ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

文字の大きさ
24 / 59
第4章 恩赦

3 フィリーへの忠誠

しおりを挟む
大広間には…かなりの人数が集まっていた。
護衛騎士はほぼ全員集合していたし、メイドたちも…部屋の外から聞き耳を立てていた。

あ、断っとくけど盗み聞きじゃないよ。
ギリアムがメイドたちにも聞かせるために、ワザと少し開けておいたの。
聞きたい人はどうぞ~って、周知して。
だから…ほぼみんな来ていたと思う。

そのかなりの人数のざわざわは…もう、一つのオーケストラのように、大広間に響き渡った。

「ギ、ギリアム様!!」

フォルトがギリアムに即…止めるよう言おうとしたんだと思うが、

「フォルト…少し黙っていろ」

ギリアムは…さっき話したから、至極落ち着いている。
それですべてを察したのか…フォルトはそれ以上口を挟まなかった。
…本当に…優秀でいい人だ。

私の言葉を聞いたトランペストは…最初何を言われているのか、わからなかったようだ。
まあ、そうだろうなぁ。
確実に…断頭台だと思っていたろうから…。

私は…彼らの頭が正常回転する時を待った…。
急がせても…なんの意味も無いから…。

どれくらいの時が過ぎたかは、残念ながらわからない。

私は…ギリアムみたいに時計いらずで時間を正確に測れるわけじゃないから。

周りのざわざわのオーケストラは…当然収まる気配はない。

そんな中…。

最初に口を開いたのは…。

……スペードだ。

「オレに…」

「オレたちに…」

言葉は…たどたどしいがハッキリしている。

「オルフィリア公爵夫人に…」

「償う機会を…」

仮面をつけず、傷だらけの顔に…

「与えてくださるんですか…」

笑みを張り付ける。

でも私は…逆に厳しい顔になる。
だって…言っておかなきゃいけないから!!

「言っておくけど…恩赦で私兵にした場合…強制終身雇用よ。
そしてファルメニウス公爵家は、ガチガチの実力本位主義!!
実力が伴わないと判断されたら…結局死刑になるか、一生牢獄と言う事だってあり得る!!
それでも…私の私兵になる?」

そうなのよ。
恩赦って…ありていに言えば、犯罪者を許すってことだから。
簡単には出せないし、出したら出した人間が、許した人間を雇用する…。
この辺は暗黙の了解的な所もあるから、さじ加減に任せられてて、難しいのよね…。
法的にも…穴が結構あるし…。
でも…彼らを断頭台から救うには…こうするよりほか、道はない。

私の私兵になるか?と、聞かれたトランペストは…全員が私の前に来て、かなりしっかり…
跪いた。

「光栄です…奥様…」

……ジェードに聞いたけど…私が整備した法に…すごく感動してくれたらしいから…。
もう私に対して…死ぬことでも何でも、償いをしたいと思ったんだろうなぁ…。

「奥様~、話がまとまったみたいなんで、オレも奥様の私兵ってことで」

……ジェードよ。
キミは本当に…猫っぽいね…。
自分の気分で動きたいよーに、動く…。

「ギリアム様…構いませんか?」

「いいですよ。
最近本当に、フィリーの専属になっているなぁと感じていましたので」

だよねぇ…。

「わしも、くわえてくれませんか?奥様…」

と、挙手をしたのは…先代だった…。
え~、想定外。

「あの~、先ほど説明した通り、ファルメニウス公爵家は、完全実力本位主義です。
実力が伴わなければ、すぐ追い出しますよ?」

「ふははは、わしがいたのは、ずっとそんな世界でしたよ。
むしろ、殺されずに追い出されるだけなんて、有難くて涙が出ますわ」

私は黙ってジェードを見た。
ジェードは…含み笑いを浮かべている。

これ…面白い事になりそうって、思ってるってことだ。

ジェードは本気で嫌なら、かなり硬い表情になるからね。
つまり…この先代に好感を持っているってこと。
そして…裏社会でそれなりに、やって来た人…か。

……面白いじゃん!!
毒を食らわば皿までだ!!

「わかりました…お名前は?」

「…ひとまずジョーカーとでも、呼んでください」

「わかりました…」

本名かどうかはわからんが…そんなことは問題じゃない。
フィリー軍団には特にね。

「ジェード…しばらく、彼らを任せたわ。
形が決まったら…詳しい雇用の事は、話をするから」

王家が恩赦の提案を断るわけは無いんだけど…。
万全を期したいからね。

「わかりました、奥様…。
お前ら、ひとまず一緒に来い」

ジェードに言われたトランペストは、もちろん素直に従った。
ざわつきのオーケストラが、相変わらず開催されている大広間を横切る形で…、ジェードは
さっさと外に出る。
トランペストも一緒に…。

私はそれを見届けて、ギリアムに王家への対応を、改めてお願いした。

そして私は…さっさと自室に引きこもる。

だってさぁ…どんな説明しても、今はダメ。
それがわかっていたからね。

しばらくしたら…フォルトが尋ねてきた。
ギリアムに…書斎での話を聞いたようだ。

「正直…私にも話して頂きたかったです」

わかるよ…。
納得できないよね。

「それは…本当に悪かったと思っているわ…でも…。
まずはギリアムと一対一で、話すのが先決だと思ったし…その後すぐに、準備が整ったからね。
みんな…仕事があるし」

「この件…かなり波紋が大きくなると思われますが…」

さすがフォルト…わかってる。

「わかっているわ…でも…。
私には力が必要なの…それも…ギリアムが手に入れられない力が!!」

「ジェードは…もともとギリアム様が懐柔したのですが…」

「懐柔した所まででしょ?」

「はい?」

「ギリアムは…ジェードの力を…最大限引き出しているのかしら?」

「奥様…それはいったいどういう…」

「いずれわかるわ…言葉で説明するのは…すごく難しい事だから」

そうなんだよ…。
私も…まだ、勘というか、感覚でしかつかめていない。

でもさぁ…。
ジェードは…最近本当に…私の所ばかり来るんだよ。
まるで…魚が水を得たがっているような…そんな感じを受けるんだよ。

「とにかく…護衛騎士とメイドの動きには、しばらく注意してちょうだい。
質の高い人たちだから、滅多なことはしないだろうけど…逆に色々テストになっていいと
思っているわ」

「テスト…ですか?」

「ええ、そうよ。
ここの人たちってさ…原則身分持ちが殆どでしょ?」

護衛騎士もメイドも…ほぼ貴族出身者だからね。

「は、はい…」

「そう言う人間がね…自分より身分の…物凄く低い人間が、自分の欲しいものを得たのを見た時…
その人間の真価が問われる…私はそう思っているわ」

「……なんだか、楽しそうですね、奥様…」

「そりゃーね…」

私はちょっと上を向き、

「私はさ…フォルト…このファルメニウス公爵家に来て…かなり歓迎してくれたこと…本当に感謝して
いるのよ。
いくらギリアムの昔のことがあったとはいえ…ね」

「それは…もちろんでございます。
実際…奥様はギリアム様の助けになっております」

「まあねぇ…実力本位主義者ぞろいだからね…ここは…。
私の実力を…しっかり見て判断してくれたんだなって、わかるわ」

「もちろんです、奥様」

「だからさぁ…私は奥様として…そろそろテストも必要だと思うのよ。
ちゃんと…実力が伴っているか…ってね。
永久不滅の物なんて…ないと思っているからね」

「もう少し…わかりやすくお願いします」

「ん~、人間ってさ…、大丈夫って思った時が、結構危険なの。
状態が安定して…変化が無くなってくるとさ…それが永久にあるものだと勘違いしやすい。
私に言わせれば…明日天変地異が起こって、みんな死ぬこともあり得る」

「そこまでおっしゃっては…」

「まあ、それは極端だけどさ…。
私が言いたいのは…状態が安定してくると…案外溜まった膿に気付かないことがあり得るってこと」

「…何か、懸念事項でも?」

フォルトの眼球が光る。

「ううん、何にもないよ。
出てくるかもしれないし、出てこないかもしれない…。
出てこないことに越したことは無いけど…そんなのやって見なきゃわからない…ってとこね」

フォルトがいよいよわけわからん…になったから、私はとりあえずそこで話をやめた。

後日ギリアムは…私の予想通り、見事に恩赦の許可を、国王陛下からもらってきた。
やっりー。
これで舞台は…整った!!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

望まぬ結婚をさせられた私のもとに、死んだはずの護衛騎士が帰ってきました~不遇令嬢が世界一幸せな花嫁になるまで

越智屋ノマ
恋愛
「君を愛することはない」で始まった不遇な結婚――。 国王の命令でクラーヴァル公爵家へと嫁いだ伯爵令嬢ヴィオラ。しかし夫のルシウスに愛されることはなく、毎日つらい仕打ちを受けていた。 孤独に耐えるヴィオラにとって唯一の救いは、護衛騎士エデン・アーヴィスと過ごした日々の思い出だった。エデンは強くて誠実で、いつもヴィオラを守ってくれた……でも、彼はもういない。この国を襲った『災禍の竜』と相打ちになって、3年前に戦死してしまったのだから。 ある日、参加した夜会の席でヴィオラは窮地に立たされる。その夜会は夫の愛人が主催するもので、夫と結託してヴィオラを陥れようとしていたのだ。誰に救いを求めることもできず、絶体絶命の彼女を救ったのは――? (……私の体が、勝手に動いている!?) 「地獄で悔いろ、下郎が。このエデン・アーヴィスの目の黒いうちは、ヴィオラ様に指一本触れさせはしない!」 死んだはずのエデンの魂が、ヴィオラの体に乗り移っていた!?  ――これは、望まぬ結婚をさせられた伯爵令嬢ヴィオラと、死んだはずの護衛騎士エデンのふしぎな恋の物語。理不尽な夫になんて、もう絶対に負けません!!

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...