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第3章 二頭
17 名簿流出の真実
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振り向くとそこには…ドルグスト卿と…ご婦人が二人?
3人ともギリアムに挨拶しようとしたが、
「急いでいるから、用件だけ頼む」
というギリアムに、一番歳若いご令嬢…でいいんだよな…が、
「わかりました…では一つだけ…オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢…」
…男爵令嬢を強調するのが、習わしなのかよ、おい。
「一連のご主人様への非礼…お詫びしてください!!」
いや…詫びるようなことしたかぁ?
④の条件を挑発ととらえたのだって、侮辱と捉えたのだって、人によりけりだろ。
私があれを入れることに固執したのは…確固たる理由があっての事。
そのためにどうなろうと、悔いはねぇ。
まあ、階級がすべての社会じゃ、いい天気ですね…も、人によっちゃ悪口に
なるのかな…難しいなぁ…。
「私は…お詫びするようなことを、した覚えはありません」
だから必然的に、私の答えはこれになった。
口から…ホントにすんなり出たから、やっぱり悔いはねぇ。
「わかりました…」
3人とも行っちゃった…。
やけにあっさりしているなぁ…まあ、道すがら考えよ。
私は馬車を帰し、ギリアムと馬に乗った。
馬車より馬の方が、早いから…。
そして私は、先ほどの2人についての情報を訪ねる。
「あの人達は…ドルグスト卿の妻君と娘です。確か…ドルグスト卿は結婚が遅くて、
ご令嬢はまだ…17歳だったはずだ。
結婚には見向きもせず、新進気鋭の作家として現在活躍中…だったな」
本当にモノを知っていて助かる…。
そして執筆業…作家…んんんっ、私はピコーンときた。
「ギリアム様…家に戻って首尾を聞いたら…やって欲しいことがあります」
「なんでも言ってください!!」
馬はかける…夕暮れの街を…ただかける…。
-----------------------------------------------------------------------------------
夜…ガルドベンダ公爵家で、アイリン夫人がぐったりしていた。
…ツァリオ公爵閣下もだけど。
そんな中、バドセットが飲み物と軽食を持って来た。
「何か…わかったかしら?」
「いいえ…何も…」
ガルドベンダ公爵家ではサロンの後、もちろん大騒ぎ。
お茶会・サロン・舞踏会は、招待された人間が、自分でそれを言った場合、人々の知る
所となる。
よっぽど極秘の物でない限り、ある程度誰が来るかがわかることもある。
だが…主催者側が管理していた名簿が流出したとなれば、話は別。
「しかし…例の方々は、自分たちで聞いた話をリストにしただけだと言ったのでしょう?」
バドセットがお茶を入れている。
「ええ、証拠が無いから…何とも言えないんだけど…」
結局、証拠不十分で、レベッカとその他は全員帰された。
「ただ…ね…」
アイリン夫人が何かを言おうとした時、
「失礼いたします…クァーリア夫人が帰る前に、少しお話を…と」
メイドが扉の外から声をかける。
「奥様…お疲れなら…」
「お通しして!!あの方は別よ!!」
かなり強めに言われ、バドセットがびくつく。
実はクァーリア夫人…アイリン夫人の礼儀作法の師匠なのだ…。
あたらめて…テーブルを囲み、ガルドベンダ公爵夫妻と、クァーリア夫人が向かい合って座る。
「申し訳ございません、師匠…。
お恥ずかしい所をお見せしただけでなく…たいしたおもてなしも出来ませんで…」
クァーリア夫人は静かに用意されたお茶に口をつけ、
「本当に…ここまで質が悪くなっているとは、思いませんでした」
と。
アイリン夫人は疲れとは別の暗さを顔にたたえ、
「……今回は…特に質の悪い人間達が、集まってしまって…」
「言い訳は見苦しいです」
……アイリン夫人にこんな事言える人も…限られてるんだろーな。
アイリン夫人は…ますます沈んだ。
「しかし…名簿が流れたかどうか、結局わからずじまいというのも、何とも歯切れが悪いな」
バドセットが、
「ガルドベンダ公爵家に限り、そのようなことは…」
お茶を運びつつ、
「そもそも侵入された形跡など、一切ないのですよ?」
そう。
お客の取り調べと一緒に屋敷内を、全捜索したが…そんな形跡は毛ほどもない。
「そうねぇ…」
「別に忍び込まなくても、名簿を盗む方法はあるでしょう?」
クァーリア夫人が唐突に言う。
「師匠…それは…」
「あなたが名簿を見せた人間が、内容を暗記して、この屋敷を出ていけば…盗めますよねぇ」
その時、アイリン夫人は…本当に驚愕という顔をして…、
「師匠…アナタが…」
「そうですよ、ようやっと気づいたのですねぇ。
いつ気づいて私の所に来るかと待っていたのですが…、全く来ないので帰ろうと思いました」
シレェっと言う。
すげぇ!!
「なっっ、何と言うことを!!クァーリア夫人!!」
「お黙りなさい!!バドセット!!」
アイリン夫人が凄い目をして睨んだのは…バドセットの方だった。
「あなたは知っているハズです!!
私と師匠との間の約束を!!」
これはアイリン夫人に限らず、クァーリア夫人が自分の弟子たちに、一律で出す条件なのだ。
自分の弟子になりたいと希望してきたものに、必ず出す条件…。
卒業した後も、時折抜き打ちテストをする…と。
それを了承しない場合、如何なる上位貴族の誘いも断った。
それでも教えてくれ~が、ひっきりなしなんだから…この人本当にすごいね。
「私は名簿を見せた時、師匠に口止めいたしませんでした。
これでは横流しされても、何も文句が言えません」
「……それがわかっているなら、まあ及第点ですね」
クァーリア夫人って、ホントすげぇ、いろんな意味で。
「あまりうちの妻をいじめないでくださいませんか、クァーリア夫人…」
蓋を開けてみれば…の結果に、ツァリオ公爵閣下はちょっとホッとしたような…呆れたような
顔になる。
「あら…いじめられるのが嫌なら、私はいつでもここにお邪魔するのを永久にやめますよ?
ツァリオ公爵閣下?」
「……本当に、あなたにはかなわない」
…ほんと、すげぇな、クァーリア夫人…。
それからしばし、3人は色々な話をしたのだが…。
「そろそろ本当に、帰りましょう…明日も朝から出かけるので」
「まあ…、お引止めしてすみませんでした」
「いいえ…向上心がある人間と話すのは…こちらも楽しいですから」
そしてクァーリア夫人が席を立った、丁度その時、
「失礼いたします!!名簿の件について…」
ドルグスト卿が入って来た。
「あ~、その件なんだが…」
ツァリオ公爵閣下が経緯を説明すると、
「なんと…お人が悪いですな、クァーリア夫人…」
そこには伯爵夫人であるクァーリア夫人が、侯爵である自分をともすればたばかった…という
精神的劣情は無かった。
あるのは、してやられた…という爽やかなものだけだった。
「もうお帰りですか?」
「ええ…」
「娘が…クァーリア夫人が来ていると知って、どうしても会いたいと…」
「私はあの子に会いたくないから、息をひそめていたのだけれど?」
ありゃ…少々強めに言ったね。
「その…申し訳ありません…しかし…あの子も日々努力しておりまして…」
「努力しているから、人の気分を害していいとでも?」
ドルグスト卿…何も言えなくなった。
私だったら何か言っただろうけど、使えている家の奥様が最上級の客としてもてなせって言っている
人だし、何よりクァーリア夫人の実力を認めているんだろう。
そんな時、息せき切って部屋に飛び込んできた影が二つ。
ドルグスト卿の妻と娘た。
「お久しぶりです!!クァーリア夫人!!
ドロシー・ゼフィガルダ侯爵令嬢が、ご挨拶申し上げます」
元気いっぱいの礼儀が少し落ちる人間の声に聞こえるのだが、その実とても優雅で気品がある振る舞いで
身を包んでいる。
薄い赤毛が白い肌に映え、さらりと伸ばした癖のないその髪は…貴婦人と呼ぶにふさわしい。
細くきりっと引き締まった眉と眼は、若干の気の強さを示していたが、通った鼻筋と薄く紅色になった
唇をもって、可愛いという表現もまた、あっている。
だが…。
クァーリア夫人、眼も会わせないで、
「では、アイリン…また気が向いたら来ますね」
「はい…いつでもお待ちしております、師匠」
本人がまるでいないかのように、振舞った。
この人…ギリアムに似てる…。
だがドロシーも、クァーリア夫人にすごく会いたがっていたと言うだけあって、簡単には引かず、
「クァーリア夫人!!私の作品を読んでいただけましたか?」
上品に…でも元気よく…多分私より、よっぽど礼儀作法はうまいぞ。
でもクァーリア夫人は、返事はしない。
本当に…いない者のように扱うの…うまいなぁ。
ギリアム4号さんにしようかな…。
「さっ、最近、ファルメニウス公爵家へ、頻繁に言っていらっしゃるとお聞きしました」
少し影が落ちたような声になる。
「……」
「ギッギリアム公爵閣下のご命令なのですよね…大変でございますね…」
この言葉で…クァーリア夫人は、ドロシーを初めて視界に入れた…。
3人ともギリアムに挨拶しようとしたが、
「急いでいるから、用件だけ頼む」
というギリアムに、一番歳若いご令嬢…でいいんだよな…が、
「わかりました…では一つだけ…オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢…」
…男爵令嬢を強調するのが、習わしなのかよ、おい。
「一連のご主人様への非礼…お詫びしてください!!」
いや…詫びるようなことしたかぁ?
④の条件を挑発ととらえたのだって、侮辱と捉えたのだって、人によりけりだろ。
私があれを入れることに固執したのは…確固たる理由があっての事。
そのためにどうなろうと、悔いはねぇ。
まあ、階級がすべての社会じゃ、いい天気ですね…も、人によっちゃ悪口に
なるのかな…難しいなぁ…。
「私は…お詫びするようなことを、した覚えはありません」
だから必然的に、私の答えはこれになった。
口から…ホントにすんなり出たから、やっぱり悔いはねぇ。
「わかりました…」
3人とも行っちゃった…。
やけにあっさりしているなぁ…まあ、道すがら考えよ。
私は馬車を帰し、ギリアムと馬に乗った。
馬車より馬の方が、早いから…。
そして私は、先ほどの2人についての情報を訪ねる。
「あの人達は…ドルグスト卿の妻君と娘です。確か…ドルグスト卿は結婚が遅くて、
ご令嬢はまだ…17歳だったはずだ。
結婚には見向きもせず、新進気鋭の作家として現在活躍中…だったな」
本当にモノを知っていて助かる…。
そして執筆業…作家…んんんっ、私はピコーンときた。
「ギリアム様…家に戻って首尾を聞いたら…やって欲しいことがあります」
「なんでも言ってください!!」
馬はかける…夕暮れの街を…ただかける…。
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夜…ガルドベンダ公爵家で、アイリン夫人がぐったりしていた。
…ツァリオ公爵閣下もだけど。
そんな中、バドセットが飲み物と軽食を持って来た。
「何か…わかったかしら?」
「いいえ…何も…」
ガルドベンダ公爵家ではサロンの後、もちろん大騒ぎ。
お茶会・サロン・舞踏会は、招待された人間が、自分でそれを言った場合、人々の知る
所となる。
よっぽど極秘の物でない限り、ある程度誰が来るかがわかることもある。
だが…主催者側が管理していた名簿が流出したとなれば、話は別。
「しかし…例の方々は、自分たちで聞いた話をリストにしただけだと言ったのでしょう?」
バドセットがお茶を入れている。
「ええ、証拠が無いから…何とも言えないんだけど…」
結局、証拠不十分で、レベッカとその他は全員帰された。
「ただ…ね…」
アイリン夫人が何かを言おうとした時、
「失礼いたします…クァーリア夫人が帰る前に、少しお話を…と」
メイドが扉の外から声をかける。
「奥様…お疲れなら…」
「お通しして!!あの方は別よ!!」
かなり強めに言われ、バドセットがびくつく。
実はクァーリア夫人…アイリン夫人の礼儀作法の師匠なのだ…。
あたらめて…テーブルを囲み、ガルドベンダ公爵夫妻と、クァーリア夫人が向かい合って座る。
「申し訳ございません、師匠…。
お恥ずかしい所をお見せしただけでなく…たいしたおもてなしも出来ませんで…」
クァーリア夫人は静かに用意されたお茶に口をつけ、
「本当に…ここまで質が悪くなっているとは、思いませんでした」
と。
アイリン夫人は疲れとは別の暗さを顔にたたえ、
「……今回は…特に質の悪い人間達が、集まってしまって…」
「言い訳は見苦しいです」
……アイリン夫人にこんな事言える人も…限られてるんだろーな。
アイリン夫人は…ますます沈んだ。
「しかし…名簿が流れたかどうか、結局わからずじまいというのも、何とも歯切れが悪いな」
バドセットが、
「ガルドベンダ公爵家に限り、そのようなことは…」
お茶を運びつつ、
「そもそも侵入された形跡など、一切ないのですよ?」
そう。
お客の取り調べと一緒に屋敷内を、全捜索したが…そんな形跡は毛ほどもない。
「そうねぇ…」
「別に忍び込まなくても、名簿を盗む方法はあるでしょう?」
クァーリア夫人が唐突に言う。
「師匠…それは…」
「あなたが名簿を見せた人間が、内容を暗記して、この屋敷を出ていけば…盗めますよねぇ」
その時、アイリン夫人は…本当に驚愕という顔をして…、
「師匠…アナタが…」
「そうですよ、ようやっと気づいたのですねぇ。
いつ気づいて私の所に来るかと待っていたのですが…、全く来ないので帰ろうと思いました」
シレェっと言う。
すげぇ!!
「なっっ、何と言うことを!!クァーリア夫人!!」
「お黙りなさい!!バドセット!!」
アイリン夫人が凄い目をして睨んだのは…バドセットの方だった。
「あなたは知っているハズです!!
私と師匠との間の約束を!!」
これはアイリン夫人に限らず、クァーリア夫人が自分の弟子たちに、一律で出す条件なのだ。
自分の弟子になりたいと希望してきたものに、必ず出す条件…。
卒業した後も、時折抜き打ちテストをする…と。
それを了承しない場合、如何なる上位貴族の誘いも断った。
それでも教えてくれ~が、ひっきりなしなんだから…この人本当にすごいね。
「私は名簿を見せた時、師匠に口止めいたしませんでした。
これでは横流しされても、何も文句が言えません」
「……それがわかっているなら、まあ及第点ですね」
クァーリア夫人って、ホントすげぇ、いろんな意味で。
「あまりうちの妻をいじめないでくださいませんか、クァーリア夫人…」
蓋を開けてみれば…の結果に、ツァリオ公爵閣下はちょっとホッとしたような…呆れたような
顔になる。
「あら…いじめられるのが嫌なら、私はいつでもここにお邪魔するのを永久にやめますよ?
ツァリオ公爵閣下?」
「……本当に、あなたにはかなわない」
…ほんと、すげぇな、クァーリア夫人…。
それからしばし、3人は色々な話をしたのだが…。
「そろそろ本当に、帰りましょう…明日も朝から出かけるので」
「まあ…、お引止めしてすみませんでした」
「いいえ…向上心がある人間と話すのは…こちらも楽しいですから」
そしてクァーリア夫人が席を立った、丁度その時、
「失礼いたします!!名簿の件について…」
ドルグスト卿が入って来た。
「あ~、その件なんだが…」
ツァリオ公爵閣下が経緯を説明すると、
「なんと…お人が悪いですな、クァーリア夫人…」
そこには伯爵夫人であるクァーリア夫人が、侯爵である自分をともすればたばかった…という
精神的劣情は無かった。
あるのは、してやられた…という爽やかなものだけだった。
「もうお帰りですか?」
「ええ…」
「娘が…クァーリア夫人が来ていると知って、どうしても会いたいと…」
「私はあの子に会いたくないから、息をひそめていたのだけれど?」
ありゃ…少々強めに言ったね。
「その…申し訳ありません…しかし…あの子も日々努力しておりまして…」
「努力しているから、人の気分を害していいとでも?」
ドルグスト卿…何も言えなくなった。
私だったら何か言っただろうけど、使えている家の奥様が最上級の客としてもてなせって言っている
人だし、何よりクァーリア夫人の実力を認めているんだろう。
そんな時、息せき切って部屋に飛び込んできた影が二つ。
ドルグスト卿の妻と娘た。
「お久しぶりです!!クァーリア夫人!!
ドロシー・ゼフィガルダ侯爵令嬢が、ご挨拶申し上げます」
元気いっぱいの礼儀が少し落ちる人間の声に聞こえるのだが、その実とても優雅で気品がある振る舞いで
身を包んでいる。
薄い赤毛が白い肌に映え、さらりと伸ばした癖のないその髪は…貴婦人と呼ぶにふさわしい。
細くきりっと引き締まった眉と眼は、若干の気の強さを示していたが、通った鼻筋と薄く紅色になった
唇をもって、可愛いという表現もまた、あっている。
だが…。
クァーリア夫人、眼も会わせないで、
「では、アイリン…また気が向いたら来ますね」
「はい…いつでもお待ちしております、師匠」
本人がまるでいないかのように、振舞った。
この人…ギリアムに似てる…。
だがドロシーも、クァーリア夫人にすごく会いたがっていたと言うだけあって、簡単には引かず、
「クァーリア夫人!!私の作品を読んでいただけましたか?」
上品に…でも元気よく…多分私より、よっぽど礼儀作法はうまいぞ。
でもクァーリア夫人は、返事はしない。
本当に…いない者のように扱うの…うまいなぁ。
ギリアム4号さんにしようかな…。
「さっ、最近、ファルメニウス公爵家へ、頻繁に言っていらっしゃるとお聞きしました」
少し影が落ちたような声になる。
「……」
「ギッギリアム公爵閣下のご命令なのですよね…大変でございますね…」
この言葉で…クァーリア夫人は、ドロシーを初めて視界に入れた…。
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