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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト
狂乱の王子ヴァルベルト(中編)
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十字聖騎士軍。神に仕える者として、神の象徴的とも言える十字架を意味嫌う“ヴァンパイア”を、根絶やしにしようとしている過激な一団。
「あの聖騎士様……申し訳ありませんが、仰っている意味がよく分かりません……」
村長らしき男が代表として、三人の聖騎士に疑問を投げ掛ける。すると真ん中にいた聖騎士が前へと歩み出る。
「村長か……分からぬなら詳しく教えてやろう。この村に“吸血鬼”がいるという情報を掴んだ!その情報が真実であるかどうか確かめる為に、我々が参ったのだ!!」
真ん中の聖騎士が高らかに宣言して、腰に添えた剣を抜き取り、天高く掲げた。
「…………そうでしたか、それはわざわざお越し頂きありがとうございます。しかし、残念ながらこの村に吸血鬼などおりませぬ……」
「いるかいないかは我々が決める事、村の者達には申し訳ないがしばらくの間は、我々の調査に協力して貰うぞ!」
「そ、そんな…………」
横暴。勝手に村に押し入り、吸血鬼調査に協力を迫って来た。
「案ずるな、飯や寝床を用意しろなどとは言わん。只もし、吸血鬼らしき者を見かけた時は我々に報告して欲しい。謝礼は弾むぞ!」
「「「おおーーー!」」」
村の何人かは、“謝礼”という言葉に歓喜の声をあげた。
「ヴァルベルト……どうしよう?」
「…………」
その光景を村の入口から見ていたエルとヴァルベルトは、身に迫る危険に戸惑いを感じていた。
「それでは頼んだぞ村の者達よ。我々はこの地域を今一度捜索して来る!」
話が終わったのか、三頭の馬それぞれに跨がっている聖騎士達は、入口の方へと走り出した。
「「…………」」
エルはヴァルベルトを背後に隠して、通り過ぎる聖騎士達に気づかれない様にした。
「…………行ったわね。はぁー、緊張した……まさか、吸血鬼を狙う一団がこの村まで来るだなんて……」
「おお、エルにヴァルベルト!戻ったか!!」
聖騎士達の姿が見えなくなり、一安心するエルとヴァルベルトに村長が気がつき、声を掛けて来た。
「村長!!いったい何がどうなっているんですか!?」
「うむ……お前達も聞いていたと思うが……どうやら奴等は吸血鬼を殺しに来たらしい……つまり、“ヴァルベルト”を殺すつもりみたいだ……」
「そんな!!?」
ヴァルベルトが吸血鬼である事は、村の皆が知っている。先々代の村長からずっとこの村の秘密として、外部に漏れない様に最善を尽くして来た。
「だが心配するな、わしも含めて村の全員がヴァルベルトを守る事を誓った」
「よ、良かったー」
「…………」
「ん、どうしたヴァルベルト?」
村の皆が守ってくれるというのに、何処か思い詰めた表情をするヴァルベルト。
「……どうして、俺なんかを庇うんですか……?」
ヴァルベルトは信じられなかった。村が危険に晒されるかもしれないこの状況で、何故自分を守ろうとするのか理解出来なかった。
「……ヴァルベルト、わしはな幼き頃からお前さんの背中を見て来た。だからこそ分かるのだ……お前さんが悪い奴では無いとな……」
「村長……」
「わしだけじゃない。この村の全員が幼き頃から、お前さんの背中を見て育って来たのだぞ。そんな親の様な存在のお前さんを、あの聖騎士達に差し出す事など出来る筈が無い!」
「…………ありがとう」
ヴァルベルトは、自身の心が温かくなるのを感じていた。自分がこの村で成して来た事は決して無駄では無かったのだ。
「さぁ、そうと決まればあの連中がいなくなるまで、ヴァルベルトには身を隠して貰わなければならないな……」
「それなら、私の家にある地下室を使えば良いわ。入口さえ隠してしまえば分からないでしょう?」
ヴァルベルトの隠れ蓑として、エルは自分の家にある地下室を提案した。
「おお、それは良いかもしれないな!どうだヴァルベルト、お前さんもそれで良いか?」
「あ、ああ、それで大丈夫だよ」
「よし、そうと決まれば早速手分けして数日分の水と食料をかき集めて、地下室へと運ぶぞ!!」
「「「「おおーーー!!」」」」
「…………」
村総出でヴァルベルトを守る為に、水と食料を集める事となったが、この時ヴァルベルトは別の事を考えていた。
「(ち、地下室って事は実質エルの家に泊まるって事だよな!?そ、それはつまり一つ屋根の下…………いやいや!これは村の皆が俺を守ろうとしてくれている行動であって、そう言うやましい気持ちじゃ無いんだ!…………だけど、ちょっと位なら……いやいや駄目だって!!)」
ヴァルベルトは、恋の悩みで頭が一杯だった。
「……ベルト……ヴァルベルト……ヴァルベルト!」
「えっ!あっ、何どうした?」
「どうしたじゃ無いわよ。皆あなたの為に動いてくれているんだから、あなたも動きなさい!」
妄想を膨らませ過ぎていたせいで、エルが声を掛けているのに気づかなかった。
「あ、ああ、悪い悪い!すぐ準備するよ!」
そう言うと、ヴァルベルトは食料を集める為、入口付近へと走り出した。
「全く……しょうがないわね……」
エルは呆れた様子で、走り去るヴァルベルトを見つめるのであった。
「いやー、今のは失敗だったな……浮かれてた俺が全面的に悪いんだけどね……」
エルに叱られて、入口付近で食料集めをし始めるヴァルベルト。
「えーっと、確かこの辺にいくつか在庫が残ってた筈だけど…………ん?」
ヴァルベルトが食料を探していると、ふと視界に先程真ん中で喋っていた、聖騎士がいた。しかし、近くに乗っていた筈の馬は見当たらなかった。
「……何やってんだ?あいつら、草原を捜索しに行った筈だろ?」
見つからない様に、物陰に隠れながら様子を伺う。
「ジョッカー様!!」
すると残りの聖騎士二人が、ジョッカーと呼ばれる真ん中で喋っていた聖騎士の側に寄る。そしてこの二人も馬には乗っておらず、走って来ていた。
「戻ったか……それで、何か掴んだか?」
「はっ、どうやら我々が村から出た途端、村の者達は何やらいそいそと食料と水をかき集めておりました!」
「!!!」
見張られていた。あの馬は、村の者達を油断させる為のエサだった。馬でやって来て、馬で去れば、必然的に次来る時も馬であろうという人間の心理を逆手に取られていた。実際は去り際に飛び降りて、馬達だけを遠くに追いやって自分達は側で監視していたのだ。
「やはりそうか……どうもきな臭いと感じてはいたが、まさか吸血鬼を庇っていたとはな……」
「いかがなさいましょうか?」
「吸血鬼は神の名を汚すおぞましき存在だ。その吸血鬼を匿おうとする者達は、神に歯向かうのと同じ事だ!村に火を放ち全てを消し炭にする!!」
「!!!」
ヴァルベルトは自分の耳を疑った。自分を守ろうとした村の人達を、皆殺しにすると言っていた。脳が理解するのを拒んでいる。
「全兵を集めよ。万が一吸血鬼が生きていた場合に備えて、待機させておくのだ」
「かしこまりました!」
「…………」
ジョッカーの命令で、二人の聖騎士は兵を集める為に走り去って行った。ヴァルベルトは物陰で俯いたまま、思い詰めるのであった。
***
「聖騎士達が戻って来たぞー!!」
それからしばらくして、村では戻って来たジョッカー率いる三人の聖騎士達に慌てていた。
「くそっ!思ったよりも早く戻って来たか!まだ食料と水が足りないが仕方がない!エル!!ヴァルベルトを早く地下室に避難させるんだ!!」
「そうしたいんだけど……肝心のヴァルベルトが何処にもいないのよ!!」
「何!!?」
エルがヴァルベルトを地下室に避難させようと辺りを見渡すも、その姿は何処にも無かった。
「村長……さっきぶりだな……」
「こ、これは聖騎士様……随分とお早いお帰りで……もう草原の捜索は終えたのですか?」
村長は何とかバレない様に、自然に振る舞おうとする。
「その事だが村長、貴様何か隠して「うわはははは!!!」な、何だこの笑い声は!?」
ジョッカーが問おうとしたその時、村中に笑い声が響き渡った。
「ジョッカー様!!あそこに誰か居ます!!」
聖騎士の一人が指差す方向、高い屋根の上に一人の男が立っていた。その男は赤と黒が特徴的なスーツで、真っ黒なマントを翻した。
「ようこそ聖騎士の諸君、我こそが神の名を汚す“吸血鬼”ヴァルベルトだ。諸君らを心より歓迎しようじゃないか…………」
そう言うとヴァルベルトは、ニヤリとほくそ笑むのであった。
「あの聖騎士様……申し訳ありませんが、仰っている意味がよく分かりません……」
村長らしき男が代表として、三人の聖騎士に疑問を投げ掛ける。すると真ん中にいた聖騎士が前へと歩み出る。
「村長か……分からぬなら詳しく教えてやろう。この村に“吸血鬼”がいるという情報を掴んだ!その情報が真実であるかどうか確かめる為に、我々が参ったのだ!!」
真ん中の聖騎士が高らかに宣言して、腰に添えた剣を抜き取り、天高く掲げた。
「…………そうでしたか、それはわざわざお越し頂きありがとうございます。しかし、残念ながらこの村に吸血鬼などおりませぬ……」
「いるかいないかは我々が決める事、村の者達には申し訳ないがしばらくの間は、我々の調査に協力して貰うぞ!」
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横暴。勝手に村に押し入り、吸血鬼調査に協力を迫って来た。
「案ずるな、飯や寝床を用意しろなどとは言わん。只もし、吸血鬼らしき者を見かけた時は我々に報告して欲しい。謝礼は弾むぞ!」
「「「おおーーー!」」」
村の何人かは、“謝礼”という言葉に歓喜の声をあげた。
「ヴァルベルト……どうしよう?」
「…………」
その光景を村の入口から見ていたエルとヴァルベルトは、身に迫る危険に戸惑いを感じていた。
「それでは頼んだぞ村の者達よ。我々はこの地域を今一度捜索して来る!」
話が終わったのか、三頭の馬それぞれに跨がっている聖騎士達は、入口の方へと走り出した。
「「…………」」
エルはヴァルベルトを背後に隠して、通り過ぎる聖騎士達に気づかれない様にした。
「…………行ったわね。はぁー、緊張した……まさか、吸血鬼を狙う一団がこの村まで来るだなんて……」
「おお、エルにヴァルベルト!戻ったか!!」
聖騎士達の姿が見えなくなり、一安心するエルとヴァルベルトに村長が気がつき、声を掛けて来た。
「村長!!いったい何がどうなっているんですか!?」
「うむ……お前達も聞いていたと思うが……どうやら奴等は吸血鬼を殺しに来たらしい……つまり、“ヴァルベルト”を殺すつもりみたいだ……」
「そんな!!?」
ヴァルベルトが吸血鬼である事は、村の皆が知っている。先々代の村長からずっとこの村の秘密として、外部に漏れない様に最善を尽くして来た。
「だが心配するな、わしも含めて村の全員がヴァルベルトを守る事を誓った」
「よ、良かったー」
「…………」
「ん、どうしたヴァルベルト?」
村の皆が守ってくれるというのに、何処か思い詰めた表情をするヴァルベルト。
「……どうして、俺なんかを庇うんですか……?」
ヴァルベルトは信じられなかった。村が危険に晒されるかもしれないこの状況で、何故自分を守ろうとするのか理解出来なかった。
「……ヴァルベルト、わしはな幼き頃からお前さんの背中を見て来た。だからこそ分かるのだ……お前さんが悪い奴では無いとな……」
「村長……」
「わしだけじゃない。この村の全員が幼き頃から、お前さんの背中を見て育って来たのだぞ。そんな親の様な存在のお前さんを、あの聖騎士達に差し出す事など出来る筈が無い!」
「…………ありがとう」
ヴァルベルトは、自身の心が温かくなるのを感じていた。自分がこの村で成して来た事は決して無駄では無かったのだ。
「さぁ、そうと決まればあの連中がいなくなるまで、ヴァルベルトには身を隠して貰わなければならないな……」
「それなら、私の家にある地下室を使えば良いわ。入口さえ隠してしまえば分からないでしょう?」
ヴァルベルトの隠れ蓑として、エルは自分の家にある地下室を提案した。
「おお、それは良いかもしれないな!どうだヴァルベルト、お前さんもそれで良いか?」
「あ、ああ、それで大丈夫だよ」
「よし、そうと決まれば早速手分けして数日分の水と食料をかき集めて、地下室へと運ぶぞ!!」
「「「「おおーーー!!」」」」
「…………」
村総出でヴァルベルトを守る為に、水と食料を集める事となったが、この時ヴァルベルトは別の事を考えていた。
「(ち、地下室って事は実質エルの家に泊まるって事だよな!?そ、それはつまり一つ屋根の下…………いやいや!これは村の皆が俺を守ろうとしてくれている行動であって、そう言うやましい気持ちじゃ無いんだ!…………だけど、ちょっと位なら……いやいや駄目だって!!)」
ヴァルベルトは、恋の悩みで頭が一杯だった。
「……ベルト……ヴァルベルト……ヴァルベルト!」
「えっ!あっ、何どうした?」
「どうしたじゃ無いわよ。皆あなたの為に動いてくれているんだから、あなたも動きなさい!」
妄想を膨らませ過ぎていたせいで、エルが声を掛けているのに気づかなかった。
「あ、ああ、悪い悪い!すぐ準備するよ!」
そう言うと、ヴァルベルトは食料を集める為、入口付近へと走り出した。
「全く……しょうがないわね……」
エルは呆れた様子で、走り去るヴァルベルトを見つめるのであった。
「いやー、今のは失敗だったな……浮かれてた俺が全面的に悪いんだけどね……」
エルに叱られて、入口付近で食料集めをし始めるヴァルベルト。
「えーっと、確かこの辺にいくつか在庫が残ってた筈だけど…………ん?」
ヴァルベルトが食料を探していると、ふと視界に先程真ん中で喋っていた、聖騎士がいた。しかし、近くに乗っていた筈の馬は見当たらなかった。
「……何やってんだ?あいつら、草原を捜索しに行った筈だろ?」
見つからない様に、物陰に隠れながら様子を伺う。
「ジョッカー様!!」
すると残りの聖騎士二人が、ジョッカーと呼ばれる真ん中で喋っていた聖騎士の側に寄る。そしてこの二人も馬には乗っておらず、走って来ていた。
「戻ったか……それで、何か掴んだか?」
「はっ、どうやら我々が村から出た途端、村の者達は何やらいそいそと食料と水をかき集めておりました!」
「!!!」
見張られていた。あの馬は、村の者達を油断させる為のエサだった。馬でやって来て、馬で去れば、必然的に次来る時も馬であろうという人間の心理を逆手に取られていた。実際は去り際に飛び降りて、馬達だけを遠くに追いやって自分達は側で監視していたのだ。
「やはりそうか……どうもきな臭いと感じてはいたが、まさか吸血鬼を庇っていたとはな……」
「いかがなさいましょうか?」
「吸血鬼は神の名を汚すおぞましき存在だ。その吸血鬼を匿おうとする者達は、神に歯向かうのと同じ事だ!村に火を放ち全てを消し炭にする!!」
「!!!」
ヴァルベルトは自分の耳を疑った。自分を守ろうとした村の人達を、皆殺しにすると言っていた。脳が理解するのを拒んでいる。
「全兵を集めよ。万が一吸血鬼が生きていた場合に備えて、待機させておくのだ」
「かしこまりました!」
「…………」
ジョッカーの命令で、二人の聖騎士は兵を集める為に走り去って行った。ヴァルベルトは物陰で俯いたまま、思い詰めるのであった。
***
「聖騎士達が戻って来たぞー!!」
それからしばらくして、村では戻って来たジョッカー率いる三人の聖騎士達に慌てていた。
「くそっ!思ったよりも早く戻って来たか!まだ食料と水が足りないが仕方がない!エル!!ヴァルベルトを早く地下室に避難させるんだ!!」
「そうしたいんだけど……肝心のヴァルベルトが何処にもいないのよ!!」
「何!!?」
エルがヴァルベルトを地下室に避難させようと辺りを見渡すも、その姿は何処にも無かった。
「村長……さっきぶりだな……」
「こ、これは聖騎士様……随分とお早いお帰りで……もう草原の捜索は終えたのですか?」
村長は何とかバレない様に、自然に振る舞おうとする。
「その事だが村長、貴様何か隠して「うわはははは!!!」な、何だこの笑い声は!?」
ジョッカーが問おうとしたその時、村中に笑い声が響き渡った。
「ジョッカー様!!あそこに誰か居ます!!」
聖騎士の一人が指差す方向、高い屋根の上に一人の男が立っていた。その男は赤と黒が特徴的なスーツで、真っ黒なマントを翻した。
「ようこそ聖騎士の諸君、我こそが神の名を汚す“吸血鬼”ヴァルベルトだ。諸君らを心より歓迎しようじゃないか…………」
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