笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
27 / 300
第二章 勇者

旅立ち

しおりを挟む
 魔王城玉座の間。エジタスが転移”で一瞬で戻ってくると、そこにはサタニアを初めとしてクロウト、四天王の三人が出迎えてくれた。



 「エジタスー!!」



 サタニアは嬉しさのあまり、玉座から跳び降りて、エジタスに抱きついた。



 「サタニアさん、お久しぶりですね~」



 「本当だよ、偵察しに行ってから全然、帰って来ないから心配してたんだよ!」



 「すみませんね~ご迷惑をお掛けしてしまって…………」



 エジタスが謝罪すると、シーラが鼻を鳴らした。



 「ふん!私は別に貴様が帰って来なくても、構わなかったんだがな」



 「あら?そんなこと言って、一番心配していたのはシーラちゃんじゃない。心配しすぎて人間の国に乗り込もうとして……「アルシアさん!」」



 「おほほほほほ、照れなくてもいいじゃな~い」



 事実を言われ、大声で叫ぶシーラを宥めるアルシア。すると、クロウトが話を進めた。



 「……それで、何か収穫はあったのでしょうか?」



 「ふふふ、実はですね~……」







***







 「僕は反対だよ!」



 エジタスがこれまでの経緯を話す中で、真緒達と供に旅することになったと話すと、サタニアは強く否定した。



 「サタニア様、落ち着いてください」



 「だって、供に旅するってことは、これまで以上にエジタスに会えないんでしょ?そんなの嫌だよ!」



 「しかしですね~、約束してしまいましたので……」



 「大体、何でそんな約束しちゃうの?エジタスは四天王なんだよ!断るのが普通でしょ!」



 「いや~、一度は断ったのですが……。あまりの熱意に圧されてしまいました」



 「第一、そのマオって人は、僕達を倒すのが目的ではないんでしょ?だったら、エジタスが関わらなくてもいいじゃないか!」



 次々とサタニアの全否定する言葉が、飛んでくる。涙目になりながら、必死に行かないように説得する。



 「……でも、エジタスちゃんはその子が一番、魔王ちゃんを倒せる可能性を秘めていると、考えているのよね?」



 「は~い、その通りです」



 「それなら、こういうのはどう?そのマオちゃんが、魔王ちゃんの脅威になるかどうか、見極めるために旅のお供として同行するの」



 「アルシア!さっきから言ってるけど、僕はエジタスが行くのが反対なの!」



 アルシアの提案に即座に反対の意思を示すサタニア。



 「話は最後まで聞いてちょうだい…………そして、その調査報告をしてもらうため、エジタスちゃんには定期的に、魔王城まで戻ってきてほしいのよ」



 「成る程、そいつらのスパイをしろってことだな!」



 「その通りよ、シーラちゃん。どうかしら?これなら二人とも、納得してもらえたんじゃない?」



 アルシアの提案は、両者の願いを叶える最良案であった。サタニアは無言で再び、エジタスに抱きつく。



 「…………エジタス、ちゃんと戻ってきてよ?」



 「勿論ですとも、一ヶ月に一度は必ず帰るようにしますよ」



 「…………間……」



 「え?」



 「一週間に一度にして…………」



 サタニアはエジタスの服を強く握り締める。



 「……分かりました。一週間に一度、必ず帰って来ますね」



 「うん!」



 サタニアの目は涙で腫れていたが、笑顔であった。







***







 「それじゃあ、行ってきますね」



 魔王城場外。またあの時と同じメンバーが、見送りに来ていた。



 「エジタスちゃん、あっちでも頑張ってね」



 「はい、応援しててください」



 「軟弱な貴様だ、すぐ根をあげて戻ってくるだろうな」



 「大丈夫ですよ、こう見えて我慢強いですから」



 「…………そうか」



 「センセイ、ドウカゴブジデ」



 「心配してくださり、ありがとうございます」



 「いいですか、くれぐれも四天王だとバレないように行動してください」



「分かりました。肝に命じておきます」



 「エジタス殿のご活躍を楽しみにしています」



 「青毛の奴と同じ意見です」



 「お二人とも二度目のお見送り、感謝感激です。…………それでは言って参ります」



 エジタスが“転移”を発動させようとすると…………。



 「エジタス!」



 「?」



 サタニアの声に反応するエジタス。



 「行ってらっしゃい!」



 「行ってきます!」



 エジタスは、パチンと指を鳴らして、カルド王国へと向かった。



 「行っちゃったわね…………」



 「うん……」



 感傷に浸っていると、クロウトが渇を入れる。



 「はいはい、それでは皆さんそれぞれの持ち場に戻ってください!」



 クロウトの言葉で全員が戻る中……。



 「あ、クロウトは先に行ってて、僕はちょっとアルシアと二人きりで話があるから…………」



 「そうですか?では先に戻っています」



 少し気になったが、深くは尋ねずクロウトは城の中へと戻った。



 「…………それで魔王ちゃん、話ってなんなの?」



 サタニアとアルシア、二人だけの空間。何か思い詰めた表情をするサタニアが口を開いた。



 「アルシア…………僕、病気かもしれない」



 「え!?」



 いきなりの病気発言に驚いてしまったアルシア。しかしそれを冷静に対処出来てこその魔王の手足だ。



 「何処か痛むの?」



 「うん、エジタスがマオって人と、常に一緒にいると思うと、胸が苦しくなるんだ…………」



 「ん?それって…………」



 アルシアの顔がにやける。全身骨なので変わっていないのだが、そう思わせるような雰囲気が出ている。



 「あらあらあらあら…………」



 「ねぇ、アルシア。これって病気なのかな?」



 「ええ、とても深刻な病よ」



 「やっぱり…………病名、病名は何て言うの?」



 「その病の名は…………恋患いよ」



 「……ええっ!!?そ、そんな筈ないよ。だって僕、男だよ!?」



 まさかの恋患いという言葉に、顔が赤く染まっていくサタニア。



 「恋をするのに種族や年齢、性別は関係ないわ。大事なのはその人を心から愛しているかどうかよ」



 「ぼ、僕がエジタスに恋…………」



 ようやく自分の気持ちに気づいたサタニアは、高鳴る心臓を必死に抑えていた。



 「魔王ちゃんが恋ね~。…………エジタスちゃんも隅に置けないわね~」



 「僕がエジタスに恋…………」



 「そうと分かれば、話は早い。早速準備に取りかかるわよ!」



 そう言うとアルシアはサタニアの腕を引っ張っていく。



 「え、準備ってなんの?ちょ、ちょっとアルシア!?」



 そのまま、サタニアとアルシアは城の中へと戻った。







***







 カルド王国周辺の草原。エジタスが着くとそこにはまだ誰も来ていなかった。



 「おや~、私が一番乗りですか?」



 辺りを見渡すが人の気配はしないため、しばらく待つことにするエジタス。それから、数時間後……。



 「師匠~!」



 「エジタスざーん」



 真緒とハナコの二人。



 「皆さん、お待たせしました」



 リーマ。



 「遅れてすまない。少々準備に手間取ってしまった」



 フォルスの順番に集合した。



 「皆さん、よく集まってくださいました。準備はバッチリですか?」



 エジタスが聞くと、全員が頷いた。



 「私達は今後の旅に必要だと思い、水と食料を買ってきました」



 真緒とハナコの袋には大量の水と食料が、詰め込まれていた。



 「私はおじさんの店に戻って、いくつかポーションを頂きました」



 リーマの袋には緑色と青色のポーションが、それぞれ入っていた。



 「俺は一度家に帰って、予備の弓と矢を補充して来た」



 フォルスの袋には、弓と矢が大量に入っていた。



 「ちゃんと準備していて、安心しました~」



 「それじゃあ、いよいよ出発の時ですね!」



 ついに旅立ちの時を迎えた、真緒達五人は草原を歩き始める。



 「まだ知らぬ世界へと出発進行!」



 こうして真緒達の果てしない旅が始まったのである。

































 オオラカ村。二人の男女が見つめ合っている。そして、男の方が静かに口を開く。



 「アメリア……どうしたら君は笑ってくれるんだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...