ひとまず一回ヤりましょう、公爵様3

木野 キノ子

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第3章 事後

2 私に振るなよ、オイ!!

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突然、私に被ってきた言葉…。
何が私のせいなん?

「アナタはレイチェルを実家において、すぐに帰ってくればよかったのです!!
そうすれば、あなたも私も被害を受けることは無かったのですから!!」

いや…ディエリンおばはんよぉ…、八つ当たりだってことはわかってるが、
それにしたって、言ってる事、支離滅裂やぞ。

「いえ…レイチェル伯爵夫人の実家は、酷い所だと聞いていましたので…。
ディエリン夫人はそうでも、私は置いて帰るなんて、絶対嫌ですよ?」

とりあえず、普通に答えてみる。
私とアンタは違う人間だ。

「そ…そんなことは、あの子が自分の実家で何とかすれば、いいんです!!」

あ~あ、墓穴二つ目…なんてことを私が思っていたら、

「だったら、母上もご自分の実家なのですから、自分で何とかしてください」

デイビス卿がすかさず突っ込む。
さすが王立騎士団副団長殿。

「本当に全く…レイチェルがあなたに何をしたというのです?」

何もしてないよね…。
レイチェルって、自分がいじめられても、人をいじめられるタイプじゃない。

「あの子はいずれ、ホッランバック伯爵家を破滅させます!!」

…なんでじゃ?

「あの子は社交性の欠片もなくて、何をやってもどんくさいし、気の利いた
会話の一つもできないし、いつも暗いし!!」

…間違っちゃいないが、アンタが言うな!!
ファルメニウス公爵家に来た時、最初こそ表情も態度も堅かったが、打ち解けたら
結構笑ってくれたし、博識だし、特技もあるぞ。
接し方の問題だろうが、要は。

「貴族社会において、夫人の役割とは、社交界での地位をいち早く作り、家を繫栄に
導くことです。
その役割を担うどころか、たった一度の失敗で逃げ出したのは、あの子です!!」

「周りに誰も味方がいないでは、逃げ出したくもなりますよ」

私は思わず口をはさんだ。
だってさぁ…ちょっとねぇ…。
いい年こいたおばはんが、あんまり若い子にダメ出しすんなや。
みんな若いころはあったし、みんな違う人間なんだぜ。

「な…何を言って…」

「…ディエリン夫人があまりにも、レイチェル伯爵夫人に敵愾心をむき出しにしている
から、フレイア伯爵夫人がレイチェル伯爵夫人に色々教えた時期が、あったそうですね」

これ、ジュリアからの情報。

「レイチェル伯爵夫人は…覚え自体はかなり良かったようですよ。
しかし実践は…本人の気弱な性格もあり、少しずつ、時間をかけてやっていく方が…と
言われたようですね」

「ほら、御覧なさい!!だからあの子は…」

「欠点のない人間なんて、いませんよ!!」

私も口調が強くなる。

「実際、お茶会や舞踏会を複数人で主催する方は珍しくない。
サポートに回った方を、侮辱する人はいないでしょう?
そういうやり方だってあるんです。
何事も陣頭指揮を、必ず取らねばならないことはない。
適材適所ってそう言う事です」

「あの子にオルフィリア嬢の手伝いなど、できません!!
本当にできることが何もない子なんだから!!」

いや、いい加減にせぇよ、おばはん。

「ディエリン夫人の意見はよくわかりました。
では私は、レイチェル伯爵夫人と二人で、できることを探してみることにします」

サラッと答えた。
こういうおばはんに、怒ってもエネルギーの無駄やし。

わたしゃ、ああ言えばこう言うは大得意だかんね、はっは。

するとディエリン夫人はやはり…かなり激高したようで、

「わかりました!!
オルフィリア嬢とギリアム公爵閣下は、ホッランバック伯爵家を潰したいんですね!!」

お~い、ついにギリアム公爵閣下の方まで八つ当たりが行ったかい…。
いよいよ頭おかしくなってきているな、おばはん。

「それは聞き捨てなりませんね。
私は、そんなことは毛ほども思っていませんよ」

さすがにギリアムも、黙ってられんよね、これは。

「もちろんです、団長。
母が大変失礼いたしました」

デイビス卿が謝ってくれた。

「だって…だって、あんな子をウチの息子にあてがうなんてっ!!」

あの~怒りで頭、おかしくなってませんか~?
だって…。

「あてがう?
私はレイチェル伯爵夫人との結婚を、デイビス卿に勧めたことなど一度もないぞ。
ルベンディン侯爵家になかなか結婚を許してもらえないと、相談を受けて初めて知った。
私が間に入ったのだって、デイビス卿の意志を確認したうえでのことだ」

「その節は、本当にありがとうございました、団長」

ディエリンおばはん、ここにアンタの味方はいないから、もう観念した方がいいぞ。

「では母上、私が実家までお送りします…直々に」

デイビス卿…かなり怒ってるな…。
するとディエリン夫人はさすがにマズいと思ったのか、

「オルフィリア嬢!!」

なんだよ、まだ私になんか用か?

「わ…私なら…私ならあの子よりずっと、あなたのお役に立てますわ。
ホッランバック家の女主人として、それをすぐに証明いたします!!」

あ、だめだ。
いよいよ、相手するだけ無駄になって来た。

「あの~、まずアナタは、ホッランバック家の元・女主人です」

めんどくさくなってきたから、

「あと、あなたが役に立つとおっしゃいましたが、私にはとてもそうは見えません」

言いたいこと言うことにした。

「そ、そんなことは!!」

「じゃあ、答えてください。
ディエリン夫人の今の状況は、間違いなく自業自得です。
アナタの何が悪くて、今の状況を作り出したと思われますか?」

「わ…私に悪い所など…」

「ほら、わかってらっしゃらない。
デイビス卿の言う通り、実家で反省なさった方がいいように見受けます」

「私は実家には行きません!!」

無駄な抵抗、よせや。

「じゃあ、質問を変えます。
ご当主と女主人では、どちらが上に来ると思いますか?」

「そ…それはご当主の方が…」

「なんだ、それはわかってらっしゃるのですね」

「と、当然です」

「ならなぜ…」

私はかなりキッツイ表情になってたと思う。

「ご当主たるデイビス卿の意向を、ことごとく無視されたのですか?」

「な、何を…」

「デイビス卿はレイチェル夫人を、ホッランバック家の女主人とすると決定しました。
そして、使用人たちにもそれを徹底するよう言いました。
でもあなたは…ことごとくそれを無視して、あまつさえレイチェル夫人をデイビス卿の
許可なく実家に返そうとまでした…」

「それは、あの子が役不足だからです!!」

「だったらあなたも、ご当主様に役不足と判断されたのだから、追い出されるのは
当然ですよね」

本当に自分の事は、棚に上げるおばはんやな。

「私のどこが、役不足だと!!」

「わからないんですか?」

口調に呆れが入りまくる。

「まず、ホッランバック家は今回、使用人をすべて取り換えることになった。
出ていく使用人の紹介状や、新しく雇用する人間の手配、入れ替わりの間の手間や不便…
デイビス卿はただでさえ王立騎士団で多忙なのに、その上さらにこんな負荷がかかったのは、
すべてあなたのせいです」

「それこそ言いがかりです!!
そもそも使用人を、すべて辞めさせる必要がどこにあるのですか!!」

それもわからんのかい。

「辞めさせる必要ですか?
ありますよ。
だって、理由はどうあれご当主の意向を、ほぼほぼ全員無視したんですから」

そう、根っこはそこさ。

ん~、なんだかようやっと、わかってきたみたいだな。
顔青いや。

「アナタはどうも、レイチェル夫人がホッランバック家の女主人にふさわしいかどうか…で
物事を見ようとしているようですが…もうそれは関係ないんですよ。
ここにいるほぼ全員が、ホッランバック家ご当主様の意向を…命令を、長い間無視してきた…
そのことにデイビス卿は重きを置いて、今回の処置を決めたのですから」

あ~、ちと喋りすぎたな。

「つまりあなたは、女主人としての一番大切な仕事…ご当主の意向を尊重し、家をしっかり
収めると言う事を、長い間怠ったんです。
そんなあなたが私の役に立つと言われても、とてもそうは思えません」

でも、もう少し行こか。

「もしあなたが、レイチェル夫人が役不足で、追い出した方がホッランバック家のためになると
言うのなら…まずはデイビス卿に許可を求めるのが先です。
そして、許可が出るまではレイチェル夫人に対して、しっかりとした礼儀をはらうべきです。
なぜならそれが、ご当主の意向なのですから」

まあ、デイビス卿は許可なんか出さなかっただろーけど。

「申し訳ございません、デイビス卿…。
少々喋りすぎました。
間違っている個所があれば、訂正してください」

「いいえ、オルフィリア嬢は私の言いたかったことを、全て言ってくださった」

随分と満足そうだから、とりあえずいいとしよう。

するとディエリン夫人は下を向いたまま、拳を握り体を震わせていたが、ふいに、

「もっともらしいことを言って、私を追い落としたつもりでしょうオルフィリア嬢…。
ですがアナタの性根の悪さが、これでよくわかりました!!」

……すまんが、ディエリンおばはんよ。
私は全く分からん。
説明求む。
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