笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
73 / 300
第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

過去を知った者達

しおりを挟む
 「フォルスさんにそんな事が…………」



 真緒達はトハから、自分がフォルスの祖母である事や飛べない理由が、過去の悲劇が原因になっているのを知った。



 「わしはその後、族長を問い詰め全ての経緯を知った。…………絶対に帰ってこないと思ってた。でも、今こうしてあなた達の口からフォルスちゃんの名前を聞けるなんて…………長生きはするもんだねぇ」



 「トハさん…………」



 トハは少し涙ぐむが、指でそれを拭き取る。



 「あんた達とフォルスちゃんの関係は何だい?」



 「仲間です!」



 真緒は“仲間”という言葉を強調する様に言った。その言葉を聞いたトハは、少々驚きの表情を浮かべるが直ぐに笑顔を見せた。



 「そうかい……フォルスちゃんに、鳥人以外の仲間が出来るなんてね……それで、あの子は今何処に?」



 「「「!!」」」



 真緒達は困惑していた。仲間だと言った手前、今現在一緒に行動していないなどと、言うのが躊躇われる。



 「あの…………実は、フォルスさんはパーティーを脱退しました」



 「何だって…………」



 声のトーンが変わった。先程までの明るい声とは違い、酷く低音になっていた。



 「どういう事だい?」



 「…………それが……」



 真緒達はトハに、この里に来る途中で何があったのか話した。里に近づくにつれ、フォルスの様子がおかしくなっていった事。心配して話を聞いたら、ヘルマウンテンを迂回しようと言ってきた事。そして、それをきっかけに真緒とフォルスが戦い合う事態に陥り、ケンカ別れしてしまった事。



 「……はぁー…………」



 真緒達の話を聞き終わったトハは、深いため息をついた。



 「フォルスちゃんは変な所で意地っ張りだから、自分から姿を見せる事はしないだろうね…………けど、これだけは分かるよ」



 「「「?」」」



 トハは少し溜める仕草をすると、真緒達の目をしっかりと見つめて優しい声で言った。



 「フォルスちゃんは、決して仲間を見捨てたりしない。あなた達を置いてどっかに行くなんて考えられないよ。ケンカ別れした状態なら尚更ね」



 「フォルスさんの事、信頼しているんですね」



 「そりゃあそうさ!わしはあの子を、二十年も育てて来たんだよ。あの子の性格は全て知り尽くしているさ!」



 笑いながら自慢気に語るトハに、只純粋に凄いと思った真緒達。



 「それじゃあ、わしはそろそろ失礼させてもらうよ」



 「もう、行ってしまうんですか!?」



 トハは、ゆっくりと腰を上げるとそのまま扉の前まで歩いて行く。



 「あんた達のおかげで、ボケていた頭がスッキリしたからね。感謝してるよ」



 そう言うと信じられない光景を真緒達は目にした。曲がっていた筈の腰が、徐々に真っ直ぐ縦になっていったのだ。



 「ト、トハさん……こ、腰が……」



 「あんた達はこれから、ヘルマウンテンに行くんだろ?ならわしも、わしにしか出来ない事をしたいのさ。頑張るんだよ若人達!」



 そう告げるとトハは、部屋を出て行ってしまった。



 「「「…………」」」



 静寂な時間が流れる。まるで台風が過ぎ去った後の様だった。



 「…………ビックリしたね。まさか、トハさんがフォルスさんのお婆ちゃんだったなんて……」



 「…………私、フォルスさんに謝らなければいけません!」



 真緒がフォルスの過去に驚いていると、リーマが思い詰めた表情をしながら深刻に口にした。



 「フォルスさんにも、フォルスさんなりの辛い過去があったのに……それなのに私は…………」



 「リーマ…………」



 自分を責め立てるリーマに、真緒はそっと肩に手を乗せた。



 「マオさん…………」



 「なら、今度フォルスさんに会ったら皆で謝ろう。その上で、次こそは必ずこの里まで引っ張って行こう!!」



 「ぷっ、あはははは」



 フォルスへのリベンジに執念を燃やす真緒に、思わず笑ってしまうリーマ。



 「でもその前に、里の皆を助けないとね」



 「そうですね!」



 「フォルスざんの故郷を守っで見せるだよ!!」



 「今日はしっかりと休んで、明日の早朝にヘルマウンテンに向けて出発するよ!!」



 「「「おおーー!!」」」



 里の為、仲間の為、真緒達はヘルマウンテンに向けての準備を整えるのであった。







***







 「………………」



 その夜、真緒達が寝静まっている中、エジタスだけが眠っておらずゆっくりと静かに体を起こした。



 「………………」



 エジタスは無言のまま、パチンと指を鳴らす。すると既にそこにはエジタスの姿は無くなっていた。



 「誰だ!!…………ああ何だ、エジタスさんか……」



 場所は変わって、鳥人の里からかなり離れた所にフォルスは一人、焚き火を起こしていた。しかし、何者かの気配を感じ取り素早く振り返るとそこには、転移でやって来たエジタスが立っていた。



 「驚かないのですね~」



 「そりゃあまぁ、エジタスさんには一度見た対象物の下に一瞬で辿り着ける“転移”があるから、いつかは来るとは思っていたけど…………まさか、こんなにも早く来るとはな。エジタスさん一人なのか、マオ達はどうしたんだ?」



 伊達に三十五年間も生きてはいないと、言わんばかりに予測していたフォルスは、真緒達がいない事を疑問に思っていた。



 「マオさん達なら明日、里の上昇気流が突然止まった原因を探るべく、ヘルマウンテンに行く準備を整えていますよ」



 「何、里の上昇気流が止まったのか!?」



 フォルスは慌てて、エジタスに顔を向けた。



 「ええ、そのせいで里の皆さんは飛べなくなってしまって困っていましたよ。良かったじゃないですか~、飛べないからと言ってあなたを追い出したのでしょう?いい気味です」



 「ち、違うんだ!本当は俺自身が決めた事で「知ってますよ」……えっ?」



 フォルスが追い出された事について、誤解であるのを説明しようとするとエジタスは、それを遮った。



 「あなたの祖母であるトハさんから、全て聞きましたよ。飛べない理由も含めてね…………」



 「そう……だったのか……」



 「それにしても…………ガッカリですよ」



 「…………えっ?」



 誤解は既に解けていた事に安堵していたフォルスだったが、エジタスの一言に耳を疑った。



 「飛べない訳なのだから、さぞかし壮絶な理由だろうと思っていたのですが、聞いてみれば過去のトラウマって…………くだらない、くだらない、くだらない、くだらない、くだらない!!」



 「エ、エジタスさん…………?」



 突然の言動にフォルスは、呆気に取られていた。



 「ありきたりなんですよ!私はね、そういうのを腐るほど見てきました!自分のせいで、母親が死んでしまったショックから飛べなくなるなんて、正直…………期待外れですよ」



 「………………」



 何を言われているのか、頭の理解が追い付かず、困惑する。そんなフォルスに、エジタスが仮面の顔を近づけてきた。その時の仮面は、いつも以上に不気味に笑っている様に見えた。



 「もうあなたに興味はありません。もう帰って来なくて大丈夫ですから、安心してください」



 「エジタスさん……俺……」



 フォルスが何かを言い掛けるが、パチンという指を鳴らす音と同時に、エジタスの姿は無くなっていた。



 「俺は…………どうしたらいいんだ……」



 フォルスの言葉は無情にも、誰一人として聞こえる事無く、響き渡っていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...