ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第2章 危急

4 ラルトとジョノァドの攻防

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ラルトって…本当にフォルトにそっくり。
顔かたちじゃなく、性格が、ホントに。

「ラルト卿…先ほども申し上げました通り、オルフィリア公爵夫人が襲われた件に関しては、
近衛騎士団の管轄なのです。
ですから、容疑者と思しき人物は、こちらに引き渡して頂きたいのです」

オリバー卿が再度説明するが、

「では…ギリアム様にそのようにしてよいか、確認を取らせていただきます。
よろしいですね?」

「そ、そこまでするか!!」

ケイルクス王太子殿下よ…、合戦に参加する力が無いなら、もう黙っていた方がいいぞ。

「当然です。
ギリアム様のお考えは、ギリアム様しかわかりません」

これもド正論。

「そして何より…フィリアム商会支部を攻撃した理由についても、ご説明願います。
まあ…これについては、ギリアム様が直接近衛騎士団団長と王家にお話に行くことは、
もう決定だと思いますがね」

ケイルクス王太子殿下…近衛騎士団団長と聞いて、かなりびくついてる。
だからよぉ…ローカス卿ならまだしも、あのじい様、超苦手なのに、何でこんな事するかな~。
他の所ならまだしも、ファルメニウス公爵家関連の所は、力押しがきかない事、多々あるぞ。

「そ、それについては、もちろん後ほど、しっかり説明させてもらう!!
しかし…容疑者は今!!こちらに引き渡して欲しい。
王家の威信の問題でもあるんだ!!」

「というと?」

言葉でごまかそうったって、無駄だよ?

「お、王家としては…オルフィリア公爵夫人が二度にわたって、襲われたこと、非常に心配して
いるんだ。
だから…情報が入った以上、即動いて、解決しようとしているんだ!!」

「それは…大変痛み入ります」

ラルトは深々と頭を垂れる。

「わ、わかってくれたなら、いいよ。
じゃあ、容疑者を…」

すると顔を上げたラルトが、満面の笑みを浮かべ、

「そこまでファルメニウス公爵家の事を思ってくださっているのなら…、容疑者をギリアム様が
直接取り調べることは…当然許してくださいますよね?」

静かに…しっかりと言った。

「い、いや、だから!!それはこっちで」

「ほう…」

ラルトは笑みを浮かべたまま、

「つまり近衛騎士団に…」

かなりはっきりと…

「ギリアム様以上の能力がある方が、いらっしゃると言う事ですね?」

言った。

これは…ケイルクス王太子殿下が固まった。
そうだろう。
これを肯定してしまった場合…、あのじい様とギリアム…双方に責め立てられること間違いなしだ。

「ラルト卿…」

固まったケイルクス王太子殿下とオリバー卿に代わり、再度ジョノァドが出る。

「ラルト卿の仰ることも、確かにいちいち最もですね…。
では、こう致しませんか?」

コイツは本当にしぶてぇな。
まあ、だからこそ裏社会と繋がって、それを使いこなしてこれたんだろーけど。

「まず…容疑者はこちらで引き取らせていただき…後日ギリアム様にお引渡し致します。
いかがでしょうか?」

ラルトはため息一つつき、

「ルベンディン小侯爵の時もその予定でしたが…容疑者の自殺を防げませんでしたよね?
また同じような事になると困りますので、フィリアム商会支部で預からせていただきます」

一歩も引かない。
そもそもジョノァドの言葉など、鵜吞みにするわけがない。

「アナタもわからずやですねぇ…」

ジョノァドの顔が再度、能面笑顔のまま怒気を孕む。

「とんでもない。
アナタには到底及びませんよ」

ラルトも笑顔だが、眼が笑っていない。

両者一歩も譲らずとは、まさにこのこと。

しかしそんな最中…事態が一変する。

「あの…もういいです。ありがとうございます」

そう言って…ラルトの後ろから、先代とトランペストが出てきた。

「!!」

ラルトは一瞬驚いたが…すぐに事態を察した。
かなりきつめの顔になり、ジョノァドを睨んでいる。
ジョノァドは…能面笑顔がさらに濃くなった。

「アナタは…どこまで質が悪いんですか?」

「言葉に気をつけたまえ。私は侯爵だぞ。
たかが小伯爵風情が、侮辱していいわけがない」

ジョノァドのその言葉と同時に…後ろの兵たちが矢を構え始める。

「ラルト卿はもう、支部の中に入ったらいかがですか?
もっとも…下賤な者たちと心中したいなら、別ですがね…」

勝ち誇ったように語るが…、

「下賤な者…と、おっしゃいましたか?」

「?」

ジョノァド…アンタは悔しいが能力値が高い…でもだからこそ…。

「下賤な者とは、誰の事だか、ハッキリ仰っていただけませんか?」

失言と思っていないことが、

「ふむ…アナタの後ろにいる…その5人のことですが?」

失言になることは…世の中にあるってわかってんじゃないのかい?
ラルトの口の端が、わずかに上がる。

「ファルメニウス公爵家の家臣を…下賤とは随分と言ってくれますね。
先ほど私の発言を失礼と言いましたが…アナタは今、ギリアム様を侮辱したも
同然ですよ」

「!!!」

流石に今度は…ジョノァドが驚いたね。

「全員聞けっ!!」

ラルトも…拡声器いらない音量出せるんやね…すご…。

「ここにいる5人と私は…まがう事なくファルメニウス公爵家の家臣だ!!
それを攻撃すると言う事は…ギリアム・アウススト・ファルメニウス公爵閣下を
敵に回すことと思え!!」

すると途端に、兵士たちがざわつき、弓矢を下ろすものも現れた。

「何を言っているのですか…」

そう言うジョノァドの顔に、余裕が消えてきている。

「ファルメニウス公爵家の家臣は…全員貴族のハズですが…」

「そうでない者も一部います。
大体…広義で言わせていただくなら、フィリアム商会の人間とて、ファルメニウス公爵家の家臣…。
そう考えるなら、むしろ平民や難民の方が、多いですよ」

全くだ。
するとジョノァドは、

「詭弁だ!!」

叫んだ。

「そもそも正式にファルメニウス公爵家の家臣として…認められていないものまで認めるのは、
完全なる越権行為!!
これは由々しきことですぞ、ラルト小伯爵!!」

間違っちゃいないが…、てめぇが言うな!!
ギリアム父が亡くなった時、散々越権行為した事、ラルトは知ってるぞ!!

「…なぜ彼らが、正式なファルメニウス公爵家の家臣として、認められていない…と、思われるの
ですか?」

余裕がなくなってきたジョノァドに対して、ラルトはかなり余裕ありげだ。

「決まっているだろう!!
奴らはオルフィリア公爵夫人を襲った連中なんだ!!
まして身分はおろか、戸籍も国籍もない、裏社会の人間達だ!!
そんな人間を…家臣にするわけないだろうが!!」

おーい、失言とも取れる事言っとるが、わかってるかぁ?ジョノァドよぉ。

「おや…おかしいですねぇ…」

すかさず、

「まるであなたの口ぶりは…彼らがオルフィリア公爵夫人を襲った犯人だと、断定しているようだ。
先ほど…ケイルクス王太子殿下は、容疑者…と、申していましたが?
そもそも確定しているのであれば、証拠をご提示願いたい。
最もそうなった場合…完全にギリアム様に引き渡すことに致しますので、ますます渡せませんが…」

ラルトの攻撃が炸裂。
ジョノァドよ…アンタが完全にファルメニウス公爵家を掌握できなかったのは…ギリアムの優秀さも
あるが、フォルトの力が大きいって、わかってるだろ?

そしてそのフォルトの血を、いかんなく受け継いだラルトは…

「ケイルクス王太子殿下」

攻撃の矛先を間違わない。

「な、なんだ?」

「今のジョノァド卿の言葉について…どう思われますか?」

「い、いや…」

もう完全に蚊帳の外だと思っているんなら、甘いぞ、クソガキ!!
立場が形だけでも上ってことはよ…いくら自分が蚊帳の外に置かれたとしても、常に全体像の把握をして
頭をフル回転させてなきゃ、ダメなんだよ。

「と、とにかく引き渡してくれ!!これは王家の命令だ!!」

悪手だぞ…それ…。

「王命が使えるのは、国王陛下だけです」

静かにこう答えられて、終わりだよ、ばか。

「ラルト卿…では逆に、お聞きしますが…」

ここでオリバー卿が出たか…。

「なぜあなたは…彼らがファルメニウス公爵家の家臣だと思われたのですか?
通達があったのですか?
そこをお聞きしたい」

なるほどね…。
ケイルクス王太子殿下の若くて迂闊な所は…結構この人がフォローしてんだな。
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