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第九章 冒険編 雲の木の待ち人
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「アーメイデさん、この一ヶ月お世話になりました」
「…………今さらだけど、あんた達にこんな面倒事を押し付けて……本当にすまないね……」
食事の第二ラウンドを終えた翌日。真緒達は遂に魔王城へと出発しようとしていた。そんな真緒達をアーメイデとエピロの二人が見送る。
「アーメイデさん、気にしないで下さい。私達は自分自身の考えで引き受けたのですから……」
「そうかもしれないけど……そのせいであんた達は、辛い修行を余儀無くされたからね……私の中ではちょっとした罪悪感が残っているんだよ」
「それこそアーメイデさんが、気にする事ではありません。寧ろ、アーメイデさんが私達に修行を付けてくれたお陰で、万が一魔王と戦闘になっても渡り合える程度の実力になったと思います。それに、これからの旅がより安心して出来るので感謝している位です」
半ば強制的な修行を付けていたアーメイデは、真緒達の心が荒んでいないか心配だったが取り越し苦労で安心した。
「そう言ってくれると……私も頑張って良かったと思えて来るよ……」
「アーメイデさん、私達を鍛えて下さってありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
「あんた達…………」
真緒達はアーメイデに、深々と頭を下げてお礼を述べた。
「……必ず……生きて帰って来るんだよ!!この“クラウドツリー”から、あんた達を見守っているからね!!」
「「「「はい!!」」」」
真緒達は、アーメイデの励ましに元気良く返事した。
「それでは私達は、そろそろ向かう事にします。アーメイデさん、本当にお世話になりました」
「胸張って行くといいよ。あんた達は、私が今まで鍛え上げた中でも一番だからね」
「エピロさんも、この一ヶ月間の料理を作って下さり、ありがとうございました」
「いーえ、オイラも沢山の料理を振る舞えて大満足です。それに、エジタスさんが手伝ってくれたので全く苦ではありませんでした。エジタスさん……ありがとうございました」
そう言いながらエピロは、エジタスに右手を差し出して握手を求めた。
「いえいえ~、私もエピロさんのお手伝いが出来て楽しかったですよ~。やはり一人よりも二人ですね~。またいつかお手伝いさせてくださいね~」
「はい、楽しみにしています」
エジタスはそれに答える様に、差し出された右手に握手した。
「それじゃあ行きましょう。アーメイデさん、エピロさん、一ヶ月間ありがとうございました。さようなら!」
「「「「さようなら!」」」」
そうして真緒達は、アーメイデとエピロに別れを告げて魔王城へと向かうのであった。
「………………」
そんな真緒達の中の一人を睨み付けるアーメイデ、その一人とは他ならぬエジタスである。アーメイデはエジタスをじっと睨み付けながら、昨晩の事を思い出していた。
***
それは真緒達が眠りについた真夜中の事だった。アーメイデは中々寝付けず、気分転換に外へと出て来た。
「……今日も夜空が綺麗だね……」
見上げると、満天の星空が広がっていた。アーメイデはそんな星空を眺めながら散歩していた。
「…………ん?あれは……エジタス……?」
ふと目線を向けると、大きな池の畔に腰を下ろし座っていた。
「何をしているんだい?」
「これはこれは……アーメイデさん……少し夜風に当たっていただけですよ……」
いつもと違い、落ち着いた雰囲気を見せるエジタスに少し違和感を感じるアーメイデ。
「いや~、何せ明日は遂に魔王城へと出発する特別な日ですからね~。ワクワクして、中々寝付けられないんですよ~」
しかしそれも、気のせいだったかもしれない。エジタスはいつも通りの陽気な声で話始める。
「でも夜も遅いですから、そろそろ私は眠る事にしますよ~」
「…………」
そう言いながらエジタスは、立ち上がって背筋を伸ばすとアーメイデの横を通り過ぎて小屋へと戻ろうとする。
「…………なぁ、エジタス……」
「??……どうしましたか、アーメイデさん?」
そんなエジタスにアーメイデは、声を掛けて呼び止めた。呼び止められたエジタスは、アーメイデの方へと振り返る。
「以前あんたは……あんたの目的を成就させる事が、私の罪滅ぼしだと言ったね……」
「えぇ、少なくとも今の世界よりは良い世界になる事は確実ですよ~」
「あれから……よく……考えたんだけどさ…………」
するとアーメイデはしばらくの間、口を閉じる。これから言おうとする言葉に対して覚悟を決める為に、そしてゆっくりと口を開き言葉を発した。
「やっぱり、あんたの目的を認める事は出来ないよ…………」
「…………それは……つまり……私の目的に異論を唱えるという事ですか?」
「!!」
空気が変わった。全身に鳥肌が立ち、背筋が凍り付く。吐き気すら感じ始め、重圧がのし掛かる。出来る事なら今すぐこの場から逃げ出したいと思った。アーメイデはこの感情には心当たりがある。実に二千年振りとも言える感情、それは恐怖。どんなに長生きしていたとしても決して消し去る事の出来ない感情である。アーメイデは何も言う事が出来ず、只震えるだけだった。
「そうですか……残念ですね……あくまで私の目的を邪魔するつもりなら……ここで消し去る事にしましょうか……」
「か、勘違いしないでくれよ!!私は別に、あんたの目的を邪魔するつもりは無い!!」
「どういう事ですか…………?」
「わ、私はこの一ヶ月、あの子達を見届けて来た……するとその内、あの子達ならあんたが目的を果たさなくても、世界を笑顔に変えられるんじゃないかと思った……だけどその反面、あんたの目的の方がより確実に世界を笑顔に出来るとも思っているんだ…………」
アーメイデは、必死に弁解の言葉を述べる。勘違いされて殺されてしまっては、目も当てられない。
「つまり……どっちにつけば良いのか分からなくなってしまった……という事ですか?」
「あ、あぁ……そう言う事だよ……」
「…………ふふふ……あははははは!!!」
「な、何がおかしいんだい!?」
突然笑い声をあげるエジタスに、アーメイデは声を張り上げて聞いた。
「だって……私の目的を認めないと言っておきながら、心の反面では認めているんですよ?こんな大きな矛盾、笑わずにはいられませんよ!」
「と、とにかく!そう言う事だから、私はまだ完全にあんたの味方になった訳じゃないよ!」
「…………どっちにもつかずに様子だけ伺う。そして最終的に有利な方の味方につく……そんな事をしていたらいつか、ブスリ!!と後ろから刺されてしまいますよ?」
「そうかもしれない……だけど……それでも……今の私にはどっちの味方につくのか決められないよ……」
「…………そうですか……それなら仕方ありませんが、なるべく早く決断する事をおすすめしますよ」
そう言うとエジタスは、大きな池を見つめてからアーメイデに声を掛ける。この時、重くのし掛かっていた空気は元に戻っていた。
「それじゃあ私はそろそろ戻りますが、アーメイデさんはどうしますか?」
「しばらくはここにいるよ。色々と考えたい事があるからね……」
「そうですか、それでは……あぁ!最後に一つ言いたい事がありました」
「??」
何を思い出したのか、エジタスがアーメイデの側まで近づいて来た。
「マオさんから聞きましたけど、魔法の研究をする為に“停止魔法”を編み出したらしいですね~?」
「そ、それがどうしたのよ?」
「いや~、随分と最もらしい“嘘”をついたなと思いまして……」
「!!」
「魔法の研究?編み出した?本当は愛する初代勇者を蘇らせる為に、時間を逆行させる魔法を作ろうとして生まれた副産物でしょ?どうして本当の事を話さないんですか?」
「…………」
アーメイデが使っている“停止魔法”は、元々初代勇者を蘇らせる為に作り始めた時間を戻す魔法の副産物だった。結局時間を戻す魔法は完成出来ず、残ったのは“停止魔法”だけだったのだ。
「もしかして……初代勇者の事が好きだったのを知られたく無いんですか~?」
「違う!!そうじゃない!私は……!!」
「照れなくてもいいんですよ~。安心して下さい、この事は私とアーメイデさん、二人だけの秘密ですから!それではアーメイデさん、おやすみなさ~い!」
「ちょ、ちょっと待っ……」
そう言うとエジタスは、スキップをしながら小屋へと戻って行った。
「…………」
アーメイデは、その光景を呆然と見る事しか出来なかった。
***
「(エジタス……やっぱり私はあんたの事が……)」
去って行く真緒達を見送りながら、アーメイデは密かに思うのであった。
「…………今さらだけど、あんた達にこんな面倒事を押し付けて……本当にすまないね……」
食事の第二ラウンドを終えた翌日。真緒達は遂に魔王城へと出発しようとしていた。そんな真緒達をアーメイデとエピロの二人が見送る。
「アーメイデさん、気にしないで下さい。私達は自分自身の考えで引き受けたのですから……」
「そうかもしれないけど……そのせいであんた達は、辛い修行を余儀無くされたからね……私の中ではちょっとした罪悪感が残っているんだよ」
「それこそアーメイデさんが、気にする事ではありません。寧ろ、アーメイデさんが私達に修行を付けてくれたお陰で、万が一魔王と戦闘になっても渡り合える程度の実力になったと思います。それに、これからの旅がより安心して出来るので感謝している位です」
半ば強制的な修行を付けていたアーメイデは、真緒達の心が荒んでいないか心配だったが取り越し苦労で安心した。
「そう言ってくれると……私も頑張って良かったと思えて来るよ……」
「アーメイデさん、私達を鍛えて下さってありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
「あんた達…………」
真緒達はアーメイデに、深々と頭を下げてお礼を述べた。
「……必ず……生きて帰って来るんだよ!!この“クラウドツリー”から、あんた達を見守っているからね!!」
「「「「はい!!」」」」
真緒達は、アーメイデの励ましに元気良く返事した。
「それでは私達は、そろそろ向かう事にします。アーメイデさん、本当にお世話になりました」
「胸張って行くといいよ。あんた達は、私が今まで鍛え上げた中でも一番だからね」
「エピロさんも、この一ヶ月間の料理を作って下さり、ありがとうございました」
「いーえ、オイラも沢山の料理を振る舞えて大満足です。それに、エジタスさんが手伝ってくれたので全く苦ではありませんでした。エジタスさん……ありがとうございました」
そう言いながらエピロは、エジタスに右手を差し出して握手を求めた。
「いえいえ~、私もエピロさんのお手伝いが出来て楽しかったですよ~。やはり一人よりも二人ですね~。またいつかお手伝いさせてくださいね~」
「はい、楽しみにしています」
エジタスはそれに答える様に、差し出された右手に握手した。
「それじゃあ行きましょう。アーメイデさん、エピロさん、一ヶ月間ありがとうございました。さようなら!」
「「「「さようなら!」」」」
そうして真緒達は、アーメイデとエピロに別れを告げて魔王城へと向かうのであった。
「………………」
そんな真緒達の中の一人を睨み付けるアーメイデ、その一人とは他ならぬエジタスである。アーメイデはエジタスをじっと睨み付けながら、昨晩の事を思い出していた。
***
それは真緒達が眠りについた真夜中の事だった。アーメイデは中々寝付けず、気分転換に外へと出て来た。
「……今日も夜空が綺麗だね……」
見上げると、満天の星空が広がっていた。アーメイデはそんな星空を眺めながら散歩していた。
「…………ん?あれは……エジタス……?」
ふと目線を向けると、大きな池の畔に腰を下ろし座っていた。
「何をしているんだい?」
「これはこれは……アーメイデさん……少し夜風に当たっていただけですよ……」
いつもと違い、落ち着いた雰囲気を見せるエジタスに少し違和感を感じるアーメイデ。
「いや~、何せ明日は遂に魔王城へと出発する特別な日ですからね~。ワクワクして、中々寝付けられないんですよ~」
しかしそれも、気のせいだったかもしれない。エジタスはいつも通りの陽気な声で話始める。
「でも夜も遅いですから、そろそろ私は眠る事にしますよ~」
「…………」
そう言いながらエジタスは、立ち上がって背筋を伸ばすとアーメイデの横を通り過ぎて小屋へと戻ろうとする。
「…………なぁ、エジタス……」
「??……どうしましたか、アーメイデさん?」
そんなエジタスにアーメイデは、声を掛けて呼び止めた。呼び止められたエジタスは、アーメイデの方へと振り返る。
「以前あんたは……あんたの目的を成就させる事が、私の罪滅ぼしだと言ったね……」
「えぇ、少なくとも今の世界よりは良い世界になる事は確実ですよ~」
「あれから……よく……考えたんだけどさ…………」
するとアーメイデはしばらくの間、口を閉じる。これから言おうとする言葉に対して覚悟を決める為に、そしてゆっくりと口を開き言葉を発した。
「やっぱり、あんたの目的を認める事は出来ないよ…………」
「…………それは……つまり……私の目的に異論を唱えるという事ですか?」
「!!」
空気が変わった。全身に鳥肌が立ち、背筋が凍り付く。吐き気すら感じ始め、重圧がのし掛かる。出来る事なら今すぐこの場から逃げ出したいと思った。アーメイデはこの感情には心当たりがある。実に二千年振りとも言える感情、それは恐怖。どんなに長生きしていたとしても決して消し去る事の出来ない感情である。アーメイデは何も言う事が出来ず、只震えるだけだった。
「そうですか……残念ですね……あくまで私の目的を邪魔するつもりなら……ここで消し去る事にしましょうか……」
「か、勘違いしないでくれよ!!私は別に、あんたの目的を邪魔するつもりは無い!!」
「どういう事ですか…………?」
「わ、私はこの一ヶ月、あの子達を見届けて来た……するとその内、あの子達ならあんたが目的を果たさなくても、世界を笑顔に変えられるんじゃないかと思った……だけどその反面、あんたの目的の方がより確実に世界を笑顔に出来るとも思っているんだ…………」
アーメイデは、必死に弁解の言葉を述べる。勘違いされて殺されてしまっては、目も当てられない。
「つまり……どっちにつけば良いのか分からなくなってしまった……という事ですか?」
「あ、あぁ……そう言う事だよ……」
「…………ふふふ……あははははは!!!」
「な、何がおかしいんだい!?」
突然笑い声をあげるエジタスに、アーメイデは声を張り上げて聞いた。
「だって……私の目的を認めないと言っておきながら、心の反面では認めているんですよ?こんな大きな矛盾、笑わずにはいられませんよ!」
「と、とにかく!そう言う事だから、私はまだ完全にあんたの味方になった訳じゃないよ!」
「…………どっちにもつかずに様子だけ伺う。そして最終的に有利な方の味方につく……そんな事をしていたらいつか、ブスリ!!と後ろから刺されてしまいますよ?」
「そうかもしれない……だけど……それでも……今の私にはどっちの味方につくのか決められないよ……」
「…………そうですか……それなら仕方ありませんが、なるべく早く決断する事をおすすめしますよ」
そう言うとエジタスは、大きな池を見つめてからアーメイデに声を掛ける。この時、重くのし掛かっていた空気は元に戻っていた。
「それじゃあ私はそろそろ戻りますが、アーメイデさんはどうしますか?」
「しばらくはここにいるよ。色々と考えたい事があるからね……」
「そうですか、それでは……あぁ!最後に一つ言いたい事がありました」
「??」
何を思い出したのか、エジタスがアーメイデの側まで近づいて来た。
「マオさんから聞きましたけど、魔法の研究をする為に“停止魔法”を編み出したらしいですね~?」
「そ、それがどうしたのよ?」
「いや~、随分と最もらしい“嘘”をついたなと思いまして……」
「!!」
「魔法の研究?編み出した?本当は愛する初代勇者を蘇らせる為に、時間を逆行させる魔法を作ろうとして生まれた副産物でしょ?どうして本当の事を話さないんですか?」
「…………」
アーメイデが使っている“停止魔法”は、元々初代勇者を蘇らせる為に作り始めた時間を戻す魔法の副産物だった。結局時間を戻す魔法は完成出来ず、残ったのは“停止魔法”だけだったのだ。
「もしかして……初代勇者の事が好きだったのを知られたく無いんですか~?」
「違う!!そうじゃない!私は……!!」
「照れなくてもいいんですよ~。安心して下さい、この事は私とアーメイデさん、二人だけの秘密ですから!それではアーメイデさん、おやすみなさ~い!」
「ちょ、ちょっと待っ……」
そう言うとエジタスは、スキップをしながら小屋へと戻って行った。
「…………」
アーメイデは、その光景を呆然と見る事しか出来なかった。
***
「(エジタス……やっぱり私はあんたの事が……)」
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