ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 6

木野 キノ子

文字の大きさ
41 / 56
第5章 敵襲

9 ギリアム不在の王立騎士団

しおりを挟む
「ガイツ卿!!そっちへ行ったぞ!!」

「3:5:3で行け!!オレは裏から回る!!」

これは隊列の指示。
先攻3人、後攻3人…真ん中の5人は…ばらけて相手の陽動と捕獲。

「はい!!ガイツ師団長!!」

団員たちが…逃げてきた一団に、突っ込む。

王立騎士団の師団は…それぞれ得意なものが分かれるのは、前にも話したが、ガイツ卿の第5師団は、
肉弾戦を得意とする師団だ。
暴力的な人間や、凶悪犯を抑えるのは、大抵この師団の担当。

フィリーがファルメニウス公爵家で、ゾフィーナくそばばぁたちと攻防している時…、やはりというか
王立騎士団は…襲撃されていた。

「全く!!何を考えているんだ!!」

ガイツとテオルドの…見事な連係プレーで、襲撃犯は、全員お縄になった。
団員が牢屋に詰め込んでいる最中、

「いよいよ切羽詰まっているみたいだな…」

テオルドの言葉に、

「自業自得なのに、身勝手すぎる!!しかも、団長が居ない隙を伺うとは…」

ガイツが憤慨している!!

「貴族だから、平民だからなんて、言いたくないですけど!!
ファルメニウス病院やフィリアム病院で、見てもらえばいいじゃないですか!!
何で襲う方を取るかな…罪の上乗せに決まっているのに!!」

「残念ながら…貴族という人種は、そういう考え方が出来んのさ…。
平民と同等の場所に行くことが…最大の恥と考える…。
だからって死にたくないから、ああして人を雇ってでも、襲いに来るのさ…」

王立騎士団を襲った人間は…どう見ても、雇われてそう言った事をするプロだった。
テオルドの声は…暗い。

王立騎士団が襲われたのは…ここにも薬が保管されているから。
もし何か…あった時用にと、ギリアムは自分が旅立つ前に…王立騎士団にも薬を運び込んだのだ。
その動きは…出来るだけ秘密裏に行われたが、やはり数がそれなりにあると、わかってしまう
ものである。

「ひとまず…団長が帰ってらっしゃったら、本格的な処分を決めるように手配しよう。
裏に誰が潜んでいるか…、調べることも必要だ」

「そうですね…」

ガイツとテオルドが、後処理を団員に任せて室内に入ると、

「キサマだって、貴族だろうがぁ―――――――――っ!!
そんな所に行けるわけがないと、なぜわからんのだっ!!仮にも私は侯爵だぞ!!」

廊下の奥から…入り口付近まで聞こえてくる叫び…。

「また別のが…来ているのか…」

ガイツがうんざりした顔を隠さない。

「あちらは…お願いされない限り、副団長に任せよう。
我らは捕まえた人間の…尋問が先だ」

「ですね…」

2人がそんな会話をしている時…、貴族用の応接間では…、

「ですから…評議会の罰則が、しっかりと国から施行されたら…薬の供給は考える…と、
団長からお達しがあったでしょう?
それに…ゴギュラン病自体が、ある程度重症化すると…、専門薬剤師と医師の連携が必要に
なります…。
単純に…薬を手に入れただけでは、どうしようもありません。
重症化だって、よほどの悪条件が重ならない限り、急激には進行しない…。
大人しく沙汰を待ったらどうですか?」

怒鳴る人間に対し…、いけしゃあしゃあと言ってのける、デイビス。

「それじゃ遅いと、言っているだろう!!
まとまった薬を貰えれば…何かと優遇するとさえ言っているのに…。
いつから王立騎士団は、こんなに融通が利かなくなったんだ!!」

「団長の代からだと思われますが…。そう言った文句は、団長にどうぞ。
我々は命令を、忠実に実行するだけです」

「やかましい!!そもそも第1師団は、貴族の集まりと聞いている!!
貴族同士の付き合いというものを、わかっていないハズは無いだろう!!
お前たちの知り合いとて…病気になった者はいるはずだ!!」

「ええ、もちろん…。
ですが団長は、それも考慮してくださいました。
どうしても…の場合は、王立騎士団専属の医師を、派遣する手筈を整えてくださった。
みな…事なきを得ましたよ。
もちろん…」

デイビスの目が光る。

「評議会での…自業自得な人間達でない場合に限り…ですがね。
それだけは…関係性があっても、治療しません」

第1師団は…主に貴族関係の事件を担当する。
だからどうしても…貴族率が高いのだ。
その家族や…関係性を考慮して、医師を派遣し…その都度必要な分だけ、薬を処方している。
転売などの防止のためである。

デイビスと相対している侯爵は、顔を真っ赤にしつつ、

「評議会に参加した者だって…十分反省している!!
どうしようもない事情があった者もいるし…。
それなのに、一律で出さないなど…あまりにも不躾すぎる!!」

息巻いている。
だが…それを見れば見るほど、デイビスの表情と眼は冷たくなっていき…、

「……インク瓶…投げて差し上げましょうか?」

「…は?」

「脅されたでも、どうしようもない事情があったでも、罪を犯せば、捕まります。
処罰を待てないと言うなら、せめて被害者と同等の目に遭ったらどうですか?」

机にあったインク瓶を手に持ち、ポンポンと弄びながら鋭い目を向ける。
途端に…侯爵は怯えだし、

「ほ…本気か?仮にも私は侯爵だぞ…」

及び腰になっている…。

「だから何ですか?
しょーもない連中を追い払うためだったら、団長が全責任を取る…と、おっしゃっているので、
文句は団長にどうぞ」

「ひっ、ひえぇぇ―――――――――っ!!」

デイビスの射殺しそうな眼差しに恐れをなし、一目散に逃げて行った…。

「お疲れ様です…副団長…。
しかしあまりご無理はされないでください…。
副団長より身分の高い者が、かなり来ておりますので…」

傍にいた…デイビスの補佐役が声をかける。
そちらに視線も向けず、

「キミは私に、忘恩の徒になれと言うのか?」

とだけ、吐き捨てた。

「は?」

「危険を顧みず助けてくれた人に、恩義を返すことが出来ないなら…、処刑された方がマシだ」

デイビスの確固たる信念を湛えた目に…補佐官はそれ以上、何も言えなくなった。

それから少しのち…ファルメニウス公爵家での一連の騒動が終わってから、リグルド・ヴァッヘン・
レオニールが帰ってきた。

「ただいま~、あ、これ牢屋にぶち込んできますので、少々お待ちくださ~い」

3人のそれぞれが…狼藉者を捕まえている…。

「どうしたんだ?それ…」

ガイツがちょっと呆れ顔だ。

「王立騎士団の敷地内に潜んでました。
ちょっとナイフ投げてみたら…正体を現したんで…連座で他のも捕まえたよ」

ヴァッヘンが…しょーもないねと言わんばかりに、ゆるゆると話す。

「まあ…オルフィリア公爵夫人はよくこちらに来ますからね…。
それ狙いだと思われます」

リグルドも…ため息ついている。

「なるほど…今日の襲撃は、ある意味陽動だったのかもしれんな」

テオルドが…妙に納得したように話す。

「しかし、さすがだな、ヴァッヘン卿…こちらでも捜索したんだが…」

「まあ…これが得意技ですから~」

ヴァッヘンの第4師団は…潜伏捜査を担当している。
だからこそ…敵の潜伏を見抜くのが、大変うまい。

「しかし…随分と帰りが遅かったな…」

すると…リグルド・ヴァッヘン・レオニールは顔を見合わせ、

「まあ…一から説明しますよ…」

と。
そして…3人の説明が終わると…。

「随分と…強引な手を使ってくるものだ…」

テオルドが…かなり怒りを露にしている。

「我々も残りたいところだったが…、王立騎士団の状態を見て、帰ってきて正解だろう。
我らのいなくなったことも…見計らってのことだろうからな」

デイビスも…やはり口惜しそうだ。

「まあ…というワケで、オレは急ぎ緊急火付けに移ります」

レオニールの言葉に、

「そうしろ…こちらの処理は任せていい」

デイビスが指示する。

「でも…なんだってそんなに…薬を大量に欲しがるんだ?
家族や使用人の分も入れれば…確かにまとまった量は必要だろうが…」

ガイツが不思議そうにしていると、

「おそらく…タルニョリア王国との関係悪化と賠償金を防ぐためだ」

デイビスの言葉に…皆が一斉に振り向く。

「団長に言われて…ここに来た貴族連中を調査したのだが、キンラク商会から買い入れた薬を、
この国の金持ちより…タルニョリア王国の方に、結構な量横流ししていることが分かった。
そもそもゴギュラン病はこの国よりも、タルニョリア王国の方が…恐怖心があるんだ。
だから…総じて相場よりかなり高くても、確保しておきたがる。
酷いのになると、相場の100倍の額が通ってしまったようだ」

「え~、それで使い物にならないなんて…詐欺もいい所だ(リグルド)」

「だから…タルニョリア王国も事態を重く見たんだろう…。
それに団長の性格をわかっていれば…オルフィリア公爵夫人を傷付けた人間に…優位な交渉を
するとは思えない…。
だから…何とか薬を手に入れて、ミスの穴埋めをしようとしているんだ…」

「……自業自得すぎて、一切の同情ができな~い(ヴァッヘン)」

「まあ、そういう事だな。
団長が帰ってくるまで、我らは我らの仕事をしよう(テオルド)」

師団長たちは…その言葉を受け、それぞれの持ち場に戻るのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

処理中です...