変わらない。
そんなマギーから目を離し、
「ローエン閣下…確かに収穫祭の最中では、国王陛下もお忙しかったかと、思われます…。
しかし…」
「ウェリナ嬢に王女殿下からの呼び出しが来た時点で…、ケイシロンで解決したければ、
動くべきでした」
ローエンに苦言を呈する。
「やはり、そうか…」
「はい…。私もそうだったのですが…、ローエン閣下も暫く王都を離れておりましたよね。
ですから…いまいちつかめなかったのだと思われますが、王女殿下の悪辣性と冷酷さは、昔と比べ、
飛躍的に上がっています。
呼び出した時点で…粉をかけるどころか、酷い損害を与えると…認識すべきでした」
ローエンは…唸ったまま、口を閉ざしてしまった。
「まあ…過ぎたことは致し方ありません。
まずは…近衛騎士団への説明会に向けて、対策をしましょう」
クァーリアの話は…まだまだ続いた…。
--------------------------------------------------------------------------------------------
その日…私はファルメニウス公爵家の庭で、お茶を飲んでいた。
傍らにはもちろん、フィリー軍団がいる。
そして…ジュリアとクァーリア夫人が今日のお相手だ。
「それじゃあ…近衛騎士団への説明会も、あまり芳しくなかったのですね…」
私が言えば、
「芳しくないと言うより…ほぼ失敗だったと言ってよいと思います」
ジュリアが、キッパリと答えた。
……まあ、そうだろうなぁ。
「悪だくみしているかもしれない、手練れたちの元に、ターゲットを連れていく…これは、ターゲットも
連れていく人間も、手練れであったとしても、作戦でなければ、絶対にやってはいけない。
軽率すぎる…。
あと、嘘をついたのもマズかった」
「それに…オルフィリア公爵夫人に言われて、近衛騎士に報告した時…、絶対に動かないように…と
言われていたにも関わらず、ああいった事をしでかしましたから…。
弁解の余地がほぼなかったんです。
ただひたすら…精進しますので…に、なってしまいましたね」
ジュリアはつらつらと説明してくれた…。
いくつもの禁忌を犯した以上…挽回はかなり大変だ。
「まあ…ヘリジェラス伯爵も言っていたようですが、ちょっとずつやるしかないですね…。
でも…問題は、受け入れてくれるところがあるかどうか…ですね」
私がお茶を飲み飲み、ポツリと言えば、
「……やはり、オルフィリア公爵夫人は、よくわかっておいでですね」
ジュリアは…少し笑みを漏らした。
あまり例に出したくないが…一度犯罪者の烙印を押されたものを、大抵の人間が忌避するのと一緒。
マギーがした失態は…そのレベルに到達してしまった。
受け入れる方だって、保身のため何とか…断るに決まってる。
「一番いいのは、ルリーラ夫人の伝手を使う事ですが…。
おそらくそちらも、殆ど断られたでしょうね」
すると…ジュリアがちょっと、あっけに取られて、
「そこまでわかっておいででしたか…」
言うからさ、
「ん~、ルリーラ夫人って、性格はいいけど…未だに迂闊だなぁ…って、思う事あったから。
これが若いころとなると…マーガレット夫人レベルで、結構やらかしていると思うんだよね…。
でも…その頃って、下手にいじめてくる奴いなかったから、難を逃れた…。
それだけ」
「でも…今は違う。
上が悪辣になってしまった以上、迂闊な人間、力のない人間は、よほど断れない状態じゃない
限り、受け入れられない。
そうなると…断るのに、マーガレット夫人の件は絶好よ。
王女殿下にこっちが襲われたら、守ってくださるんですか?
に、明確な答えが言えなきゃ、無理だからさ」
すると…ジュリアとクァーリア夫人は、無言で頷くようなしぐさを見せるのだった…。
「……巨大な岩にでも、潰されたのですか?
完全な粉砕骨折ですよ?暫く…歩くのは不可能と思ってください」
ケイシロンお抱えの医者の言葉だった。
グレンフォはため息をつき、
「だから言っただろうが…。あれほど怒りを露にしたギリアム公爵の進路を塞ぐなど…。
命があっただけ、儲けものだと思え」
「お、おじい様…いくら上位の貴族でも、これは傷害罪に…」
足をおさえつつ、うめきながら言うが、
「なるわけなかろう!!ギリアム公爵は、しっかりと警告した!!
それを無視して負った傷など…訴えた所で、誰も取り合わん!!」
「そんなぁ…」
情けないべそのかき方をしている。
「とにかくお前は先に帰れ!!」
グレリオは…使用人に抱えられながら、体を引きずり帰って行った。
「しかし…ギリアム公爵は相変わらずですね…」
グレンフォがため息交じりに言うと、
「そうでもないぞ。
今日は…心底怒らせた後だったことと、オルフィリア公爵夫人がいなかったのが、マズかった」
ローエンは…口をへの字にして、言う。
「オルフィリア公爵夫人がいれば、違ったと?」
「おそらく…全く違うと思うぞ、グレンフォよ」
その言葉に…心底驚いているようだった。
「ひとまず…この場はお開きにしよう…。マーガレットの事は…後日改めて、会を設ける」
ローエンの言葉を持って、皆が帰り支度を始める。
「ま、待ってください!!ギリアム公爵閣下は、ヒドイ思い違いをなさっています!!
どうかその事…言ってください!!」
マギーは…泣きながら、必死に縋ってくるが、これには…
「マーガレット夫人」
ツァリオが出た。
「アナタは…アカデミーを優秀な成績で卒業した故、分かると思うが…。
手紙というものは、非常に難しく、注意しなければならないものだ」
「相対して話す言葉と違って…紙の上に書かれた文字は、感情を読み取るのが難しい。
ゆえに…相手の取り方が、自分の思っているものと、180℃違ってしまう事も、往々にして
ある…」
「で、でも…弁解させてください!!そんなつもりは…」
マギーの目は涙で濡れ、化粧が剝げ落ちている。
「…私はギリアム公爵でも、オルフィリア公爵夫人でもないから…、これ以上の言及は控えるがね。
ただ一つ…確実な事があるから、言わせてもらう」
「確実な…事…」
「わしがオルフィリア公爵夫人の立場だったとして、あのような手紙が送られた来たら…」
ここでツァリオの目が鋭くなる。
「わしもマーガレット夫人からの手紙は…、2度と受け取らない」
マギーの顔が…戦慄する。
「あとは…自分で考える事だ」
それだけ言い残し…、ツァリオは帰って行った。
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ギリアムがケイシロンに来た、数日後…。
この日はクァーリアが招かれていた。
「結局…手紙のどこがダメだったか、わかないのですね」
クァーリアの声は…抑揚こそないが、酷く冷たい。
「いえ!!わかりました!!
私の悪評の処理を…お願いするような書き方をしてしまったのが、いけなかったのです」
「それだけですか?」
「え…」
本当にわからない…と、言う顔のマギーを見て、クァーリアは…こめかみを抑えている。
「悪評の処理も勿論ですが、アナタの手紙には…あと3つダメな部分があります」
「そ、そんなに…」
「それを踏まえて…良くお考え下さい」
すると…。
「クァーリア夫人…確かにその通りなんだけど…、近衛騎士団への説明会も迫っている
から、ひとまず…どこが悪かったのか、教えてもらえないかしら…。
ギリアム様がみんなの前で発表しているから…、問い詰められるかもしれないし…」
するとクァーリアは…少し考えつつ、
「まあ…致し方ありませんね。でも…今回だけですよ」
「は、はい!!」
「まず1つ目、愛称を使うのは、ダメと言ったでしょう?」
「で、でも…今まで手紙では…」
「それは仲が良好だった時…。ですが、それでも正式なファルメニウス公爵夫人となったら、
避けねばならなかった。
相手の好意だと、認識できていないのが、まずダメです」
「2つ目…ギリアム様もおっしゃいましたが、アナタの為に、ウェリナ嬢を助けた訳ではない。
もっと言えば…まるであの手紙の書き方では、アナタがオルフィリア公爵夫人に頼んで、ウェリナ嬢を
助けてもらったように見える。
実際は…ウェリナ嬢の事に対し、何のアクションも起こしていない…。
取りようによっては、自分の被害を最小限にするための、酷く利己的な嘘をついたことになります」
「スマン…それに対しては、わしが収穫祭が終わった後、国王陛下に直談判すると、言ってあった
のだ…」
ローエンが横から出てきた。
するとクァーリアは、さらに難しい顔をして、
「まあ…それについては、後でお話しいたしますが…最後3つ目」
「あれほど…越権行為はダメだと言われていたにもかかわらず、また…追い出せと言いましたね」
「て、提案しただけで…」
「…アナタの文面を見た限りで、私も命令としか受け取れませんでした。
相手がそうとれば…越権行為です」
それを言われた時の、マギーの顔を見て、
「ほらまた!!あれほど注意したでしょう!!被害者面をするな…と」
「え…」
「悲しそうにする=不当な目に遭っている…と、思っている証拠と取られます。
相手に…愛想をつかされるか、さらに攻撃のネタになるだけ…と、言いましたよね?」
「は…はい…」
なんとか返事はするが…やはり表情は変わらない。
そんなマギーから目を離し、
「ローエン閣下…確かに収穫祭の最中では、国王陛下もお忙しかったかと、思われます…。
しかし…」
「ウェリナ嬢に王女殿下からの呼び出しが来た時点で…、ケイシロンで解決したければ、
動くべきでした」
ローエンに苦言を呈する。
「やはり、そうか…」
「はい…。私もそうだったのですが…、ローエン閣下も暫く王都を離れておりましたよね。
ですから…いまいちつかめなかったのだと思われますが、王女殿下の悪辣性と冷酷さは、昔と比べ、
飛躍的に上がっています。
呼び出した時点で…粉をかけるどころか、酷い損害を与えると…認識すべきでした」
ローエンは…唸ったまま、口を閉ざしてしまった。
「まあ…過ぎたことは致し方ありません。
まずは…近衛騎士団への説明会に向けて、対策をしましょう」
クァーリアの話は…まだまだ続いた…。
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その日…私はファルメニウス公爵家の庭で、お茶を飲んでいた。
傍らにはもちろん、フィリー軍団がいる。
そして…ジュリアとクァーリア夫人が今日のお相手だ。
「それじゃあ…近衛騎士団への説明会も、あまり芳しくなかったのですね…」
私が言えば、
「芳しくないと言うより…ほぼ失敗だったと言ってよいと思います」
ジュリアが、キッパリと答えた。
……まあ、そうだろうなぁ。
「悪だくみしているかもしれない、手練れたちの元に、ターゲットを連れていく…これは、ターゲットも
連れていく人間も、手練れであったとしても、作戦でなければ、絶対にやってはいけない。
軽率すぎる…。
あと、嘘をついたのもマズかった」
「それに…オルフィリア公爵夫人に言われて、近衛騎士に報告した時…、絶対に動かないように…と
言われていたにも関わらず、ああいった事をしでかしましたから…。
弁解の余地がほぼなかったんです。
ただひたすら…精進しますので…に、なってしまいましたね」
ジュリアはつらつらと説明してくれた…。
いくつもの禁忌を犯した以上…挽回はかなり大変だ。
「まあ…ヘリジェラス伯爵も言っていたようですが、ちょっとずつやるしかないですね…。
でも…問題は、受け入れてくれるところがあるかどうか…ですね」
私がお茶を飲み飲み、ポツリと言えば、
「……やはり、オルフィリア公爵夫人は、よくわかっておいでですね」
ジュリアは…少し笑みを漏らした。
あまり例に出したくないが…一度犯罪者の烙印を押されたものを、大抵の人間が忌避するのと一緒。
マギーがした失態は…そのレベルに到達してしまった。
受け入れる方だって、保身のため何とか…断るに決まってる。
「一番いいのは、ルリーラ夫人の伝手を使う事ですが…。
おそらくそちらも、殆ど断られたでしょうね」
すると…ジュリアがちょっと、あっけに取られて、
「そこまでわかっておいででしたか…」
言うからさ、
「ん~、ルリーラ夫人って、性格はいいけど…未だに迂闊だなぁ…って、思う事あったから。
これが若いころとなると…マーガレット夫人レベルで、結構やらかしていると思うんだよね…。
でも…その頃って、下手にいじめてくる奴いなかったから、難を逃れた…。
それだけ」
「でも…今は違う。
上が悪辣になってしまった以上、迂闊な人間、力のない人間は、よほど断れない状態じゃない
限り、受け入れられない。
そうなると…断るのに、マーガレット夫人の件は絶好よ。
王女殿下にこっちが襲われたら、守ってくださるんですか?
に、明確な答えが言えなきゃ、無理だからさ」
すると…ジュリアとクァーリア夫人は、無言で頷くようなしぐさを見せるのだった…。
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