ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第5章 私兵

8 ギリアムの考え、フィリーの考え…

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「私の前提も決定も覆らない。
私はそれに命を懸けているから!!
だからそれを侵害するなら…善良な人間でも私は潰す…それだけよ」

するとフォルトは下を向きつつ、

「奥様の決定であれば、私もエマも従います…しかし…。
もし…奥様に余裕が出来たら…その時は、もう一度見直してみていただけませんか?」

フォルトは…やっぱり忠実で優秀だ…思わず願いを聞いてあげたくなる。

「もちろんそれは、するつもり。
そもそもルイーズ嬢やフェイラ嬢にも、私は時間が経過して本人たちがどうなるかは見る…と
言ったのだから、ケイシロンの2人に対しても、そうするつもりよ。
ただし今は無理!!」

「もちろんです…過去の事を差し引いても…彼女たちは奥様に、無礼を働き過ぎました」

エマも頷いてる。

「あ、ギリアムが帰ってきたみたい。
私はお迎えに出るわ」

「わかりました。お供いたします」

フォルトのその言葉が終わらぬ前に、私は門に向かって駆けだすのだった。


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さて、私と別れたフィリー軍団は…といえば、私が用意した寮まで、てくてくと歩いていた。
ファルメニウス公爵家は、とにかく敷地がバカでかい。
敷地内でも馬車や馬で移動するのが当たり前。

でも…彼らは鍛えるためだし、堅苦しいのは嫌いだと言って、いつも徒歩で移動する。

「ついに騎士団でのお披露目かぁ~、腕が鳴るぜ!!(クローバ)」

「まあ…やりすぎないようにしろ。手を抜く必要はないがな(ダイヤ)」

「オレたちは…オレたちの仕事をするだけさ(スペード)」

「そうね~、奥様のためにね(ハート)」

「ほっほ(ジョーカー)」

みんな…すごく気合い入れてくれてるけど、

「お前らに、言っておくことがある」

ジェードがいきなり口を開いた。

「何だよ、急に…」

みんなが一斉にジェードを見る。

「オレは…間違いなくご当主様が好きだし、ご当主様の為なら死んでもいいと思っている…だが…
ご当主様の近くにいる時、息苦しさを感じることがよくあった…」

「!!」

これは…流石にかなり意外だったようで、みんながひきつった。

「ご当主様は…綺麗すぎるんだ…心根や考え方がね…」

「それって、いい事じゃないのか?」

スペードが…本当に不思議そうに問えば、

「……確かにな。
けどよ…オレは闇に生まれ、闇の中で育ち、闇の中でしか生きられない生き物なんだ」

ジェードは少し、考え込みつつ、

「だがご当主様は…その闇を…根本から消したがってる…そんな印象をどうしても受けるんだ…」

「……ならどうして、ここに居続けたんじゃ?」

「ん?爺さんだったらわかるだろ?
500ゴールドってのは、オレが今まで受けた仕事での最高額だった。
この世界…人格を否定しまくって、能力のアラを探して、値切るやつばかりだ。
でもご当主様は…オレの最高額を、いとも簡単に安すぎると言い、適正だと自分で言った価格を
即金で払った。
誤魔化しなど、一切しないでな…」

ジェードはここで、初めて笑い、

「嬉しいじゃないか…、己の力を認め、物扱いが当たり前のオレに、人間として生きろと
真っ向から言ってくれるなんてな…」

「どの道オレらみたいな人種は…どこにいたって、風前の灯火な命だ…。
だったらご当主様のそばに居たかった…。
例えいつか…跡形もなく消されてしまうとしても…な」

「……」

みんな言葉がない。
同じ世界で生きてきたからこそ、ジェードの気持ちがわかるのだろう。

「でもよ…」

ここから声のトーンが明るくなった。

「そんなご当主様のもとに…奥様がやってきて、オレの世界はまた変わった」

「奥様は…ご当主様と同じくらい綺麗なのに…闇を消そうという感覚がまるで感じられなかった…」

「そもそも…昼と夜があるように、光があれば闇がある。
どちらかだけ消せる物じゃないし、そもそもあまり…そういう区別をしていないように思えた…」

「光だろうが、闇だろうが…そこが等しく…いい場所になるように…そう考えて動いている…。
オレはそう感じられたんだ…」

ジェードは天を向き…見えないはずの星の瞬きを仰ぎ見る。

「だから気が付けば…奥様の元にばかり行くようになっちまった…。
奥様は…婚約者のうちは、奥様と呼ばれることを好まなかった。
よく、奥様違う!!って言われたもんさ…」

「でもオレは…奥様って呼びたかったんだ。
この家を…出て行かないで欲しかった…。
オレの…居場所になって欲しかったんだ…」

「なら…かなって良かったじゃないか」

ジョーカーが言えば、

「ああ、そうさ…」

暗闇の中に…なんだか暖かくて明るい空気が流れた。

「そういや、これも言っとかないとな…」

ジェードの話は続く。

「奥様はお前らに…自分の価値をもう少ししっかり把握しろ…って言ったけどよ…。
オレに言わせれば、これが一番当てはまるのは、奥様だ」

「!!!!」

「そりゃ、どういうことだよ!!(スペード)」

「奥様はよ…育ちのせいか…どうも自分の力を低く見積もる傾向がある」

「え~(ハート)」

「ご当主様は鉄面皮の上、自分がこうと決めたら、誰が何を言っても曲がらない…。
それを…曲げることが出来るのは、奥様だけだ…」

「そして人当たりが良く、優しくて…面倒見もいい…。
人のいい所を出来るだけ探して…褒めて…何の見返りも求めず、人を救う…」

「ご当主様は…間違いなくいい人なんだが、非常に近寄りがたいんだ。
ハッキリ言って、息がつまる。
でも奥様は…その真逆でとても近寄りやすい、自然体で付き合える人だ」

「何が言いたいんだ?(ダイヤ)」

「ご当主様より…奥様の私兵になりたがっている奴の方が…多いってことさ」

「!!!!」

「人は…嫉妬すると、結構とんでもない事をするからなぁ…。
まあ、おまえ等だってよくわかってると思うから、オレはこれ以上言わないがね」

ジェードの話は、皆の心に深く刻まれた。
夜の帳がすでに降りた場所は…星の瞬きのみが、この先の行く末を案じていた。


---------------------------------------------------------------------------------------


「ギリアム、お帰り~」

私はギリアムを門の前で、お出迎え。

「ただいま、フィリー…」

ギリアムは私を愛おしそうに見てくれた。

「報告があるのですが…」

「わかりました、寝室で聞きます」

そうしてやって来た夫婦の寝室で、私は今日のトランペスト達との行動と…フィリアム商会で
感じた…おかしな感じを報告した。

「フム…見張りを強化する必要ありだな…この前のような事になったら、名折れだ!!」

「そうですね…ひとまずそれで、対応しましょう」

「ところで…彼らとは随分と…仲良くなったようですね…」

「……そりゃ、私兵ですから…。
連携を取れるように、しておかねばなりません」

ギリわんこの嫉妬が出てくると、厄介だから、流す…と。

「彼らを近々王立騎士団に連れて行きますが…そこにローエン閣下だけは、呼ぼうと思っています」

そして、気をそらす…と。

「ほお…」

「ただし…他の人を連れてこないという条件で…です」

「いいのではないですか?」

「どうせ…テオルド卿あたりが、私が王立騎士団に来たら、コッソリ伝書鳩飛ばしてくれ…と
頼まれていると思うので」

「……そうなんですか?」

「私の単なる予想ですから、外れたってどうってことないです」

「私はローエン閣下にもローカス卿にもいいイメージを持っていますが…それを差し引いても、
夫人2人の無礼な態度は許せません」

「私も同感です」

「2人をどうするか…は、私に一任してください」

「それも構いません」

「あと…スペードの顔の件は、ギリアムから周知させる必要はないです。
私が、言うべき時は、判断いたしますので」

「わかりました」

「私の…希望を聞いてくださり、ありがとうございます。
今日は…朝までお付き合いいたします」

「嬉しいですね…」

私がそう言うと、ギリアムは本当に嬉しそうに、微笑んだ。
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