笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

望まぬ結果

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 「…………ん……んん……」



 いつの間にか気を失っていたらしく、ハナコが目を覚ますと、部屋全体は炎に包まれていた影響で焦げ臭かった。



 「あれ……オラ……確が……アルシアざん!?アルシアざんは!?」



 気を失う直前の記憶を思い出したハナコは、側で倒れているアルシアの安否を確かめる。



 「ア、アルシアざん…………」



 アルシアの体は重症だった。仰向けに倒れており、体全体が黒く変色して、白かった骨の面影が全く無かった。そして何よりも、右足が炎に耐えきれず灰になっていた。



 「アルシアざん!!アルシアざん!!起ぎでぐれだぁ!!お願いだぁ!!起ぎで、元気な姿を見ぜで欲じいだよぉ!!」



 見ての通り、アルシアはスケルトンであり、骨以外の臓器は存在しない。また、他の生物の様に脈を取るなどの生死を確める方法が無い。ハナコは生きている筈だと信じて、アルシアの倒れている体を揺らした。



 「…………」



 「アルシアざん…………」



 必死にアルシアの体を動かして、意識を取り戻させようとするハナコだが、全く反応しないのを見て、一抹の不安を抱くその時だった。



 「……もう……そんな耳元で大声を出されたら、休めるものも休めなくなってしまうじゃないの…………」



 「!!……アルシアざん!!!」



 アルシアは、死んでいなかった。ハナコより先に目覚めていたが、全身を負傷して右腕と右足を失っていた為、全く動けない状態だった。



 「良がっだぁ……良がっだぁ……!!!」



 「ハナコちゃん…………どうやらこの勝負、あたし達の勝ちみたいね……」



 「えっ?」



 ハナコがアルシアの見つめる先に顔を向けると、そこにいた“実験体M-001”の姿は無く、何かが焼け焦げた後だけが残っていた。現状から察するに、“実験体M-001”を倒せたのは明白だった。



 「オラ達……勝っだんだがぁ……?」



 「えぇ、そうよ……」



 「や、やっだぁあああああああああああああああ!!!」



 心の底からの叫び。ハナコとアルシアの二人は、見事最悪最恐とも言える“実験体M-001”を倒す事が出来たのだ。



 「ちょ、ちょっとハナコちゃん、苦しいわ…………」



 「あっ、ご、ごめんなざい……嬉じぐでづい……」



 あまりの嬉しさから、ハナコはアルシアの事を強く抱き締めたが、重症を負っているアルシアにとって、この抱き締めるという行為でも骨に強く響く。



 「……でも今回勝てたのはハナコちゃん、あなたのお陰よ……」



 「えっ、オラ!?ぞんな、オラなんが何の役にも立だながっだよぉ!!」



 「そんな事無いわ……ハナコちゃんがあたしの体から“実験体”を引き抜か無かったら、確実にあたしは死んでいたもの……ありがとうね……」



 「アルシアざん……」



 こうして面と向かってお礼を言われると、何だかとても照れ臭く感じて、思わずにやけてしまうハナコ。







         パチパチパチパチ







 「「!!!」」



 その時、何処からともなく部屋全体に拍手が鳴り響いた。ハナコとアルシアの二人は、音のした方向に顔を向ける。



 「いや~、お見事でした~。まさか倒してしまうだなんて、さすがはハナコさんとアルシアさんですね~」



 「エジタスざん………」



 「エジタスちゃん…………」



 するとそこには、こちらを見つめながら拍手をするエジタスが立っていた。



 「勝ったお二人には、お約束の鍵をプレゼントしましょう~」



 そう言うとエジタスは、持っていた鍵を二人に向けて放り投げた。



 「おどど……!!」



 突然放り投げられた鍵に、ハナコは慌ててキャッチした。



 「あなた達二人のお陰で、中々良いデータが取れました。今後の作りに参考にさせて頂きます。それではハナコさん、アルシアさん、玉座の間で来るのをお待ちしていますからね~」



 するとエジタスは、指をパチンと鳴らして、その場から姿を消した。



 「エ、エジタスざん!!まだ話は…………!!」



 「行ってしまったわね……まるで、言いたい事は玉座の間に来てから言え、そんな風に思えたわ……」



 エジタスの淡白な対応。言いたい事だけを言うと、こちらが何か言う前に行ってしまった。



 「ぞう言う事なら……絶対……絶対辿り着いで見せるだぁ!!!」



 「その意気よハナコちゃん!!!」



 改めて決意を固めたハナコ。その勇姿にアルシアは、嬉しそうに後押しするのであった。



 「さてと……鍵も手に入った事だし、あたし達もこの部屋を脱出しないとね…………」



 「ぞうだげど……アルシアざん……その体で大丈夫だがぁ?」



 何度も言うが、アルシアは満身創痍で右腕と右足が無くなっている。とても歩ける体とは言えなかった。



 「その点に関しては大丈夫よ……ハナコちゃん、悪いけどそこに落ちているあたしの刀を拾って渡してくれないかしら?」



 「えっ……わ、分がっだだぁ!!」



 アルシアの指示の元、ハナコは側に落ちていた二本の刀をアルシアに渡した。



 「よいしょっと……ハナコちゃん、あたしは今から自身の体を回復させるけど、“何が起こっても決してパニックにならないでね”……」



 「ぞ、ぞれっでどう言う……「いいから」……わ、分がっだだぁ」



 パニックになるな。アルシアがそう言うと、受け取った二本の刀を自身の体に深く突き刺した。



 「!!?」



 「うぐっ…………!!」



 「ア、アルシアざん!!?何をやっでいるんだぁ!!!早ぐ抜いでぐれぇ!!!」



 「ハナコちゃん!!言ったでしょ!!“何が起こっても決してパニックにならないでね”って!!」



 「で、でも…………」



 自身の刀を自身の体に突き刺すという突然の奇行、パニックにならない方が難しい。



 「これからあたしは、自身の体を回復させるのよ…………スキル“大叫喚地獄”!!!」



 その瞬間、アルシアが自身に突き刺した二本の刀が黒く光始め、それに合わせてアルシアの体も黒く光始める。



 「うっ……うぅ……ああああああああああああああ!!!」



 「ア、アルシアざん!!?」



 それと同時にアルシアはとてつもない叫び声を上げた。



 「アルシアざん!!今助げるだぁ!!」



 「触らないで!!!」



 「えっ!!?」



 アルシアの悲鳴に、ハナコが急いで突き刺さった二本の刀を抜こうとするが、アルシア本人に止められてしまった。



 「こ、これで良いのよ……あああああああああ!!!」



 「何処が良いんだぁ!!!余計に苦じぐなっで…………!?」



 その時、ハナコは信じられない光景を目の当たりにした。アルシアの失った筈の右足が再生し始めていたのだ。



 「ご、ごれはどう言う事だぁ……!?」



 「……はぁ……はぁ……“大叫喚地獄”……対象者を超人的な早さで回復させる事が出来る……例え腕の一本や二本無くなったとしても、再生させる事が出来る…………だけど超人的な早さで回復させる反面……それ相応の苦痛を味わう事となる……その苦痛は回復させる時の度合いによって変化する……うっ……あああああああああああああ!!!」



 右腕と右足を再生させるとなると、いったいどれだけの苦痛を味わう事になるのか、ハナコには想像もつかなかった。



 「アルシアざん…………アルシアざん!!頑張るだぁ!!!」



 「ああああああああああ!!!」



 瞬く間に右足は再生し終わり、続けて右腕の再生が始まった。そのあまりの苦痛に叫び声を上げるアルシアを見かねて、ハナコは無我夢中で応援した。







 「…………はぁ……はぁ……はぁ…………」



 それから五分。地獄の苦しみを耐え抜いたアルシアは右腕、右足共に再生する事が出来た。



 「アルシアざん……」



 「待たせたわねハナコちゃん、完全復活よ!!!」



 「良がっだだぁ!!!」



 ハナコは、嬉し涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも、アルシアを強く抱き締めた。



 「あらあら……ハナコちゃんったら、本当に涙脆いのね……」



 「アルシアざん……アルシアざん…………!!!」



 「ちょ、ちょっと……強く抱き締め過ぎじゃないかしら……?こ、このままじゃ、あっ、ちょっ、あーーー!!!」



 こうして、アルシアは完全復活を遂げて、二人は部屋から脱出する事が出来たのであった













































 新魔王城玉座の間。“実験体M-001”に勝利を収めたハナコとアルシアの二人に、部屋の鍵を渡したエジタスは“転移”を使って戻って来た。



 「お帰りなさい我が神よ」



 「…………」



 戻って来たエジタスに、ジョッカーは丁寧に頭を下げるも、エジタス本人は返事を返さず横切った。



 「我が神……どうしたのです……ひぃ!!?」



 「…………」



 返事を返さないのを不思議に思ったジョッカーは、横切ったエジタスに声を掛けようとした瞬間、チラリと見た横顔に思わず悲鳴を上げてしまった。何故なら、その横顔から今まで感じた事の無い程のとてつもない殺意を感じたのだ。そんな悲鳴を上げたジョッカーに、ラクウンが歩み寄る。



 「ジョッカーさん、あなたは我が王の元に仕えてから、まだ日が浅いから分からないと思いますが、あの雰囲気を漂わせている時の我が王には話掛けない方が身の為ですよ…………」



 「そ、そうなのか……」



 「…………」



 エジタスは指をパチンと鳴らして、右手に黒い塊を出した。それは以前エジタスが出した“魔食”の体の一部だった。



 「…………つまらねぇな……」



 “魔食”の体の一部を強く握り締めながら、望まぬ結果になった事にエジタスは苛立ちを感じた。
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