ひとまず一回ヤりましょう、公爵様4

木野 キノ子

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第4章 結婚

5 ギリアムの規格外っぷりったら…

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王立騎士団と近衛騎士団の交流会…。
それはファルメニウス公爵家の結婚や、他の祝い事の際に行われる伝統行事…。
武のファルメニウス公爵家が、武を統一していると国に知らしめる行事である。

これをいかに成功させるかが、新たなファルメニウス公爵夫人の腕の見せ所だ。
それと同時に、成功させられなければファルメニウス公爵夫人としてのその後の地位に
暗い影を落とす。

「オルフィリア公爵夫人は、どうお考えなのですか…」

「ん~、いくつか考えていることはありましてね…、でもその前に片付けてしまいたい
問題もあります…まあ、数日後にはざっくりとした概要だけでもお話しいたします」

「まあ…それは楽しみですわ」

クァーリア夫人は、すっごく楽しそうにしながら帰っていった。

「さてと…ギリアム~」

私が呼ぶと、ガサガサと茂みが動いて、ギリわんこ登場。
私が夫人になってからというもの…本当に私の金魚の糞と化した。
よっぽど嬉しかったのね。

「私たちが考えなければならないのは、現時点では、
王立騎士団と近衛騎士団の交流会をどうするか…
結婚式をどのような形で、どうまとめるか…
の2点です」

「フィリーのお好きなように」

「そう言ってくださるのは嬉しいですが、その前に片付けねばならない問題がいくつか
あります。
そして、今回はお金を相当使っていただきます」

「ですから、お好きなように。
あなたが私のそばにいてくれるなら、破産したってかまわない」

嬉しいこと言ってくれるね、このワンコは。

「じゃあ、私と結婚出来てそんなにうれしいなら、ギリアムに一つやって欲しいことが
あるんだけど」

「何なりと」

この時エマとフォルトは、後ろで茶器の片づけをしていたのだが、

「いまからツァリオ公爵閣下の所へ行って、アンタって、頭超良いくせに、本当に大馬鹿ですねって
言ってきてくださ~い」

エマとフォルトが茶器をすべて割ったのは、言うまでもない。

「わかりました、行ってきます」

まるでちょっと近所に買い物に…というノリで出かけようとするギリアムを、

「おまちくださ――――――――いっ!!ギリアム様ぁぁ!!」

フォルトとエマが全力で止めたのも、言うまでもない。

「奥様も!!なぜわざわざ、よりにもよってツァリオ公爵閣下に喧嘩を売るのですか!!」

「ムカつくから!!あ、夫人共々ね」

「なぜですかぁ―――――っ!!」

何かなぁ…私は今まで平和に過ごしたいと思ってきたのを、この地位に引き上げたのはアンタたちじゃん。
私はヤると決めたからにゃぁ、とことんヤる。
だから私から見て、しょーもないと思うものは、遠慮せず攻撃するよ。

「まずツァリオ公爵閣下ってさ…、プライド高いのは良いけど、傲慢すぎる。
それを本人が自覚しているならいいんだけど、私の見た限り、わかっていない。夫人もね。
だから分からせる。
ファルメニウス公爵夫人として…ね。
あの人達だって、可哀想な人達じゃん。
あの地位の高さと、頭の良さじゃあ…教えてくれる人いないと思うからさ~」

サラサラと答える私に、言葉が出ないフォルトとエマ。

「あ、でもそれって…、ギリアムにも言えるんだからね。
ちゃんと直さないと、ここにいてあげませんよ」

「わかりました、教えてくだされば、直します」

素直な良いワンコやね。
実際、私のここがダメです、ここはこうした方がいいですってのは、しっかり耳に入れ記憶しているから…、
結構2度説明すること、殆どない。
あとは私が絡んだ場所で、実践できるようになるだけなんだよなぁ。

「でもギリアムが私にして欲しい事だって、遠慮なく言っていいんですよ。
直して欲しい所も、遠慮なくビシビシ言っていい。
聞く聞かないはよく話し合うことにして、我慢は禁物。
どっちかが一方通行になるのは、私は嫌です」

「わかりました」

「あ、そうそう。
どうせツァリオ公爵閣下の所に行くのなら、ついでに…」

私はギリアムに耳打ち。
フォルトとエマの心労を、これ以上引き上げるのも可愛そうだから。

「じゃ、行ってらっしゃ~い」

フォルトとエマは最後まで止めていたが、私のお願い…に、ギリアムが止まるはずもなく、私も一切
止めなかったから、さっさとギリアムは、ファルメニウス公爵家を出て行った。


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ガルドベンダ公爵邸の一室。

ツァリオ公爵閣下、アイリン夫人、バドセット、ドルグスト卿と家族が一堂に会している。
全員の表情に少しの違いはあれど、眉間に深いしわが刻まれている事だけは、一致していた。

「あの若造は…一体どこまで規格外なんだ」

アカデミー入学後から今日まで、ギリアムはツァリオ公爵閣下の予想以上の動きをいくつもしてきた。
今回王家の包囲網をかいくぐって、すんなり結婚したのもその一つだろう。

「困りましたねぇ…」

アイリン夫人も頭が痛かろう。
サロンでの私の数々の非礼は、私が男爵令嬢だからこそ、非礼として成り立つ。
ファルメニウス公爵夫人であったなら、むしろ非礼に当たるのは、私に対して礼儀を全く払わなかった
ご令嬢たちを、主催者でありながら放置したアイリン夫人の方だ。

そしてそれはツァリオ公爵閣下も同じ。
厳密にファルメニウス公爵家とガルドベンダ公爵家が、非公式の場でどういう関係であれ、国の法律に
のっとれば、ファルメニウス公爵家の方が身分が高い。
ゆえに昨日私に対して、ツァリオ公爵閣下が行った、炎天下でのお辞儀させっぱなしは、下の身分の
者にのみやっても許されるが、上の身分の者にやった場合、首が飛ぶ代物。
だから、ギリアムがアイリン夫人に私と同じことをやったとしても、非難する者は全くいない。

まあ、私はやらせる気は無いけど。
自分にされたことは、自分で仕返しが、ヘドネの流儀だから。

「し、しかし…」

ドロシーは真っ青な顔をしつつ、

「オルフィリア嬢は…昨日自らを男爵令嬢と名乗りました…これは偽証罪に当たるのでは…」

偽証罪…厳密にいうと色々あるが、ここでは身分が上の者が下の者を貶めたり、はめたりする為に、
自らの身分を低く偽って行動し、あとで不敬罪などの言いがかりをつけるもの。
これは法律で厳格に禁止されている。

「昨日一日だけに限り、それは適用されん」

ツァリオ公爵閣下、さすが頭がよろしくてらっしゃる。

届け出を出した日付の日…というのは、唯一男爵令嬢と公爵夫人の身分が混在して当たり前の日なのだ。
だから私がどちらを名乗るかは、私の裁量次第。
婚姻届けに何時何分何秒を記載するべし…と、法律で定められていない以上、その日一日だけは
曖昧にしても、何ら問題ない。

「とにかく様々な問題はさておき…ひとまず使用人を全員、早急に集めろ、バドセット」

「ぜ、全員ですか?」

「そうだ!!」

「あの…通達はすでにしてございますが…」

するとツァリオ公爵閣下はため息をつき、

「昨日のサロンの後…オルフィリア嬢が私と妻に無礼を働いたと、使用人たちがしきりに言っていた
だろう?
今現時点までで、どこで誰に何を言ったのかを、全員くまなく調べろ!!」

「な…なぜですか?」

ドロシーの顔は青を通り越して、死人のように白い。

「口頭だけでならまだ、逃げ場もあるが…もし喋ったことを文章として残していたり、それが誰が言ったり
書いたりしたものか…わかる状態では逃げ場が一切ないからだ。
どこにでも、パパラッチのような奴はいるからな…」

やっぱり優秀やね、ツァリオ公爵閣下。

ほどなくして、使用人の尋問が始まる。

やっぱりと言えばやっぱりなのだが、その中の数人が、外の人間に対し、散々私の悪口を言っていたことが
判明…。
内容は…言ったことが立証されたら、一族郎党で首が飛ぶレベル。

「幸い聞いた人間が、出入りの業者のみでしたので、全てに早馬を走らせ、口止めを致しました。
長くこちらと取引していた者たちばかりだったので、事情は皆わかってくれました」

バドセットがホッとしたような表情で、報告していた。

「ひとまずは…ひと段落だが…ドルグストよ。
お前があの日…オルフィリア嬢に言ったことも、相当マズいがわかっているな?」

「は、はい…」

ドルグスト卿も真っ青だね。
ツァリオ公爵閣下がさらに言葉を紡ごうとした時、

「ごっ、ご主人様ぁ!!」

息せき切った使用人登場。

「おっ、お客様が!!」

「客はすべて断れと言っただろう!!それどころではない!!」

だろうねぇ…。
今日だって、王宮からの伝令が戻ってきた時、すでにアカデミーにいたらしいけど…。
急遽帰ってきたらしいからねぇ…対策のために。

「でっ、ですが…ギリアム公爵閣下がお見えに…」

「なにぃ!!」

勢いよく立ち上がる、ツァリオ公爵閣下。

「すぐに通せ!!」

「そっ、それが…」

使用人の顔も、かなり青いが…ギリアムが来た時点で、全ての使用人の顔が、こうなって
いたんだろうなぁ。

「いくらお入りくださいと申し上げても、門前から一切動かず…。
ご主人様に言っておきたいことがあるだけだ…と。
ただ、たいしたことじゃないから、聞きたくなければ無視して構わない。
自分はこのまま帰るだけだと…」

ツァリオ公爵閣下の眉間の皺が、一層ひどくなる。

「全くあの若造め!!
昨日の今日で、黙って帰せるわけなどないと、わかっているだろう!!
バドセット」

「はい、ご主人様!!」

バドセットに続き、ドルグスト卿も付き従おうとしたが、

「ドルグスト!!お前は待機だ!!今は奴に顔を見せるな!!」

「は、はい…」

部屋から足早に出ていく2人を、ドルグスト卿はなすすべもなくただ、見守るだけだった。
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