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第3章 二頭
9 パントマイムプレイ
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パントマイムプレイが始まって、30分以上が経過した。
人に見られる心配はない。
だって…。
こんなに質が良い使用人が揃ってるなら、招待客は別の門から通す手筈にしてある
はずだもん。
夏に差しかかり、午後の強い日差しが照りつける中、私は微動だにせず、汗も拭わず
その姿勢を保ち続けた。
懐かしいなぁ…。
あらゆるプレイをマスターすることに、精進したころを思い出す。
…ってか、逆にありがてぇよ。
さすがにアンタを相手にするのは、もう少し先だと思ってたから。
考える時間を、私にくれてありがとう。
しかし…どーすっかな。
一級品の頭脳を持つ奴だからこそ、下手なことは言えないし、ちょっとの失言が
命取りだ。
ギリアムがいるとはいえ…っつーか、いたからこうなってんだぁ!!
あーまた、怒りがわいてきた。
いかんいかん。
思い出せ…私の経験…。
私は沢山の人間と…あらゆる人種・職種の人間と接してきたじゃないか…。
この人の経験しえない方法で、培ったもの…。
それだけが私の誇れるもの…唯一持っているもの…この人に…勝てるかもしれない
もの…。
折角もらった時間を、一秒たりとも無駄にするな!!
思い出せ!!私の精神の細胞!!
思い出せ―――――――――――――――っ!!
「ギリアム公爵」
私をそのまま、ツァリオ公爵閣下はギリアムに話しかけた。
「先ほどからおとなしいな。
絶対に文句を言ってくると思ったのに」
そんなツァリオ公爵閣下の方など一切向かず、
「48分」
とだけ。
凡庸な者にはわからなかっただろう。
しかしその意味が、ツァリオ公爵閣下にはすぐにわかった。
他にも分かった者がいたかは…わからない。
「ちっ!!」
ツァリオ公爵閣下が舌打ちする。
「だから貴様はいけ好かんのだ。
無駄に頭がいいだけでなく、回転も速く、機転もきく。
そして何より、鉄の自制心がある」
「50分」
返事の代わりに、時間のみを告げる。
「オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢!!顔を上げろ、もういい」
私は静かに身を起こす。
そして余裕しゃくしゃく(実際そうだし)で、体を動かす。
もちろん優雅にね。
「フィリー…大丈夫でしたか?」
誰のせいで、こうなったと思ってやがる?あ?
なんてことは、表に出さず、
「ギリアム様…先ほどの時間を計っていたのは、なぜですか?」
大方の予想はつくんだけど、念のため確認。
「アナタが知らなくていい事です」
こういう答え方をするってこたぁ、私の予想通りだな。
「話してください」
「……」
「は・な・し・て・く・だ・さ・い」
青筋だらけにさせないでよね!!
歳食って皺増える、原因になりそうだからさ。
「一週間後に、アカデミーで全体発表会及び、定例報告会があるのだ。
妻はわしと一緒に必ず出ることになっている」
…やっぱりか。
目には目を歯には歯を…をやる気だな。
「その会場に…お前は出席したことは無いが、来ることはできる。
その場でわしが今、お前の婚約者にしたことと、同じことをやる気だな」
あ、全員の空気が変わった。
気づいてたの、この人だけか~。
「……」
ギリアム…ノーコメント決め込む気かよ。
皆、すっげぇ顔で睨んでるよ、オイ。
でも…なんでだろ…。
こいつ等…。
何かムカつく。
「面白いですな…」
おや、ドルグスト卿。
「では、私もオルフィリア嬢とパーティーでお会いした時、そのように致しましょう」
は~あ、目には目を歯には歯をのいたちごっこかよぉ~。
めんどくせ。
私は改めてギリアムの顔を見る。
ああ、やっぱり。
とても苦しそうだ。
その時フッと視界が暗くなった。
…あれ?
おかしいな…一時間もパントマイムプレイしてないし、こういう事態を想定して、ちゃんと準備も
してきたから…炎天下とはいえ、体調がおかしくなるはず無いのに…。
私は…頭のねじがスポポポポーンと、飛ぶのを感じた。
そして頭に浮かんだのは…私今何してるの?
私…何のためにこんな事、してるの…?だった…。
お辞儀しっぱなしの時、私は前世・今世のすべての記憶を、何度も何度も走馬灯のように、
思い出せるだけ思い出した。
だからなのかな…。
今とても、クリーンだよ。
何だろう…この感じ…。
遥か…はるか昔に感じたことがある気がする。
あれは確か…。
……そうだ!!私が親が死んで二度の離婚を経て…娼婦になったばかりの時だ。
私が早く一人前になるために…って、しょーもない客や、危険な客でも受けちまってた時だ。
50歳を超えていたベテラン…舞子さんから…すっごい叱られた。
もっと自分を大切にしろ、そんなんじゃ心身が持たない、何が大切かを一度しっかり考えろって。
でも私は若かったから…その警告を無視した。
それどころか…。
口うるさいばばあぐらいにしか思っていなかった。
当時の私の客に、かなり金払いのいい客がいた。
舞子さんには、その客に気を許しちゃダメだって言われた。
でもやっぱり、当時の私は拙くて…理由がわからなかった。
結果…私はその男に刺された。
ううん、刺されそうになった。
私に向けられたその男の刃は…私の体には届かなかった。
私と男の間に…舞子さんが入ったから。
自分を大切にしろって言ってた人が、何で私を庇うの?バカじゃないの?
そんなことしか言えなかった…当時の自分を呪ってやりたい。
そんな私に舞子さんは笑いながら言った。
アンタは私の若いころに、一番似てる…だからほっとけなかった。
救急車が来るまで…手を握って泣いていた私に、舞子さんは…よく聞きなって。
この世で一番大切なのは自分。
その次が自分を好きになってくれる人。
でも…好きになってくれる人が増えすぎると…必ず限界が来る。
その時が来たら正念場。
好きな人を…取捨選択しなきゃならないからね…。
嫌いな人を切り捨てるより…すごく大変だから、覚悟しなって。
私がアンタに教える、最後の事だから…どうか忘れないで…って。
私は最後なんて言わないでって何度も言ったけど……、結局最後になった。
天涯孤独の舞子さんの葬儀は、全て私がやった。
骨は海にまいた。
骨壺なんて狭い場所にこもりっきりなんて、舞子さんに似合わないと思ったから。
そして骨をまいた海岸に…私は死ぬまで…暇さえあれば何度も通った…。
実親の墓になんて、一度も行かなかったのにさ。
ああそうだ。
このクリーンさ…。
舞子さんの骨をまいた海岸で…ぼーっとしている時、こんな感じだった。
舞子さんの死後、私は私を乱暴に扱ってくる客を、全部断った。
そのせいでジリ貧になったけど、構わなかった。
だって舞子さんの言葉を無視するくらいなら、貧乏な方がよっぽどよかったから。
代わりに私を大切にしてくれる人の為なら、大抵のプレイは受けた。
凝ったプレイでも、一生懸命練習したり、自分で様々な修練を行って、満足させられる
ようになった。
そうしたら…口コミでポツポツお客さん増えだして…私はいつの間にかNo.1になった。
その時初めて…舞子さんの言ってたことが分かった気がした。
本当に…走馬灯…というのが正しい。
舞子さんとの思い出が、浮かんでは消え、浮かんでは消え…。
舞子さん…私…また、無理しちゃってたのかな…。
最初はさ…贅沢なんてできなくていい、両親と好きな人とで、慎ましやかに暮らせれば
いいって思った。
でも…なんでか凄ーくめんどくさい人に好かれちゃって…。
頑張ってやってたら、いつの間にかたくさんの人に頼られて、好かれて…嬉しくて浮かれ
ちゃった。
舞子さんは…気が強くて同僚との喧嘩が絶えない人だったけど、卑怯なことや、嘘や
貶めるようなことはしなかった。
影でこそこそ舞子さんの悪口言っていた…私の方が、よっぽど悪人だと思う。
でも私が生き残って、舞子さんは死んだ。
神はいない。
もともと最初からわかってたけど…この時私は確信したっけ…。
そういえば…ギリアムと私(精神年齢)はあの時の私と舞子さんの年齢に似てるなぁ…。
ギリアムも…万能選手に見えて、随分といろんなところがぶきっちょで…私は文句を言いつつも、
結局離れられない、憎めない、許しちゃう…。
舞子さん…いつも笑ってたっけ。
死ぬときまで…笑ってた…私に気なんか使わないでよ…って、思ったけど…。
違ったんだ!!
舞子さんはすべてを自分で決めて、自分のやりたいようにして、自分の目的が果たせたから
笑ってたんだ!!
今…私…笑えているかな…笑えるかな…心から…。
まるで壊れたテープレコーダーが高速回転するように…私の脳内に様々な記憶と思いが流れ込み
流れ込み…回って回って回って…。
弾けた。
「ギリアム様…もう、帰りましょう」
物凄く自然に…出た言葉だった。
私の心に、いつもみたいなヤってやるぞ~~ってな感覚は、一切なくなった。
「…いいんですか?」
「ええ…ギリアム様、さっきからとても苦しそうです…。
ギリアム様を苦しめてまでやりたいことなど…私にはないです」
あ、良かった…。
ちょっと、ほっとしたね。
私の事を、自分よりも、世界よりも…何よりも大切に思ってくれている人…。
私が…幸せにしてあげたい人…。
死んでも私を離したくないって、言う人…。
前世では…一度も出会うことができなかった人。
だから、私はこの人の周りをできるだけ良くしようと頑張った。
でも…。
王立騎士団と近衛騎士団…貴族社会…社交界…なんかもう、どうでもよくなっちゃった。
そもそも私は…自分の欲に忠実に生きる人間だ。
それが背伸びしたところで…限界が来るのは眼に見えていたんだ。
自分がたいした人間じゃないって…わかっているようで、わかってなかったんだなぁ。
「心配をかけてごめんなさい…」
「いいえ…私の手元に戻ってきてくれて、嬉しいです」
ギリアムは…どこであれ私と一緒に居たいんだ。
いい人か悪い人か関係なく、人に預けるのが心配なんだ。
そうだよね…。
いい人が安全で悪い人が危険だってんなら…なんで舞子さんは死んだんだ!!
私は…ギリアムを一番笑わせてあげたいんだよ、舞子さん。
それによって生じることが、悪か正かなんて、知るか!!
元より正義の味方って質じゃねぇ!!
人に見られる心配はない。
だって…。
こんなに質が良い使用人が揃ってるなら、招待客は別の門から通す手筈にしてある
はずだもん。
夏に差しかかり、午後の強い日差しが照りつける中、私は微動だにせず、汗も拭わず
その姿勢を保ち続けた。
懐かしいなぁ…。
あらゆるプレイをマスターすることに、精進したころを思い出す。
…ってか、逆にありがてぇよ。
さすがにアンタを相手にするのは、もう少し先だと思ってたから。
考える時間を、私にくれてありがとう。
しかし…どーすっかな。
一級品の頭脳を持つ奴だからこそ、下手なことは言えないし、ちょっとの失言が
命取りだ。
ギリアムがいるとはいえ…っつーか、いたからこうなってんだぁ!!
あーまた、怒りがわいてきた。
いかんいかん。
思い出せ…私の経験…。
私は沢山の人間と…あらゆる人種・職種の人間と接してきたじゃないか…。
この人の経験しえない方法で、培ったもの…。
それだけが私の誇れるもの…唯一持っているもの…この人に…勝てるかもしれない
もの…。
折角もらった時間を、一秒たりとも無駄にするな!!
思い出せ!!私の精神の細胞!!
思い出せ―――――――――――――――っ!!
「ギリアム公爵」
私をそのまま、ツァリオ公爵閣下はギリアムに話しかけた。
「先ほどからおとなしいな。
絶対に文句を言ってくると思ったのに」
そんなツァリオ公爵閣下の方など一切向かず、
「48分」
とだけ。
凡庸な者にはわからなかっただろう。
しかしその意味が、ツァリオ公爵閣下にはすぐにわかった。
他にも分かった者がいたかは…わからない。
「ちっ!!」
ツァリオ公爵閣下が舌打ちする。
「だから貴様はいけ好かんのだ。
無駄に頭がいいだけでなく、回転も速く、機転もきく。
そして何より、鉄の自制心がある」
「50分」
返事の代わりに、時間のみを告げる。
「オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢!!顔を上げろ、もういい」
私は静かに身を起こす。
そして余裕しゃくしゃく(実際そうだし)で、体を動かす。
もちろん優雅にね。
「フィリー…大丈夫でしたか?」
誰のせいで、こうなったと思ってやがる?あ?
なんてことは、表に出さず、
「ギリアム様…先ほどの時間を計っていたのは、なぜですか?」
大方の予想はつくんだけど、念のため確認。
「アナタが知らなくていい事です」
こういう答え方をするってこたぁ、私の予想通りだな。
「話してください」
「……」
「は・な・し・て・く・だ・さ・い」
青筋だらけにさせないでよね!!
歳食って皺増える、原因になりそうだからさ。
「一週間後に、アカデミーで全体発表会及び、定例報告会があるのだ。
妻はわしと一緒に必ず出ることになっている」
…やっぱりか。
目には目を歯には歯を…をやる気だな。
「その会場に…お前は出席したことは無いが、来ることはできる。
その場でわしが今、お前の婚約者にしたことと、同じことをやる気だな」
あ、全員の空気が変わった。
気づいてたの、この人だけか~。
「……」
ギリアム…ノーコメント決め込む気かよ。
皆、すっげぇ顔で睨んでるよ、オイ。
でも…なんでだろ…。
こいつ等…。
何かムカつく。
「面白いですな…」
おや、ドルグスト卿。
「では、私もオルフィリア嬢とパーティーでお会いした時、そのように致しましょう」
は~あ、目には目を歯には歯をのいたちごっこかよぉ~。
めんどくせ。
私は改めてギリアムの顔を見る。
ああ、やっぱり。
とても苦しそうだ。
その時フッと視界が暗くなった。
…あれ?
おかしいな…一時間もパントマイムプレイしてないし、こういう事態を想定して、ちゃんと準備も
してきたから…炎天下とはいえ、体調がおかしくなるはず無いのに…。
私は…頭のねじがスポポポポーンと、飛ぶのを感じた。
そして頭に浮かんだのは…私今何してるの?
私…何のためにこんな事、してるの…?だった…。
お辞儀しっぱなしの時、私は前世・今世のすべての記憶を、何度も何度も走馬灯のように、
思い出せるだけ思い出した。
だからなのかな…。
今とても、クリーンだよ。
何だろう…この感じ…。
遥か…はるか昔に感じたことがある気がする。
あれは確か…。
……そうだ!!私が親が死んで二度の離婚を経て…娼婦になったばかりの時だ。
私が早く一人前になるために…って、しょーもない客や、危険な客でも受けちまってた時だ。
50歳を超えていたベテラン…舞子さんから…すっごい叱られた。
もっと自分を大切にしろ、そんなんじゃ心身が持たない、何が大切かを一度しっかり考えろって。
でも私は若かったから…その警告を無視した。
それどころか…。
口うるさいばばあぐらいにしか思っていなかった。
当時の私の客に、かなり金払いのいい客がいた。
舞子さんには、その客に気を許しちゃダメだって言われた。
でもやっぱり、当時の私は拙くて…理由がわからなかった。
結果…私はその男に刺された。
ううん、刺されそうになった。
私に向けられたその男の刃は…私の体には届かなかった。
私と男の間に…舞子さんが入ったから。
自分を大切にしろって言ってた人が、何で私を庇うの?バカじゃないの?
そんなことしか言えなかった…当時の自分を呪ってやりたい。
そんな私に舞子さんは笑いながら言った。
アンタは私の若いころに、一番似てる…だからほっとけなかった。
救急車が来るまで…手を握って泣いていた私に、舞子さんは…よく聞きなって。
この世で一番大切なのは自分。
その次が自分を好きになってくれる人。
でも…好きになってくれる人が増えすぎると…必ず限界が来る。
その時が来たら正念場。
好きな人を…取捨選択しなきゃならないからね…。
嫌いな人を切り捨てるより…すごく大変だから、覚悟しなって。
私がアンタに教える、最後の事だから…どうか忘れないで…って。
私は最後なんて言わないでって何度も言ったけど……、結局最後になった。
天涯孤独の舞子さんの葬儀は、全て私がやった。
骨は海にまいた。
骨壺なんて狭い場所にこもりっきりなんて、舞子さんに似合わないと思ったから。
そして骨をまいた海岸に…私は死ぬまで…暇さえあれば何度も通った…。
実親の墓になんて、一度も行かなかったのにさ。
ああそうだ。
このクリーンさ…。
舞子さんの骨をまいた海岸で…ぼーっとしている時、こんな感じだった。
舞子さんの死後、私は私を乱暴に扱ってくる客を、全部断った。
そのせいでジリ貧になったけど、構わなかった。
だって舞子さんの言葉を無視するくらいなら、貧乏な方がよっぽどよかったから。
代わりに私を大切にしてくれる人の為なら、大抵のプレイは受けた。
凝ったプレイでも、一生懸命練習したり、自分で様々な修練を行って、満足させられる
ようになった。
そうしたら…口コミでポツポツお客さん増えだして…私はいつの間にかNo.1になった。
その時初めて…舞子さんの言ってたことが分かった気がした。
本当に…走馬灯…というのが正しい。
舞子さんとの思い出が、浮かんでは消え、浮かんでは消え…。
舞子さん…私…また、無理しちゃってたのかな…。
最初はさ…贅沢なんてできなくていい、両親と好きな人とで、慎ましやかに暮らせれば
いいって思った。
でも…なんでか凄ーくめんどくさい人に好かれちゃって…。
頑張ってやってたら、いつの間にかたくさんの人に頼られて、好かれて…嬉しくて浮かれ
ちゃった。
舞子さんは…気が強くて同僚との喧嘩が絶えない人だったけど、卑怯なことや、嘘や
貶めるようなことはしなかった。
影でこそこそ舞子さんの悪口言っていた…私の方が、よっぽど悪人だと思う。
でも私が生き残って、舞子さんは死んだ。
神はいない。
もともと最初からわかってたけど…この時私は確信したっけ…。
そういえば…ギリアムと私(精神年齢)はあの時の私と舞子さんの年齢に似てるなぁ…。
ギリアムも…万能選手に見えて、随分といろんなところがぶきっちょで…私は文句を言いつつも、
結局離れられない、憎めない、許しちゃう…。
舞子さん…いつも笑ってたっけ。
死ぬときまで…笑ってた…私に気なんか使わないでよ…って、思ったけど…。
違ったんだ!!
舞子さんはすべてを自分で決めて、自分のやりたいようにして、自分の目的が果たせたから
笑ってたんだ!!
今…私…笑えているかな…笑えるかな…心から…。
まるで壊れたテープレコーダーが高速回転するように…私の脳内に様々な記憶と思いが流れ込み
流れ込み…回って回って回って…。
弾けた。
「ギリアム様…もう、帰りましょう」
物凄く自然に…出た言葉だった。
私の心に、いつもみたいなヤってやるぞ~~ってな感覚は、一切なくなった。
「…いいんですか?」
「ええ…ギリアム様、さっきからとても苦しそうです…。
ギリアム様を苦しめてまでやりたいことなど…私にはないです」
あ、良かった…。
ちょっと、ほっとしたね。
私の事を、自分よりも、世界よりも…何よりも大切に思ってくれている人…。
私が…幸せにしてあげたい人…。
死んでも私を離したくないって、言う人…。
前世では…一度も出会うことができなかった人。
だから、私はこの人の周りをできるだけ良くしようと頑張った。
でも…。
王立騎士団と近衛騎士団…貴族社会…社交界…なんかもう、どうでもよくなっちゃった。
そもそも私は…自分の欲に忠実に生きる人間だ。
それが背伸びしたところで…限界が来るのは眼に見えていたんだ。
自分がたいした人間じゃないって…わかっているようで、わかってなかったんだなぁ。
「心配をかけてごめんなさい…」
「いいえ…私の手元に戻ってきてくれて、嬉しいです」
ギリアムは…どこであれ私と一緒に居たいんだ。
いい人か悪い人か関係なく、人に預けるのが心配なんだ。
そうだよね…。
いい人が安全で悪い人が危険だってんなら…なんで舞子さんは死んだんだ!!
私は…ギリアムを一番笑わせてあげたいんだよ、舞子さん。
それによって生じることが、悪か正かなんて、知るか!!
元より正義の味方って質じゃねぇ!!
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