ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 2

木野 キノ子

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第1章 茶会

6 ななな、何でベンズ卿がここにぃ?

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私はこの日初めて、呆けてしまったのだが…。

まあただ、それは…。
近衛騎士2人もバカ王女も他の皆さんも同じだよねー、うん。

「ふ…副団長…あの…これは…」

うわ、真っ青…。
だよねー、一番見られたくない相手に、規則違反二つも見られた
んだからさー。

「ベ…ベンズ卿…、なぜここに…」

バカ王女もだいぶ、動揺しとる…当然か…。

「ギリアム公爵閣下に呼ばれました」

「え…?」

何が起こっているのかわからないという顔の、バカ王女を尻目に、

「ギリアム公爵閣下!!
いらっしゃるのでしょう?出てきてください!!」

うおっ…。
拡声器ってもんがいらんな、この人…。

するとお茶会会場のすぐ近くの木の上から、ギリアムが降って
きた。

「ギ…ギリアム様…どうして…」

あ、これ、驚いたフリね。
この世界って前世一人ぼっちで戦った時、大分お世話になった
防犯カメラとか、ボイスレコーダー&録音アプリなんて皆無だ
からさ~。
どーするか考えて、ギリアムにその役目をお願いした…と。

んで、私が驚くのは打ち合わせ済みで、私が頼んでやったよりも
私を見たいギリアムが勝手に来たということにした方が、より
相手にダメージ強いからね。

「どうして?私はせっかく仕事が休みなのに、フィリーはお茶会
じゃないですか。
せめてフィリーのかわいい姿が見たくて、ずっとここに隠れて
いたのです」

「ずっと…ですか?
いつから?」

「昼前にはいましたね~」

「え?じゃあ、お茶会最初から見ていたのですか?」

「ええ、もちろん…。
準備が始まる前からいましたよ」

あ、クレアとタニアおばはん真っ青だ。

「まあ…言いたいことは沢山ありますが、まずは近衛騎士の方
からかたずけましょう」

その時、馬の鳴く声がした。

「どうどう」

ありゃ、ローカス卿も参戦だ。

「団長、ご足労いただきありがとうございます」

ベンズ卿は年下にもしっかり礼儀をはらうね。
テオルド卿タイプやな。

「かまわん。
この前も、不始末やらかしたばかりだ。
オレも直々に見たくなった」

さらに青くなった2人。
ギリアムはローカス卿とベンズ卿を前にし、

「まずおかしいと思ったのは、レティア王女殿下が別の場所に
移った時だ。
護衛であるはずの二人が、お茶会の会場から動こうとしなくてね。
何か命令された様子もないし…。
これは随分な職務怠慢だと思い、急ぎ側近をローカス卿と
ベンズ卿の所にやったのだ」

「なるほど…。
オレは仕事ですぐ動けなくてな。
ベンズ卿はいつ来た?」

「レティア王女殿下とオルフィリア嬢が話をしているあたりです。
ずっと陰からグラン卿、ナーリス卿の様子を見ていましたが、
レティア王女殿下に呼ばれて、2人が出ていきましたので、話が
聞こえる位置まで移動しました。
まあ…そのあとは…我が目を疑いました」

ベンズ卿は一呼吸置く。

「レティア王女殿下が、すぐにオルフィリア嬢を連行するように
言ったのですが…この2人はそれを何の躊躇もなく、王女殿下に
進言することもなく、実行しようとしました」

「はあ!!」

2人を睨むローカス卿。

「そしてさらに…暴れたわけでもないオルフィリア嬢の腕を
掴んで、無理やり連れて行こうとしました」

わー、ローカス卿の怒髪天顔って、こんななんだ~。

「さすがにフィリーの腕を掴まれた時は、私も出ようかと思った
が、ベンズ卿が先に出たから、とりあえず黙っていた」

「私を呼んでくださり、ありがとうございます。
ギリアム公爵閣下…。
近衛騎士の不始末を、あなたに正されたとあっては、名折れも
いいところ」

ベンズ卿はギリアムに頭を垂れる。

「オレからもお礼いたします、ギリアム公爵閣下」

う~ん、つまりギリアムは…。
近衛騎士が通常と違う動きをしていただけで、絡んでくると推測し
一番罰しても後腐れのない人間を、呼び寄せた…か。

…………………完璧超人か!!おまいは!!

ねえ、本当に現在21歳、人生1度目?
人生10度目ぐらいじゃなきゃ、アリエヘン能力じゃない?

などと私が心の中で突っ込んでいる最中、ギリアムは

「ローカス卿、ベンズ卿、お礼を言ってくださるなら、私から
2人に1つだけ質問することを、お許しください」

「もちろん…なんですか?」

「先ほど少し言いましたが、私はお茶会開始前からここにいま
した…ですので…」

あ…フェイラが震えだした。
そりゃーそーか。

「私はこの目で見たんですよ。
フェイラ嬢がなぜか自分で自分にお茶をかけて、フィリーが
やったと皆に言う、一部始終をね」

ギリアムは、グラン卿、ナーリス卿に視線を送り、

「だがあの2人は…フィリーがフェイラ嬢にお茶をかけたと
ハッキリ断言した」

「フム…なるほど(ローカス)」

「そ…それについては!!」

おや、バカ王女出た(お化けか?)

「規則違反とは何の関係も…」

「いいえ!!関係あります」

ベンズ卿の声、とーりいーなぁ。

「そもそもこの2人が規約違反を犯した原因の話が、それだから
です。
十分、追及する必要があります」

「あ、あなた王女である私に逆らう気!!」

「レティア王女殿下!!」

おや、ローカス卿だ。

「…規則違反のこともご存じなかったのなら、これも知らないと
思いますので、お教えします。
近衛騎士団長、副団長には近衛騎士団内部のことに限り、捜査、
審査、罰則を下す権限が与えられております。
ゆえにベンズ卿の行動は、規範にのっとった、正当なものです」

なるほどね~…。
ってか、バカ王女、マジで知らないの?
王家を護衛している人間たちの規則だよ?ねぇ。
自分を着飾ることと、体磨くことしか興味ねぇんだな、こりゃ…。

「一度しか聞かん!!しっかり答えろ!!」

ベンズ卿はわざと間を置き、

「お前たちはお茶会の会場で…何を見たんだ?」

2人は下を向いていたが、やがて…。

「わ、我々は確かに見ました!!オルフィリア嬢がフェイラ嬢に
お茶をかけたのを!!」

あらま…。
けっこー骨あるんだ。
ま、バカ王女に逆らえないのか、義理立てしてんのか…。
どっちにしても、ついて行く人間は選んだ方がいいよ~。

「確かか?」

ローカス卿が問う。

「はい!!」

「名に誓って?」

「はい!!」

この名に誓ってってたまに出たけど…騎士にとっては特に、命を
かけてと同義だ。

「ベンズ卿…お前はその時まだ、いなかったんだな?」

「はい…私が来たのは、オルフィリア嬢が皆にひどいと責められて
いるのを、レティア王女殿下が割って入った時でした」

ありゃ、残念…。
まあ、しゃーねぇ。

「ふーむ、オレも見ていないからな…。
お前たち、名に誓うと言ったが、再度聞く。
本当に名に誓うのか?」

「はい!!誓います」

「わかった…、オレとベンズ卿は、団員であるお前らを信じよう」

「あ…ありがとうございます」

大分安堵してるねぇ。
まあでも、いい判断だよ。
どんなに怪しくても、自分の身内を信じないのは結束を崩すこと
になるからね。
いい男やな、ローカス卿、ベンズ卿。

「まあ、お前らは騎士だから、この件を名に懸けて誓った意味は、
重々承知しているだろうからな」

「はい!…え?」

ん?私もわからん。

「お前たちは…ギリアム公爵閣下と逆の事実を名に誓って、
真実であると告白した…つまり…」

2人の顔色、どんどん悪くなるな~。

「お前たち2人は、ギリアム公爵閣下を嘘つきだと侮辱したも
同じだ」

あ…ようやっと、私も事態が飲み込めたわ~。

え?
説明も求む?

えっとねぇ…。
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