ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第9章 悲劇

7 収穫祭での…

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「あのさ、ローカス卿…」

「は、はい?」

いきなり振られて、びっくりしとる。

「さっき私が話した…善人だから手駒にされないわけじゃない…の下りで…、とてもいい例が
アナタのすぐ近くにいるんですけど…誰だかわかります?」

「へ…?オレの…ですか?」

「そうです」

ローカス卿…考え込まないでくれよ…。
あんた、頭いいだろ?

「……ケイルクス王太子殿下じゃな」

おお、じい様やっぱわかってる。

「ええ!!いつからジョノァドの手駒に?」

ローカス卿…考えもしてなかったっポイ…。
まあ、ジョノァドの腕を考えたら、気づかなかったのも、うなずけるけど。

「本人に自覚は全くないと思います。
それも…ジョノァドの恐ろしい所なんですけどね」

私は…一連のジョノァドの罪(ダイロおっちゃんの件)や、ゴギュラン病とその薬に関すること、
その他…ジョノァドしたことでわかることを全て、みんなに話した。
裏で…本当に悪辣な事やってたからね…。
サバクアシの農場を広げるために…地上げ屋まがいならまだいいほう。
適正価格よりずっと低い値段で土地を買い叩いて、酷い時には悪評をバラまいたり、火付けを
行ったり…、傷害・暴行・強姦・脅迫…本当に何でもござれ。
しかも…一切表に出ないようにやってたんだから、全くねぇ…。

「そんなことまで…」

「ええ…ですが、このすべてに王太子殿下が関わっているか…と言われれば、ハッキリ言って
ノーです。
むしろ、最近になるまで殆ど知らなかったと思われます」

「最近?」

「例の…ゴギュラン病の薬が…毒だったという一件です」

毒まで行かなくても、効果失くしてたりとかもね。

「ここからジョノァドの悪事が…急速に露呈しました。
それに連座して…彼がキンラク商会を大きくするために、やって来た悪事も露呈してしまったんです。
だから…」

私は少し、ため息つきつつ、

「私はゴギュラン病の薬の一件を持って…、王家…まあ、王太子殿下ですけど…は、ジョノァドを
切ると思っていました。
でも…切らなかった」

「な、なぜ切っていないと?」

ローカス卿…少し自分で考えてくれ。

「考えても見い」

じい様が変わってくれた。

「近衛騎士団…予備兵まで含めて、あれだけの数を動かせば…、その時はごまかせても、
後々必ず、説明を求められる。
もちろん…スケープゴートを捕まえれば、ごまかせるかもしれんが…、人数が明らかに
異常なことを、フィリアム商会にも見られとるんじゃ。
追求されれば、かなり苦しい事は、誰の目にも明らかじゃろう?」

そう…なのに決行したんだ。

まあ最も…そこまで切羽詰まってたと言えるだろう。
スケープゴートを何としてでも捕まえないと…マジで自分の身の危険を感じたんだな。
数の力と権力の力で…圧倒することにより、何とかしようとしたんだ。

「現場まで行くときに…いくら町や村を避けたとしても、あれだけの大人数では人目に
付かないわけがない。
それ全てに口封じなど、不可能じゃ。
少し考えればわかりそうなことが…、全く分かっていなかった…。
正常な判断が出来ていたとは…とても思えない。
完全にいいなりじゃ」

するとローカス卿も納得したようだ。

「まあ…私は王太子殿下に、一切同情せんがな」

おお、ギリアムも参戦。助かる~。

「薬を買い込んだ挙句、病気をわざと広めて、名声を得ようなどと…人の迷惑を顧みない
にもほどがある」

その通り過ぎて、何も言えない。

「そんなに…悪人には見えなかったんだけどなぁ…」

ローカス卿としては、ケイルクス王太子殿下とそれなりに仲が良かっただけに…、複雑だろう。

「先ほど申し上げた通り…、ケイルクス王太子殿下はそれほど悪人ではありません」

そうなんだよね。

「薬だって…民間には本当に、適正価格より安値で、売るつもりだったと思います。
アイリン夫人の件だって…これはジョノァドもですが、薬が毒化していたとは、知らなかったんです。
薬をわざと毒化させたわけでも、ありません。
タルニョリア王国への不当な高値は…全て配下が勝手にやってしまったのでしょう」

「配下が勝手にやったって、責任を取るのは上だ。
監督不行き届きに恩赦はない」

ギリアムがすかさず出た…。うん…、わかってるよ。

「ただ…ローカス卿は良く知ってらっしゃるかもしれませんが、王太子殿下はギリアムへの
コンプレックスがかなり強いです」

「それは認める」

ローカス卿がキッパリと言い切った。

「ジョノァドはおそらく、そこを突いたのです。
ゴギュラン病という…かなり厄介な病気が流行りそうだ…。
だが、その情報を入手したから、キンラク商会を使って、薬を十分に確保した。
ついでにあの法案を通して…ファルメニウス公爵家にだけ薬を売らないようにすれば、ギリアムとて
民衆のために、王家に平伏するしかない…と。
そして、ケイルクス王太子殿下に対し、救国の英雄と言う、称号があたえられるだろう…と」

本当に…悪知恵働かせたら、右に出るものなしだよなぁ。

「ですが実際は…キンラク商会で入手した薬は、全く役に立たず…、おまけにあの法案を通したことで、
死の商人…などと揶揄される直前にまで行った。
おまけにゴギュラン病をバラまいたのは、ジョノァドだし…。
そのばら撒かれた病気は、結局ギリアムとフィリアム商会が解決した」

このことによって…裏取り引きで、何とか王家のことは出なかったが、結局名声はギリアムのモノに
なった。
ついでに通した新法案についても…民衆の人気はうなぎ登りになったからなぁ…。

「これによって…精神的にかなり参ってしまっただけではなく、ジョノァドの悪事とキンラク商会が、
かなり密接に繋がっていることも知ってしまった。
だから…もう完全に、キャパオーバーなんですよ。
元来、性悪ってわけではないからこそ、耐えられなくなったのかもしれません」

そうすると人間は…正常な判断ができなくなる。
むしろ…バカ王女の方が、知った所でシレっとしてたかもなぁ…。

「そしておそらく…ケイルクス王太子殿下の周りの人間も…多かれ少なかれそうです。
だからいくら…国王陛下と近衛騎士団の半数以上が、王都を留守にしているとはいえ…、あのような
大胆なことをしでかした…このことから推測するに…王太子殿下と側近はもうほとんど…、ジョノァドに
席巻されていると思うしかない」

残念だけど…ジョノァドを相手にするなら、甘い考えは捨てた方がいい。

「なるほど…そんなジョノァドが次に狙うのは…近衛騎士団の完全掌握か…」

じい様が心底納得しとる。
そもそも近衛騎士団は…じい様が戻る前、半分くらいは席巻されていたろうからなぁ…。

「ええ…ですので…、出来る対策は、しておいた方がいい…。
選抜されるのは、収穫祭の後とは言え、収穫祭自体が、かなりの数の貴族が集まる場です。
変な枝葉を伸ばさないとは言い切れない」

「そしてもう一つ、今度の収穫祭…。
絶対にケイルクス王太子殿下から、目を離さないでください」

「何か…しでかすと?」

じい様の目が光る。

「いいえ…ハッキリ言って、全く分かりません…。
しかし、先ほども申し上げた通り…、精神的に全く正常ではないと思ったほうがいい。
収穫祭は…王家主催のイベント故、ケイルクス王太子殿下が出席しないと言うのは、あり得ない。
キンラク商会との関連を否定しつつ、王家自体は健在であると示さねばならないのですから。
逆に欠席したりしたら…何を言われるか、分かったものではありません」

「でも…精神的におかしいなら、衝動的に何かをやっても、おかしくないです」

「なるほど…そもそも警護のために、複数人は近衛騎士がつきますから…。
逐一動向をチェックするようにいたしましょう」

そんなこんなで、王立騎士団での話は終わった。


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「そうか…報告ご苦労…。だが…、信じられんな…」

謁見の間で言葉を紡いでいるのは、国王陛下だ。
ローエン卿の報告を、受けているようだ。

「信じられなくても、10日間ファルメニウス公爵家に、ティタノ陛下が滞在したことを考えると…
認めざるを得ないでしょう。
国賓館には…滞在を短縮しこそすれ、伸ばしたことなどないことを考えると…」

「ギリアム公爵とばかり仲良くしたがるのは…功績ももちろんながら、自分と性質が似ている…
だから、一緒にいて楽…というのもあったのでしょうな…」

「もっと言えば、オルフィリア公爵夫人はギリアム公爵の神経質に慣れているから、ティタノ陛下
に対しても、適切な対応が出来ているのでしょう」

何だかローエン卿の報告を受けて…、国王陛下はどんどん頭が痛くなっているよう。

「だから国賓館の者たちから、何かしらの訴えが出たとして…それをもし、直接ティタノ陛下のお耳に
入れるような真似をしたら…、それこそその者が、殴り殺されてもおかしくないでしょうな」

国王陛下はため息をつきながら、

「相分かった…。
それについては、こちらで処理する…。
ご苦労だった」

「ケイルクス王太子殿下は、どうしていらっしゃいますか?」

じい様のその問いに、国王陛下はさらに頭を痛そうにし、

「相変わらず、部屋から出てこん…全く…収穫祭も間近だと言うのに!!」

まあ…カウンセラー入れた方が、いいと思うよ…。
一番いいのは、宿主食い殺す気満々のジョノァドって言う、寄生虫退治することだけど。

王宮は…その日も色々なものを飲み込みつつ、静かに闇に包まれるのだった…。
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