ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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番外編

ギリアムの困った癖

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「奥様は、彼らの過去について、気にならないのですか?」

こう聞いてきたのは…フォルトだった。
周りにはエマと…護衛騎士とメイドが多数…。
まあ、必ず出ると思ってたからね、この質問…。

私のそばには…フィリー軍団がいる。

「まあ…気にならないワケじゃないけど、そもそも過去なんてみんなあるものよ。
いちいち詮索してたらキリが無いし、された方は気分もよくない…ってのが、私の意見。
だから…自分から話さない限り、私はいいわ。
実際、みんな早速役に立ってくれたんだから、文句もないし」

ルリーラ夫人とマーガレット夫人の時の機転は、本当に助かった。
誰にでも出来ることじゃない。

フォルトは…ちとため息ついてるね。
まあ…しょうがないか…。

「あの…」

フォルトの横から、護衛騎士が挙手した。

「比武の条件は、同じですか?」

「もちろん、いつでもいいわ」

私の声と同時に…フォルトがわずかに動いた。
と思ったら、スペードが己の喉めがけて飛んで来たナイフを、かなりあっさりと掴んでいた。
私はそれを確認しつつ、

「あら?フォルト一人だけ?他には?」

と、言ってのけた。
フィリー軍団は、一人として焦った様子など見えない。
むしろ…私の言葉と同じことを言いたげだ。

ちなみに、比武はファルメニウス公爵家の日常茶飯事…。
何をやっている時でも、攻撃を避けなければ、避けなかった方がダメという奴。

また、別の人からは、

「奥様は…襲った人間をそばに置くことに関し、本当に気にならないのですか?」

「ええ、襲わせた奴を叩くべきだし、彼らはもうその人間とは手を切ったからね。
私は…役に立つなら、起用するわ。
ギリアムがジェードをそうしたように…ね」

そのまた別の人…。

「奥様に…万が一危害をくわえたら…」

「信用して欲しいなら、まず信用するのが大事よ」

別の人…。

「奥様の身の安全のため、やはり監視を置くべきでは…」

「監視はいつか、辞めなきゃいけないわ。
そもそも…そうするべきと思った人間を、私は、そばにはおかないから」

そんな問答を、私はもともとのファルメニウス公爵家の家臣たちに繰り返した。
私がここに来たばかりのころから…私に色々親切にしてくれた人たちだから…私も時間を
取るんだよ。
でもさすがに…みんなも私もやることあるから、今日の所はお開きになった。

また…時間を取ってやろう…。
秘密基地に戻ってきて、

「みんなもお疲れ…」

と、私が振り向けば…。
ぎょっとした。
みんながすごーく、ウルウルしていたから…。

「ど、どしたの?どっか痛いの?」

思わず心配すれば、

「嬉しいんですぅぅぅ~~~~」

と。

「だって…奥様、すっごくオレらの事、信用してくれて…大事にしてくれて…(クローバ)」

「病気を治してくれて、スケープゴートにしようとした奴から助けてくれて、恩赦してくれて…。
本当に感謝しきれません(スペード)」

「さっきだって、家臣の人たちの不満を、全部聞いて…否定するんじゃなくわかり合おうと
一生懸命になってくださって…(ダイヤ)」

「奥様、大好き~(ハート)」

みんなが口々に嬉しい事を言ってくれるから、

「あはは、私もみんなが好きだよ~」

って、思わず言っちゃった。

「しかし…ここは随分と、質が良いですなぁ」

ジョーカーが感心してる。

「あれだけ意見が出たにもかかわらず…、わしらの身分やスペードの顔については…何も
言いませんからな。
普通は…まずそこから入るもんです」

まあ、確かになぁ…。

「そうですね…」

スペードは…自分の顔を撫でている。

スペードには…秘密基地の中だけでなく、どうしても嫌でなければ、ファルメニウス公爵家の
敷地内では仮面外しなよ…って、言ったんだ。
だって…家に帰ってきてまで仮面付けっぱじゃ、息苦しいでしょ…って。
スペードは…なんだか嬉しそうだったから、よかった。

「まあ、そういう奴は…オレが入った時に、あらかた駆逐されたからなぁ…」

ジェードがここにきて、初めて口を開く。

「ああ、そういえば、そうだってね」

私も話に聞いただけだけど。

「なんだよ、それ?」

クローバが不思議そうに聞く。

「ん?オレは…約4年前にここに来た。
まあ、オレは…ご当主様を襲った人間の上、身分も国籍もない。
それにスペードほどじゃなくても、顔に結構な傷があるからなぁ…」

ジェードは当時を思い出しているようで、

「まあ、色々されたよ。
生ごみぶっかけられたり、聞こえる声で悪口言ったり…。
ファルメニウス公爵家の敷地内にいていい人間じゃない…ってのもな。
一部とはいえ、さっさとオレを追い出したがってるの、よくわかった。
もっとも、そんなのここだけの話じゃないから、オレは気にしなかったんだがな。
当然、報告もしなかった」

ちょっと目を細めている。

「だがなぁ…それがご当主様の耳に入ったようで…。
物陰から様子を見せろって…。
だから見せたらさぁ…。
オレを侮辱する現場を抑えてすぐ、ご当主様はそいつらの首根っこ掴んで、そのまま門から
つまみ出した」

ギリアムらしいや。

「貴族・平民関わらず、人間の屑は、私のファルメニウスに要らん…とさ」

みんな…顔を見合わせたかと思ったら、かなり愉快に笑い出した。

「さすがご当主様だ~」

って。

「ああ、そうだ、奥様…。
あの事、説明しといた方がいいんじゃないですか?」

ジェードが唐突に言った。

「あ~、確かにね」

私は少々苦笑いになる。
するとみんなが…。

「ど、どうしたんですか?何か問題でも?」

本気で心配してくれるの…ありがたいなぁ。

「ご当主様は本当にみんなに好かれてるけど…ちょっと最近困った癖が出来てな…。
呪文を唱えるといなくなるんだが…遭遇したら適宜対処してくれ」

「???」

さすがにわかんないよ…それじゃ…。

私が説明しようとしたら、

「フィリー!!ここにいたんですね!!」

喜び勇んでやって来た、ギリアム。

「ギ、ギリアム?まだ帰ってくる時間では…」

私が驚けば、

「仕事が早く終わりましたので、早退しました!!
そして…フィリーに捧げる素晴らしい詩集が完成したので、喜び勇んできたんですよ!!」

要らねぇよ、アホ。
……と言えんのが、ツライ…。

「ちょうどみんなもいるようだし…フィリーのすばらしさを皆で分かち合おう!!」

結構です、お帰りください。
……と、言えんのが…はあ…。
ってか、ギリアムの家はここか…。

「題して!!素晴らしきフィリーの愛らしさ!!!」

まあそんでね。
ギリアムの口から…出るわ出るわ、聞いてる方が耳を覆いたくなるような、めっちゃ恥ずかしい
言葉のオンパレード…。
詩集っつーか、ポエムっつーか…。
とにかく…恋愛方向に中二病を重症化して発症したような…え~と、表現しずらいなぁ…。

あのよ!!
わたしゃ確かに、実年齢は16歳だけどよ!!

恋に恋する乙女…じゃねぇんだよ!!
こちとら精神年齢還暦越えの…ともすりゃババぁだっての!!
恥ずかしい通り越して、もう、この世にいたくなくなるような行為は止めてくれや!!

「ギリアム~~~~」

私は笑顔に思いっきり青筋を立て、

「みんな、まだ、仕事が、残ってるの!!
あとは、私が、寝室で、ききますから!!」

もうね…言葉区切らないと…怒鳴りそうでさ…。
ギリアムは…本当に素晴らしいと思ってやってるから…けなすと本当にしょげて…後がめんどくさい
からさぁ…はあ…。

そんなこんなで私は…ギリアムに抱きかかえられる形で、その場を去る。

残されたみんなは…見事に能面無表情…。

「ご当主様の困った癖…奥様が好きすぎて、ああいったものをみんなの前で、所かまわず発表する
ようになっちまったことだ…。
ファルメニウス公爵家の使用人の間じゃ…、あの状態のご当主様は、お化けに会うより嫌だって
言われてる…」

ジェードが能面の…口だけ動かしている。

「えっと…避けるための呪文って…」

「奥様が泣いてた…で、探しに行くから…」

「覚えとく…」

言葉が…とっても機械的だったそうな…。


-------------------------------------------------------------------------------------------------


第7部が終わったぁ~~~~~。
個人的に…自分のかなり好きなサブキャラたちが、てんこ盛りで出てきたので…。
かなり書いていて楽しかった~。

色々な波乱を含んだまま、第8部に続きます。
今後とも、楽しんでくださ~い。
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感想 6

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みんなの感想(6件)

うねまま
2025.01.15 うねまま

キャラクターの個性が本当にみんな素敵です。
第8部、楽しみにしています。

2025.01.28 木野 キノ子

応援いつもありがとうございます😊😭
年始の忙しさで、グロッキーしておりましたが、復活しました。
今後ともよろしくお願いします🙇😃

解除
うねまま
2024.12.29 うねまま

スージーさんのイラストが見たいです♪

2024.12.31 木野 キノ子

が、頑張ります😅

解除
うねまま
2024.12.17 うねまま

大岡裁きの様なフィリー裁き。
着地点がどうなるか、とても楽しみです。

2024.12.19 木野 キノ子

感想ありがとうございます😊

終着点はだいぶ先ですが😓😅

何卒お楽しみに😊😌

解除

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